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現在地 ホーム > あいち水循環再生基本構想 第2章 水循環の課題

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健全な水循環を目指して

第2章 水循環の課題

ページID:0264081 掲載日:2020年3月23日更新 印刷ページ表示

1.地域の概要

 愛知県は日本列島のほぼ中央にあり、三重、岐阜、長野、静岡の各県に隣接し、西端には木曽川、東端には天竜川が流れ、南は太平洋に面し、伊勢湾、三河湾に臨んでいます。
 本県西部の尾張地域には、木曽川によって造られた全国第2位の面積をもつ濃尾平野が広がり、その東側に尾張丘陵があり、丘陵から南に向かって知多半島が形成されています。
 また、中央部の西三河地域には、矢作川に沿って上流では三河山地が、下流には岡崎平野が形成されています。東部の東三河地域には、豊川に沿って上流では設楽山地などが、下流では豊橋平野が形成され、豊橋平野から西に向かって渥美半島が延びています。
 主な河川としては、尾張地域に木曽川や庄内川などがあり、これらは伊勢湾に、西三河地域には矢作川、東三河地域には豊川があり、いずれも三河湾に注いでいます。愛知県の海は、伊勢湾、三河湾、渥美外海に大きく分けられます。この内、伊勢湾、三河湾については、閉鎖性海域となっています。
 尾張地域は、平野部が大きく広がり、名古屋市を中心に市街化が進み、特に伊勢湾に面した地域は工場が集積しています。また、尾張地域は昭和30年代以降の急激な地下水揚水量の増加に伴い、地盤沈下が進行した地域となっています。この地域の森林や農地の占める割合は少ない状況にあります。
 西三河地域は、上流は山地となっていますが、中下流は、平野となり、市街地や農地、工場が広く分布しています。東三河地域は、上流の多くを山地が占め、下流は、農業地域が多くなっており、尾張地域や西三河地域に比べて都市域の面積は少ない状況にあります。この地域にある豊川の集水面積は狭く、水不足の起きやすい地域です。

図2-1-1愛知県の地形図

県全体の土地利用の状況については、次のとおりです。

2.土地利用の状況

 土地利用の状況は、地域によって特徴があり、尾張地域は他の地域と異なり、森林が少なく、住宅地や住宅地以外の宅地の割合が目立って高くなっています。
 西三河地域は、森林が約50%を占めており、続いて農地の占める割合が多くなっています。
 東三河地域は、森林の占める割合が約60%と大きく、それ以外の利用用途の割合は、県全体のものと比較すると小さくなっています。特に、住宅地や住宅地以外の宅地の占める割合が小さくなっています。

図2-2-1県全体の土地利用状況

県全体の土地利用状況です。

図2-2-2尾張地域の土地利用状況

尾張地域の土地利用状況です。

図2-2-3西三河地域の土地利用状況

西三河地域の土地利用状況です。

図2-2-4東三河地域の土地利用状況

東三河地域の土地利用状況です。

3.現状と課題

 水利用の状況や、森林や農地、都市などの土地利用形態などの変化は水循環に影響を及ぼし、水質汚濁や川などの流れの変化、野生生物の生息環境の劣化に伴う生物多様性の喪失、ふれあいや憩いの場としての身近な水辺の減少などの障害をもたらすこともあります。
 そこで、水利用や、水質、水量、生態系、水辺の観点から現状と課題を整理すると次のようになります。

図2-3-1水循環の課題

水循環の課題です。

(1)水利用

 近年における本県の水使用量は、年間約33億m3から36億m3で推移しています。
 用途別では農業用水が約50%、続いて生活用水の約30%、工業用水の約20%の順となっており、生活用水は、人口の増加などにより漸増しています。

図2-3-2水利用の状況

水利用の状況です。(愛知県水資源課調べ)

(2)水質

ア 汚濁負荷の排出

 川や海の汚れの原因となる汚濁負荷の排出状況については、下水道等の生活排水処理施設の整備や排水規制の強化などにより、伊勢湾に流入する汚れ(CODに係る汚濁負荷量)は、平成11年度には昭和54年度に比べて29%削減されています。
 しかし、伊勢湾に流入する汚れのうち生活排水の占める割合が57%と高く、その対策が重要となりますが、生活排水を処理する下水道や合併処理浄化槽等の普及率(汚水処理人口普及率)については、平成16年度末で75%と全国平均79%を下回っています。
 このように、生活排水対策がまだ十分でないことが、川や海の水質汚濁の一因ともなっています。

図2-3-3汚れ(COD汚濁負荷量)の排出

汚れ(COD汚濁負荷量)の排出にういての図です。(愛知県水大気環境課調べ)

図2-3-4汚水処理人口普及率の推移

汚水処理人口普及率の推移についての図です。(愛知県下水道課調べ)

イ 川や海などの汚れ

 河川における有機汚濁指標としてのBODの環境基準達成率は、県全体で見ると、平成16年度には90%と改善傾向にあるものの、都市とその周辺を流れる中小河川である矢田川上流、稗田川、鹿乗川などでは、環境基準を達成していません。
 湖沼である油ケ淵では、生活排水による汚濁負荷量の増加等が原因となって、以前から環境基準未達成の状況が続いています。
 これは、油ケ淵が閉鎖性水域であることや上流域の都市化が主な原因と考えられます。このため、昭和50年代まで盛んに営まれていた漁業も、現在は衰退の傾向にあります。
 海域における有機汚濁指標としてのCODの環境基準達成率は55%と低く、赤潮や苦潮の発生が見られます。
 さらに、地下水では、事業者の自主的調査や県の調査の結果、一部で有害物質濃度が環境基準を超過しています。

図2-3-5河川(BOD)及び海域(COD)の環境基準達成状況

河川(BOD)及び海域(COD)の環境基準達成状況についての図です。「公共用水域及び地下水の水質調査結果」(愛知県)より

図2-3-6環境基準適合状況(BOD、COD)(平成16年度)

環境基準適合状況(BOD、COD)(平成16年度)の図です。

図2-3-7伊勢湾・三河湾の赤潮・苦潮の発生状況

伊勢湾・三河湾の赤潮・苦潮の発生状況についての図です。

課題


・河川の水質汚濁により、利水障害が生じたり、川などの生態系が脆弱化するだけでなく、人を水辺から遠ざけるなど、人と水とのかかわりが大きく損われています。
・矢田川上流や稗田川、鹿乗川などの都市とその周辺の中小河川では、環境基準を達成していません。また、油ヶ淵でも環境基準未達成の状況が続いています。
・伊勢湾・三河湾では、赤潮の発生とともに、主として6月から10月にかけて、海底に堆積したプランクトンの死骸などの分解により貧酸素水塊が発生し、気象条件によっては沿岸域に達して苦潮となり、本県特産のアサリに被害が及ぶなど、水産業への影響も懸念されます。
 また、沿岸域ではアオサが異常に繁殖し、景観を大きく損なうとともに、悪臭を発生するなどその処理が問題となっているところもあります。

(3)水量

ア 森林の変化

 森林には、水源かん養や水質浄化、洪水緩和などといった機能があり、健全な水循環を維持する上で、重要な役割を果たしています。
 この森林の県土に占める割合は約40%ですが、平成16年度の森林面積は、昭和36年度に比べて約6%減少しています。

図2-3-8森林面積の推移

森林面積の推移の図です。
 地域別では、尾張地域において大きな森林面積の減少がみられ、1950年代(昭和30年代)から約40%減少しています。西三河地域や東三河地域では、森林面積はほぼ横ばいとなっています。

図2-3-9尾張地域の森林面積

尾張地域の森林面積
注)地域森林計画対象森林のみ「愛知県林業統計書」より
 かつて森林は、林業生産活動を通じて維持管理が行われてきましたが、近年の木材価格の低下による採算性の悪化などにより、生産活動が停滞し、森林の手入れ不足による整備の遅れが目立つようになってきています。

図2-3-10立木価格の推移

立木価格の推移
「林業の動き2005」(愛知県)より

課題

 森林の減少や手入れ不足による整備の遅れは、森林が本来持っている水源かん養などの機能を低下させるため、平常時においては、川へ供給される水の量が減少し、降雨時においては、短時間での出水により災害発生の可能性が高くなることが懸念されます。

イ 農地面積の推移

 農地は、地下水かん養や雨水貯留、動植物の生息空間、やすらぎの場の提供など健全な水循環を維持する上で多面的な機能をもっています。
 この農地(水田・畑)面積は、都市化の進展や農業の担い手不足などの変化により、1960年代(昭和40年代)と比べ、大幅に減少しています。
 特に地下水かん養や雨水貯留機能などの機能をもつ水田面積は、2003年度(平成15年度)では1970年度(昭和45年度)に比べて約70%と大きく減少しています。
 また、雨水貯留機能のほか生態系の保全や親水空間としての機能を持つ農業用のため池も減少しています。

図2-3-11農地(水田・畑)面積の推移

農地(水田・畑)面積の推移

課題

 水田面積の減少や農業用のため池の減少による、地下水のかん養機能や雨水貯留機能の低下は、平常時における川の流れを少なくする一因であり、降雨による一時的な出水の原因となります。
 特に自流水の少ない川や水路では、これらの機能の低下は水の流れへの影響がより大きくなります。

ウ 雨水不浸透面積の推移

 雨水が土に浸み込まない雨水不浸透面積の増加は、保水機能や地下水かん養機能の低下をもたらします。
 都市域の拡大に伴い、宅地や道路など雨水不浸透面積が増加しており、2003年度(平成15年度)には、1975年度(昭和50年度)に比べ、その面積は約40%増加しています。
 2003年度(平成15年度)における雨水不浸透面積を地域的にみると、尾張地域では全体の約50%と高い割合を占めており、続いて西三河地域や東三河地域では20%前後となっています。

図2-3-12雨水不浸透面積の推移

雨水不浸透面積の推移
(注)雨水不浸透面積は、住宅地、住宅地以外の宅地、道路、水面・河川・水路の面積の合計とした。「土地に関する統計年報」(愛知県)より

課題

 都市域における雨水不浸透面積の増加は、保水機能や地下水かん養機能の低下につながり、平常時に川の流れが少なくなるなどの影響が懸念されます。

エ 都市型水害の発生

 1969年(昭和44年)以降の本県における水害被害額を見ると、全国平均と比べて大きくなっており、平野部に多くの人が暮らしている本県は、水害に対する対策が重要な地域となっています。
 都市域では、河川改修を行うだけでなく、雨水の貯留・浸透など総合的な水害対策を行っているところもみられます。

図2-3-13愛知県と全国の水害の推移

愛知県と全国の水害の推移
「あいちの河川と海岸」より

課題

 都市域の拡大に伴う、宅地や道路など雨水不浸透面積の増加は、降雨が地下に浸み込まずに一時の出水となって、都市型水害発生の一因となっています。

オ 渇水の状況

 本県の1986年(昭和61年)以降の取水制限などの状況を見ると、毎年のように取水制限が行われており、渇水の頻度が高い地域となっています。
 これまでも、水資源の有効利用や、家庭、工場、農業用水において節水を行ってきましたが、最近の10年間でも、その内5年は、50日以上にわたる長期の取水制限が行われています。

表2-3-1愛知県の渇水の状況

愛知県の渇水の状況
 注)[ ]は阿木川ダム及び味噌川ダムの有効利用による実質的な取水制限率
 愛知県水質源課調べ

課題

 水資源の有効利用や節水による対応を図っていますが、渇水の頻度が高くなっています。

カ 地下水位の状況と地盤沈下

 地下水は、水循環を構成する主要な要素であるとともに、河川へ水を供給するという役割があります。また、地下水位が低下すると時として地盤沈下などの障害が発生することがあります。
 1950年代(昭和30年代)以降、産業活動の活発化とともに地下水揚水量の急激な増加により地盤沈下がみられた尾張地域では、1974年(昭和49年)から始まった地盤沈下の防止を目的とした地下水揚水規制の実施に伴ない地下水揚水量は漸減し、2003年度(平成15年度)の揚水量は1975年度(昭和50年度)の約40%となっています。この結果、地下水位は大きく回復し、地盤沈下は沈静化してきています。
 また、2003年度(平成15年度)における地下水揚水量を用途別でみると、尾張地域では水道や工業用、西三河地域では工業用、東三河地域では水産業における利用が多くなっています。

図2-3-14地下水揚水量の経年変化

地下水揚水量の経年変化
愛知県環境局調べ

課題

 地下水位の回復により、都市域などにおける地下構造物への漏洩水や地下工事に伴う工事排水発生などの問題が生じているところもあります。
 一方、1994年度(平成6年度)には、夏の異常渇水時において、地下水採取量の増加や地下水かん養量の減少により、地下水位が急激に低下し、広範囲な地盤沈下が発生したこともあります。

(4)生態系

 水量の確保や水質の浄化といった機能が低下するなど、水循環が変化すると、水辺の動植物の生息・生育環境にも変化が生じます。
 従来多くの魚類や昆虫、貝などが生息していた川や水路では、工場排水や生活排水、化学物質の使用による水質の汚濁や、コンクリート護岸などに見られるような、効率を重視した社会基盤整備により、動植物の生息・生育空間が消失・分断し、また、一部では外来種の影響などもあり、地域で特色のある固有種をはじめとする生物種の減少がみられます。
 また、里地里山が利活用されなくなることや、ため池、干潟などの減少に伴い、野生生物の生息・生育環境の劣化が見られます。

表2-3-2矢作川の淡水魚種の減少状況

矢作川の淡水魚種の減少状況

課題

 川や干潟などでは、野生生物の生息環境の劣化による、固有種をはじめとする生物種の減少など、生物多様性が喪失しています。

(5)水辺

 従来、効率的な治水・利水等を優先した社会基盤の整備がなされたことにより、河川では護岸がコンクリート化されたり、海では自然海岸が減少しています。また、事故やごみ投棄防止のためのフェンス設置、水路の暗渠化なども水に近づき、水と親しむことができる、身近な水辺の減少をもたらしています。
 また、水路の暗渠化などによる水面積の減少は、ヒートアイランド化を招く一因となっています。

図2-3-15自然海岸の延長距離の推移

自然海岸の延長距離の推移
 さらに、都市化の進展に伴う河川の水質汚濁の進行も人を水辺から遠ざける要因となっています。
 このため、水辺が遠い存在となり、生活の中での憩いや潤いの場が失われつつあります。
 水辺についての県民意識調査においても、川や海などへ行かない理由として、家の近くに身近な水辺がないと答えた人の割合が多く、また、川や海へ行くと答えた人でも、水の汚れや岸辺がコンクリートで覆われていることに不満を感じる人の割合が多くなっており、ふれあいや憩いの場としての水辺を求める思いが高いことを示しています。

課題

 川や海などの水質汚濁やふれあいや憩いの場としての水辺の減少等により、人と水とがふれあう機会が減るとともに、人と水とのふれあいの中で育まれてきた水文化や水に関する習俗の衰退もみられます。
 一方、高齢化の進展にともない、自由時間の増大や心の豊かさを求める県民の志向の高まりなどを背景として、暮らしの中に潤いやゆとりを確保することがますます求められています。

4.身近な川や海などについての県民意識

 本県では、構想を策定するにあたっての基礎資料とするため、県民を対象として、身近な川や海などについての県民意識をアンケートにより調査しました。
 その概要は次のとおりです。

(1)調査概要

調査期間:平成17年8月26日から9月9日まで
抽出方法:無作為抽出法
調査抽出者数:4,138人
(抽出者数は、市町村別の世帯数を基にした。)
回答者数:1,610人
回答率:39%
調査内容
(1) 川や海などへ行くかどうか
(2) 訪れる川や海などの印象
(3) 川や海などへ行かない場合、その理由
(4) 川や海などをよくするためにできると思うこと
(5) 川や海などでの環境保全活動への参加意欲

(2)調査結果の概要

 訪れる川や海などの水辺についてよいと感じるところは、「家に近い」「緑がある」「景色がよい」「広い空間がある」「水がきれい」「釣りができる」が多くなっています。

訪れる水辺のよいと感じるところ(2つまで選択)

訪れる水辺のよいと感じるところ(2つまで選択)
 訪れる水辺について不満を感じているところは、「ごみが落ちている」「水が汚れている」「岸辺がコンクリートなどで覆われている」などが多くなっており、「水が汚れている」と感じる理由としては、「水が濁っている」「ごみが浮いている」「川底がきたない」などが多くなっています。
訪れる水辺の不満を感じるところ
 水辺の水量について、少ないと感じている人は約26%となっています。また、水辺の緑や生きものについて「少ない」と感じたり、「景観」について「悪い」と感じる人の割合は、生きもの、緑、景観の順に多くなっています。

訪れる水辺の水量や緑、生きもの、景観についての印象

訪れる水辺の水量や緑、生きもの、景観についての印象
 「川や海などへ行かない」と答えた人の理由としては、「行くきっかけがない」「家の近くに川や海などがない」「水が汚い」が多くなっています。

図 水辺へ行かない理由(2つまで選択)

水辺へ行かない理由(2つまで選択)
 水辺をよくするためにできることとして、「生活排水の汚れを減らす」「節水」「子供への環境教育」「ごみ拾い」「雨水の散水利用」などの割合が多くなっています。

図 水辺をよくするためにできること(できること全てを選択)

水辺をよくするためにできること(できること全てを選択)
 環境保全活動への参加については、約60%が参加について前向きの回答をしています。また、活動への参加促進について、「いっしょに活動する仲間がいる」の割合が最も多く、続いて「行政の住民活動への支援」「手軽に参加できる水辺のイベント」「活動を始めるための情報」を望む意見が多くなっています。

環境保全活動への参加の意志

環境保全活動への参加の意志

環境保全活動への参加促進策(3つまで選択)

環境保全活動への参加促進策(3つまで選択)

(3)調査のまとめ

 以上のアンケート調査結果から、次のことが言えます。

・川や海などへ行かない人の割合は、約3分の1であり、川や海とのかかわりに消極的な人の目を川や海へ向けるきっかけづくりが課題といえます。
・川や海とかかわりのある人について、このかかわりを維持し、さらに深めるためには、「緑があり」、「景色がよく」、「生きものがたくさんいる」ことや、「水が汚れていない」、「ゴミが落ちていない」ことが重要です。また、「岸辺がコンクリートなどで覆われていないこと」や「近くに水辺がある」ことも求められています。
・川や海などをよくするためにできることとして、「生活排水の汚れを減らす」、「家庭での節水」など、日常生活での対策に肯定的な意見が7割を超え、こうした啓発が浸透しつつあるといえます。また、「子どもへの環境学習」や「ゴミ拾い」についても肯定的な意見が半数を超えており、こうした県民の意欲を高め、活動できる場を提供していくことが必要です。
・環境保全活動への参加については、参加してもよいという人の割合が約60%に対して、参加に消極的な人の割合は約40%となっており、人と水とのかかわりに二極分化が見られますが、環境保全活動へ参加しやすくするには、一緒に活動する仲間を求める声が最も多く、続いて活動への行政の支援、参加できる水辺のイベント、情報の提供を求める声が多くなっており、これらの改善が活動の促進につながります。

5.課題のまとめ

(1)水質

 矢田川上流、稗田川、鹿乗川などの都市とその周辺の中小河川や、湖沼である油ヶ淵、閉鎖性海域の伊勢湾・三河湾では、水質汚濁の改善が進んでいません。

(2)水量

 森林の手入れ不足や農地の減少、都市域の宅地や道路などの雨水不浸透面積の増加などによる保水・かん養機能の低下及び水利用形態の変化に伴い、平常時の河川流量が低下するなど、流れが変化しています。また、このことが、都市型水害の発生の一因ともなっています。

(3)生態系

 川や干潟などでは、野生生物の生息・生育環境の劣化による、固有種をはじめとする生物種の減少など、生物多様性が喪失しています。

(4)水辺

 自然海岸の減少や、川や水路の護岸のコンクリート化などによる、身近な水辺の減少で、人と水とがふれあう機会が減少するとともに、人と水とのふれあいの中で育まれてきた水文化や水に関する習俗の衰退もみられます。