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病害虫図鑑 チャトゲコナジラミ

ページID:0336824 掲載日:2021年4月1日更新 印刷ページ表示

学名 Aleurocanthus camelliae Kanmiya et Kasai

本種は当初、カンキツなどに寄生するミカントゲコナジラミAleurocanthus spiniferus (Quaintance)と同一種とされてきたが、形態や配偶時の振動信号等の詳細な比較や分子系統解析の結果等から2011年に新種記載された。

1 形態
 成虫の体長は雌1.3 mm、雄はそれよりやや小さく、体は橙黄色であるが白粉でおおわれる。前翅は紫褐色で不整形の白斑がある。卵は長さ約0.2 mmで勾玉状、短い卵柄がある。孵化幼虫は淡黄色で、定着すると光沢のある黒色になり、4齢を経て成虫になる。老齢幼虫は長さ約1.0 mmで、周囲と背面に多数の刺毛があり、周囲の白色ロウ物質が明瞭である。

2 被害の様子
 成虫及び幼虫によって葉が吸汁加害されるほか、幼虫の排泄物によるすす状障害が併発する。本種成虫が甚発すると作業者の口に入り込むなどして作業環境を著しく悪化させる。

3 生態
 本種は愛知県の平坦地では年3~4回程度発生し、成虫の発生時期は越冬世代が5月中旬、第1世代が7月中旬、第2世代が8月下旬から9月上旬頃、第3世代の成虫が10月中下旬とされている。主に3齢、4齢幼虫が越冬する。成虫の寿命は約4日間と短く、新葉の葉裏に産卵することが多い。

4 発生状況
・東アジアの熱帯域から温帯域にかけて広く分布し、中国や台湾等ではチャの重要害虫として挙げられている。
・国内では京都府、愛知県を始め36都府県で確認されている。
・愛知県では2010年に初めて確認され、翌年には県内の複数の茶産地で発生が確認された。主に尾張地域のサザンカ、ツバキ類、三河地域のチャなどで寄生が見られる。

5 防除対策
・葉裏や古葉に多く寄生することから農薬がかかりにくいため、徹底した防除が難しい。
・チャでは、卵、1、2齢幼虫の発生期に化学合成農薬を薬液が葉裏にかかるよう丁寧に散布する。なお、すそ部の葉裏に多く見られるため、散布前に整せん枝やすそ刈りなどを行うと効果的である。秋冬期にマシン油乳剤で防除すると効果的であるが、赤焼病が助長されることがあるため、幼木園や赤焼病が発生しやすい園では注意する。
・本種にはシルベストリコバチという天敵が知られている。この寄生蜂は本種の密度が増加するにつれ、ほ場に自然に侵入・定着する昆虫と考えられているため、影響の高い農薬はできるだけ使わないようにする。

チャトゲコナジラミ
   チャトゲコナジラミ

 

6 関連文献
・愛知県. 2010. 平成22年度病害虫発生予察特殊報第2号. 愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室.
・愛知県. 2016. 農業病害虫防除の手引2016. 愛知県農林水産局農政部農業経営課環境・植防グループ.
・井手康人. 2013. 茶の新害虫「チャトゲコナジラミ」の発生状況とその防除について. ネット農業あいち.
・Kanmiya K, Ueda S, Kasai A, Yamashita K, Sato Y & Yoshiyasu Y. 2011. Proposal of new specific status for tea-infesting populations of the nominal citrus spiny whitefly Aleurocanthus spiniferus (Homoptera: Aleyrodidae). Zootaxa 2797: 25-44.
・Han,B. and L. Cui. 2003. Natural population life table of citrus spiny whitefly (Aleurocanthus spinifeus) in tea garden. Acta Ecol. Sin. 23: 1781-1790.
・佐藤安志. 2013. チャトゲコナジラミの総合防除マニュアルの作成. 植物防疫67: 137-141.
・上杉龍士・佐藤安士. 2011. 日本に分布するミカントゲコナジラミ2系統におけるmtCOIの遺伝的差異. 日本応用動物昆虫学会誌55(3): 155-161.