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病害虫図鑑 軟腐病(野菜共通)

ページID:0272987 掲載日:2020年4月1日更新 印刷ページ表示

1 病原菌
 学名 Erwinia carotovora subsp.carotovora (Jones) Bergey et al.(桿状細菌)

2 被害の様子
 多くの野菜に発生し、地上部及び地下部の新鮮な柔組織(果実、花、葉、茎、根など)に侵入、感染して被害を生じる。病斑部は、はじめ水浸状となり、これが次第に拡大し、軟化腐敗して、特有の悪臭を発するようになるため、他の病害との区別は比較的容易である。青枯病では導管部が侵されて萎凋するのに対し、本病では柔組織が侵され、トマトやピーマンでは茎の髄部が腐敗し、空洞化する。本病にごく軽度に罹病している株を気づかずに収穫、出荷すると、流通過程あるいは家庭で購入後に症状が急速に進展し、問題となる場合もある。
〔トマト・ピーマン〕 茎:髄部が腐敗、消失して倒伏、枯死し、悪臭を発する。収穫果の残存果柄、整枝時の傷などから感染する。果実:未熟果に被害が多い。外皮が半透明状から火ぶくれ状になり、やがて果肉も腐敗する(トマト)。内容が腐敗して外皮だけが残る。
〔メロン〕 管理作業時の傷などから感染し、一夜で茎が軟化腐敗する。      
〔ダイコン・カブ〕 幼苗は地際部が水浸状、葉柄も同様に軟化し、葉が黄化してしおれ、やがて枯死する。生育中は葉柄基部が汚白色、水浸状となり軟化腐敗する。この腐敗が次第に下方及び内部にすすみ、中心から腐敗して液状になり、悪臭を発する。葉は黄化し、軟化下垂するが、青枯れ症状は示さない。
〔ハクサイ〕 主として結球期以降に、地面に接した外葉の葉柄基部から発生し始め、次第に結球葉に至る。根頭部は外葉からしおれ、やがて株全体がしおれて引き抜けやすい。葉身では、水浸状の小病斑が拡大し、半透明・油浸状となるが、やがて全体が軟腐する。
〔カリフラワー〕 花蕾部に被害が多い。傷口、他病害による損傷、寒害などが誘引となる。
〔タマネギ・ネギ〕中・下位葉の葉鞘から葉身基部が軟化腐敗して倒伏する。やがて腐敗が鱗茎部に至り、球全体が腐敗する。
〔レタス〕 年明け(1~3月)どりでは結球部全体が黒色になって腐敗する。年内(11~12月)どりでは茎の髄部だけが腐敗、空洞化し、株全体に生気がなく、葉がしおれる。
〔ニンジン〕 葉柄や肥大根部が侵されて、軟化腐敗する。葉はしおれて下垂し、激発時には青枯れ症状を呈する。

3 病原菌の生態
 数種の細菌が軟腐症状を起こすが、最も主要なのはErwinia carotovora subsp.carotovora (Jones) Bergey et al. 桿状、大きさ0.8×1~3μm、2~10本の周毛を有し、グラム陰性菌。
 生育最適温度は30℃。最低0~2℃、最高約40℃。
 本菌は、裸地の自然土壌中では速やかに死滅する。それで、外見上病徴の認められないものも含めて、作物や雑草の根圏のような特定の場所で腐生的に生存を続け、罹病性の作物が作付されると、その根圏、外葉と土壌の接触部位、地表面、あるいは植物体の表面で増殖し、感染に必要な菌量に達すると、傷口、気孔、水孔などの自然開口部から侵入・感染して発病する。長い間、感受性の作物を栽培したことのないほ場でも、しばしば軟腐病が発生して、病原細菌が土壌中で長期間にわたり耐久生存しているように見えるのは、このためである。
伝染源:作物や雑草の根圏のような特定の場所で腐生的に生存。
寄主:多犯性。ナス科、アブラナ科、キク科、ユリ科、セリ科など30種前後に及ぶ。

4 発生しやすい条件
・比較的高温の時期に降雨が続く多湿条件下で多発する。
・夏に降雨の多い年や晩秋から冬にかけて温暖多雨な年には発生が多い。
・台風・豪雨などの後やスプリンクラーの水圧が強いときは、土とともに飛散した病原が作物の上部に付着するとともに、作物体に傷を生じ、侵入・感染しやすくなる。
・土壌水分の過剰、多肥も発生を助長する。
・害虫の食痕からも感染する。

5 防除対策
・ほ場の排水を良くし、特に雨水が停滞しないようにする。
・株間の通風を良くする(密植しない)。
・食葉、食根性の害虫を防除し、また管理作業時に作物体の損傷を少なくする。
・雨の日に収穫等の作業を行わない。
・窒素肥料の多用を避け、作物を軟弱にしない。
・罹病性作物の連作を避け、イネ科・マメ科などと輪作する。
・被害株は除去する。
・作型をずらす。
・予防散布を心がける。

ハクサイ軟腐病

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