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野菜、花き類を加害するハダニの主要種はナミハダニ(学名 Tetranychus urticae Koch) とカンザワハダニ(学名 Tetranychus kanzawai Kishida) の2種である。
1 形態
卵は直径約0.1mmの球形で、産卵当初はほとんど透明であるが、孵化直前になると淡赤色に変わる。幼虫は体長約0.2mm、ほぼ円形で脚は3対である。成虫の脚は雌雄ともに4対である。ナミハダニには黄緑型と赤色型があり、前者には夏型雌(淡黄~淡黄緑色、一般に胴部に大きい2黒紋を持つ)と休眠雌(淡橙色、黒紋を欠く)がある。後者は常時赤色である。体長は雌が約0.6mm、雄が約0.4mmである。赤色型は最近までニセナミハダニと呼ばれていたが、黄緑のナミハダニとの間に遺伝子交流があることから、現在ではナミハダニと同種とする意見が強い。カンザワハダニの夏型雌はくすんだ赤色で、体側に不規則な暗色部を持ち、休眠雌は一様な朱色を呈する。雌成虫は体長約0.4mm、赤色又は濃赤色で楕円形、雄成虫は体長約0.3mm、淡赤色又は淡黄赤色である。
2 被害の様子
ハダニは、寄生部位での密度が高まると順次上位葉に移動していくが、高温、乾燥などの適した条件では急速に株全体に広がる。ダニは作物の組織内を口器で破壊し吸汁するので、小さな白斑が点々とできてかすり状になる。ハダニの密度が高まると茎葉の伸長が悪く、株がすくんだようになる。作物によっては落葉したり、葉の枯上がりや、まれに株の枯死も見られる。株全体に密度が高まると雌成虫が株の上部に移動し、葉や花の周囲に糸を張って動き回り、ついには葉先にハダニの塊ができる。ハダニ密度が過飽和状態になるとハダニの移動性が高まり、歩行や風による飛散、管理作業者への付着などによる移動が頻繁に行われ、未発生地へも広がっていく。
3 生態
ハダニ類は25~28℃くらいの温度で乾燥した状態であると、卵期間2~3日、幼虫~若虫期間6~7日で成虫になる。卵から孵化した個体が幼虫、脱皮をして第1若虫、第2若虫を経て成虫となる。各ステージの間には静止期があり、この期間は活動を休止する。ナミハダニはほ場における優先種となっている場合が多く、薬剤に対して抵抗性の発現がみられ、そのレベルも他のハダニ類よりも高い。本種は本来冬期に休眠性を有するが、近年暖地のものでは休眠しない場合が多くなっている。また、カンザワハダニに比べて低温時の産卵数が多く、冬期には他種に比べて発生が多い。
4 発生しやすい条件
・寡雨
5 防除対策
・多発すると防除が困難になるので、早期発見に努めて寄生密度の低い間に薬剤防除する。
・かけむらの無いよう丁寧に散布する。
ナミハダニ ナミハダニ幼虫
カンザワハダニ
ハダニに加害された葉