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7 組織の遅営と催事の計面
7-1 市民参加と運営のしくみ
活動場所の確保
里山保全管理の活動場所や活動方法には、様々なケースがあります。公共団体の管理する公園、緑地に属するものから、企業等が私有地を自ら行うもの、民地を借地して行うものなとがあり、地域ごとの事情も異なり、各々が独自の方法で場所を確保しているのが現状です。ここでは現状とこれからの動向を踏まえ、市民が保全管理できる里山の場所との出会い方を例示してみます。
1.公共用地型一公園、緑地、その他の公有地林
将来に渡り公共用地として確保され、林地としての役割が決められている場所は市民による里山保全の安定したフィールドとなります。
周辺の住民によって継続的に保全管理された林地は、林間の新たなリクレーション機能を伴った新しい公園像にも結び付く可能性があります。しかし、公共用地の基本計画などとの調整が必要であり、場合によっては市民による保全管理の主体性が損なわれる危惧もあります。
尚このタイプの特殊例として「オアシスの森」のような将来公園となる予定地(民有地)を借地して保全管理する方法もあります。この方法では整備内容に制限がされますが、反面その借用期間を活用し、本整備前の市民による試験的な自由度の高い利用方法のフィールドにもなり得ます。
2.民有地自営型一個人及び企業等所有地
例えば個人及び企業の方針に基づき、所有林を周辺の住民や社内ボランティアを巻き込んで保全管理していく方法もあります。方針の立て方によっては目的のはっきりした斬新な林地や実験的なモデル林なども可能となり、活動プログラムも個性的に展開できます。しかし、この場合にも地主及び企画者の方針と参加者の意向との調整が不可欠であり、参加者の主体性や達成感などを堅持することがキーポイントとなります。
3.民有地借地型一個人及び企業所有地
このタイプは里山の保全管理を希望する市民及びそのグループが所有者に適当な林地を借地するという市民の主体性によってのみ成り立つ形態です。したがってやる気がなくなれば自然消滅する可能性を常に持っていますが、手作りの活動の成果が実感できることや、その実績を持って所有者と話し合えば思わぬ方向へ活動が展開していく可能性もあります。
この方法の難しさは最初の市民と里山の所有者との出会いの場面作りやその間のルールづくりにあります。そのきっかけづくりや仲介役として神奈川県の「きずなの森造成事業」(昭和62年~5ヵ年)のような行政などの支援も必要とされます。
分類 | 所有者 | 活動例 |
---|---|---|
公共用地型 | 公共団体 (借地を含む) | 東京都桜ヶ丘公園雑木林ボランティア 里山自然地域保全事業尾御津地区 相生山緑地オアシスの森くらぶ |
民有地自営型 | 個人、企業等 | エコの森クラブ(トヨタの森) 善寺野彫刻の森 |
民有地借地型 | 個人、企業等 | 玉川きずなの森(厚木市) 里山倶楽部(大阪府) 里山自然地域保全事業美浜地区 |
<きずなの森造成事業> きずなの森造成事業は対象地域の市町が地主から土地を借り上げ、団体に貸与して5年間に渡り活動を援助しました。事業終了後も「玉川きずなの森」や「海老名の森」のように継続し発展しているグループもあります。 ・目的 ・対象森林 ・補助事業の内容 ・参加資格 ・計画概要 |
運営組織と資金
それらに劣らず重要なのが活動資金。事業費は催事毎にまかなえたとしても、会員募集や活動報告の告知・PR費、連絡通信をはじめとする事務局費など、一定資金の有無は活動組織の活力に関わってきます。メンバーが現物供給したり、提供したりするほか・寄付や活動助成などに応募する方法もありますが、同好会的に会費を集め運営する方法が長続きさせるコツかもしれません。
里山保全活動は、その領域が広範にわたるため、必要となる用具や備品、施設なども限度がないほどであります。グループでの実態に応じた資金や組織体制の規模づくりが肝要であります。ちなみに雑木林研究会の実例を見てみたいと思います。
〈雑木林研究会〉(会員約50名) ・組織 約10名の幹事会を毎月開催。事業計画を立て、運営手順などを決める。会議は専ら夜間が多いため、事務局のある会議室で開催。事務局、財務、広報を置き、会長、運営委員長を設けている。 ・資金 会費=年間1万2000円。企業などの賛助会員=2万円。 書籍や報告書の販売も行う。時として公共団体より事業の委託を受ける。 |
品名 | 単価(円) | 備考 |
---|---|---|
剪定のこぎり | 4,300 | 刃長約270mm |
なた | 6,300 | 刃長約180mm |
鎌 | 2,400 | |
剪定はさみ | 1,800 | 全長約185mm |
砥石 | 1,600 | 荒・仕上げ砥 |
軍手(ダース) | 2,060 | 滑り止め付き |
竹ほうき | 760 | 約170mm |
熊手 | 1,300 | スチール製 |
火はさみ | 800 | ステンレス製約60cm |
ロープ | 1,690 | φ6mm200m |
測量杭 | 100 | 30mm×30mm×250mm |
掛けや | 6,000 | |
クリノメーター | 10,000 | 簡易型傾測器 |
メガホン | 29,200 | ショルダー型、白色 |
保険
市民による里山管理は、市民それぞれの自由意志で主体的に参加する活動ですから、それに伴う怪我や事故は、あくまで自分自身で責任を負うのが原則ですが、主催者の備えとしてそうした心配を軽減するために保険への加入をお勧めします。
保険については、レクリエーション災害保証保険や、旅行傷害保険などいくつかありますが、ここでは森林ボランティア保険制度のしくみを例示してみます。
第1 保険の目的 1.この保険は、森林ボランティア参加者が、安心して活動に専念できるよう、また各ボランティア団体の災害補における経済的なサポートを目的とします。 2.この保険は、森づくりフォーラムに事前に登録された森林ボランティア団体を対象とするものです。 第2 保険の内容 この保険は、ボランティア活動を目的として行われる「行事」に参加中に発生した事故を補償するための保険です。 1.保険契約者 2.保険料負担者 3.被保険者 4.引受損害保険会社 5.取扱代理店 6.保障内容(加入タイプAタイプの例) (1)傷害保険 (2)賠償責任保険 7.保険料(加入タイプAタイプの例) 8.申し込み、問い合わせ先 |
7-2 管理作業の運営
そのうえ、広く市民参加を得て行うために、以下の様なポイントに注意を払う必要があります。
(1) 管理作業の主旨説明を徹底する
当日行なえる管理作業はたとえば、前回は除伐などの伐採、玉切りでのこぎりを使う作業なのに、今回は熊手で落ち葉かきなどという風に部分的で、作業内容もその前後と大きく異なります。
そのため、管理作業の全ぼうをつかみ、個々の作業の意義を理解できる説明が必要となります。
事前の募集チラシで案内するのもよいし、当日、プリントか口頭で説明します。
(2) 道具の使い方と注意を毎回くりかえす
道具の使い方は、現物でポイントを伝えることがコッです。
安全上の基本的な動作はくり返しの注意が必要ですが、目に余るクセや危険を予知できそうな行為については、実際に作業中に誤りを指摘された方が判りやすいようです。
(3) 作業は楽しみながら、食や遊びをおろそかにしないこと
管理作業は計画的に行うため、その日の作業の目標は当然決まっていますが、決してそれをノルマにしてはいけません。
やれることを気楽な気分で行う。作業を押しつけたり、強要するようなことがあってはいけませんし、時間にも余裕を持ちましょう。
特に食事時間や遊び・ゲームなどは工夫を盛り込み、時間も充分に取りましょう。
管理作業はフィールドになる里山の様子や作業に取り組むグループによって様々に異なりますが、ここでは、都立桜ヶ丘公園の雑木林ボランティアの1年間の活動メニューを紹介します。約20名が、公園内の「こならの丘」で毎月2回の割で活動を行っています。
日 程 | 内容 |
4月12日(土) | ボランティア顔合わせ・桜ヶ丘按公園の見学・草刈りほか |
4月26日(土) | イベント準備/研修「雑木林とボランティア」 |
5月10日(土) | 「長沼」の雑木林見学 |
5月24日(土) | 苗床づくりほか/運営会議 |
6月14日(土) | 芋苗の値付/「こならの丘」の測量 |
6月28日 (土) | 笹紙づくりと下草刈り |
7月12日 (土) | 図書の整理/研修「雑木林の植物調査方法」 |
7月26日(土) | 下草刈り・畑の除草/懇親会 |
8月 9日(土) | 夏休み(活動休止、活力充電) |
8月23日 (土) | 「熊ヵ谷」見学会 |
9月13日(土) | 午前休み/畑の手入れ/夜は「光に集まる虫たち」 |
9月27日(土) | 下草刈りほか |
10月11日(土) | 目籠細工とイベント準備 |
10月25日(土) | 目籠細工 |
11月 8日 (土) | 下草刈りほか |
11月22日 (土) | 「どんぐり祭」の準備 |
12月13日 (土) | 「どんくり祭」の開催 |
12月27日(土) | 年末休み |
1月10日(土) | 雑木林の仕事始め 雑木林の更新作業 |
1月24日(土) | 雑木林の更新作業・炭焼き準備 |
2月14日(土) | 「炭焼き」の実演 ドラムカン式と移動式 同時実施 草木染め |
2月28日(土) | 炭出し等/来年度ボランティア説明会 |
3月14日(土) | 研修「雑木林の野鳥観察/シイタケのコマ打ち」 |
3月28日(土) | シイタケのコマ打ち/反省会 |
平成9年5月3日~5日 | ガーデンシティ多麿へ参加 | |
平成9年10月19日 | 多摩市の環境行事(イベント)参加 | |
平成9年10月25日~26日 | 公園フェステバル97へ参加 |
7-3催事の計画
管理作業とおなじくらい大切なのが、活動主旨を普及していくための催事(イベント)です。催事は対外的な効果を目的としますが、活動グループ内部の結束を高めたり、メンバーの意識向上が図られたり、あるいは企画・宣伝、運営などの経験が豊かになるなど、組織内での複次的な効果があります。
また、催事を管理作業と関連させていくことによって、催事の意義を高めるとともに、管理作業の軽減を図ることが可能になります。
●年間計画を立てる
里山と人の関わりにとって四季の移ろいは重要な要素になっていますから、管理作業に合わせて、催事も年間計画のうえで、考えられる必要があります。自然観察や季節催事(春の花見や夏のホタル探し、秋の月見など)はもちろんですが、里山でられる材料を使った工作教室やコンサートなども題材や詳細な内容をつめる際には、里山の季節環境が重要になってきます。
催事の計画
●催事の計画のしかた
催事は、特別な場合を除いて、年齢や性別の差なく、幅広い人たちを対象としたものが一般的ですから、その催しごとに、目的や事業の項目、それぞれの対象者を想定して、バランスをとりながら、内容を組み立てることが大切です。子どもたちぱかりや、主婦層向けのものなどどちらかに偏らないように考えます。
また、時間は昼を中心にする場合が多いですが、早朝や夜間の催しも考えられます。
天侯や周囲の環境、参加者の状況なとを考慮して、トラブルが起こらないように計画を練ります。
さらに催事計画で考えなければならないのは、場所の設定です。
平で、障害物のない所はあまりないため、傾斜地や通路も含めた会場利用と人の動きの計画をしておく必要があります。
●告知、広報
広く参加者を募集するためには、告知活動が欠かせません。
通常の会員向けの案内、広報紙、参加者募集用のチラシなどのほか、ホームページの伝言覧で告知しますが、告知媒体の選び方は、知らせたい対象や募集の規模、それに催事の内容によって行います。
必要以上に人数が集まったり、催事の内容に合わない人が参加したり、とても対応できそうもない範囲にまで呼び掛けたりしないよう効果的に行いましょう。
内容については、日時、集合場所、スケジュール、プログラムの内容、持ち物、申込先、締切、会費の有無、雨天の場合などが大切ですが、行事名や主旨、スローガンも必要で、繰り返し発信する場合はアイキャッチャーとなるイラストがあると好感を持たれます。