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病害虫図鑑 マメハモグリバエ(全作物共通)

ページID:0272981 掲載日:2020年4月1日更新 印刷ページ表示

学名 Liriomyza trifolii  Burgess
 マメハモグリバエは北アメリカ原産であるが、1970年代以降世界各地に広く分布するようになった。この分布拡大の中心はアメリカのフロリダらしく、そこから出荷された花きや野菜の苗に本種が寄生していたと考えられる。しかもこの系統は殺虫剤抵抗性を獲得しており、アメリカばかりでなくアフリカやヨーロッパ諸国でも大問題となっている。我が国では1990年6月頃から静岡県西部地域を中心にハモグリバエが大発生し、キク、ガーベラ、セルリー、トマトなどに深刻な被害を与えた。愛知県でもほぼ時を同じくして大発生した。両県に発生したハモグリバエは同定の結果、新たに侵入した害虫マメハモグリバエであることが判明した。その後寄生苗の移動等により発生地域は急速に広まりわずか3年で28都府県に、初発生から7年経った1997年12月現在38都府県に発生が広がっている。愛知県内での発生地域は当初東三河地域が中心であったが、現在では全県下に発生がみられる。当初マメハモグリバエは1940年代に北海道で採集され、我が国にも生息していたとされていたが、最近それが別種と判明し、現在問題となっている本種は世界各地で問題となっている系統が侵入したものと考えられている。
 
1 形態及び生態
 成虫は体長約 2mm、頭部および胸部と腹部の側面は黄色、その他は黒色で光沢があり、複眼は赤紫色。雌成虫はよく発達した産卵管で葉面をせん孔して、にじみ出た汁液をなめたり、葉肉内に卵を産みつける。葉面にみられる小さな白点は、このような摂食・産卵痕である。雄成虫はやや小型で、活発に行動し、雌の摂食痕からにじみ出た汁液をなめたり、交尾したりする。成虫は色彩反応が認められ黄色に強く誘引されるほか、橙色、緑色などにも誘引される。卵は円筒形、半透明で大きさは0.2×0.1mmで肉眼では見えない。幼虫は黄色のウジで、葉に潜って葉肉組織を食害し、その跡が不規則な白い線となって残る。その際回転しながら進んでいくため濃緑色の糞がトンネル内の側壁に交互に線状となって残る。幼虫は3令を経過した後、葉内を脱出落下し土壌間隙で蛹化する。蛹は俵形、褐色で長さは約2mmである。産卵数は植物により違いがあり、キクでは300から400個、トマトでは50個程度である。卵から羽化までの生育所要日数は15℃で64日、20℃で30日、25℃で19日、30℃で16日であるが、幼虫期間は比較的短く25℃ではわずか4日で終了し、この間に激しく摂食し、体長はおよそ10倍となる。被害が急激に進展する原因のひとつである。なお、10℃以下35℃以上では生長できない。野外での年間の発生消長をみると、春先から徐々に密度が高まり、7月下旬から、8月下旬に大きなピークみられその後急激に密度をさげ冬期には発生密度は極端に下がる。越冬態は蛹が主体と考えられている。加温された施設内では周年発生し、年間15世代以上経過すると思われる。

2 寄主植物
 寄主範囲は極めて広く栽培作物ではダイズ、エンドウ、トマト、ナス、ジャガイモ、メロン、キュウリ、セルリー、ニンジン、キク、ガーベラ等で、キク科の雑草などにも寄生する。この中で特に、マメ科、セリ科、キク科の植物を好む。海外では21科 120種の植物に寄生することが知られ、我が国でもこれまでに12科60種以上の植物で寄生が確認されている。なおイネ科、バラ科、ヒルガオ科には寄生しない。

3 天敵
 寄生性天敵では寄生蜂が有力でヨーロッパではすでに数種の寄生蜂が防除目的に市販され、1998年1月にはヒメコバチとコマユバチを混合した製品が登録となった。また土着の有力な寄生蜂も見いだされているが、発生当初は爆発的に発生が拡大した本種もここ数年比較的低密度で推移しているのも、これらの寄生蜂が有効に働いているためと考えられている。また捕食性のカメムシ、クサカゲロウも知られている。

4 被害
 幼虫が葉肉組織を食害するため多発すると作物の生育が抑制されたり、下葉から枯れ上がることもある。キクなどの観賞用植物では成虫による摂食・産卵痕や幼虫の食害痕が残り、著しく商品価値が劣る。トマト、ナスの果菜類では花や果実には寄生しないため、よほどの多発生にならない限り実害は少ないが、
被害の進展が速いため発見が遅れると手遅れになる。

5 発生しやすい条件
・露地栽培の場合、寡雨が続くと多発しやすい。

6 防除対策
・育苗時に防虫ネットを張るなどして、寄生のない健康な苗を作る。
・被害葉は見つけ次第摘除し、ほ場から持ち出して処分する。初夏から秋口の気温があれば、被害 残さにすっぽりビニールをかけて蒸し込むことにより処理する方法もある。
・ほ場内や周辺の除草を徹底する。
・施設栽培では、施設開口部に防虫ネットを設置して侵入を防ぐ。
・早期発見に努め、密度の低いうちに薬剤防除する。早期発見には、黄色の粘着リボン等を使用し たモニタリングも有効である。
・作付終了後は施設を密閉して、蒸し込みを行う。
・作付前の土壌消毒は、土中に潜っている蛹に対して効果が高い。

ハモグリバエ幼虫による摂食痕

ハモグリバエ幼虫による摂食痕

ハモグリバエによる吸汁痕および産卵痕

ハモグリバエによる吸汁痕および産卵痕