ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > あいち病害虫情報 > 病害虫図鑑 ムギさび病

本文

病害虫図鑑 ムギさび病

ページID:0334553 掲載日:2021年4月1日更新 印刷ページ表示

1 病原菌
コムギ赤さび病 学名 Puccinia recondita Roberge ex Desmaziéres
オオムギ小さび病 学名 Puccinia hordei Otth
オオムギ黒さび病、コムギ黒さび病 学名 Puccinia graminis Persoon:Persoon subsp. graminis
オオムギ黄さび病、コムギ黄さび病 学名 Puccinia striiformis Westendorp var. striiformis(糸状菌 担子菌類)

2 被害の様子
 オオムギ、コムギのさび病には上記の4種類があり、さび病はその総称である。

[赤さび病]
 全国的に広く発生するさび病である。コムギ葉身上に赤褐色で粉状の病斑(夏胞子堆)ができる。赤褐色の粉末は夏胞子で、風によって飛散し、周辺のコムギに感染する。収穫期が近づいたころに夏胞子堆の周辺部の表皮化に黒色の病斑(冬胞子堆)が現れる。多発した場合、早期に茎葉が枯れあがり、穂数、一穂粒数の減少、粒重の低下をもたらし、20~30%の減収となる。

[小さび病、黒さび病、黄さび病]
 コムギ赤さび病と類似しているが、発生時期が異なっている。春になって最も早く発生するのが黄さび病で、小さび病は、赤さび病より、やや早い時期に発生が見られる。黒さび病の発生は遅く、ムギの成熟期近くに発生する。 
 オオムギ小さび病は、全国的に広く発生するが、黄さび病、黒さび病は年による発生量、発生地域の差が大きい。

3 病原菌の生態
[赤さび病]
 ムギでは夏胞子と冬胞子を形成する。夏胞子が発芽して侵入する適温は、18~25℃である。夏胞子は水滴に触れて発芽し、発芽管が気孔の上に到達するとその上に付着器をつくり、この直下から侵入菌糸を出して気孔から体内に侵入する。侵入した菌糸は、さらに寄主の細胞間隙をすすみ、細胞内に吸器を差し入れて栄養分を吸収し、生育を続ける。侵入してから8~10日後に夏胞子堆が形成され、そこから飛散した夏胞子は、さらに健全なムギを侵すことで蔓延する。また、こぼれムギに感染して夏を越し、秋に播種されたムギに感染する。そして夏胞子または体内で菌糸の形で越冬し、翌春の第一次伝染源となる。

[小さび病、黒さび病、黄さび病]
 赤さび病と共通している点が多いが、夏胞子が発芽して侵入する適温が異なる。黒さび病菌は、赤さび病菌と比較してやや高く、小さび病菌ではやや低い。また、黄さび病菌では、適温が10゜~15℃とかなり低く、25゜C以上になると発育しない。
 また、黄さび病は、一つの夏胞子から生じた菌糸が葉の中を縦に走り、すじ状に次々と夏胞子堆をつくるので、蔓延が非常に速い。
 黄さび病菌は、オオムギ菌とコムギ菌で生態種が異なり、オオムギ菌はコムギを侵さず、コムギ菌はオオムギを侵さない。

4 発生しやすい条件
・窒素過多のときに発生が多くなる。
・冬暖かく雨が多くて春分の日のムギの草丈が平年より高い年は、ムギが軟弱でさび病にかかりやすい状態にあり、また冬を越す菌の量も多いため多発の危険性が高くなる。

5 参考文献
・農業総覧 診断・防除編
・農業総覧 防除・資材編
・植物防疫 第73巻2号

コムギ赤さび病による茎葉の枯れあがり コムギ赤さび病夏胞子堆
  コムギ赤さび病による茎葉の枯れ上がり        コムギ赤さび病の夏胞子堆