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病害虫図鑑 ミカンキイロアザミウマ (全作物共通)

ページID:0272979 掲載日:2020年4月1日更新 印刷ページ表示

学名 Frankliniella occidentalis Pergande

1 形態
 雌成虫は体長1.4~1.7mm、体色は橙黄色であるが、冬期などの低温条件になると褐色の個体が増加する。雄成虫は、体長1.0~1.2mmと雌よりも小さく、体色は明黄色を呈している。卵は約0.3mmの白色のソラマメ型で、1齢幼虫は乳白色、2齢幼虫と前蛹、蛹は橙黄色を呈している。

2 被害の様子
 本県では1992年に東三河のバラで初めて発生が確認され、以来発生地域及び被害作物が依然として拡大している。欧米では多くの作物を加害し、寄主範囲は59科219種にも及ぶ。さらに、これらの系統は各種の殺虫剤に対して高度に抵抗性を発達させている。また、トマト黄化えそウイルス(TSWV)を媒介するため、特に施設の野菜や花き類の重要害虫となっている。

(1)花き類
 キク、バラ、カーネーション、トルコギキョウ、ガーベラ、シクラメンなど多くの花き類で被害が発生している。花き類では、幼虫や成虫の食害によって花弁や新葉に被害がでる。一般的に、花弁の被害はかすり状の斑点として現れるのが特徴で、植物の種類や花弁の色にもよるが、部分的に退色したり褐変して商品価値が低下する。シクラメンなどでは奇形花や開花しない場合も知られている。新葉の被害は萎縮が中心で、甚だしい場合は新芽が褐変することもある。着蕾前のキクの新芽に寄生すると展開中の新芽を食害して、芽の褐変やミナミキイロアザミウマの被害に似たケロイド状の傷が発生する。

(2)野菜類
 イチゴ、キュウリ、メロン、ナス、トマト、ピーマン、ホウレンソウ、レタスなど多くの果菜類、葉菜類に被害が発生している。イチゴでは、成虫や幼虫が花に多数寄生し、その加害によって花弁、やく基部、がくが褐変する。 種子周囲のくぼみや果実とがくの間に本種が寄生し、幼果の発育とともに果面の加害が進展する。被害は、初期には種子周囲のくぼみが褐変し、やがて果実の頂部や側部の一部が光沢のない黄色あるいは褐色となり、果肉の発育が阻害されるために種子が浮き出てくる。葉や芽にも寄生し、葉では葉脈間が食害されて白斑を生じ、さらに被害が進展すると黒褐色になる。トマトでは、本種の産卵により果実に白ぶくれ症が発生し、食害によりかすり状の白斑を生じる。葉では葉脈間が食害されて白斑を生じる。キュウリ、メロン、ナス、レタスでは、葉裏に寄生した成・幼虫によって葉脈間が食害され、白~黄色の斑紋となり、葉表からも目立つようになる。ピーマン、ホウレンソウでは本種が芽に寄生して、新芽が萎縮したり奇形となる。

(3)果樹
 ハウスミカンでは、果実の着色初期から果実への寄生が認められ、食害された部分は油胞を残してかすり状の白斑となる。被害は、程度の激しいものでは果頂から果実側面にかけて広範囲に発生し、程度が低いものでは部分的に発生する。これらはミカンハダニの被害によく似ているが、脱皮殻はなく、一か所にまとまって発生することはない。ブドウでは、本種の産卵により果実に白ぶくれ症が発生した例が知られているが、成熟すると目立たなくなる。

3 生態
 雌成虫は葉、花弁などの組織内に1個ずつ産卵し、孵化幼虫は花弁、新芽、新葉などに寄生し加害を始める。前蛹の時期が近づくと地表に移動し、土中、落葉中で蛹化するが、時には植物体の隙間でも蛹が見られる。前蛹と蛹の時期は食害せずあまり動かないが、羽化後成虫になると再び花弁、新芽、新葉などに寄生して加害を始め、産卵する。成虫は飛翔能力が低く、風に乗らない限り長距離を移動することはない。
 産卵から羽化するまでに要する期間は15℃で44日、20℃で21日、30℃で14日。成虫生存期間は15℃で70日、20℃で60日、30℃で30日。産卵前期間は20℃で3日。
 1雌当たりの産卵数は150~300個である。本種は花に多く寄生するが、その理由は、雌成虫が産卵のために花粉を必要とするためと考えられる。本種は耐寒性が強く、暖地では発生を繰り返しながら野外でも越冬する。また、本種はトマト黄化えそウイルス(TSWV)を伝搬し、キク、ガーベラ、トマト、ナス、ピーマン、マメ類などの作物で感染発病することが知られている。本種は白色、黄色、濃い青色などに誘引される。 

4 発生しやすい条件
・寡雨 

5 防除対策
・育苗時に防虫ネットを張るなどして、寄生のない健康な苗を作る。
・ほ場周辺の雑草を処理して、ほ場衛生に努める。
・施設栽培では、施設開口部に細かい目合いの防虫ネットを設置して侵入を防ぐ。
・早期発見に努め、密度の低いうちに薬剤防除する。
・作付終了後は施設を密閉して、蒸し込みを行う。

ミカンキイロアザミウマ被害

ミカンキイロアザミウマ