ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 組織からさがす > 水産試験場 > 二枚貝類に関する研究

本文

二枚貝類に関する研究

ページID:0349333 掲載日:2021年6月17日更新 印刷ページ表示

アサリの資源増大に関する調査研究

アサリは、伊勢・三河湾をはじめ我が国の静穏な内湾の浅海域に広く生息する二枚貝で、広く食用にされ、潮干狩りなどでもなじみの深い貝です。 しかしながら、国内のアサリ漁獲量は減少傾向にあり、年間1万トン前後を維持してきた愛知県でも2014年以降に漁獲量が急激に減少しました。現在でも、かろうじて全国1位(令和元年農林水産統計)の漁獲量ではありますが、アサリ漁業の復活に向けた取組が必要です。

当グループでは、本県のアサリ資源量の回復を図るため、その減少要因の解明や保護対策技術などに関する以下の試験研究、調査を行っています。

アサリ稚貝

アサリ資源減少要因の解明

アサリ資源回復に向けた対策を講じる上で、「いつ?どうして?」、アサリが減ってしまうのか明らかにする必要があり、農林水産事務所と連携して伊勢、三河湾内においてアサリ資源の動態について漁場環境とともに調査を行っています。

その結果、資源減少が顕著な漁場では、秋から冬にかけてアサリの分布密度が著しく減少し、そのタイミングで餌である植物プランクトン量が少なく、アサリの活力指標である肥満度も低下している傾向が認められました。

また、この肥満度は昔と比べても低くなってきていることも分かってきました。活力低下そのもので死亡リスクは増えると考えられますが、秋冬期に強くなる風波や食害に対しても脆弱になっていると推測されます。

当グループでは、アサリ浮遊幼生だけを光らせて判別する手法(アサリ幼生特異的モノクロナール抗体を用いた間接蛍光抗体法)を独立行政法人水産総合研究センター(現国立研究開発法人水産研究・教育機構)瀬戸内海区水産研究所と共同して開発し、この方法により2000年代から浮遊幼生量をモニタリングしています。

アサリ資源が豊かだった頃は、海水1立方メートルあたり最高で10,000個体以上の大量の浮遊幼生が三河湾に供給されていたのに対し、最近の調査結果では非常に少なくなっていることがわかってきました。

 

 

水中の観測器アサリ幼生の顕微鏡写真

左:秋のアサリ調査における観測器の設置          右:二枚貝浮遊幼生の顕微鏡写真
  (三河湾衣崎沖ですが透明度が高く餌が少ない)     (緑色に光っているのがアサリ幼生)

アサリ保護対策技術の開発

三河湾の河口干潟には天然のアサリ稚貝が大量に発生し、漁業者はその稚貝を採捕し漁場に移植することにより、アサリ資源の維持増大に努めてきましたが、近年は定着率が悪く、漁獲に結びつけるためには人為的にアサリを保護する方策を漁場に展開する必要性が高まっています。

そこで当グループでは、アサリ稚貝の定着を高め大規模に漁場として機能させるための砕石覆砂技術の開発及び効果調査を実施しています。腰マンガや漁網などにかからず、貝類だけ漁獲できるような小粒の7号砕石(粒径2.5~5mm)を造成材料として漁場に敷設することで、生息できるアサリの現存量が向上することが確認できました。また、こういった砕石覆砂漁場のメンテナンスの方法も併せて検討しています。

 

圧送ポンプによる施工海底面の砕石

上:圧送ポンプによる砕石散布             下:覆砂施工後の海底面の様子

また、減耗の著しい秋冬期のアサリを保護するために漁業者は被覆網等の保護管理策に取り組んでいますが、維持管理や撤去等に対する労力が課題です。そこで、作業労力を少なくするため、海水中の微生物等により分解される生分解性の被覆網等の開発・調査を民間企業と連携して進めています。
被覆網の様子

干潟上に設置中の被覆網

 

 

トリガイの資源機構調査

トリガイは、内湾に生息する二枚貝です。足と呼ばれる部分を食用とし、寿司ネタなどでおなじみです。トリガイ漁は主にトリガイがおいしい時期である3月~6月に行われます。愛知県では三河湾が主な漁場となっており、貝けた網漁業の重要な漁獲対象種となっています。

市場に並ぶトリガイ

市場に並ぶトリガイ(3月)

本県は全国でも有数のトリガイ産地として知られています。しかし、トリガイの漁獲量は、その変動が非常に大きいために、漁業者の経営を不安定なものにしています。そこで当グループでは、トリガイの漁獲を高水準で安定させるために、トリガイ資源がどのように形成されているか研究しています。

トリガイの足

トリガイ(矢印は足を指す)

トリガイの産卵は春から秋に行われ、卵からふ化した幼生は、2週間ほど海水中を浮遊した後、海底に着底します。その後、急成長し、生後半年あまりで約5センチの漁獲サイズとなることがわかっています。しかし、トリガイの生息場は夏に貧酸素水塊(酸素濃度が低い水の塊)に覆われるため、トリガイは大量に死んでしまうと考えられています。このことから、貧酸素水塊が解消される秋以降に生まれるトリガイが翌年の漁獲において重要であると考えられています。

これまでの調査結果から、三河湾では4月から12月まで継続的に浮遊幼生が出現しており、トリガイが多く漁獲された前年の秋には海底面積1m²の水柱中に数千個もの浮遊幼生が出現していることが分かりました。しかし、浮遊幼生が多く出現しても翌年のトリガイが多く獲れない年もあります。今後は秋以降のトリガイの稚貝がどのように成長し、どのぐらい生き残っているのかなどを調べ、トリガイの資源がどのように形成されていくかを明らかにしていきます。

トリガイの稚貝

トリガイの稚貝

栽培漁業グループのトップページへ戻る

漁業生産研究所のトップページへ戻る

水産試験場のトップページへ戻る

問合せ

愛知県 水産試験場 漁業生産研究所
電話: 0569-65-0611
ファックス: 0569-65-2358