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6 市民参加による里山保全の技術
6-1 里山保全の目標づくり
表題 | キーワード | 要点 |
---|---|---|
雑木林を管理する | 雑木林における有林を目的とした値生管理 | 薪炭林としての機能を失い放棄されて久しい雑木林を、市民の憩いの場としてふさわしい魅力ある森となるように植生管理を行う。 雑木林のもつ多様な樹林空間を保全、創出する植生管理を目指す。 |
竹林を管理する | タケ群落の管理 | 竹林の他群落への拡大を抑制し、雑木林の多様性を維持する。又、密生化が著しい竹林を明るく親しみのある空間とし、散策やふれあいの場として活用する。 |
シンボルツリーをつくる | 大木・景観木の育成 | 林内に点在ずる大径木や特徴的な樹木を保全、育成し、景観にアクセントをつけるシンボル化する。また、エリアの特徴を活用して活動拠点や休憩場所として利用する。 |
柴刈り大会を開催してみんなで森を育てる | ワークショップによる雑木林の植生管理 | 公園づくりに市民参加の芽が生まれつつある中でワークショップ形式で柴刈り体験会開催し、利用者が自分達の手で植生管理を実践する。 |
雑木林ファンクラブをつくる | ボランティアグループの形成とリーダーの育成 | 雑木林での多様な活動をする組織を形成し、人と雑木林の関わりを深める。また、その活動をリードするインストラクタ一を育成し活動を活性化する。雑木林の維持とそこでの活動に不可欠な市民の力を引き出し、組織化を目指す。 |
6-2 事前調査(後でもよい)
対象地の社会状況
対象地の自然状況
(左から:1920年マツ林と水田の時代、1958年果樹園の開始と水田の拡張の時代、1974年果樹園の拡大とマツ林の衰退の時代、1983年水田と果樹園の時代、1988年水田の縮小化の時代)
6-3 保全管理作業の準備
作業に適した服装
作業にあたっての服装は、図のように、帽子と軍手を着用し、長袖シャツに厚手の作業ズボンのような丈夫な衣類を着けます。靴は底が厚いものでくるぶしが隠れるようなものがよいでしょう。大きな木の間伐、除伐時にはできれば頭の保護のためにヘルメソトを用意しましょう。
軍手は、手を傷つけないためのもので、ゴム引きのものがあれば鎌などを持つときすべらなくて具合がよいでしょう。刃物がすべって飛ぶ危険を防止する点からいえば、刃物を握る手は素手のほうが安全であるといえます。
長袖シャツは、紫外線をを防ぎ、ウルシなどのかぶれを防止し、蜂にさされたりすることを防止するために必要です。ズボンは、イバラなどに引っかかっても破れない丈夫なものがよいでしょう。底の厚い靴は、切り株などを踏み抜くのを防ぎ、くるぶしまで隠してマムシ等の害を防ぎます。雨の対処として雨具の他簡単なターフ等用意し、荷物の雨避けや休憩所とします。
尚、切り傷、擦り傷、虫さされなどは用心していても発生するので、救急薬セットを用意しておきます。
保全管理作業にあたっては管理計画によって、あるいは参加者の熟達度に応じて適切な道具を選び、作業前の注意を徹底します。
作業に必要な道具
作業に使用する道具は、草刈り鎌、厚鎌、ナタ、ノコギリ、剪定鋏などです。草刈り鎌は、土手の草を刈るときに使います。
細い木を切るときは厚鎌を使わないと刃が欠けます。
ちょっと太い木は鎌よりもノコギリのほうが切りやすく、ナタは、未熟練者は手を切ったりして危険なので、できるだけ使わないようにします。
細い枝を切るような場合には、剪定鋏を使ったほうが切りやすく、安全です。
草刈機やチェーンソーなどは、充分に操作をマスターしてからでないと危険です。
作業中は、道具の使用、倒れる木など、常に他の作業者の安全に配慮して行動します。
互いに接近して作業するのは危険なので、安全な間隔を保って作業するように注意します。
また、作業中に道具を振りまわすと、他人に触れたり潅木に触れて、手元が狂ったりするので危険きわまりありません。
刃物の取り扱いは慎重にできるだけコンパクトに動かします。
使用していない道具の安全についても気をつけます。
鎌は、歩行中は刃をケースで覆い、作業場所で一時使用しないときは、刃を地面に突き刺しておきます。
ナタも使用しないときは、ケースに収め刃を覆います。
ノコギリは、ケースを腰に下げておき、使用しないときはケースに収めます。
いずれにしても、作業現場へいろいろな道具を持ち込むのは危険であり、見失ったりするので、さしあたり使用しないものは、現場から離れたところにまとめて置いておくとよいでしょう。
斜面で作業するときは、必ず足元を確認し、足場を固めたうえで、自分の得手となる方向で作業します。
道具を使った後は必ず点検をし、樹液等のよごれを落とします。
鎌やナタは切れ味が落ちた際に砥石で砥ぐなどの整備を心掛けたいものです。
下草やかん木を切り払うのに使います。柄が長いので力を入れる作業に向いています。
いいものを選べば直径2cmぐらいの横技も切れる。鎌を使いにくいヤブでも手軽で便利。
分厚い刃を持ち2cmぐらいの潅木でも刈れます。里山管理に向いています。
大径木の伐採や玉切りに。危険なので必ず熟練した人が使うこと。
伐採した樹木の枝払いや、杭作リに。かなり重いし、刃がするどいので熟練者向き。
作業の逮中でも切れ味が落ちたら研ぐのでベルトから吊り下げておける携帯用が便利。
さやが付いてべルト通しで腰からぶらさげられるものが便利。初心者から使えます。
雑草から、笹、潅木まで刃を交換すればどんなところでも使える。ただし回りに人を近づけないように。
6-4 フィールド探検(観察)
まずはフィールドの全体を歩いてどんな里山なのかを見てみましょう。
事前調査で得た知識を基に地形、植生、景観などの概要を把握します。
そのフィールドに詳しい方に案内していただき、フィールドの特性や魅力、季節の変化なども聞いて、想像力を働かせ、里山の全体イメージをつかみます。
できれば参加者は、子どもをはじめ、様々な年齢層や幅の広い職域の方に集まっていただき、様々な立場からの見方や感想を基に、保全管理のイメージづくりに生かして行きたいものです。
フィールド探検の目標としては参加者のフィールドノートづくりや個人及びグルーブでつくるフィールドマップづくりなどがあります。
それらの資料づくりはあらかじめ記入できる地図やチェック項目用紙などを用意し、記入方法のガイドなどを行うと初めての人にも楽しめるでしょう。
しかし基本的にはフィールドに対する総合的な印象を大事にし、参加者の視点をはっきりとすること、あるいはグループ討議や発表によって他の人の視点との違いや共感を確認し、次項の保全のイメージづくりにつなげていくことが大切です。
6-5 里山保全のイメージづくり
里山の魅力とは何なのでしょう? 身近な生き物の宝庫としての魅力?四季の変化のある美しい景観の魅力? 地域の人と自然の長い付き合いの中から生まれた歴史的文化遺産としての魅力? 人間と自然が造り上げた地球にやさしい独自の生態系の魅力? 柴刈や炭焼きなどの里山の仕事をみんなと一緒に汗を流す魅力? 人それぞれに、色々な魅力を見せてくれる里山を、私たちはどのように活用していけばよいのでしょう?また、里山を活用するためには、どのような手入れをすればよいのでしょう?
下図は森の樹木の大きさ・密度と利用方法の関係を示したものです。高い木が欝蒼と繁る森の中では、歩きながらの自然観察が好まれ、高い木がまばらに生えている林間では、遊んだり、休んだりの活動が好まれます。
例えば中央斜めの一点鎖線のあたりは、ヨーローパの森に見られるような評価の高い森林景観を示します。
わが国の森林に当てはめると、高山地域の森や厳しい条件の林の景観が好まれるようです。
今の里山・雑木林はどうでしょうか。どうすればよいのでしょうか?
市民参加による里山保全の技術
市民参加による里山保全の活動例として、右表と下図に示しました。
里山で、健康のために汗を流す目的だけだった人が、里山の自然を保全することを体験的に理解し、自分が里山から必要とされていることを実感するようになると言われています。
里山の活動を行うためには、どのような管理方法や施設や場所が必要か、一緒に考えてみてください。
作業及び査活動例(ジャパンランドスケープNo18号より)
季節 | プログラム |
---|---|
春 | 色を数える(芽の色・花の色) |
樹木の新芽の観察スケッチ | |
野草を食べる | |
森のスタンプラリー | |
春植物・オニシバリの観察 | |
落葉樹のさし木 | |
初夏 | 雑木林の構造観察 |
照葉樹林を見に行く | |
アカシジミの観察 | |
林床植物観察と下草刈り | |
草本のさし茅 | |
サツマイモを育てる | |
夏 | キツネノカミソリの観察 |
苗木の伸長測定 | |
炭火のバーベキュー | |
クズ・カラムシで布を織る | |
秋 | つるを編む |
草木染め | |
森の工作 | |
木の実拾いと苗鉢つくり | |
苗畑つくりと苗木の移植 | |
たき火・焼き芋 | |
冬 | 立ち木の伐採・林の更新 |
枝打ち | |
炭焼き | |
炭俵づくり | |
炭焼の紙芝居作成・上演 | |
端材で音具をつくる | |
端材で樹名板をつくる | |
木の遊具づくり | |
たき火・炭火の料理 | |
昆虫のための丸太積み | |
落葉かき・堆肥積み | |
紙すき | |
シイタケの菌打ち | |
冬芽の観察 | |
ロゼットになろう |
6-6 フィールドの調査
フィールドの調査は前提となる里山保全のイメージに基づいて、実際にそのイメージを実現するために、具体的な自然環境状況を把握することを目的とした調査です。
代表的なものとして地形調査、動物調査、植生調査なとがあり、目標に応じて必要な調査を行います。
地形調査
里山の保全に際して、ひとつの原則として表土や水環境を保全することが挙げられる。
これには地表をできるだけ変形しないことが求められ、そのためにも地形の正確なデータが必要となります。
できればその地域の地形図を基にレベル測量や平板測量によって必要な部分のデータを補完します。
また、簡易的な地形調査としては歩行踏査によって利用の難易度を判定したり、脚立等を利用した眺望景観調査など、目標によってはその程度で充分な場合もあります。
動物調査
タヌキ、ウサギやシカなとの大型の獣類はめったに人前に姿を見せないのでフンや足跡などから、その生息を調べます。
巣や獣道が見つかればできるだけ保全します。
カブト虫やセミ、ホタルやトンボなどの昆虫はいつの時代も子どもたちの人気者であり、それらが生息しているか、生息が可能であるかは里山の利用形態に大きく影響してきます。
昆虫や野鳥の種類は里山の地形や大きさ、樹種によって大きく異なり、里山環境の多様性を測るバロメーターともいえます。
植生調査
植生の調査には、フィールド全域の群落・貴重種などを中心とした概況調査と、調査区域を絞り詳細に樹種と位置を調べる毎木調査がある。
ここでは参考例として保全管理作業にとって重要な毎木調査を以下にあげます。
雑木林の毎木調査1
目的
薪炭林としての機能を失い、放置されて久しい里山の雑木林を、憩い・観察・活動の場所など魅力ある森林レクリエーション空間として再生するためには植生管理が必要です。この場合、雑木林のもつ多様な植生環境をいかに保護・維持・保全・改良・創出するべきかについて、全体として合意形成を得ていくことが重要であり、そのために各自が、それぞれの場所や目的に応じた植生管理のイメージを描くことが求められます。この調査は、これら植生の保全管理計画の立案のために必要であるほか、施業前・施業後における植生の変化を比較・検証するための重要な資料となります。
方法
(1〕毎木調査エリアの設定
- 保全管理作業地内に10m×10mの毎木調査エリアを設定します。
- 各10mの4辺は2m毎に印を付けたテープによって区画します。
(2)測量のしかた
測量コンパスを使って、毎木調査エリアの設定を行います。エリアは10mの正方形。各辺の交点の直角をコンパス測量で設定します。ここでは道線法の手順を紹介します。
(1)測点Aにコンパスをすえつけ、磁針固定ねじと望遠鏡締付ねじをゆるめ、測点Bを視準して、望遠鏡微動ねじで十字縦線により測点Bに正しく合わせる。
(2)磁針Nの位置を水平目盛盤で読み取り、これを測線ABの方位角θAB(前視)とする。
(3)測線ABの距離を測定する。
(4)器械を測点Bに移し、測線BAの方位角θBA(後視)を測る。
(5)測線BCの方位角θBCを測定したのち、距離BCを測定し、以下同様にして測定し、測点Aにもどり、後視θADを測定する。
(6)どの測線についても(後視一前視)=±180°であれぱ局所引力の影響を受けていないが、もしある測点に関して誤差が出た場合は、誤差のない測点を基準にして調整する。
(7)この要領で方位角を測定しながら、各交点が90°になるようにポール位置を調整します。例えぱθBCはθAB+90°、θCDはθAB+180°となるようにする。
コンパス測量
コンパス測量は、磁針の性質を利用して、方向を決定する簡単なコンパスを用いて行う測量をいい、山地では広く活用されています。測量コンパスは磁針、水平目盛盤及び視準板がおもな部品で、そのほかに下げ振り、気ほう管・偏角修正バーニャとその微動ねじなどが付属しています。この器械が三脚に支えられて整準装置により水平に保たれるようになっています。
(3)毎木調査
- エリア内の高・中木の樹種名を札付けします。
- 2m毎に印をつけた10mテープを2本用意し、エリア内を2m×10m毎に順次区画しながら、高・中木の位置及びナンバーを野帳に記入します。
- 野帳には樹種名・樹高・生枝下高・幹周・樹冠幅を記入します。
- 林床にみられる主な植物種名を記入し、被度を判定します。
被度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
調査範囲内に占める植物の割合(%) | 0~20 | 20~40 | 40~60 | 60~80 | 80~100 |
- 施業後、除伐された樹木を野帳に記入します。
雑木林(竹林)の毎木調査2(断面法による)
目的
雑木林の多様性を維持するため、周辺樹林地への竹林の拡大を抑制します。
また密生化が著しい竹林内部の疎林化を図り、健全で明るく親しみのある竹林を形成します。
これらの目的に対応した植生管理を行うためには、植生の保全・管理計画が必要となります。
この調査はこれからの計画の立案に必要となるほか、施業前・施業後における植生の変化を比較・検証するために重要な資料となります。
方法
(1)毎木調査断面の設定
- 保全管理作業地内に20mの毎木調査断面を設定します。
- 延長20mの調査断面には、2m毎に印を付けたテープを敷設します。
(2)毎木調査
- テープの右側50cmの範囲の竹及び高中木の位置及びナンバーを野帳に記入します。
- 同様に左側50cmの範囲を調査します。
- 野帳に樹種名を記入し、竹以外の樹木については樹高・生枝下高・幹周・樹冠幅も記入します。
- 林床にみられる主な植物種名を記入します。
- 施業後、除伐された竹・樹木を野帳に記入します。
谷部 | ツタウルシ、ミツバアケビ、チヂミザサ、ケネザサ、ジャノヒゲ、ヤエムグラ、キンラン、ヤブタビラコ、ムラサキツユクサ、セイヨウヒルガオ |
尾根部 | ツルウメモドキ、ツルグミ、ヘクソカズラ、サルマメ、サルトリイバラ、オオバコ |
○除伐木
6-7 保全管理及ぴ活用計画
急傾斜地では、事故や土壌流亡の危険性があり、現状のままにしておくか、観察路を通す場合は木製のデッキ等の歩道を設置したりします。近年、土木機械の性能向上のために、急傾斜地の開発が容易に行われるようになりましたが、急傾斜地の林地を残すことで、地肌の露出や景観を損なう人工物を隠すという景観保全の効果が再度見直されています。
緩傾斜地では、散策路やレクリエーション広場としても活用できる場所も多くなります。その際には、林床に密集した低木類を刈り取り、高木や中木の間伐も適切に行い、明るく開放された林内空間を確保しましょう。広場の周辺や散策路では、除伐や下枝を落とすことによって見通しを良くし、森林の広がりを感じさせるようにしたいものです。また文学で出てくる雑木林のイメージや日本画のような里山風景を目指すのも一つの方法だと思います。
全体計画例 相生山緑地オアシスの森より
6-8 保全管理作業
下草刈り
鎌の使い方
下図のように、必ず親指を下にして草などをつかみ、鎌を地面に這わせるように手前へ引きます。鎌で草などを切る瞬間から、ほんの一瞬遅らせて両手を手前に引くと切りやすいでしょう。親指を上にして草などをつかむと、鎌で手を切りやすいので注意します。また、鎌に角度をつけて引くと、鎌がササなどの上を滑って手元へきて、手を切ることがあります。
雑木林の下草刈りをする場合には、見通しがよくなるようにとりあえず、草本、ササ、イバラ、つる性植物、小さい枯れ木を刈り取ります。伐倒木などに押えられている潅木、ササ、小枝などを切ると、突然跳ねることがあるので注意して切ります。フジやアケビのようなつるは、花や実の楽しみを考え、不必要な物だけ切り取ります。この場合は、つるが跳ねたりするので、まず根元を切ってから木に絡んでいるものを取り除きます。
下刈り
鎌の持ち方
鎌(木鎌または厚鎌という)を使う場合は、潅木の地上30cmほどのところをつかみ、図のように少し手前へ倒し、できるだけ根元を切ります。こうすると切りやすく、鎌の刃がこぼれにくいが、あまり倒すと鎌が手元へ走り危険です。
少し太い木はノコギリを使ったほうがよいでしょう。切り口と反対の方へ少し倒しながら切ると、楽に切れます。
鎌では、どうしても水平には切れないので、刈ったあとを不注意に歩くと切り株を踏抜きやすく、慎重に歩くことが大事です。
ツツジなどのような花木は、とりあえず残します。何の木か不明でも、花がらが残っていれば花木と分かるので、見慣れないものがあれば、リーダーに聞くようにします。混んでいるものは空かす必要がありますが、見通しがよくなってから不用なものを除くほうが無難です。
間伐、除伐
ノコギリの使い方
下刈りの場合と同様、利き腕側が上斜面になるように構え、足場を確かめて、できるだけ根元から水平に切ります。細い木は、切り口と反対の方向へ少し倒しながら切ると楽に切れます。大きい木は、まず倒す方向を決め、倒す側を1/3ほど切り、その1cmくらい上を反対側から切ります。
特に大きい木は、倒す側にV形の切り込みを入れると、倒れる方向が確かとなります。中級者までは、ノコギリでまず斜めに切り、その下を水平に切るのがよいでしょう。上級者はまずノコギリで水平に切り、その上をオノでV字に切るか、オノだけでV形に切ります。木が傾き始めたら、2人ほどで倒す方向へ押してもらうとよいでしょう。木が倒れるときは、木が跳ねたり、潅木を跳ね飛ばしたり、枯れ木を倒したり、枯れ枝をなぎ落としたりすることがあるので、これらも考えに入れて、倒れる側に人が居ないことを必ず確認します。切り株の上へ倒すと、倒れた木が跳ね上がって危険なので、絶対に避けます。
切った木の処理
細い木は適当な長さに揃え、つるや荒縄でしばって、束(ソダ)にしておきます。それを林縁に沿って配置し、小動物の住みかや土砂の流出防止、樹林の肥料としたりします。又、樹種や樹形を選択して、雑木クラフトや雑木アートなどの素材として利用もできます。
(2)太い木の場合(玉切り)
太い木はもしつるが絡んでいればまずつるを切り、枝をはらいます。また、最初に上側の枝を切り、木が安定しているのを確認してから下側の枝を切ります。この場合、切る枝と反対側に立って足元をよく確かめ、株元からこずえに向かって枝を切ります。特に鎌やナタを使う場合は、切る枝と同じ側に立つと、刃物が跳ねて足を切ることがあります。
枝をはらっている木が突然動き出すこともあるので、できるだけ幹の山側に立って作業します。特に、利き枝(その枝が木を支えているもの)を切る場合は、必ず山側に立ちます。利き枝は一気に切らず、まず軽く刃物を当てて様子を見て、安全を確かめてから切ります。
木を切り倒す場合は、枝はらいがしやすい場所へ倒すことを考えるとよいでしょう。枝はらいが終わったら、その木の利用目的を考慮して搬出可能な長さに切り(王切り)、平地や林道付近へ集めます。
中高木は、切った木を処理してから次の木に移ります。切り重ねてゆくと処理が困難になるし、危険を伴います。潅木はある程度切ってから、片付けてもよいでしょう。
竹林の管理
主な管理の方法 | 時期 |
---|---|
1拡大の抑制 | |
*竹林群落境界の地下茎を遮断する | |
・境界部に地中壁を設ける。 | |
・境界部に溝を設ける。 | |
*境界近くの若竹を伐採する。 | ・1~2年に一度 春頃 |
タケノコを掘採する。 | ・1年に一度 発筍時期 |
2密度の管理 | |
・倒れた竹、枯竹の除去する。 | |
・目標密度を定め間伐を行う。 | ・1年に一度程度 秋頃 |
3若返りの促進 | |
・古い竹を伐採する。 | ・1年に一度程度 秋頃 |
・発筍後同数を親竹として仕立てる。 |
密度の管理
竹の切り方
林業家のアドバイス
里山の保全管理作業は傾斜のある林地で、刃物道具を使い、慣れていない者が複数で行うことが多く、危険が伴います。ここでは林での作業に熟達している林業家の1ロアドバイスがあるので紹介します。
作業編
- のこは力を入れるな、動かしていれば、いずれ切れる。
- 力を出すよりカマを研げ。
- 「しょいこ」で物を背負うときは、重い物を上に、そして高く。
- 腰ナタは右に下げても、左に下げても良いが、いずれにしても邪魔。だけどないと不便。
- 山に着いたら、すぐ仕事を始めてはいけない。道具を研いだり、火を燃やして語ったり、たち上げを十分にすれば、ケガも少ない。「ツールボックス・ミーティング」というんだって。
- 下刈り鎌の持ち方に注意。まさか担いだりしてはいないでしょうね。首切るよ。
- 下刈り鎌、刈り払うというより、ひっかけて引くという感じ。
- 下刈り鎌、両刃が使えると、往復刈れて効率が良いのだけれど、うまく研げない。
- スス竹などのある場所の下刈りは、たとえば鎌で刈ると危険。刈った跡は剣山よりも鋭いぜ。
- チェンソーの刃は表面の、いわばメッキで切れると思ってよい。
- 危ない話だけど、雷がゴロゴロなっている時くらいの時が、鎌が切れて仕事がはかどる。
- タケノコ掘り、クワはこねるな。タケノコの根が曲がっている方にクワを打ち込むだけでよい。できるならツルハシみたいなものが使いやすい。
行動編
- 山はゆっくり登れ、息が切れるぞ。
- 山で迷ったら、やたら動くな。「体力の温存」が第一。
- 山で靴を脱ぐ、次に履くとき中を見よ。マムシがはいっているぞ。
- 朝の山歩きは、なぜか2番目の人がいちばん露に濡れる。
- 野糞は、斜面の上を向いてすると安定が悪い。下向いてすると尻がつかえる。横向いてすると、足にひっかかる。がまんすると脂汗がでる。
- キジ撃ち(野糞)前のヘビ払い。これが不可欠。穴掘りも大切。
- ブヨは黒い物が好き。ヘルメットの上に黒い小さな旗を立て、そっちへおびき寄せると顔に来ない。
- 柿の木は枝がもろくて登るとポキン。それに比べケヤキは丈夫。かなり先まで折れない。