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3 愛知の里山

ページID:0005829 掲載日:2008年3月13日更新 印刷ページ表示

3-1 植生

 本県は、名古屋市を中心とした大きな都市部をかかえる地域でありますが、県東北部の西三河・東三河地域には豊かな自然が温存されており、また、渥美・知多両半島の沿海部においても本来の自然植生が温存されています。

 一方、都市化地域でも社寺林などに自然度の高い植生が温存されています。本県の気候区分は大部分が暖帯に属しますが、標高の高い奥三河の一部が温帯となっています。このため、植生は暖帯性常緑広葉樹林よりなるヤブツバキクラス域※から、温帯性落葉広葉樹林よりなるブナクラス域※に属することとなっていますが、現実には、二次林やスギ・ヒノキの人工林が多くなっています。特に、県土の約43%を占める森林のうち、スギ・ヒノキ等の人工林が約64%を占めており、三河スギをはじめとした地域材の産地として、全国に名を馳せています。

 本県の特徴としては、太平洋を望む海岸植生、また、多くの湿地とため池に成立する水生植物群落を始め多様な植生を形成していることです。とりわけ、湿地を中心として成立する周伊勢湾要素種※と呼ばれる特色ある植物種が分布しています。 

 

用語解説

・ヤブツバキクラス域※:
 植物社会学上の分類で、暖温帯の、雨量に恵まれた地域を生育植生とするヤブツバキ、アラカシ、シラカシ、ヒサカキなどの常緑広葉樹が優占するこれらの樹林(照葉樹林帯)のことをいう。

・ブナクラス域※:
 植物社会学上の分類で、冷温帯域を生育植生帯とするブナ、コナラ、アベマキ、力エデ類、コシアブラ、オオマメノキなどの落葉広葉樹が優占するこれらの樹林(冷温帯落葉広葉樹林帯)のことをいう。

(出典:上記2件、「愛知県の植生1994」)

・周伊勢湾要素種※:
愛知県を中心に、三重県から静岡県など伊勢湾をとりまく地域に発生分化したものと考えられる植生で、シラタマホシクサやスズカンアオイなどを指す。

(出典:自然保護読本 自然のしくみ(植物)1979)

3-2 里山の推移

 本県の里山の推移を概略的に示しますと、江戸幕藩体制下の尾張藩林制度が解体し、林野利用統制が緩んで明治初期から中期にかけての濫伐によるはげ山の時代と、第二次大戦直後の困窮・復興時代という二回の「破壊」の時代を経て、再生されてきた状況であると考えられます。過去からの本県の里山の面積は、把握されていないので、参考として森林面積を示すと下のようになります。ただ近年の漸減傾向が気になるところであります。

愛知県の森林面積等の推移

はげ山の景観と森林の回復経過(春日井市廻間町神谷洞)

1903年撮影時のはげ山の状況

1951年2月の森林の回復状況

(出典:平成9年度里山自然地域保全事業調査報告書)

3-3 里山全県調査結果の概要

 本県の里山の状況について把握された資料がなかったことから、平成8年度に全県の里山の分布等の状況調査を実施しました。里山は、本来人々との生活の関わりあいの中で形成されてきた自然環境であるため、現在の植生に関わらず、その歴史的環境を把握しつつ理解しなければならないものですが、近年、都市近郊の身近な自然環境として、その役割が注目されてきているという側面にウエイトを置いて、調査を実施しました。その概要を次に示します。

(1)調査対象

 標高300m以下で、区域のまとまりが概ね100ha以上ある二次林、雑木林を里山として抽出し対象とした。

  • 日本列島の植生分布から、愛知県の場合、概ね標高300m以下が里山としての本来の植生を示すことから、この高さを基準にした。
  • 小規模な樹林地(里山)も多く点在するが、環境としてのまとまりを考え、環境アセスメント制度の面的開発事業の対象面積である100haを準用した。
  • 木材の商業的生産を目的とした植林地は除いたが、はげ山の緑化やせき悪林地の改良、あるいは潮害・飛砂の防止を目的としたアカマツ・クロマツの植林地は、地域の環境形成の役割を果たす樹林地として対象に含めた。

(2)調査結果

(ア)里山の分布区域

 犬山市、瀬戸市、豊田市、岡崎市から蒲郡市を結んだ丘陵地帯を中心に幅広い帯状に里山の分布区域が確認された。

(イ)里山の面積

 本県の里山の面積は34市町村、70地区、50,789haであり、これは県土面積の9.9%、また、県の森林面積の22.9%に相当する(下表)。

市町村別里山の面積
(単位:ha)
市町村名面積市町村名面積市町村名面積
名古屋市471小牧市444小原村1,373
豊橋市865新城市1,648足助町3,609
岡崎市8,310日進市336旭町375
瀬戸市2,295長久手町117鳳来町895
半田市31南知多町992音羽町620
春日井市184美浜町740一宮町487
豊川市492武豊町240御津町458
豊田市6,223吉良町614田原町1,696
西尾市109幡豆町1,330赤羽根町571
蒲郡市1,653幸田町2,444渥美町2,620
犬山市2,279額田町3,160  
常滑市267藤岡町2,841  
34市町村      70地区       50,789ha
里山における保安林等の指定状況
(単位:地区数)
指定面積率保安林砂防指定地自然公園
全域指定 01115
90%以上 310 5
75%以上90%未満 9 3 6
50%以上75%未満11 3 5
25%以上50%未満1312 7
25%未満2422 9
指定なし10 923

(ウ)里山の士地利用規制

 保安林等の指定状況は、上表のとおりである。これらのうちいずれかの指定がされている地区は67地区、いずれの指定もない地区は3地区のみであった。

(工)土地所有状況

 土地所有形態は、ほとんどの地区で、私有地が主体となっている。なお、面積は比較的小さいが、ほとんどの里山で社寺所有地が含まれており、昔から里山と地域の人々の生活との関わりの深さを示している。

私有地が主体:79%
公有地が主体:7%
社寺地が主体:1%
財産区のみ:1%
不明:6%
私有地のみ:6%

(オ)里山の利用状況

 里山と人との関わりあいを明らかにするため、過去、現在、将来の利用状況等を市町村に照会した結果は、概ね次のようであった。
愛知県の森林面積等の推移
現在の利用状況
(単位:地区数)
利用していない(不明を含む)21
利用している49
主な利用状況内訳散策コース29
自然観察会25
山菜採取18
探鳥会15
木材生産11
キノコ狩り11
キノコ原木林9
*主な利用状況の内訳の欄に重複あり
将来の利用計画
(単位:地区数)
利用計画ない(不明を含む)45
利用計画あり25
利用計画内訳レクリエーション・自然観察施設等整備8
公園・運動公園等整備6
高速道路関連整備3
学術研究関連整備3
工場開発整備2
その他(住宅団地整備、土石採取等)14