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病害虫図鑑 トビイロウンカ

ページID:0334898 掲載日:2021年4月1日更新 印刷ページ表示

学名 Nilaparvata lugens Stål

1 形態
 本種成虫は長翅型と短翅型(ダンゴ)があり、飛来してくる成虫はすべて長翅型で、ほ場で増殖する雌は短翅型が多くなる傾向がある。成虫は油ぎった褐色をしており、体長は4~5mm程度。
 卵は長さ約1mmのバナナ型をしており、イネの葉鞘内に一列にまとめて産み付けられる。
 幼虫は俵型の黄褐色から黒褐色をした小さな虫で、イネの株元を集団で加害する。 

2 被害の様子
 長い口(口吻)をイネの導管や師管に直接差し込んで水分や栄養分を吸い取る。幼虫や短翅型成虫はあまり移動しないので、株当たりの寄生虫数が急激に増加し、特に出穂期以降多発するとほ場の一部が急激に萎凋して枯れるため、坪枯れと呼ばれる被害となる。本種は枯れたイネから隣のイネへ少しずつ移動するため、同心円状に枯れていき、ひどい場合はほ場全体が枯れる。
 本種は、海外飛来性害虫であり、本田に飛来する量は少量であると考えられている。したがって、本種による被害は、飛来世代や第1世代で出現することはほとんどなく、個体数が増加した第2世代または第3世代の幼虫や成虫によって起こる。 

3 生態
 トビイロウンカは、日本で越冬できないと考えられており、梅雨期にジェット気流に乗って中国大陸から飛来することがわかっている。日本に飛来後、世代を繰り返すたびに増殖する。このため、飛来する時期が早く、飛来数が多いほどその後の発生量が多くなる。
 トビイロウンカの翅型の決定は、成幼虫の密度や餌であるイネの栄養条件が関係することが知られており、成幼虫密度が低く、イネの栄養条件が良いほど短翅型が出現しやすくなる。短翅型が多いほど増殖率が高くなるため、ほ場に侵入した量が少なくても、大きな被害が出ることもある。なお、翅型の出現率には遺伝的な要因が関係することも知られており、成幼虫密度が高くても短翅型が多く出現する系統も報告されている。
 本種はもともと熱帯地域に生息しているので、一般的に温度が高いほど成育が早く、短期間で増殖を繰り返し、夏の気温の高い時期は1世代を繰り返すのに1か月もかからない。

4 防除対策
・発生量、発生地域は、本種の飛来状況次第であるため、飛来状況等の情報を把握し、防除の参考にする。
・薬剤防除として、長期間効果の持続する箱施薬剤が開発され、このような薬剤が施用されているほ場に早期にトビイロウンカの飛来があった場合は、高い防除効果が期待される。
・本種は主に株元に生息しているため、イネが繁茂している稲作中期以降は株元に薬剤が届くように散布することが重要である。
・なお、一部の有機リン系、ネオニコチノイド系薬剤の中に防除効果が低くなっているものもあるので、効果が高い薬剤を選択して使用することが重要である。

5 本県の発生状況
・例年、本県への飛来は7月上中旬くらいが多いが、ほ場で発生を確認しても坪枯れが出現するまでにいたらないことが多い。
・多発年の特徴としては飛来時期が早く、6月中旬までに飛来することが多い。

6 参考文献
・農業総覧 診断防除編
・グリーンレポート No,613(2020年7月号)
・蚕糸・昆虫バイオテック 第85巻 1号
 

トビイロウンカ成虫長翅型 トビイロウンカ
     トビイロウンカ成虫 長翅型            トビイロウンカ成虫短翅型

トビイロウンカによる坪枯れ トビイロウンカ密生状況
    トビイロウンカによる坪枯れ          株元に群がるトビイロウンカ