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小宮山宏(株)三菱総合研究所理事長との対談(1月20日)

ページID:0386013 掲載日:2022年3月24日更新 印刷ページ表示

小宮山宏(株)三菱総合研究所理事長との対談

   昨年の東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故を契機に日本のエネルギー政策は見直しが求められています。この地域のエネルギーをめぐる状況も、浜岡原発の停止により一変しました。小宮山宏(株)三菱総合研究所理事長との対談
  愛知県では、新たに、「省エネ」、「新エネ」、「研究開発」を3本柱とするエネルギー政策の展開方向についての取りまとめを進めています。
  去る1月20日、今後のエネルギー政策について、大村秀章知事と株式会社三菱総合研究所の小宮山宏理事長(東京大学総長顧問)が、愛知県公館で対談を行いました。

大村知事 昨年は、3月の東日本大震災、それに伴う福島第一原発の事故が起こり、それを受けて、ここ愛知・中部地域では、5月6日に、ほかの地域と違って、まず、浜岡原発の停止要請から始まりました。ちょうど連休の谷間でしたが、私は、連休の後半には職員を集めて、県として初めて、連休直後に電力・エネルギー対策本部を立ち上げました。
  今まで、考えてみれば県政にエネルギー部門はありませんでした。基本、電力会社が、各地域の電力安定供給に責任を持つという体制でした。それで、これは大変だということで、電力・エネルギー対策本部を立ち上げて、中部電力さんと意見交換し、県内の経済界、労働界も全部集めて意見交換し、5月の連休直後から、この夏は大変だから備えようと、ずっとやってきました。もちろん、すぐに当時の海江田経産大臣に対して、とにかく安定供給してもらわないと困るということを要請し、また、菅総理からも直接電話がかかってきたので、とにかく安定供給してもらわないと困りますと、申し上げてきました。というのは、愛知県及び東海地域、この中部電力管内は日本一のモノづくりの地域で、利用比率も、普通は産業部門が4でそれ以外が6くらいですけれど、この地域はほぼ5:5です。やっぱり産業が非常に多いです。
  この地域の経済産業活動に支障が生じることは、日本経済はもとより、震災からの復興に非常に水を差すことになりますから、私は、菅総理にも、海江田大臣にも、「愛知県・中部の元気がなくなったら、日本は終わってしまいます。」と、いうことを申し上げましたら、「よくわかっています。安定供給は必ずやります。関西電力からも融通させます。」と、言っていたのですが、結局、1kWも来ず、逆に関西電力の方が苦しくなって、今はこちらから送っているくらいです。
   そういった状況を含め、今、国民の皆様の関心が電力始めエネルギーに向いていると思いますが、今後の電力政策、エネルギー政策の方向性全般について、先生のお考えをお聞きしたい。
小宮山理事長 私の元来の主張は、エネルギー政策で一番重要なのは、まず省エネ。エネルギー効率を上げて、快適にしていく。これが一番で、その次が、必要なエネルギーを何で供給するか。これを、原子力なのか火力なのか自然エネルギーなのかという議論はありますが、こういう順序だと思っています。
   省エネというのは、普通、エネルギーの議論、安定供給という話の中では抜けてしまいます。ところが、省エネぐらい大きな供給源はありません。私が言っている省エネというのは、「効率化」のことですが、二つだけ例を挙げさせていただきます。
  先程、利用比率が5:5とおっしゃいました。産業部門も、とにかくエネルギーが必要ですが、民生部門、家庭・オフィスが非常に大きいわけで、こちら側の例で二つ、冷蔵庫と暖房という具体的な例を挙げます。二つともエネルギー消費の大きいものです。日本の冷蔵庫は、この20年間で電力の消費量が1/5になっています。私は、13年前の冷蔵庫を買い替えました。そうすると、1年の電力消費が、私の場合、1/3になりました。電気代にすると1年で2万円減ったことになります。私は冷蔵庫を14万円で購入しましたから、7年で元が取れることになります。それで快適になります。快適とは、冷蔵庫は、買い替えると同じ場所に置きますから、外からみると同じ大きさなのですが、前のものは350リットルで、新しいものは430リットルになります。日本製のものは、断熱材が真空断熱材になっていますから。だから、効果が大きくてお金の元が取れて快適になる。これが省エネなのです。
  もう一つが、今、冬場にかけてのエネルギー危機の要因は、暖房です。世界で一番使っているエネルギーは暖房です。暖房というのは変な話で、寒いから暖房しているわけではなく、すでに暖かい部屋に熱を入れているのです。それは、切ると寒くなるからです。ここの窓ガラスは、一枚ガラスですよね。ここから熱がどんどん逃げていくから、結局、暖房は部屋の中を暖めているとみんな思っていますが、外を暖めているのです。断熱材のガラスの中には、間が真空のものがありますから、外に出て行く熱を原理的にはゼロにできます。そういうゼロにまでなり得るところに、一番大きなエネルギーを使っています。
  この冷蔵庫と暖房について、日本全国で今申し上げたことをやると、原子力発電所10基分くらいのエネルギーが減ります。暖房は、必ずしも電気だけではなく、灯油も使用しているので、必ず電気がいるわけではないのですが、エネルギーが原子力10基分、こんな大きなエネルギー源はありません。だから、一番重要なのは省エネです。これは、得をするのです。先程申し上げたように、お金の上でも経済的であって快適になるのです。この部屋でも、窓際のところに行ったら寒いです。それが、均一な温度になりますから。断熱をよくすると温度が均一になりますから、いいことばかりなのです。だからまず、いいことばかりで経済的な省エネ。これがともかく第一です。そのあとで、再生エネルギーとか、原子力をどれだけ維持していこうかという議論がありますが、省エネが一番重要なポイントだと思います。
大村知事 おっしゃるとおりです。そういう意味では、私も、去年の夏の電力需給の対応をどうするという話の時に、とにかく、必要以上に萎縮をして、あれもやめる、これもやめるとか、数値目標で何%カットするなんていうのはやめましょうと。中部電力管内は、原発は浜岡だけで、依存度が12%なので、やりくりすればなんとかなると考えました。ただ、1回発電した電気は、使わないと結局なくなるので、作った電気は、とにかく賢く使うと。私どもが夏に取り組んだのは、午後1時から4時のピークカットだけをすれば、夜とか普段は大丈夫。それも平日。去年の夏は、自動車産業が土日操業で木金を休みにしたものですから。
小宮山理事長 土日操業は、結局、どんな影響があったのですか。
大村知事 やはり、一つは、従業員の方々は子どもたちと遊べないとか、地域のいろんな夏の土日の行事が、お客さんは来ない、ボランティアは来ないと結構いろいろありました。あと、例えばトヨタ自動車さんなどの大手企業は、木金休んで土日に操業しても、その下のサプライヤーの部品の会社は、自動車だけでなく電気関連にも納品したりして、休みがなくなってしまいました。ですから、あまりにも社会全体に対する負荷が大きいので、次の夏はできないと言っています。いずれにしても、去年の夏は、平日の午後だけのピークカットということで、私は電力とかエネルギーを賢く使うスマートユース。とにかく、賢く使って省エネして夏を乗り切ろうということで取り組み、なんとか乗り切れたというふうに思っています。小宮山宏(株)三菱総合研究所理事長との対談
 あと、省エネということであれば、愛知県は何といっても自動車産業が一番メッカというか、中心地なので、我々が率先してエコカーの普及を応援していこうということで、去年の秋から年末にかけて、自動車減税の旗振りをやりました。その結果、エコカー減税の延長とか、エコカー補助金の3,000億円の実現につながりました。さらに、愛知県独自で、電気自動車やプラグインハイブリッド車について、自動車税の免除を、新年度から実施することにしまして、そういったところでしっかり後押ししようと考えています。
 省エネについて、さらに家庭はもちろん、産業界を含めて、こういったことでやっていくべきだということはありますか。
小宮山理事長 今申し上げた、断熱というのは、非常に大きいです。国も建築基準法で、断熱基準の義務化ということを本気で考え出しております。1999年に新基準を作ったのですが、世界はどんどん厳しくしています。断熱の基準といったものを厳しくして、今、2020年に義務化と言っていますが、私は、それでは遅い、もっと前倒ししてやれということを、政府にも十分言っております。そういうことをこの地域で、愛知あたりが、例えば、省エネ都市とか言ったりして引っ張っていただけるとありがたい。できるとなれば国も制度の後押しをしやすくなりますので、ぜひ引っ張っていただきたい。
   やはり、大事なのは家、ビル、それから、輸送です。この三つ、家庭とオフィスと輸送で、エネルギー消費の58%くらいです。先程5:5とおっしゃいましたけど、日本全体だと、6割ぐらいが民生側の使用です。モノづくりというのは40%くらい、せいぜい42%ぐらいです。こちらは、日本の産業の生命線だから、これは維持するとして、民生側に、それこそエコカーを導入したり、家やオフィスの断熱をよくしたりする。先程、冷蔵庫のことを申し上げましたが、エアコンも、この20年間で6割、電力消費が減っています。そういう、ざっと言うと10年使ったエアコンとか冷蔵庫とか古い家電製品、それから、古い照明を、効率のいい最新の蛍光灯、それからLEDですか、そういった日本が開発してきている先端製品、そういうものに置き替えていく。これが日本の産業を活性化させます。知事が今おっしゃった、エコカーですが、日本の自動車の販売台数は、GMに抜かれましたけど、やっぱり抜き返さなくちゃいけないですよね、世界のためにも。というのは、日本の車が売れれば省エネが進みますから。これを世界のためにもやらなくてはいけないので、ぜひ、県として引っ張っていただけると、国もやりやすくなるのではないですか。
大村知事 自動車の関係は、愛知県はなんといってもお膝元です。日本が作っているいろいろなエコカーは、技術は世界トップだと思いますから、まずは、我々地元が後押しをし、そして、世界へどんどん普及させていきたいと思います。それと、我々、地域から実践して、家とかビルとかオフィスとかで、省エネを進めていく。例えば、県有施設から、少し省エネ的なものを率先垂範で、これから取り組んでいこうかと思っております。新年度に、環境調査センター・衛生研究所の建替えに向けた調査の中で、先進的な新エネ・省エネ技術や、エネルギーを最適に管理するシステムの導入など、全国のモデルとなる施設とするための検討を行います。そこから広げて、地域ごとに省エネに取り組む。そういった仕組みを考えています。
小宮山理事長 それは素晴らしいことです。まずそういった取組をしていただいて、同時に新エネルギーをやっていくということです。
  新エネルギーについては、基本的に、エネルギーはどこからでも取れるのですが、意味のある大きさ、私は1%と言っていますが、1%のエネルギー供給は大きいです。21世紀の前半ぐらいに1%の規模までなりうる自然エネルギーというのは、五つしかありません。太陽光、風力、バイオマス、地熱、それから水力。この五つをどうやるかということで、それぞれ違うのですが、日本の地熱は、世界第3のポテンシャルがあり大きいです。ただ、愛知はないと思います。日本は、北海道と、東北の秋田と岩手の県境と、九州にあります。ですから、ちょっと愛知は違います。
  そうすると、水力は小さいのがありますが、主力は風力とバイオマスと太陽光です。バイオマスはですね、今、山に木を切りに行って、それを燃やすというバイオマスをやっても、経済的に成り立つわけがありません。だけれども、林業の復活。伺うところによると愛知も40%くらい森林があるということですが、日本全体で、林業を復活すると、雇用も猛烈に増えます。3%近い雇用があります。材木が成り立てば、製材のときに膨大なチップが出てきますから、これはタダに近いバイオマスです。これをやるということと、風力もありますけども、今おっしゃった県の施設という意味だと、やはり太陽電池だと思います。太陽電池は、今はまだ高いとか言われているのですが、実を言うと、パネルの値段と言うのは、パネル本体の値段と付帯工事の値段がありますが、7割ぐらいが付帯工事です。小宮山宏(株)三菱総合研究所理事長との対談キロワットあたり40万とか50万とか言っていますが、その7割が、50万だと8割が付帯工事です。これを大規模化すれば、結局人件費ですから、早く10倍くらいのサイズになれば、今の3倍くらいの人達の雇用が増えるということです。3倍くらいの人達が10倍くらいのものをつけるということになると、1戸あたりの価格は1/3になるわけです。これをどうやって加速するか。もちろん、太陽電池自体を安くするということはまだ進みます。日本は、他の国に比べて圧倒的に高いです。だから、設置について業者さんにうまくインセンティブを付けられたりして、マーケットを広げてやっていただくと、そっちの方が一遍に減っていきます。そうすれば、40万円というのが20万円になるのは、もう決して遠くない時代です。そのあたりをぜひ、先導していただきたいです。
大村知事 愛知県は、日照時間が非常に長く、だいたいベストテンに入っていて、昨年は7番目でした。それで、太陽光パネルの普及戸数は日本一です。国が補助金を廃止した時も、県独自の補助制度を堅持し、県内の市町村も実施してきました。今、累積の設置数は約6万3,800基で全国一となっています。この補助金は、ずっと続けていまして、毎年募集しますと、どこの自治体も必ず予算オーバーになります。そういう意味では、今後もナンバー1は続けていくと思いますが、2020年までに、設置数を40万基にしようと思っております。約6倍ですが、それは着々とやっていこうと思います。
 それと、メガソーラーですが、去年の10月に、知多半島の武豊町に、中部電力が7,500kWのメガソーラーを稼働させました。そして今度は、今年の秋頃から、東三河の渥美半島の田原市で、三井化学さんを中心として三井グループ6社が、82ヘクタール、50,000kWの日本一のメガソーラーを作ります。50,000kWのメガソーラーと風力で6,000kW。合わせて56,000kWの計画です。投資額が約180億円です。去年、決定しまして、今年の6月に着工して、来年の9月にオープンです。三井化学さんは、もともと土地を持っていまして、隣は、トヨタ自動車の田原工場があります。インフラの整備はできていますし、これを作りましたら、一般の方にも来てもらう。そういう実証実験もやりながら、そういうテーマパークみたいなのものをやりたいということです。
小宮山理事長 すばらしいですね。特にトヨタ自動車の工場が隣にあるということが。結局、太陽電池は、使うところで設置することが一番いいのです。そうすれば、送電線がいりませんから。だから、県の施設というのは一番良くて、屋根に付ければ使用しますので、そうすると送電線の問題がないですから。
大村知事 結局、電力というのは発電所で作っても送電線の方が、お金がかかって難しい。
小宮山理事長 そうです。だから、人里離れたところに作るというのは、コストがかかるのだけれども、今の事例は、たまたまトヨタの工場が横にあるわけですが、例えば、工業団地で誘致しても来ない工業団地というのは、日本中に山ほどあります。そういうところは、実は、送電線が来ているのです。そういうところを使えばいいと思っています。
大村知事 先生が先程、太陽光、風力、バイオマス、水力と言われましたが、愛知県は森林面積が40%くらいで、そして、平野が多くて大農業県なのです。
小宮山理事長 そうですか。じゃあ農業バイオマスですね。
大村知事 農業生産額が全国3番手。中部で一番多いんですよ。長野とか新潟よりもうちの方が多い。バイオマスは、農業残さがありますから、むしろそちらの方がですね、今は、いろんなところで研究をやっていますから。
小宮山理事長 バイオマスは、一番は燃やすことです。エタノールにするということもいいです。研究としてやっていくのはいいですけども、一番いいのは燃やすことです。バイオマスで何が問題かというと、集めることです。集まれば、同じ重さのバイオマスは、硫黄とか不純物が混ざっていないので、石炭より優れています。ですから、重油や石炭燃のボイラーがまだありますから、そういうところに農協さんに、例えばお米を持ってくる時に、一緒に麦わらも持ってきてくれれば、あとは20トントラックで運べば輸送もたいしたことありませんので、そういう収集のシステムを作っていただくというのが極めて重要です。
大村知事 愛知県は農業用水の密度が非常に高くて、農業用水を使った小水力発電を考えています。ポテンシャルは愛知県が日本一だといわれています。環境省が実施した調査では、農業用水の延長は全国3番目ですが、面積あたりの路線密度が日本一です。実は、過去に行っていた例がありまして、豊田市のトヨタ自動車の本社工場のすぐそばのところに明治用水の頭首工がありまして、そこから水を取って行っていました。昭和34年まで農業用水の水力発電を行っていましたが、伊勢湾台風で壊れてしまい、それ以来やめてしまいました。
小宮山理事長 巨大なシステムが動き出してしまったものだから、小さいものをやっている暇がないというか、やっているのがばかばかしい状況になったのだけれども、これからやっぱり変わると思いますよ。
大村知事 今度、それを復活させたいと考えておりまして、実は、耐震化工事を行う予定で、直轄事業でこれから実施設計を行うのですが、その中で小水力発電の導入検討を行う予定です。豊田の地に、農業用水の小水力を復活させようと思っています。
小宮山理事長 私は、今、東北のあちこちでお手伝いさせてもらっています。やはり東北の復興は、日本の再生のモデルだと思っているので、宮城県に入ったりしていますが、東北は、全体としてエネルギー移出地域になれると思っています。愛知県はどうでしょうか。やはり、工場が多く、大都市名古屋を持っているから、ちょっと無理かもしれませんけど、話を伺うとかなりそこに近いところにいくと思っていますが。
大村知事 愛知県はやはり名古屋の大都市があり、人口が740万人くらいいて、大産業県ですから、そういう意味ではエネルギーの大消費地で、ユーザーはすぐそばにいるわけです。ですから、エネルギーを作ってもユーザーがすぐそばにいて、運ぶ必要ないからポテンシャルはあると思っています。
小宮山理事長 もちろん、原子力をどうするかという問題がありますが、私は、2050年、今から40年くらい先には、我々が学校で習ったような、日本は天然資源がないから、資源を輸入し製品を輸出して金を稼ぐというモデルは成り立たなくなっていると思っています。2050年までに、例えば、今のエネルギーはもちろんですし、資源だって、鉄鉱石だってここ5年くらいで価格がどんどん高くなっています。資源も食糧も、鉱物資源も、木材も、全部高くなります。これを、輸入し続けるというモデルは、まず成り立たない。だから、私は、基本的に自給率7割と言っているのですが、日本全体で7割ぐらいのエネルギーを自給する。2050年になると、その主力は、やっぱり自然エネルギーです。それは十分できます。ただし、その時には省エネが相当進んでいて、今のエネルギー消費量の45%になっている。55%の省エネ。これも十分に可能です。これが私の30年来の主張です。要するに、省エネでエネルギー消費量を今の45%に減らして、現状のエネルギーの32%ぐらいを自給する。この中に原子力が多少入っていてもいいのですが、基本的には自然エネルギーで自給する。そうすると、70%くらいの自給率になります。これぐらいが日本のモデルだと、私は思います。そうすれば、高くなったガスや石油を買っても、3割ぐらいなら日本は十分やっていけると思います。そこら辺の日本のモデルを変えないといけないと思います。
大村知事 エネルギーの地産地消ということは必要です。我々愛知県は、とにかくユーザーでは、大都市があり産業がありますので、地域でエネルギーを自給して地産地消を目指してやっていきたいと思います。その意味でも、経済産業省が「次世代エネルギー社会システム実証」を、国内4地域のうちの一つとして豊田市で実施しています。県も一緒になって取り組んでいますが、そういったことも含めて、地産地消というものを目指してしっかりやっていきたいと考えています。
小宮山理事長 私は、プラチナ構想ネットワークを立ち上げて、今、104の自治体が参加し、大村知事にもお入りいただいているわけですが、豊田市も初期からのメンバーです。それで、私は、もちろん中央政府にしっかりしてもらわないといけないのですが、東京と名古屋は違うし、ましてや東北は違うように地域によって様々な形があり、中央だけでは難しくなっていると思います。ですから、それぞれの地域が、もっと活性化して、現場が動き出してそれと相乗作用で政府もやっていくという、相乗的な取組でないとダメだと思っています。ですから、ぜひ、プラチナ構想ネットワークに力を入れて、主力として引っ張っていただきたい。
大村知事 改めて、去年は大震災が起きたり、原発問題が起きたり、いろんなことが起きて、夏のエネルギー需給どうなるのかということがあって、皆さんがエネルギー問題に関心をもっていただいて、今の生活もライフスタイルも、それから日本の産業活動は、やはりエネルギー抜きでは語れないということは、みなさんよく分かっていただいています。特に、愛知県は日本一の産業集積がありますから。愛知県は、平成22年の製造品出荷額等が約38兆円です。国内の第2位の神奈川が約17兆円、第3位の静岡と大阪が約16兆円です。それだけ圧倒的な産業力を持っているので、エネルギーがないと、愛知県はやっていけません。
小宮山理事長 そうですよね。それはよくわかります。その時の鍵というのは省エネと新エネです。省エネのポイントは、私、市民大学なんかで話をしていてよく分かったのだけれど、一般の方々と話すと省エネというと、「がまん」なんです。私は、それ以来「がまん」と「効率化」と言っています。それで、技術系の人達と省エネについて話すと、ほとんど「効率化」です。「がまん」と「効率化」に分けて、やはり「がまん」はよくない、続かないと思います。愛知では臥薪嘗胆(がしんしょうたん)からスマート省エネへと言い始めているそうですね。つまり、先程言ったように、断熱をよくするとか、エコカーを買うとか、新しい冷蔵庫に替えるとか、そういう「効率化」でくらしを快適にしてエネルギー消費を減らす。これが本来の姿で、省エネなのです。それから。やはり新エネです。これは、みなさんがよくおっしゃっている話と同じなのですが、これを、どうやってピッチを上げていくか。自給率70%の国を2050年につくることを目指して、日本の製造業中心の発展の象徴みたいな地域の愛知県でやっていただくと。
大村知事 自給率70%って、今、現状からするとなんかすごい夢のような話ですが。
小宮山理事長 今は12、3%ですが、55%の省エネをする。これは、もうできます。やる気でやる。これをやれば、それだけでもって自給率が30%近くになります。これが一番大きいです。そこに、さらに太陽電池、風力、バイオマス、水力、地熱といったものを総動員していけば、自給率70%は、極めて合理的な目標値だというのが年来の主張になります。小宮山宏(株)三菱総合研究所理事長との対談
大村知事 私も、日本一の産業県の愛知だからこそ、エネルギー問題にしっかりと取り組んでいかなければと思っています。それは我々の宿命、使命だと思っています。
小宮山理事長 鉱物資源だってまったく同じことで、私は鉱物資源も70%と言っていますが、そのためにはリサイクルです。今、レアアースで脅かされていますが、ハイブリッド車1台に1キロのレアアースが載っています。ネオジムとジスプロシウムを合わせて。それは、必ずリサイクルで戻って来るわけです。2050年の自動車は、モーターはもちろん、全部ジスプロシウムとネオジムの入った一番いい磁石使っているに決まっていて、自動車は基本的にリサイクルされていますから。回せばいいわけです。そうしたらもう買う必要はありません。これが私の言う、鉱物資源70%の自給率の意味です。私は、70%の自給率が達成できないようだったら、日本は2050年にアクティブな国ではありえないと思っています。ありえないです。なんで価格が高くなるかというと、世界になくなるからです。しかもそれをやれば、世界のロールモデルになります。それが私の言っている「課題先進国」日本。自分の課題を解決すれば世界のロールモデルになれるという意味です。
大村知事 今日、先生にお時間いただいてエネルギーについてお話いただきました。最後に先生が言われたリサイクル産業も、名古屋の中区近辺とか南部の界わいに巨大なリサイクル産業群があります。リサイクル産業も、エネルギー産業も含めてですね、やはり、日本のトップを走っていけるように頑張っていきたいと思っています。またよろしくお願いします。今日はありがとうございました。