○愛知県警察保護取扱規程の運用

令和3年10月1日

生人・地総・刑総発甲第158号

この度、愛知県警察保護取扱規程(昭和40年愛知県警察本部訓令第28号)の解釈及び運用上の留意事項を別記のとおり定めたので、その適正な運用に努められたい。

なお、愛知県警察保護取扱規程の制定(昭和40年防犯発甲第404号・務勤発甲第213号・刑庶発甲第255号)は、廃止する。

別記

第1 趣旨等

1 趣旨

この通達は、愛知県警察保護取扱規程(昭和40年愛知県警察本部訓令第28号。以下「規程」という。)に基づく保護の取扱いについて、その適正な運用を図るために必要な事項を定めるものとする。

2 定義

この通達における用語の意義は、規程に定めるところによる。

第2 解釈及び留意事項

1 第1章(総則)関係

(1) 第2条(心構え)関係

ア 保護は、警察官に義務付けられた重要な任務であり、かつ、人権に関わる措置であることを十分に認識して、これに当たること。

イ 被保護者の異状を速やかに発見し、的確な対応を行うため、被保護者に対する監視体制を確立すること。

ウ 泥酔者等について、保護を要すると判断したときは、人権侵害を引き起こすことのないように、誠意をもって対応すること。

エ 泥酔者等は、飲酒と併せて服毒していたり、交通事故の被害者となって頭部を損傷していたりする場合もあることから、被保護者の意識、顔色等の観察を徹底すること。この場合において、泥酔者等の異状を認めたときは、速やかに医師の診察を受けさせること。

なお、てんかん、脳いつ血等の病人は、泥酔者等と誤認しやすいため、安易に泥酔者等と決めつけて取り扱うことのないように注意すること。

オ 被保護者と被疑者との取扱いを明確に区別し、保護に名を借りて犯罪の捜査を行うことのないようにすること。また、保護を要すると認められる状態にある間は、被疑者であることが判明した場合であっても、原則としてその状態が解消するまでは、捜査手続を行わないこと。ただし、証拠の保全上、真にやむを得ない場合において、必要最小限度の措置を執ることまでも否定するものではない。

(2) 第4条(保護主任者)関係

ア 保護主任者が不在の場合においては、次に掲げる者(複数あるときは、上位に規定されている者)が保護主任者の職務を代行すること。

(ア) 執務時間(県の執務時間を定める規則(平成元年愛知県規則第82号)に規定する執務時間をいう。以下同じ。)

a 生活安全課の生活安全担当の課長代理

b 生活安全担当の警部補又は巡査部長の階級にある者

c 地域課(地域交通課を含む。以下同じ。)の警部補以上の階級にある者

(イ) 執務時間外

a 当番責任者等(愛知県警察処務規程(昭和51年愛知県警察本部訓令第6号)に規定する当番責任者、当直長及び統括責任者をいう。)

b 地域課の警部補以上の階級にある者

イ 保護主任者の職務を代行する者は、保護のために執った措置について、事後、速やかに保護主任者に報告して引き継ぐこと。

2 第2章(保護)関係

(1) 第5条(保護の着手)関係

ア 「取りあえず必要な措置」とは、次に掲げる措置をいう。

なお、保護を要する者であると認めた警察官は、必要な措置を講じた後、直ちに保護主任者に報告した上で、その後の取扱いについて指揮を受けること。ただし、取りあえず必要な措置を講じたことのみによって処理が完結した場合は、この限りでない。

(ア) 交番又は病院に搬送するなどの応急措置

(イ) 現場関係者からの事情聴取、現場における家族等への引渡し等の措置及びこれらに直結して行われる必要な措置

イ 取りあえず必要な措置のみによって処理が完結したときは、第17条の規定により作成する保護取扱報告書(様式第1)に必要事項を記載して、速やかに警察署長(以下「署長」という。)に報告すること。

ウ 自動車警ら隊、鉄道警察隊、機動捜査隊、第一交通機動隊、第二交通機動隊、高速道路交通警察隊及び機動隊(以下「本部執行隊」という。)の勤務員が被保護者を保護した場合における保護主任者は、保護に着手した場所を管轄する警察署の保護主任者とする。

エ 救急隊から保護の依頼を受けたときは、発見時の状況、医師の診察結果及び参考となる事項を聴取し、その内容を保護取扱報告書の参考事項欄に記載すること。

(2) 第6条(保護場所の指示等)関係

ア 保護主任者は、警察官から保護を行った旨の報告を受けたときは、被保護者の状況等を総合的に判断し、当該保護を行った警察官(以下「取扱警察官」という。)、保護を担当する係の警察官又は警察署当番員若しくは当直勤務員に指示し、次に掲げる措置を執ること。

(ア) 医師の診察及び治療措置に係る必要性の判断

(イ) 保護場所の決定及び収容

(ウ) 具体的な監視体制の確立

(エ) 被保護者の事故防止のための措置

(オ) 家族等へ引き渡すための調査及び手配

(カ) 引継ぎのための関係機関への連絡

イ 第6条の表に示した被保護者の区分に対応した保護場所は、あくまでも基準であることから、必ずしもこれにとらわれる必要はなく、警察署の保護室等以外の場所又は駅、民家等の警察施設以外の場所において保護することが適切であると認められるときは、当該場所において保護することができる。

なお、駅、民家等の警察施設以外の場所において保護するときは、必ずその管理者等の同意を得て行うこと。

ウ 身元不明の者を保護して病院等に収容するときは、可能な限り、引継ぎを行う保護機関に対して事前に連絡し、了解を得ておくこと。

(3) 第7条(保護主任者等の立会)関係

ア 保護に当たっては、原則として保護主任者が立ち会い、事故防止等を図ること。ただし、保護責任者が不在のときは、第2の1の(2)に定めるその職務を代行する者が立ち会うこと。

イ 第7条第2項の場合においては、保護主任者の指揮の下、必ず女性職員を立ち会わせ、危険物の確認等を行うこと。

(4) 第8条(身元の確認)関係

ア 身元の確認は、家族等への連絡のための目的の範囲内で行い、立会人を置き、被保護者の承諾を得た上で、その所持するかばん、衣服のネーム、衣服のポケット等に在中の運転免許証等から住所等を認知する程度にとどめること。

イ 被保護者が女性であるときは、女性職員を立会人とするように配意すること。

(5) 第9条(危険物等の保管)関係

ア 被保護者自身又は他人の生命、身体又は財産の保護のため、必要と認められる限度において、被保護者が危険物を所持しているかどうかを確認し、所持している場合においては、当該危険物の保管措置を講ずること。

イ 所持品の保管に当たっては、法令により所持を禁止されているものを除き、原則として被保護者から任意提出を受けて行うこと。

ウ 「危険物」とは、おおむね次に掲げる物件であるが、被保護者を保護室等に収容する場合においては、ベルト、ネクタイ等のひも類、時計、指輪、ヘアピン等の金属類等もこれに含まれる。

(ア) 毒物、劇物、刃物その他生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある物

(イ) 爆発物、油類、マッチ、ライターその他火災等の発生原因となる物

エ 危険物等を警察の施設内で保管するときは、施錠設備のある場所において保管すること。

オ 立会人については、(4)のウと同様の配意をすること。

カ 危険物等を保管するときは、保護取扱報告書の保管金品の内訳欄に品名、数量等の必要事項を記入し、立会人の確認を得て、確実な保管管理に努めること。

キ 危険物等の保管、返還その他の取扱いについては、可能な限り被保護者の面前において品名及び数量を点検するなど、その取扱いに疑惑を抱かせることのないように留意すること。この場合において、保護室等において点検するときは、必ず保護主任者の立会いの下でこれを行うこと。

ク 少年が所持する危険物その他所持することが不適切な物件については、愛知県少年警察活動規程(平成14年愛知県警察本部訓令第26号)に定めるところにより処理すること。

(6) 第10条(危険防止の措置)関係

ア 精神錯乱又は泥酔若しくはめいていのため、正常な精神状態でなく、放置すれば、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれがあるときは、危害を防止して適切にその者を保護するため、真にやむを得ないと認められる限度で、危険な行動を抑止するための措置を講ずること。

イ 「行動を抑止するための手段」とは、本人の暴行を抑止するために、被保護者の腕、肩等を押さえるなど、直接身体の行動を制限する手段をいい、必要により保護バンド及び保護衣(以下「保護具」という。)又は手錠等の戒具を使用することができる。ただし、手錠は被疑者に使用するものであることから、その使用は真にやむを得ない場合に限られるのはもちろんのこと、被保護者が負傷等をすることのないように十分配意するとともに、可能な限り、衆目に触れないような措置を執ること。

ウ 保護具又は手錠等の戒具を使用したときは、保護取扱報告書の保護具等の使用状況欄に保護具又は手錠等の戒具の種別、取扱者、立会人、使用時間及び使用に至った経緯を記載すること。

エ 警職法第3条第1項第1号又はめいてい者規制法第3条第1項の被保護者を保護室において保護するときは、被保護者の危害防止のため、被保護者が保護室を離れないように、保護室に一時的に掛け金、留め金等を使用することができる。

(7) 第11条(異状を発見した場合の措置)関係

ア 「異状」とは、服毒、病気、自傷行為等、直接被保護者の身体に係るものはもとより、犯罪事実の発覚、保護室等の破損、危険物又は所持禁止物品の発見等、被保護者を保護する過程において、社会通念上問題と認められるような状態を広く指す。

イ 「重大な事案」とは、被保護者の自殺、病気による死亡、保護取扱い中の事故による死傷(擦過傷程度のものは含まない。)又は保護室等の火災をいう。

なお、地震、風水害、火災その他の非常事態によって被保護者を避難させた場合においても、警察本部長に報告(人身安全対策課長経由)すること。

(8) 第12条(保護の解除)関係

ア 被保護者の「保護の解除」とは、次に掲げる場合をいう。

なお、(イ)により被保護者を関係機関に引き継いだ後、当該機関から身元の確認等について協力依頼があったときは、可能な限りの協力をすること。

(ア) 家族、知人その他の関係者(被保護者について責任を有する立場にある者をいう。)に引き渡した場合

(イ) 関係機関へ引き継いだ場合

(ウ) 保護の必要がなくなった場合

イ 保護の期間は、第13条の保護許可状が発せられた場合を除き、保護に着手した時点から24時間を超えてはならない。

なお、この期間は、保護することのできる最大限の時間を示したものであるから、泥酔者等が酔いから覚めて正常な精神状態になった場合等には、即刻その保護を解除すること。

ウ 被保護者を家族等に引き渡し、又は関係機関に引き継いで保護を解除したときは、保護取扱報告書の身柄の措置欄に、被保護者を直接引き渡した家族等又は引き継いだ関係機関の担当者の署名を得て、身柄の措置状況を明らかにしておくこと。

なお、身元の判明しない被保護者を関係機関に引き継ぐときは、当該関係機関に対して引継(通報)(様式第2)を交付すること。

3 第3章(関連事務)関係

(1) 第13条(許可状の請求)関係

24時間以内に保護を解除できないときは、保護を行った警察署の所在地を管轄する簡易裁判所に対して保護許可状請求書(様式第3)により保護許可状を請求し、保護許可状が発せられたときは、最初の24時間を含めて5日以内の期間内に限り、引き続き保護することができる。

この保護期間の延長は、被保護者の身柄の引取者が遠方等に所在し、引取りに長時間を要するなど、真にやむを得ない事情があると認められる場合に限り許可されるものである。よって、延長の期間は必要最小限度にとどめること。

また、この場合における保護許可状の請求権者は、原則として署長とすること。ただし、署長が不在等の場合においては、副署長又は保護主任者がこれに代わることができる。

(2) 第14条(簡易裁判所への通知)関係

警職法第3条第5項及びめいてい者規制法第3条第4項の規定による被保護者の簡易裁判所に対する通知義務の趣旨は、保護に関して警察による人権の侵害が行われないように簡易裁判所が関与するものである。よって、全ての被保護者について、被保護者通知書(様式第4)により確実に通知すること。

(3) 第15条(保健所長等への通報)関係

ア 署長は、保護活動はもとより、他の職務執行の過程において、精神障害のため、自傷又は他害のおそれのある者を発見したときは、精神保健福祉法第23条及び同法第51条の12第1項の規定に基づき、直ちにその旨を最寄りの保健所長を経て知事又は名古屋市長に通報すること。この場合において保護主任者は、引継(通報)書を速やかに作成し、最寄りの保健所長に通報すること。

なお、第15条後段の「緊急に措置しなければならないとき」とは、医療及び保護のため、通報の対象者を直ちに精神科病院等の医療機関に入院させなければ、その精神障害のために自身を傷つけ、又は他人に害を及ぼすおそれがあるときをいう。

イ 精神保健福祉法に基づく警察官による通報は、自傷又は他害のおそれのある精神障害者を早期に発見して医療措置を講ずることを目的とするものとされている。よって、その趣旨をよく理解し、これらの者の発見等に際しては、当該精神障害者の人権を侵害することのないように十分注意するとともに、日頃から迅速的確な措置を講ずることができるように保健所等の関係機関との連絡体制の確立に努めること。

ウ めいてい者規制法第7条の規定による通報は、保護しためいてい者のうち、アルコールの慢性中毒者又はその疑いのある者についてのみ、速やかに保健所長に対して行うこと。

4 第4章(児童の一時保護等)関係

(1) 第16条に規定する児童の一時保護等の措置は、警職法及びめいてい者規制法に定める保護とその根拠及び手続が異なるものの、これらの一時的な保護に際して必要とされる事項については、警職法及びめいてい者規制法の保護措置に準じた取扱いをすること。

(2) 一時保護をした児童、緊急同行した少年について、その性格、年齢等に鑑みて保護室等の雰囲気になじまない場合には、保護場所の選定に配意すること。

(3) 第16条第1項第3号から第8号までに掲げる者は、同行状、収容状等が執行されるまでの間、一時的に保護室等に収容することができるものであるが、いずれの場合においても逃走されないように十分注意すること。

(4) 精神保健福祉法第39条第1項の規定に基づき、精神科病院の管理者から精神障害者の捜索依頼がなされたときは、行方不明者届を受理し、その発見に努めること。

なお、捜索を求められた精神障害者を発見したときは、行方不明者届を受理した警察署を経由して、依頼を行った精神科病院の管理者に対して発見した旨を通知し、引取りに来るまでの間、24時間に限り保護することができる。

5 第5章(雑則)関係

(1) 第17条(保護取扱報告書等の作成)関係

ア 保護取扱報告書は、取扱警察官が作成すること。

イ 取扱警察官は、被保護者を保護室等に収容するときは、直ちに保護取扱報告書を作成し、保護主任者に提出すること。この場合において、保護取扱報告書の提出を受けた保護主任者は、署長に報告すること。

なお、本部執行隊の勤務員が取扱警察官となったときの保護主任者については、第2の2の(1)のウにより保護に着手した場所を管轄する警察署の保護主任者となることに留意すること。

ウ 保護取扱報告書の提出を受けた保護主任者は、その内容を検討して補足記載を行うとともに、取扱警察官、保護を担当する係の警察官又は警察署当番員若しくは当直勤務員に対し、それぞれ所定の欄に必要事項の記載を行わせ、保護の状況を明らかにしておくこと。

エ 泥酔者等の保護時に作成した被保護者チェック票(様式第5)については、当該被保護者に係る保護取扱報告書に添付して保護主任者に提出するとともに、署長に報告すること。

オ 被保護者が負傷等をしていたときは、事後において抗議、訴訟事案等に発展するおそれがあることから、保護主任者は取扱警察官に対し、取扱状況及び関係者からの聴取事項を記録化させ、職務執行の正当性の確保に努めること。

(2) 第18条(報告)関係

ア 登録担当者(保護システム運用要綱の制定(平成19年生総・総情発甲第34号。以下「システム要綱」という。)に定める登録担当者をいう。)は、保護の取扱状況について、毎月10日までに前月分の保護取扱状況一覧表をシステム要綱に定める保護システムにより作成して署長に報告するとともに、保護取扱報告書の入力データを確認すること。

イ 第15条の規定に基づき保健所長等に通報したときは、被通報者、通報事由等について、その都度、通報結果報告書(様式第6)により人身安全対策課長に報告(行方不明・保護係経由)すること。

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愛知県警察保護取扱規程の運用

令和3年10月1日 生人・地総・刑総発甲第158号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
第4編 生活安全/第1章 生活安全/第3節
沿革情報
令和3年10月1日 生人・地総・刑総発甲第158号
令和4年6月30日 生少発甲第113号
令和5年3月17日 務警発甲第46号