平成18 年4 月1 日から第十五改正日本薬局方が施行されました(詳しくは厚生労働省"「日本薬局方」ホームページ")。"「日本薬局方」ホームページ"では、電子化された第十四改正日本薬局方が見られるので興味のある方は参考にされてみてはいかがでしょうか。
| 版 | 告示年月日 | 収載品目数 | |
| 第一版日本薬局方 | 1886. 6.25 | 468 | |
|---|---|---|---|
| 第二改正日本薬局方 | 1891. 5.20 | 445 | |
| 第三改正日本薬局方 | 1906. 7. 2 | 703 | |
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| 第六改正日本薬局方 | 1951. 3. 1 | 634 | |
| 第七改正日本薬局方 | 1961. 4. 1 | 1,227 | |
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| 第十四改正日本薬局方 | 2001. 3.30 | 1,328 | |
| 第十四改正日本薬局方 | 第一追補 | 2002.12.27 | 1,362 |
| 第十四改正日本薬局方 | 第二追補 | 2004.12.28 | 1,391 |
| 第十五改正日本薬局方 | 2006. 3.31 | 1,483 |
日本薬局方とは、国が定めた医薬品の規格基準書で、右の表に示すように第一版は1886(明治19)年に発布されていますので、その歴史は百年以上にもなります。
医薬品の名前に関して、塩やエステル等で日本名が変更されました(例:マレイン酸クロルフェニラミン→クロルフェニラミンマレイン酸塩)。それら体系的な改名とは別に今回の改正で注目されるのは、高峰譲吉*により結晶として得られた最初のホルモン(1891(明治24)年結晶分離成功)で高峰命名のアドレナリンが日本薬局方で正式名称に採用されたことです。改正前の日本薬局方ではアドレナリンのことがエピネフリンとされてきましたがこれは、アメリカの学者が提唱したもので、第三者的な立場の欧州薬局方でadrenaline(アドレナリン)が採用されていることから見て、今回の改名は妥当なものだと思われます。
ちなみにアドレナリンは副腎髄質ホルモンであり、交感神経興奮薬などとして用いられています。
私たちが意識せずとも心臓や消化器官を始め全身の臓器は自律神経系のおかげで動いています。その自律神経系には相反する働きをする交感神経系と副交感神経系があります。交感神経系は緊急時(闘争、逃避、驚愕)に優位に働き、心機能、血圧、血糖値などを上げます。一方、副交感神経系は休養しているときに優位に働き、役割は逆です。その交感神経の働きを果たすホルモンの一つがアドレナリンで、もう一つは標的器官の神経繊維終末部から分必されているノルアドレナリンです。ノルアドレナリンの発見は高峰譲吉のアドレナリン発見からかなりの後のことでした。ところで、初期の日本薬局方の作成に深く関わった長井長義は、アドレナリンに似た構造のエフェドリンを世界で最初に麻黄から精製しました。エフェドリンは構造がアドレナリンと似ていることからアドレナリンに似た作用を持っており、濫用すると非常に危険です。なぜなら、アドレナリンは体内の酵素で素早く分解されますがエフェドリンはそうではないからです。最近、カナダやアメリカではエフェドリンを含むサプリメントなどによる健康被害が問題となっています。
5年ごとに改正される日本薬局方は、医学・化学の進展に対応しています。また、最近では、日米欧の三薬局方(日本薬局方、米国薬局方、欧州薬局方)の調和合意が新薬局方に反映されつつあり、医薬品の規格基準の分野に関しても国際化が図られています。さらに、重要な医薬品は積極的に収載される一方で、医学・化学の進歩によって不要となった品目は削除されていきます。日本薬局方の重要性・利便性はますます高まってくるのではないでしょうか。例えば今回の改正では、アドレナリンβ1作用(心臓の収縮力や刺激伝導亢進作用)を選択的に阻害し、従来から高血圧や狭心症の薬として広く用いられていた「アテノロール」など102品目が新規に収載され、ホルモンである「セクレチン」など8品目が削除となりました。