愛知県衛生研究所

「加工食品中に高濃度に含まれる農薬等の迅速検出法」が公示されました

2013年10月16日

平成20(2008)年1月に発覚した中国製冷凍ギョーザによる有機リン系農薬メタミドホスによる中毒事件を契機として、加工食品の安全性に対する関心が大きく高まったことから、同年、厚生労働省は、国立医薬品食品衛生研究所や当研究所などの研究機関の協力を得て、比較的毒性の高い農薬等の一斉分析法の開発に着手しました。そして、平成25(2013)年3月26日付け事務連絡により「加工食品中に高濃度に含まれる農薬等の迅速検出法」(厚生労働省/PDFファイル)が公示されました。

本迅速検出法の目的

本迅速検出法は、健康被害防止の観点から、加工食品中における通常よりも高濃度に含まれる農薬等の有無を迅速に判断することを目的としてします。迅速性(簡便性)を優先しているため、必ずしも個々の農薬等に対して適した検出法となっていない可能性もあるとして、得られた濃度は、食品衛生法の残留基準値への適合判定を目的とした試験に適用できないとされていますので、注意が必要です。

本迅速検出法の適用にあたって

今回の迅速検出法では、食品に含まれる農薬等の安全性評価に関わる一つの考え方で、急性毒性の指標である急性参照用量(ARfD、Acute Reference Dose:人が24時間または、それより短い時間の経口摂取によって、健康に影響を及ぼさないと推定される量)が考慮されていることが注目されます。一方、食品衛生法の残留基準値は、慢性毒性の指標である1日許容摂取量(ADI 、Acceptable Daily Intake:人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響を及ぼさないと判断される量)をもとに設定されています。

通常よりも高濃度として、有機リン系農薬トリアゾホスのARfDをもとに食品中の評価濃度0.1 mg/kg(ppm)以上が試算されました。すなわち、ARfDが示されている農薬等の中で最も小さな値であるトリアゾホスのARfD(0.001 mg/kg/日)を用いて、5〜6歳の子供(平均体重20 kg)が1回に200 gを食べた場合に、ARfDを超えない濃度として評価濃度0.1 mg/kgが試算され、本迅速検出法の適用にあたっては、0.1 mg/kgで必要な性能が得られるかどうかについて評価することとされています。

(評価濃度の試算)
[0.001 mg/kg体重]×[体重20 kg]÷[摂食量0.2 kg]= 0.1 mg/kg

なお、対象農薬等の毒性等に応じて評価濃度を変更することも可能とされています。

本迅速検出法の概略

3つの迅速検出法があり、いずれも加工食品から農薬等を、脱水剤である無水硫酸ナトリウムを加えて酢酸エチルで抽出し、脂質成分等を除去する精製操作を行ったのち、

により検出する方法が示されています。

LC-MS/MS
LC-MS/MS(液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計)

当研究所では、今後も厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所などの研究機関と連携して、食品に含まれる農薬等の分析法の開発を進めるとともに、広く県民の皆様に食の安全・安心に関する科学的情報を提供できるよう努力していきたいと考えています。