愛知県衛生研究所

違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)33種を指定薬物に―厚労省、ラッシュ成分など―

2006年11月13日

麻薬に似た幻覚症状や性的興奮をもたらし、若者の間で乱用が問題化している「脱法ドラッグ」の輸入や販売を禁止するため、厚生労働省は11月9日、「RUSH(ラッシュ)」(通称)などに含まれる33種類の薬物に対し規制対象とする方針を決めました。同日開かれた専門家による部会で了承されたものです。 「脱法ドラッグ」の乱用実態、それによる健康被害、事故の発生について、明らかになっているものはごく一部であり、規制の強化が必要と考えられていました。

脱法ドラッグ写真
写真:厚生労働省ホームページから転載

今回対象とされた成分は、亜硝酸イソブチル(「ラッシュ」の主成分)、PMMAサルビノリンA、7月に大阪府内で大学生が服用後にマンションから転落死したのではないかと疑われる5−MeO−MIPTなどです。インターネットやアダルトショップで芳香剤、ビデオクリーナーと偽って売られ、現行の薬事法では取り締まりが困難でした。

これら33種の薬物は、今後施行予定の改正薬事法では「指定薬物」として扱われ、治療や研究目的以外で輸入、製造、販売した場合には5年以下の懲役か500万円以下の罰金が科せられます。今回の規制で、「現在流通しているほとんどの脱法ドラッグに規制の網がかかる」と期待されています。

脱法ドラッグの分類

「脱法ドラッグ」は、麻薬等と類似の有害作用(幻覚、中枢神経抑制、興奮作用等)が疑われるものの、現段階では麻薬指定には至らない薬物です。その化学構造や性質、形状などにより大まかな分類がされています。

ケミカルドラッグ

「脱法ドラッグ」の多くは試薬などの名目で販売されています。これらはケミカルドラッグ(場合により、スマートドラッグ)と呼ばれています。形状は粉末状の物が多いのですが、液状や錠剤のものもあり、結晶状の「脱法ドラッグ」は計量器を使わない場合正確な計量が難しく、使用者には過量摂取の危険が伴います。摂取方法は主に経口です。

化学構造のなかにトリプタミン骨格を持ち、幻覚剤として使用される「脱法ドラッグ」は、トリプタミン系と呼ばれます。多数のドラッグがトリプタミン系であり、その中にはシロシン、シロシビン、5-MeO-DIPT、DMT、AMTなどが麻薬指定されており、また今回対象とされた5−MeO−MIPTがあります。広い意味では神経伝達物質セロトニン(5-ハイドロオキシ・トリプタミン)もトリプタミンにあたります。そのため、トリプタミン系ドラッグはセロトニン受容体に作用し、多幸感や幻覚を誘発します。過量摂取により、セロトニン症候群に至り、頭痛、めまい、嘔吐、昏睡などの症状を呈し、最悪の場合には死亡することもあります。一方、フェネチルアミン骨格を持ち、幻覚剤として使用される脱法ドラッグは、フェネチルアミン系と呼ばれます。トリプタミン系と同様、多数のドラッグがフェネチルアミン系であり、アンフェタミン、メスカリン、MDMA、MBDB、2C-B、2C-T-7などは、覚せい剤や麻薬指定されており、また今回対象とされたPMMAもこのフェネチルアミン系に分類されます。これらは、興奮剤的作用を有します。

ナチュラルドラッグ

観賞用やお香などの名目で販売され、レクリエーション目的に使用される植物や植物加工品などの「脱法ドラッグ」はナチュラルドラッグと呼ばれます。遅効性のドラッグが多く存在し、過量摂取の危険が伴います。有効成分がトリプタミン系やフェネチルアミン系に分類される物も多く、マジックマッシュルームが有名です。摂取方法は経口や喫煙です。今回対象とされたサルビノリンAは、幻覚作用を有しマジック・ハーブとも呼ばれるメキシコサルビアの有効成分です。また、マオウやエフェドリンが含まれている薬物はエフェドラ系と呼ばれ、主に、ダイエット薬やサプリメントなどの名目で販売され、1990年代からアメリカ合衆国を中心に流行し始めました。マオウ自体にエフェドリンが含まれていて、エフェドリンはフェネチルアミン系であり興奮剤的効果を持ちます。エフェドリンは多くの国で規制物質となっています。

ニトライト系・亜硝酸エステル類

亜硝酸エステルを主成分としている「脱法ドラッグ」は、ニトライト系もしくは亜硝酸エステル類と呼ばれ、お香やクリーナー名目で販売されています。気化したドラッグを経鼻摂取し、酩酊感が得られ、オーガズム時に摂取するとその快感が上昇するとされています。著名なものは、今回その主成分である亜硝酸イソブチルが規制対象薬とされたラッシュであり、使用により血圧低下が起こり、循環器に障害を残す場合があります。

「脱法ドラッグ」は、麻薬等と異なり、その所持、使用が禁止されていないため、薬事法違反(無承認無許可医薬品の販売、授与等)であるにもかかわらず販売され、近年、青少年を中心に乱用が拡大しました。乱用拡大に伴い、死亡事故を含む健康被害が発生、また「脱法ドラッグ」の使用をきっかけに麻薬等の使用に発展する危険性が増大します。

改正薬事法では、中枢神経系の興奮、若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物について、製造、輸入、販売等が禁止され、厳しく規制、取り締まりがなされます。