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病害虫図鑑 ミナミキイロアザミウマ(全作物共通)

ページID:0367071 掲載日:2021年11月4日更新 印刷ページ表示

学名 Thrips palmi Karny

1 形態
 雌成虫は体長1.0~1.1mm、体色は橙黄色。翅の縁毛が黒いため、翅をたたんだ時に合わせ目が背中に黒い筋として見える。雄は雌より小型で体色が薄い。卵は長径0.3mm程度のソラマメ型で半透明。ふ化直後の1齢幼虫の体色は薄い乳白色で目立たず、複眼は小さく赤色。2齢幼虫になると体色がレモン色になる。前蛹になると体色が黄色みを増して、触角が上方へ直立し、複眼が大きくなり、将来翅となる翅芽が認められるようになる。蛹はさらに黄色みを増して、触角が頭部に沿って後方に伸び、翅芽は長くなる。

2 被害の様子
 寄主作物はナス科、ウリ科、キク科など22科79種に及んでいる。中でもナス、ピーマン、キュウリ、メロン、ホウレンソウ、キクなどで被害が大きい。また、キュウリ、メロン、ニガウリなどでは、黄化えそ病の病原であるメロン黄化えそウイルス(MYSV)を媒介する。
 本種は食葉性であるが、心葉や子房、果実のがく部の内側にも好んで寄生する。アザミウマ類は口針を使って表皮に穴をあけ、唾液を注入して中の組織を破壊し吸汁する。そのため被害症状は加害部位により異なり、未展開葉ではその後十分に展開せず萎縮葉になったり、一部がひきつり奇形葉になる。展開葉では中の組織が破壊吸汁されるため残された表皮がレンズの役目をして、その下の空隙が銀白色に光って見えるシルバリング(銀葉化)を呈する。
 果実ではがくとの間に入り果皮を食害するため、果実の生長に伴って加害部位が縦線状や不規則な形の傷となったり、ひどい場合は裂果となる。
 ナスでは主な寄生部位は葉で、始めは葉裏に吸汁によるシルバリングが起こる。生息密度が高まると葉表の、主に葉脈沿いにかすり状の被害がみられるようになる。果実の被害もほぼ同時進行して褐色の線状の傷がみられるようになるが、ナスでは1葉当たり0.5頭程度でも10%程度の果実が出荷不能となり、低密度で被害が出やすい。
 メロンやキュウリでも主に葉に寄生するが、果実の被害は比較的高密度にならないと発現しない。しかし、ウリ科植物は本種の増殖に適しており、防除が遅れると急激に密度が増して株が枯死することもまれではない。
 ホウレンソウやキクでは心葉に寄生するため、展開葉に萎縮、奇形、ケロイド状の被害が現れる。これは本種が低密度でも発生しやすく、防除困難の要因になっている。

3 生態
 雌成虫は新芽や葉などの組織内に1個ずつ産卵する。卵は受精していると雌、受精していなければ雄が出現する。孵化幼虫はすぐ新芽、葉などを加害し始める。2齢幼虫になると食害量が増加する。主に土中で蛹化するが、植物体の隙間からも蛹は見つかる。前蛹と蛹の時期は食害せずあまり動かない。増殖に適したキュウリの場合、産卵から羽化するまでの期間は15℃で45日、20℃で25日、25℃で14日、30℃で11日。成虫生存期間は15℃で45日、20℃で37日、25℃で27日、30℃で18日。1雌当たりの産卵数は約100個である。これらをミカンキイロアザミウマと比較すると、低温域では発育が遅いが、高温域では発育が速くなる。寿命は短く、産卵数も少ない。本種は熱帯地域が原産で、日本では南西諸島以外の露地では越冬不可能である。九州以北では主に加温施設で越冬するが、一部は無加温施設でも越冬する。成虫は色彩反応を示し、近紫外線波長を吸収する白や青などに誘引される。

4 発生しやすい条件
・寡雨

5 防除対策
・育苗時に防虫ネットを張るなどして、寄生のない健康な苗を作る。
・ほ場周辺の雑草を処理して、ほ場衛生に努める。
・ポリマルチなどで土壌表面を覆い、土中に潜って蛹になりにくくする。特にシルバーポリマルチは、発生を抑制する。
・施設栽培では、施設開口部に細かい目合いの防虫ネットを設置して侵入を防ぐ。
・早期発見に努め、密度の低いうちに薬剤防除する。早期発見には、こまめなほ場の観察のほか青や白の粘着板によるモニタリングも有効である。
・作付終了後は施設を密閉して、蒸し込みを行う。

ミナミキイロアザミウマによる加害
ミナミキイロアザミウマによる加害

ミナミキイロアザミウマ成虫

ミナミキイロアザミウマ成虫