あいちdeニューノーマルの選択肢、半農半Xな暮らしガイド ー買うからつくるへー

実践者たち

農業×ドッグカフェ×土木業 [実践者] 株式会社山田農園

株式会社山田農園の半農半Xのヒストリー

岡崎市出身、18歳で土木業を起業、2019年農業を開始、ライスセンターの運営と水稲栽培をきっかけに、イチゴ、野菜、果樹、採卵養鶏と農業を拡大。
       その間、ドッグカフェを2店舗開店し、栽培面積も徐々に拡大。2025年には3店舗めのドッグカフェを開店。
岡崎市出身、18歳で土木業を起業、2019年農業を開始、ライスセンターの運営と水稲栽培をきっかけに、イチゴ、野菜、果樹、採卵養鶏と農業を拡大。(スマートフォン用)
その後、ドッグカフェを2店舗開店し、栽培面積も徐々に拡大。2025年には3店舗めのドッグカフェを開店。スマートフォン用

半農半Xの一年

水稲:4月半ばから11月、イチゴ:周年、野菜(露地と温室栽培):周年、採卵養鶏:周年、農地改善:11月~3月、ドッグカフェ:周年、土木業:周年
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企業としての半農半X。「おいしい」から始まった有機農業と事業展開。

カフェの外観写真

東名高速道路岡崎インターチェンジから車で約5分。岡崎市高隆寺町にある株式会社山田農園「畑のカフェ・ドッグラン」を訪ねた。 道路沿い、犬の顔をモチーフにした山田農園のロゴが書かれたモノトーンの建物。周囲には広々としたドッグランエリアや畑、温室があり、のんびりした雰囲気がある。野菜やドッグ用品の販売スペースの奥がカフェスペース。 ランチを楽しむにぎやかな声を聴きながら、2023年度の愛知県「半農半X相談セミナー」「現地見学会」にも協力していただいた山田健一さん・明日香さんのお二人に取材した。

あしらい

株式会社山田農園の始まり

山田農園の作付け地図

2020年、もともと岡崎市で土木会社を経営していた山田健一さんに、地元の農業協同組合から組合のライスセンターを運営してもらえないか、と声がかかったのがきっかけ。 「(ライスセンターを)2か月ほど稼働し、企業として収支をみて大丈夫と思ったところに、農業がついてきた」と健一さんは話す。 ライスセンター運営と同時に、約3haの耕作放棄水田の再生を頼まれ、土木業の機械や作業技術を活かし田んぼの改良と米作りを始めた。 「最初は本当にうまくいかないことが多かったけれど、取り組んだことが年々結果につながるのが面白くて、農業にはまった。田んぼは最高に面白いと思った。」とのこと。 今では、山田農園の農業は米作りを中心にしつつ、1年を通した有機農業で生産される野菜、イチゴ、果樹と多品目の栽培、岡崎のブランド鶏『岡崎おうはん』の平飼い採卵養鶏も行う。 農園で生産した野菜や卵を使う食にこだわったカフェ経営にも取組み、現在は「土木」「農業」「飲食業(ドッグカフェ)・不動産」の3事業を展開している。 現在の農地面積は、ライスセンターとカフェ周辺を中心とした岡崎市の中山間地域で、水稲20ha、野菜・イチゴで10ha。カフェ店内の壁には、山田農園の作付けマップが描かれ、広がりが実感できる。

あしらい

有機農業へのこだわり

温室の写真
販売される野菜の写真

有機農業に取り組んだ理由を伺った。 「山田農園のある地域は中山間地で水がきれい。超軟水でミネラルが少なく、米作りに向いていると知った。実際に自分で作った米はおいしかった。せっかくなら農薬等を使わない農業を始めたいと思った。」と健一さんは語る。  現在は有機農業を基本とし、栽培期間中農薬不使用と特別栽培を分けて生産を行い、肥料は近隣の馬牧場から出るふん尿を自家でたい肥化したものを栽培全体で使っている。ライスセンターから出るもみ殻も燻炭にして、主に野菜栽培に利用する。 健一さんに農業を始めた頃の苦労について、聞いてみた。 「とにかく試行錯誤が続いた。周りに有機農業栽培をやっている生産者は少なく、自分でYouTube や専門書を読んで勉強した。土木の機械があって、重機が使えたので、他の人よりは取り組みやすかったかもしれない。最近少し落ち着いてきたかな。」と話す。 野菜等はカフェでの使用と販売が多いが、形の良いものはスーパーにも出している。地元の学校給食に農園の野菜や米を提供したこともある。有機JAS認証制度(注1)は利用していないが、農林水産省の『農産物の環境負荷低減に関する評価・表示ガイドライン』(注2)の『みえるらべる』を活用して、環境に配慮した栽培であることを示し、山田農園のブランドを作っている。 また、「ライスセンターで生産するもみ殻燻炭はJクレジット(注3)の認可がおりたので、積極的にアピールして、企業イメージを作りたい。」とも話す。

 

(注1)有機食品について、JAS法(日本農林規格等に関する法律) 基づき「有機JAS」に適合した生産が行われていることを第三者機関が検査し、認証された事業者に「有機JASマーク」の使用を認める制度。   出典:農林水産省HP  (注2)農林⽔産省では「みどりの⾷料システム戦略」に基づき、持続可能な食料システムを構築するため、食料システム全体での環境負荷低減の取組や国民理解の醸成に向けて、環境負荷低減の取組の「見える化」を推進している。 ガイドラインに基づき、「温室効果ガス削減への貢献」や「生物多様性の保全」の取組を分かりやすく等級ラベルで表示することで、生産者の環境負荷低減の努力が消費者に伝わり、農産物を選択できる環境を整えていく。 出典:農林水産省HP (注3)温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度。 出典:Jクレジット制度HP  

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ドッグカフェへの思い

カフェランチの野菜の写真
ドッグランの写真

ドッグカフェも、食や自然に対する思いから始まった。こちらは野菜ソムリエである山田明日香さんが担当する。  「うちの犬が畑を走り回るのを見て、犬はこういうところが好きなんだなと思った。それで自然な状態で走らせてやりたくて、自然に近いドッグランを作った。土木業をやっていたからすぐできた。」と話す明日香さん。
畑は農薬や除草剤を使っておらず、安心して走らせられる。 山田農園のお米、野菜や卵、イチゴを食べてもらいたいと、ドッグカフェとしてスタート。人だけでなく、「犬にも添加物等を使わない食事を出したい」と『わんこバイキング』も提供している。
有機農業を進めてきた理由でもある。 カフェの内外装にもこだわりがある。「害獣は入ってこないよ」という安心感と、中山間地であることを意識して『猪垣(鹿垣):ししがき』のイメージを再現した、とのこと。店内は木材が多く使われ、シンプルで暖かい雰囲気がある。
現在、岡崎市内で2店舗を運営しているが、さらに2025年11月から岡崎市の商業施設(三井アウトレットパーク岡崎)への出店が決まった。 高速道路のインターチェンジも近く、近隣からだけでなく、気候のよい季節はドッグラン、カフェを目当てにかなりの来客があるそう。
取材日は2025年8月の酷暑日。残念ながら屋外ドッグランに犬の姿は見られなかったが、自然の中を存分に走り回る様子が浮かんだ。

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中山間地での農業

ペットフード用の鹿の足の写真

中山間地農業のよさは何か。 健一さんは「やはり水がよい。昼夜の気温差があって、野菜も米もおいしい。競争相手が少ないのは企業的には有利と思う。農地も集まりやすい。また、ここは中山間ではあるが岡崎市の都心部まで車で30分程度と便利だし、道もよく高速道路も近い」とメリットを挙げる。 農地の確保については「初めの頃から市との相談で受けてきた。(農業を)やめる人も多く問い合わせは年々増えているが、農業用水等の条件で断ることもある」とのこと。
中山間地農業の担い手として期待されていることがわかる。 一方で課題もある。「獣害(イノシシ、シカ、サル)は本当に多くなった。耕作放棄地を再生する際の騒音などの問題もある。獣害は土木の力でなんとか柵設置などの対策をとれるが、地域で住民理解を得にくい場合は撤退することもある。選択の幅がある企業だからやれている部分もある。」とは健一さんの弁。   ちなみに、カフェ入り口にはペットフード用の鹿の足肉が並んでいた。
「地元の猟師さんが、獣害対策で捕獲した鹿を加工し、入荷してくれる。
見た目はちょっと…だが、猟犬に人気がある。」と話す。捕獲獣活用法の一つである。

あしらい

新たな取組

        
農業塾用ほ場の写真

山田農園は新たな取組も進めている。    一つは外国人材の活用。
「国の認可もとり、自社向けのみではあるが受入れ・研修も自前で行って直接雇用し、主に農園作業に携わってもらっている。戦力として期待しており、かなり力も入れている。」 もう一つは体験農業の充実。
「よくある収穫だけでない体験農業、植え付け・種まき・草取りも含め、有機農業での野菜栽培の全部の工程を体験できる『大人の有機農業塾』な感じを計画している。農業の大変さもわかってもらいたい。農園での体験を通して、地域との関わりや農業の裾野を広げるきっかけになったら嬉しい。」と、健一さんは前向きだ。         今後も農業を拡大していくか?との問いに対しては、「2024年から米の価格が上がっているので、この傾向が続くなら、もっと作りたいとは思っている。また、地元酒造メーカーとの協働で、有機農業で酒米「夢山水」を作り始めた。酒になるのが楽しみ。」と意欲的な答えがあった。 家畜放牧や牧場もやりたいとは思うが、動物を飼う責任と環境対策から難しいかな。養鶏は一般の平飼いの1/10の羽数飼育で、餌もほぼ出来立てを与えられるし、上水を使うなど鶏の健康には気を遣っている。鶏舎が涼しく、この夏の猛暑でも産卵率は維持できた。」と笑顔。 ここでも「自然体」の姿勢が窺えた。

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これから農業に取り組みたいと考えている人達に伝えたいこと

山田健一さん明日香さんとカフェ従業員、ロゴTシャツの写真

          最後に、これから農業を始めたい人たちへの心構えを聞いた。          「若い世代で『一緒にやりたい』という希望者は多いが、自分のイメージと違うと続かない。農業にのんびりしたイメージを持っているが、実際には忙しいし、きつい。賃金も高くはない。有機農業は特に大変。」と、まずは厳しい御意見。    そのうえで「企業にしろ、個人にしろ、農業に関わっていこうと思う時に大事なのは、とにかく『情熱』。好きでないとできないと思う。使命感というよりは、好きかどうか、かな。あとは納得できるまでやりたい、という意欲があるかだと思う」と健一さんは語った。

国の推進する「みどりの食料システム戦略」を先取りした感の山田農園。取材中は、これまで紹介してきたあいちの半農半X実践者とは少し異なる、企業視点のコメントが端々に伺えた。株式会社山田農園は、新たな取組も進め、さらにパワーアップしている。農業人口の減少と農業生産力の維持が課題である現在、地域資源を活かしながら持続可能な農業と多角的な事業展開を実現する「企業的半農半X」の一例として、拡がってほしい。