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愛知県の主張・取組

「分権時代における県の在り方検討委員会」フォローアップ会議結果概要

日時:平成18年1月23日(月)午後2時から5時15分まで
場所:愛知県自治センター 第五会議室(5階)
出席者:
  昇秀樹(名城大学都市情報学部教授)
  後房雄(名古屋大学大学院法学研究科教授)
  池上岳彦(立教大学経済学部教授)
  後藤澄江(日本福祉大学社会福祉学部教授)
  戸田敏行(社団法人東三河地域研究センター常務理事)

<文責 事務局>

1 開会・あいさつ

2 報告
  愛知県の地方分権の取組について

3 意見交換
(1)地方分権・道州制特別チームの検討内容について
(2)憲法問題について
(3)市町村自律支援プログラム(仮称)について
(4)今後の地方分権の推進方策について

●主な発言要旨(順不同)

○原則として、対人サービスは市町村、インフラなど対物サービスは道州というように、分かりやすく示していく必要がある。

○道州制になれば、州によって、ある州は北欧型の高負担高福祉、ある州はアアメリカ型の低負担低福祉というように、制度を選択することができる。

○国と道州の役割分担については、ヨーロッパを参考に、国防・外交・通貨などEU本部がやっているようなことは中央政府が、EU各国がやっているようなことは道州政府が行うというように考えれば、住民に分かりやすい。そこまで道州が強い権限をもてるかどうかは不明だが、最初から遠慮する必要はない。まずは言い値で交渉すべき。そこから調整していけば、ちょうどいいところに収まる。

○道州制は、最終的には中央政府が法律で決めることになるが、地方に意見を求められた場合に備えて、周りの県を巻き込んで、この地域でも、中部州あるいは東海州といった単位で議論しておくべきである。

○地方制度調査会に対しては、二元代表制だけでよいのかという点と、本当に県の区域は分割しないということでよいのかという点を、意見として述べてもいいのではないか。

○市場化テストが具体化するが、決定と実施の分離が進み、実施の部分が身軽になると、道州のあり方や市町村のあり方にも影響する。道州の制度設計においても、自治立法機能がより重要になる。市場化テストともからめて、道州制を議論すべきである。

○育児保険が話題になっているが、これまで専業主婦に対する子育て支援は、金にならないこともあり、一部のNPOを除きほとんど実施されていない。介護保険のように要保育度という考え方を取り入れ、バウチャー方式で支援する。バウチャーについては教育バウチャーという考え方もあり、こうした点も視野に入れて道州制を議論するとよい。

○今問題になっている建築確認について、国が制度をつくり、それに基づいて自治体や検査機関が検査をし、建設会社が建設している。最終的に誰が責任を負うのか難しい。住民は金を一番持っているところに責任を取ってもらいたいと考える。市場化テストなどでは、責任の分担を明確にしておく必要がある。

○地方制度調査会で、教育委員会の選択制が答申されたが、義務教育国庫負担金よりもずっと重い問題であろう。教育委員会は、中央集権、縦割り行政の代表のようなもの。選択性という考え方もあれば、逆に教育委員を全て公選制にするという考え方もある。道州制になれば、文部(科学)省は要るのか。国の仕事は、教科書検定と指導要領くらいでは。

○教育委員会の選択制は、教育行政を首長部局に取り込むかどうかということである。もともと今の教育委員会制度はアメリカのものを真似したものだが、アメリカでは委員は公選制。教育が首長部局へ移された場合、政治的中立性をどう担保するのかということが一番の問題。

○以前、愛知県の税制研究会で伊勢湾の水質保全のために課税自主権を使えないかという提案があったが、愛知県だけで導入してどうするのという話をした。課税自主権は各都道府県に与えられているので、県ごとにバラバラにやっている。道州になれば伊勢湾一帯の広域的な対応が可能になる。

○財政調整について、ヨーロッパ地方自治憲章では、課税権と財政調整権を規定している。カナダの憲法にも規定してある。徴税費用などの合理性、効率性を考えると、州と国の関係をどう考えるのかというのは課題である。日本では、国が立案・決定して地方はそれに従うということだが、連邦制では基本的には協定である。日本の交付税のように財政調整の計算は国でやって分配するというのは珍しい。道州制の場合、州ごとに独自に課税するというのが、日本に馴染むかどうかわからない。州間の調整と州内の市町村間の調整の二段階調整を考える必要がある。

○資格はほとんど国家による制度になっている。国が資格を決めたとしても、州のレベルで上乗せ資格を定めることがあってもよいのではないか。サービスの質の違いということで、州で特別資格を考えていくようなシステムがあってもよい。建築基準も、地震が多いところは厳しい基準にするなど、州によって違ってもよいのではないか。

○地域福祉の分野では、道州制になったらどうなるという議論は出ていない。県から市町村へという動き。それが進んだところが積極的と評価されており、千葉や熊本などが先進県と言われている。

○先日ある保育士育成機関に東海北陸厚生局が監査に来たが、こんなことは初めてだと言っていた。国の出先機関が存在意義を示そうとしているのではないか。

○最近よく言われる幼保一元化のようなものは、市町村レベル、県レベルの取組ではなかなか進展しない。道州制のようなブロック単位での取組なら、スムーズに進む可能性がある。

○広域自治体が県単位から道州単位になることによって、基礎自治体である市町村にとってどういうメリットがあるのかをはっきり示すべきである。広域的観点だけでなく、市町村や住民にメリットが生まれるテーマも打ち出していった方が、県民に分かりやすい。

○道州制の効果は、資源の有効利用という観点からみると分かりやすい。

○県境地域の問題は過疎問題と捉えられがちであるが、そうではなく、県が分かれ統一的な政策決定ができないことが最大の問題。観光など県境を越える分野別の計画はあるが、複合計画は一つもない。道州制の議論により、県境地域の議論がやや追い風になってきた。ただ、地域によっては、都道府県を割らないという道州の地域区分では、問題になる場合もある。

○東三河の市町村で、道州制への関心が高まっている。浜松の合併の影響があり、東三河はどうするというときに、道州制の中で考えるというスタンス。静岡は県として政令県構想を打ち出し、4つの地域ごとの合併や広域連合という姿を明示している。愛知はどうかということである。ただ、静岡の場合は静岡のことでだけ言えばよいが、愛知の場合は、岐阜、三重、静岡を含めたデザインを示すことが必要になり、その点で難しい。

○道州制の目的で、世界的な地域間競争に対応できる自立した地域づくりというのが気になっている。トヨタは、道州制というより官自体に期待するものはほとんど何もないと言っている。民間が、特に個々の企業が道州制にどういう魅力を感じるのか。経済団体が道州制を主張するのは、単純に合理化してほしいから。経済面でのメリットは何かを示す必要がある。

○道州制のメリットの1つは国土交通省行政に関するインフラである。海外では産業振興のために基盤を整備するが、日本は産業に特化せず総合的に基盤整備がなされる。トヨタも海外進出では道路整備を求めるが、国内は、あるものを使うというスタンス。今の制度でもできると思うが、道州制でははっきりする。

○もう1つは教育。地域に応じて州立大学の特性をどう持たせるのか、産業戦略としても重要ではないか。

○三河は一つと言う意見もあるが、実感としては西三河と東三河は違う。1970年と2000年で通勤通学の比較をしたことがあるが、愛知は名古屋圏が拡大し、東三河だけが独立するという結果だった。静岡は個々の単位が充実していった。個人的には東三河と西遠を一緒にした方がよい。

○「旧の国」の研究は非常にユニーク。「旧の国」の単位で現在のデータを分析したものは他に承知していない。時間差を加えると、より明確になるのではないか。

【憲法問題について】

○二元代表制はせめて憲法事項からは外し、選択できる制度とすべきである。二元代表制では、選挙が相乗りになりやすく、実質的に選挙が空洞化するという問題もある。

○知事が直接選挙されていることが地方自治にプラスという意見もあるが、現在の制度は議会調整に膨大なエネルギーを使っている。一度、議会対応にかかる時間・コストを計算し、それでも維持する価値があるか検討してはどうか。

○二元代表制については、皆が感じている本当の問題がまだ表に出ていないという気がする。

○イタリアでは、最近、国の制度が、比例代表で相対多数を取った政党に55%の議席を配分するという制度になった。議院内閣制であるが、各政党の名簿のトップに首相候補を載せることとなっており、議員の選挙であっても首長を選ぶことにつながっている。自治体レベルでは以前からそうなっている。

○政治や選挙に関心が低いのは、選挙の回数が多すぎるからではないか。都道府県知事、県議会議員、市町村長、市町村議会議員など地方だけで4回もある。回数が多すぎて、何の選挙かわからない。また、首長と議会のどちらが権限を持っていて、どれが重要なのかもわからない。仮に、道州の選挙が1回であれば、一大イベントとして大きな関心が持たれるのではないか。

【三位一体改革について】

○三位一体改革は、前年分を合わせた5.1兆円の補助金改革のうち、税源移譲は3兆円。差額の値切られた2兆円のうち、財務省に約1兆円削られ、交付金化等が1兆円。また、資料にある地方交付税の5.1兆円減というのは、地方にとって寂しい限りであるが、地方の行革によるスリム化や地方税収の増加により減ったもので、三位一体改革の成果というのはどうか。

○補助負担率の引き下げは、地方にとって何のメリットにもならない。前宮城県知事の浅野氏は、「ゼロよりも悪い。これなら(三位一体改革を)やらない方が良かった。」とも言っている。生活保護費なんかは、地方は要求していなかったものであり、国に押し付けられてしまった。

○義務教と生保で痛み分けという意見もあるが、生活保護や児童手当は所得保障であり、基本的には国の仕事。お金を配るのは国の仕事であり、介護とか医療とかのサービスの提供は地方の仕事であるべきである。今回の三位一体改革では、本来国の仕事であるべきものを地方に付け回している。今後の改革では、地方に移譲すべきものとして、施設整備であるとか社会サービスをこれからどうするのかということがテーマになる。

○三位一体改革が道州制にどうつながっていくのか、よく考えていく必要がある。

【市町村・住民自治について】

○市町村合併がある程度進んだが、合併後の市町村が基礎的自治体としてちゃんと機能するようにすべきである。同程度の規模の町村が一緒になったところが、課題が多い。人口が2万人くらいの規模の自治体と、6万人の所とでは、仕事のやり方が質的に違っているそうであるが、人が変わるわけではないので、合併した後の何年間かは、人材問題がネックになる。

○人材をうまく県とバーターしていく仕組みが必要ではないか。

○合併して住民との距離が遠くなったことへの対応として、地域自治区の制度が設けられたが、この仕組みをうまく使うことが重要である。機能している例として、新潟県の上越市では、14くらいの市町村が合併したが、反対もあったことから、旧市町村の枠組みを残すこととし、地域自治区の制度を導入した。しかも地域協議会の委員を選挙で選ぶこととした。多くの所では事前調整が行われたが、2〜3か所では実際に選挙が行われた。

○教育の分野では、市町村によっては、教育を充実したいと思っても、都道府県の関与が強いため、自由度が弱いと受け止めている。都道府県の権限を弱めてほしいという思いがある。

○アメリカでは学校単位の自治があり、学校評議会のようなところが権限を持っている。学校というのが一番自治の考えを理解しやすい。日本でも学校評議会はあるが、形式的な役割にとどまり決定権限がない。小学校区の住民が学校の運営に参加することになれば、教育委員会がうまく機能するようになるかもしれない。

○コミュニティの単位として、小・中学校区がどのように機能するのか。コミュニティの再生につながる可能性がある。

○昔は地域の人がお金を出し合って学校をつくったり、備品を買ったりした。名古屋市でも、特に昔からの地域で、学校と住民の結びつきが強いところが残っている。京都では、一度は少子化したが、町衆が小学校を大切にし、町の中に人が戻ってきた。また、教育投資を目的とする京都浪漫債を発行したが、すぐ完売した。

○古い時代には、地域の住民が学校を支えていたが、貧しかったという理由もある。負担をみんなに分割し、やむを得ず負担していた。その時代は、自分たちが決定することがないままで負担しており、そういう形では続いていかない。決定権限を行使するということで、負担と決定をセットにした仕組みを考えるべき。現在のPTAも、使われるためだけの組織になっている。
住民自治については、安心・安全という最近の課題もあり、表面的には、地域が重要だということは浸透している。事例を耳にすると、活発な地域があることも分かる。しかし、アンケート調査の結果等を見ると、町内会、自治会等の活動は減ってきているし、NPO活動に関心のある住民も、趣味的な活動であれば参加するが、ボランティアには関心がないという結果になっている。住民の主体性に任せるだけでは、住民自治の拡大は難しいのではないか。

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