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病害虫図鑑 ツマジロクサヨトウ(全作物共通)

ページID:0346182 掲載日:2021年5月26日更新 印刷ページ表示

学名 Spodoptera frugiperda (J. E. Smith)

1 形態
 成虫雄の開張は約37mm、雌は38mm。雄の前翅は地色が褐色で、中央付近に斜めの淡色紋、翅頂に逆三角形の白色紋がある。雌の前翅は全体が灰褐色で斑紋は不明瞭。環状紋は長円形で紋の内部は灰褐色。雌雄とも、後翅は白色で翅脈は外縁付近のみ黒く染まる。終齢幼虫の体長は約40mm。頭部から前胸にかけて淡褐色の網目模様があり、正面から見ると淡色の「逆Y字」の紋がある。背面の刺毛基板は褐色~黒色で目立ち、特に腹部後方では大きく、よく目立つ。体色には変異があり、淡黒緑色から淡緑色まで様々である。

2 被害の様子
 国内における幼虫の寄生はサトウキビ、飼料用トウモロコシ、スイートコーン、ソルガムに限られるが、その他のイネ科、アブラナ科、ウリ科、キク科、ナス科、ナデシコ科、ヒルガオ科、マメ科など広範囲の作物に寄生することが知られている。トウモロコシでは孵化幼虫は葉の裏面を食害し、片側の表皮が白く残る加害痕を示す。その後、茎頂部の葉を食害し茎内に食入する。本虫は柔らかい葉を好んで食害する傾向があり、生育初期に加害されると甚大な被害が生じる。

3 生態
 暖地に適応した種で、熱帯では年4~6世代発生する。亜熱帯や熱帯を除く地域では越冬することができない。本種の卵期間は3~5日、幼虫の期間は14~21 日であり、6齢を経過して蛹化する。蛹化は土中で行われ、蛹期間は9~13 日である。成虫は平均12~14日生存する。卵は 100~200 個の卵塊で産卵され、生涯産卵数は平均 1,500 個である。成虫は長距離飛翔が可能で、1晩で最大100km 移動することもある。

4 発生状況
・2020年に国内では、沖縄県から北海道まで42道府県で発生が確認された。
・愛知県では、2019年に侵入警戒のため東三河地域に設置したフェロモントラップ(9月26 日設置、10 月8 日回収)において、初めてツマジロクサヨトウ雄成虫が捕獲された。同年、11 月1日にはトラップが設置されていた知多地域の周辺に栽培されている飼料用トウモロコシを調査し、ツマジロクサヨトウの幼虫を採取した。
・2020年7月7日、知多地域に設置したフェロモントラップにおいて、ツマジロクサヨトウ雄成虫の誘殺を確認した。同年、8月26 日、海部地域の複数の飼料用トウモロコシ栽培ほ場で幼虫の寄生及び食害を確認し、その後、尾張及び知多地域の飼料用トウモロコシでも幼虫の寄生を確認した。

5 防除対策
・国内では幼虫が飼料用トウモロコシ、スイートコーン、ソルガムで多く見つかることから、これらの作物については特にほ場を見回り、早期発見に努める。特に、飼料用トウモロコシとソルガムでは、薬剤防除を積極的に行わないので注意する。
・使用できる農薬については、農林水産省HPを参照すること。

6 関連文献
愛知県. 2019. 令和元年度病害虫発生予察特殊報第1号. 愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室.
愛知県. 2019. 令和元年度病害虫発生予察特殊報第2号. 愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室.
愛知県. 2020. ツマジロクサヨトウ情報第2号. 愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室.
松村正哉・大塚彰・吉松慎一. 2019. ツマジロクサヨトウの中国における分布拡大と日本への侵入警戒. 植物防疫7: 28-32.
農林水産省. ツマジロクサヨトウに関する情報. https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/tumajiro.html

ツマジロクサヨトウ幼虫 
  ツマジロクサヨトウ幼虫

 飼料用トウモロコシにおけるツマジロクサヨトウ食害
ツマジロクサヨトウによる飼料用トウモロコシの食害