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黒毛和種をシマウマ模様に塗った「シマウシ」は吸血昆虫の飛来が減少します~新たな吸血昆虫対策技術の開発~

ページID:0258269 掲載日:2024年3月27日更新 印刷ページ表示

アブやサシバエなどの吸血昆虫は、ウシにストレスを与えるとともに、牛白血病(注1)などの病気を媒介します。

通常、薬剤で吸血昆虫を殺虫しますが、この度、薬剤に代わる新たな吸血昆虫対策技術を検証しました。

本成果は、米国の科学誌PLOS ONEに2019年10月4日に掲載されました。本科学誌はオープンアクセスのため、どなたでも無料で閲覧可能ですので、詳細はこちら(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0223447)をご覧ください。

1 吸血昆虫の問題


 吸血昆虫は、吸血の際に痛みを生じさせるため、ウシは吸血昆虫を追い払おうとします。採食や休息を阻害されることになり、生産性が低下します。さらには、吸血を通じて牛白血病(注1)などの病気が媒介されるため、吸血昆虫対策は重要です。


2 開発の経緯


 シマウマの縞模様の機能として、吸血昆虫を忌避するという説が有力であると海外で報告されています。そこで、ウシにシマウマ様の縞模様を塗装し、その効果を検証しました。


3 成果の内容


 体表が黒い黒毛和種に白色の縞模様を塗装した白シマ牛、黒色の縞模様を塗装した黒シマ牛(塗料の影響を確認するため)と縞の塗装をしていないシマ無し牛を作り、各牛に付着する吸血昆虫数と吸血昆虫を忌避する行動数を比較しました。

 その結果、白シマ牛の付着昆虫数は黒シマ牛とシマ無し牛に比べて半減し、忌避行動数も25%減少しました。以上から、黒毛和種にシマウマ様の縞模様を塗装することによって、吸血昆虫の牛体への付着を阻害することが明らかとなりました。


4 今後の予定


 白黒の縞は、ウシのみならず他の家畜でも、さらには無生物に対して吸血昆虫の忌避効果が得られると考えられます。家畜や畜舎等を白黒の縞模様にすることによって、吸血昆虫を忌避でき、アニマルウェルフェア(注2)が向上して、家畜の生産性の改善効果が期待されます。さらに薬剤抵抗性の吸血昆虫が生じるといった問題も回避することができます。

 今後は、より簡易に家畜に縞模様を描く方法や長期間縞模様を維持する手法の開発を行っていきます。


5 関連説明


(注1)牛白血病ウィルスによって引き起こされる疾病で、ウシ及びスイギュウに感染します。吸血昆虫による媒介や血液、乳汁による伝播、あるいは分娩を介しての親子間での伝播によって感染します。感染牛の大部分は無症状ですが、一部で発症し体表リンパの腫脹、削痩(さくそう)、元気消失、食欲不振、眼球突出、下痢などの症状を示し、最悪の場合、死に至ります。また、発症牛の生産物(生乳や牛肉等)は全廃棄となります。

(注2)アニマルウェルフェアとは、「動物が生活及び死亡する環境と関連する動物の身体的及び心理的状態」と定義されています。家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理が広まってきています。従来、家畜の飼養管理の一般原則として、「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年10月1日法律第105号)」に基づき、「産業動物の飼養及び保管に関する基準」や「動物の殺処分方法に関する指針」が定められています。このような中、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を広く普及・定着させるため、「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」が策定されました。


図 試験で用いた各処理区の牛の写真

白シマ牛黒シマ牛シマ無し牛

 

図 各牛に付着した吸血昆虫数と忌避行動回数の結果


付着吸血昆虫数のグラフ忌避行動回数のグラフ

問合せ先

愛知県農業総合試験場
畜産研究部養牛研究室
電話: 0561-41-9519(ダイヤルイン)
E-mail: nososi@pref.aichi.lg.jp