事例1 | うどのさらし水の着色 |
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苦情内容 | スライスにしたうどを水にさらして冷蔵庫で保存したところ、水が緑色になった。 |
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画像説明 | 左:水さらし直後 右:水にさらして一夜冷蔵保存 |
再現条件 | スライスにしたうど約30gを水300ml中に入れ、これにアンモニア水1滴を加えて冷蔵保存 |
原因推定 | うど中に存在するポリフェノール類のクロロゲン酸が塩基性下に酸化され、これと1級アミン類が反応して緑色物質(構造未詳)に変化した。アンモニアは冷蔵庫内の腐敗細菌等が産生したものであろう。 |
事例2 | 枝豆のゆで汁の着色 | |
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苦情内容 | 枝豆を塩ゆでしたところ、ゆで汁がピンク色になった。 | |
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画像説明 | 右:ピンク色に着色したゆで汁 | pHによるゆで汁の変色、左から酸性・中性・塩基性 |
再現条件 | 枝豆約100gを水300ml中に入れて加熱 | |
原因推定 | 枝豆中の天然色素のアントシアニン類がゆで汁に溶出した。ゆで汁のpHを変化させたところ、酸性側ではやや赤色が強くなり、塩基性側では青紫色がかった(右の画像を参照)。 |
事例3 | さつまいもの青変 | |
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苦情内容 | 蒸したさつまいもを冷蔵庫で保存したところ、青くなった。 | |
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画像説明 | 蒸したさつまいもの対照と着色例 | 生のさつまいもの対照と着色例 |
再現条件 | 蒸したさつまいもを等分してアンモニア蒸気に暴露 | |
原因推定 | さつまいも中のポリフェノール類のクロロゲン酸が塩基性下に酸化され、これと1級アミン類が反応して青色物質(構造未詳)に変化したもので、この現象は生のさつまいもでも観察される(右の画像を参照)。アンモニアは冷蔵庫内の腐敗細菌等が産生したものであろう。 |
事例4 | じゃがいもの褐変 | |
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苦情内容 | じゃがいもを擦り下ろして放置したところ、赤褐色になった。 | |
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画像説明 | 左:処理直後 右:処理後、1時間室温放置 | 左:水さらしのささがきごぼう 右:室温放置のささがきごぼう |
再現条件 | 男爵いも約300gの皮を剥き、擦り下ろして室温放置 | |
原因推定 | じゃがいも中のアミノ酸の一種チロシンがチロシナーゼによりキノン誘導体に酸化され、これが自動的に重合してメラニンに変化した。 | |
類似事例 | ごぼう(右の画像)、ながいも、なす、レタス等でもポリフェノール類の酵素的酸化作用による褐変事例があり、すべて再現済み。 |
事例5 | なすの褐変 | |
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苦情内容 | なすを茹でたところ、なすも茹で汁も褐色になった。 | |
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画像説明 | 左:加熱前 右:30分加熱 | 左:加熱前 右:30分加熱 |
再現条件 | なす約200gを縦切りし水500mlを加えて加熱 | |
原因推定 | なすの色素成分のナスニンが酸化され、それが自動的に重合して褐色物質(構造未詳)に変化した。 | |
参考事項 | ナスニンを鉄と結合させて安定なメタロアントシアニンとすれば、褐変を防止でき、鮮やかな青色を維持できる。 |
事例6 | にんにくの緑変 | |
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苦情内容 | にんにくを擦り下ろして保存したところ、緑色になった。 | |
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画像説明 | 処理直後 | 処理後、1夜冷蔵保存 |
再現条件 | にんにくをミキサーで粉砕して冷蔵保存 | |
原因推定 | 十分に解明されていないが、①葉緑素による緑変、②硫黄化合物と鉄との反応生成物による緑変、③有機酸と還元糖・アミノ酸と還元糖の反応生成物による緑変等が推定されている。 |
事例7 | にんにくの青変 | |
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苦情内容 | にんにくを酢に漬けたところ、にんにくも漬け汁も青くなった。 | |
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画像説明 | 1夜室温放置 | 左:7日室温放置、右:対照 |
再現条件 | にんにく50gに4%酢酸200mlを加えて室温放置 | |
原因推定 | 酢酸酸性下、辛味成分のアルキルサルファイド化合物由来の分解物と鉄とが反応して青色物質(構造未詳)に変化した。 | |
類似事例 | らっきょうでも同様な事例があるが、再現できず。 |
事例8 | 紫たまねぎ(レッドオニオン)のさらし水の着色 | |
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苦情内容 | スライスを水に浸け置きしたところ、水がピンク色になった。 | |
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画像説明 | スライスを1夜冷蔵保存 | さつまいものさらし水の着色 |
再現条件 | 半玉分のスライスに水300mlを加えて冷蔵保存 | |
原因推定 | 常在の色素成分であるアントシアニン類が溶出した。溶出液のpHを変化させたところ、酸性側ではやや赤色が強くなり、塩基性側では青紫色がかった。 | |
類似事例 | さつまいも(右の画像)、レッドキャベツでも同様な事例があり、すべて再現済み。 |
事例9 | れんこんの黒変 |
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苦情内容 | れんこんを水煮したところ、れんこんも煮汁も黒くなった。 |
再現画像 | |
画像説明 | 黒変した水煮れんこん |
再現条件 | 皮を除去した輪切りれんこん約150gを水300mlに入れて加熱 |
原因推定 | れんこん中のポリフェノール類が鉄と反応して、所謂、黒色のタンニン鉄が生成した。 |
事例10 | れんこんのゆで汁の赤変 |
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苦情内容 | れんこんのゆで汁が赤くなった。 |
再現画像 | |
画像説明 | 左:加熱前、右:30分加熱 |
再現条件 | 皮を除去した輪切りれんこん約150gを水300mlに入れて加熱 |
原因推定 | れんこん中のプロアントシアニジンが酸性下の加熱により赤褐色のフロバフェン(構造未詳)に変化した。 |
事例11 | バナナの褐変 |
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苦情内容 | ミキサーにかけて放置したところ、黒褐色になった。 |
再現画像 | |
画像説明 | 左:処理直後 右:処理後、1時間室温放置 |
再現条件 | バナナ約300gの皮を剥き、ミキサーにかけて室温放置 |
原因推定 | バナナ果肉中のフェノールアミン類が酵素的に酸化され、それが自動的に重合して黒色物質(構造未詳)に変化した。 |
事例12 | りんごの褐変 | |
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苦情内容 | りんごを擦り下ろして放置したところ、瞬く間に褐色になった。 | |
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画像説明 | 左:30分水さらし 右:処理後、30分室温放置 | 剥いたももを1時間室温放置 |
再現条件 | りんごの皮と芯を取り除き、ミキサーにかけて室温放置 | |
原因推定 | りんご果肉中のポリフェノール類がポリフェノールオキシダーゼによりキノン体に酸化され、これが自動的に重合して褐色物質(構造未詳)に変化した。 | |
類似事例 | もも(右の画像)、なし等でも同様な事例があり、すべて再現済み。 |
事例13 | 昆布だし汁の青変 |
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苦情内容 | 昆布でだしを取ったところ、だし汁が青くなった。 |
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画像説明 | 左:対照 右:デンプンによる青変だし汁 |
再現条件 | 昆布約10gを水道水300mlに入れて1時間室温放置後、でんぷん試液を添加 |
原因推定 | 昆布由来のヨウ素によるヨウ素―デンプン反応 |
事例14 | 鮭の橙色の液体 |
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苦情内容 | 鮭の切り身から橙色の液体が出てきた。 |
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画像説明 | 2日冷蔵保存 |
再現条件 | 紅鮭の切り身約100gを冷蔵保存 |
原因推定 | 鮭の筋肉に存在するカロテノイド系色素であるアスタキサンチンが液体(ドリップ)中に溶出した。 |
参考事項 | 機器分析によりアスタキサンチンを検出済み。 |
事例15 | 鶏卵黄身の黒変 |
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苦情内容 | ゆで卵の黄身の周りが黒くなった。 |
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画像説明 | 黒変した黄身、対照と黒変例 |
再現条件 | 鶏卵を20分間ゆでた後、そのままお湯の中に放置 |
原因推定 | 卵白中のイオウを含むアミノ酸が熱分解して硫化水素が発生し、これが卵黄中の鉄分と結合して黒色の硫化鉄となり、黄身の表面に沈着して黒っぽくなった。 |
事例16 | のり巻おにぎりの赤変 | |
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苦情内容 | のり巻おにぎりを食べようとしたところ、おにぎりが赤くなっていた。 | |
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画像説明 | 左:乾のり使用のおにぎり 右:焼のり使用のおにぎり | 左:乾のりに水を加えて放置 右:焼のりに水を加えて放置 |
再現条件 | おにぎりに乾のりと焼のりを別々に巻いた後、そのまま室温放置 | |
原因推定 | のりには赤色素(紅藻素、フィコエリスリン)、青色素(藍藻素、フィコシアニン)、緑色素(葉緑素、クロロフィル)、橙・黄色素(カロテノイド)が含まれているが、それらの中で赤色素は水溶性に富んでいるため、これが溶け出しておにぎりを赤くした。 | |
参考事項 | 赤色素は熱に不安定なため、赤色素は焼のり中にほとんど残存していない。故に焼のりを使用すれば、このような現象を回避できる(焼のり使用の画像を参照)。 |
事例17 | しそおにぎりの緑変 | |
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苦情内容 | 赤しそをふりかけたおにぎりを冷蔵庫で保存したところ、おにぎりが緑色になった。 | |
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画像説明 | 左:緑変した赤しそおにぎり 右:対照 | 左:中性の赤しそ溶液 右:塩基性の赤しそ溶液 |
再現条件 | 粉末の赤しそをふりかけたおにぎりをアンモニア蒸気に暴露 | |
原因推定 | 赤しそ中の色素成分であるシソニンの塩基性側での呈色。シソニンは酸性側ではやや赤味の強い紫色であり、塩基性側では青緑色となる(右の画像を参照)。アンモニアは冷蔵庫内の腐敗細菌等が産生したものであろう。 |
事例18 | 紅茶の黒変 | |
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苦情内容 | 紅茶にハチミツを入れたところ、色が濃くなった。 | |
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画像説明 | 左:対照、右:はちみつ入り | 左:対照、右:レモン入り |
再現条件 | 紅茶1パックを約300mlの熱湯で浸出して等分した後、一方にハチミツ約3gを添加 | |
原因推定 | 紅茶浸出液中のポリフェノール類(タンニン)とハチミツ中の鉄分が反応して、所謂、黒色のタンニン鉄が生成した。 | |
参考事項 | レモンによる紅茶の退色現象の原因としては、紅茶の赤色色素であるテアルビジンは中性では赤みが強いが、酸性側に傾くにしたがって赤みが弱まることによる(右の画像を参照)。 |
事例19 | こんにゃくの緑変 | |
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苦情内容 | こんにゃくとごぼうを一緒に煮て放置したところ、こんにゃくが緑色になった。 | |
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画像説明 | 左:ごぼうだけで加熱 右:こんにゃくを入れて加熱 | 対照と緑変したこんにゃく |
再現条件 | こんにゃく30gとごぼう30gを水400mlに入れて30分間加熱した後、そのまま放置 | |
原因推定 | ごぼう中のクロロゲン酸が溶け出し、こんにゃくの凝固成分(アルカリ)存在下に酸化され、これが1級アミン類と反応して緑色物質(構造未詳)に変化した。 |
事例20 | 中華めんの赤変 | |
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苦情内容 | 中華めんにカレー粉をまぶして炒めたところ、めんが赤橙色になった。 | |
再現画像 | ||
画像説明 | 左:対照 右:カレー粉をふりかけためん | 左:中性のターメリック溶液 右:塩基性のターメリック溶液 |
再現条件 | 中華めんにカレーパウダーをふりかけ、炒めて放置 | |
原因推定 | カレーパウダーの原材料であるターメリック(うこん)が中華めん中のかん水のアルカリ作用により赤橙色になった。ターメリックは酸性~中性域では黄色を、塩基性では赤褐色を呈する(右の画像を参照)。 | |
類似事例 | カレーうどんの赤変事例があり、重曹を加えて再現済み。 |
事例21 | お茶の赤変 |
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苦情内容 | お茶を冷まし、りんごを入れて放置したところ、赤くなった。 |
再現画像 | |
画像説明 | 左:対照 右:りんごを入れて1夜放置 |
再現条件 | 緑茶約5gを約300mlの熱湯で浸出して室温に戻した後、等分した一方にりんごの芯を入れて放置 |
原因推定 | 緑茶中のカテキン類がりんごのポリフェノールオキシダーゼにより酸化されてテアフラビン等の赤褐色色素に変化した。 |