愛知県衛生研究所

ネット(個人輸入)で流通!!
「偽造医薬品」にご注意ください

2008年3月7日

インターネットの普及により、医薬品が医療機関以外を通じて流通するケースが増加しています。このため、有害物質や安全性が未確認な不純物を含んでいるかもしれない「偽造医薬品(カウンターフィット薬ともいう)」のリスクが、国際的に高まっています。

偽造医薬品とは

世界保健機関(WHO)は、故意にまた詐欺の目的をもって内容や出所・起源に関して偽表示された医薬品を「偽造医薬品」と定めています。

 具体的には

「偽造医薬品」は、製品名や製造・販売元などを正規品と偽って表示・販売する違法な医薬品であり、製造工程や保存状態が考慮されず品質が劣った製品もあります。また、たとえ医薬品成分が正規であっても、外国語による使用法の説明や虚偽表示、日本語での誤記載があり、正確な効能・効果、用法・用量、安全性に関する情報が欠如しているために、重大な副作用が発生する恐れもあります。

世界中に拡がる偽造医薬品

現在「偽造医薬品」の流通が、国際的にも問題視されています。WHOの報告によると、米国、EU、オーストラリア、日本、カナダ、ニュージーランドなどの先進国では、販売されている医薬品の1%未満です。しかし、アジアと南米の一部、アフリカの多くの国では30%を超え、発展途上国全体では10%〜30%、旧ソ連邦諸国では20%を超えていると推測されています。医薬品の承認、販売など薬事制度が十分に確立しておらず、医薬品に関する情報が不足する発展途上国において、「偽造医薬品」が流通医薬品中に混入している実態が明らかになっています。米国の啓発機関では、「偽造医薬品」の流通は今後も増え続けると予測し、警告を発しています。

日本を含む世界各地で、抗生物質、抗マラリア薬、抗うつ薬、抗がん剤など様々な種類の「偽造医薬品」が確認されています。抗生物質の「偽造品」は、含量不足であれば耐性菌の出現を招きます。東南アジアで発見された粗悪な抗マラリア薬は、服用した患者の体調を悪化させ、死亡させたりする危険性のある化学物質を含んでいる可能性が指摘されました。また、中米のパナマ、ハイチでは、有害なジエチレングリコールが添加された咳止めシロップを服用したことにより、死者を含む多くの犠牲者が出ました。AIDSやがんなどの疾患を治療するための高価な医薬品は、不正業者に大きな利益をもたらしており、勃起不全(ED)治療剤(写真)のような生活改善薬も、「偽造医薬品」リストの上位にあります。

レビトラ錠「正規品」の写真
レビトラ錠「正規品」
レビトラ錠「偽造品」の写真
レビトラ錠「偽造品」

(写真)ED治療薬であるレビトラ錠の正規品と「偽造品」の例(バイエル薬品ホームページから転載)

偽造医薬品は危険です

本来医薬品は、疾病の治療、予防に使用され、身体の機能に直接影響を及ぼすものであり、流通させるためには、国による薬事法に基づく製造販売の承認を得る必要があります。この承認により、医薬品は一定の品質、有効性また安全性が確保されることになります。「偽造医薬品」はこの要件を無視したもので、人々の健康に危険をもたらす要因となります。国内では、「偽造医薬品」が正規のルートで販売されることはないと思われますが、インターネットを利用して入手した「偽造医薬品」とみられる薬では、健康被害が起きた事例があり、医薬品を安易に個人輸入して使用することは大変危険です。個人輸入された医薬品等については、医師、薬剤師等の専門家でも、その成分や作用等に関する十分な情報を有しておらず、副作用等に迅速に対応することが困難な場合があります(医薬品等を海外から購入しようとされる方へ)。

また、海外旅行中の医薬品の購入には、注意が必要です。海外で医薬品を購入する場合、その購入先が正規の薬局等の業者であることを確認してください。海外で購入した手持ちの医薬品に疑問がある場合、包装が完全でない場合、特に現在使用している医薬品と以前国内の医療機関で処方され服用していた医薬品では効き目が違うと感じる場合は、医師、薬剤師に問い合わせてください。

「偽造医薬品」を購入した消費者は、正規品と信じて疑っていないことが多く、偽造された錠剤と本物を見分けることは非常に困難と思われます。通常、日本では、医薬品を入手できるのは薬局と医療機関だけです。医薬品は本来専門家の指導で使うべきもので、個人で使うのは危険です。生命や健康に直接かかわる医薬品を、インターネットで個人的に購入することは控えたいものです。