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作物研究室
作物研究室の研究内容を紹介します
作物研究室では、稲、小麦の品種の育成や栽培技術の改善に取り組んでいます。以下に近年の研究成果の一例を紹介します。
新しい品種の開発
夏の暑さに負けない水稲「愛知123号」
本県で栽培される「コシヒカリ」は、穂が出てから実るまでの時期が高温となることが多いため、白未熟粒と呼ばれる白く濁った米粒が多く発生し、外観品質が下がることが大きな問題となっています。「愛知123号」は、「コシヒカリ」を母本とし、高温耐性に優れる「TS-3」を父本として育成された極早生品種です。「コシヒカリ」と比べ収量は同等以上、食味も同等の良食味であり、白未熟粒の発生割合が少なく、外観品質が優れています。特に猛暑の年にその特性を発揮し、「コシヒカリ」と比較すると外観品質が明らかに良くなります。
「愛知123号」の草姿 玄米の比較
(上:愛知123号、下:コシヒカリ)
多収・多用途の水稲「愛知125号」
国民1人あたりの米の消費量が減少する中、食料自給率向上に向けて加工用米や飼料用米の需要が期待されています。新たに開発した水稲「愛知125号」は製麺適性に優れるほか、パンや洋菓子等幅広い加工適性を持つため、多様な加工用米の需要に応えることができます。また、愛知県の主力品種「あいちのかおりSBL」と比較して穂が長く約3割多収で、倒れにくく、縞葉枯病と白葉枯病に抵抗性を持ちます。そのため、栽培安定性に優れ低コスト生産が可能となります。
「愛知125号の草姿」 穂長の比較
(上:愛知125号、下:あいちのかおりSBL)
日本めんに適した小麦「きぬあかり」
色が明るく、なめらかで、コシのあるうどんやきしめんができる「きぬあかり」を開発しました。「きぬあかり」は従来品種「農林61号」と比較して、早生、短強稈で倒伏に強く、多収で栽培がしやすいのが特徴です。生産者、実需者からの評価も高く、愛知県の主力品種として期待されています。
「きぬあかり」の草姿 麺の比較(左:農林61号、右:きぬあかり)
栽培技術の開発・改善
低コストかつ迅速で楽に米作りができる「不耕起V溝直播栽培」
不耕起V溝直播栽培は、農作業が少ない冬期に耕起代かきを行い、春作業は播種と除草剤散布のみとなります。移植栽培のように、春に複数の作業(耕起、代かき、田植え等)が集中することはありません。また、直接ほ場に種子を播くため、田植え前の育苗や苗運搬の手間を省くことができます。さらに、播種溝が深いため従来の直播栽培と異なり、鳥害にあいにくく、耐倒伏性も高くなります。以上の特徴から、春作業の軽減や耕作規模の拡大に貢献することができます。
不耕起V溝直播機による播種の様子
「摘心」による大豆の生育制御
大豆は早播きすると主茎長が長くなり倒伏しやすくなります。この対策として、開花始期頃に「大豆摘心機」で主茎を摘心することにより、倒伏を軽減することができ、コンバインでの収穫ロスが少なくなります。さらに、摘心により分枝が増えて莢数が増加するため収量が増えます。摘心による生育抑制で早播きも可能となり、播種適期を長くすることができます。
省力的摘心機による作業の様子