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福祉医療委員会審査状況(令和7年3月12日)

ページID:0601111 掲載日:2025年9月16日更新 印刷ページ表示

福祉医療委員会

委員会

日時 令和7年3月12日(水曜日) 午後0時58分~
会場 第1委員会室
出席者
 松本まもる、宮島謙治 正副委員長
 神野博史、鈴木喜博、山本浩史、中根義高、南部文宏、成田 修、
 長江正成、藤原 聖、阿部洋祐、加藤貴志 、柴田高伸 各委員
 福祉局長、福祉部長、介護推進監、子ども家庭推進監、
 保健医療局長、同技監、健康医務部長、感染症対策監、
 生活衛生部長兼生活衛生課長、
 病院事業庁長、病院事業次長、関係各課長等

福祉医療委員会の審査風景画像
委員会審査風景

付託案件等

議案

第 1 号  令和7年度愛知県一般会計予算
 第1条(歳入歳出予算)の内
 歳出
 第4款 福祉医療費
 第3条(債務負担行為)の内
 元愛知県春日台職業訓練校・元養楽荘撤去工事
 元緑の家撤去工事実施設計
 江南保健所施設設備改修工事
 元新城保健所設楽保健分室取壊工事
 新がんセンター整備推進業務委託契約
第 4 号  令和7年度愛知県母子父子寡婦福祉資金特別会計予算
第 5 号  令和7年度愛知県国民健康保険事業特別会計予算
第 13 号  令和7年度愛知県県立病院事業会計予算
第 20 号  一時保護施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定について
第 35 号  民生委員の定数を定める条例の一部改正について
第 36 号  指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部改正について
第 37 号  愛知県立総合看護専門学校条例の一部改正について
第 38 号  国民健康保険事業費納付金の徴収に関する条例の一部改正について
第 39 号  公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例の一部改正について

結果

全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
 第1号、第4号、第5号、第13号、第20号及び第35号から第39号まで

請願

第 71 号  「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への対応を求めるについて(医療関係)
第 73 号  「愛知県内における死亡者数激増の原因追及とワクチンとの関係調査を求める」について
第 74 号  「コロナワクチンのロット番号ごとの被害調査を求める」について
第 75 号  「新型コロナワクチン特定ロット『3005785』接種後、死亡事例や、健康被害の愛知県内の調査と被害の周知を求める」について
第 76 号  「レプリコンワクチンについての危険性周知を求める」について
第 77 号  「孤独死不審死の場合の死亡日を決定する際コロナワクチン接種歴との関係調査を求める」について
第 78 号  「調査せよ。豊川でコロナワクチン接種翌日に13歳男児が自殺。接種後の自殺は各地で起きている。接種後精神に及ぼす影響、被害調査を求める」について
第 79 号  「新型コロナワクチン副反応疑い報告における国の審議会について県として国に要望を求める」について
第 83 号  「『従来の健康保険証とマイナ保険証の両立を求める意見書』の提出を求める」について
第 84 号  「予防接種健康被害救済制度の周知を求める」について
第 85 号  「『新型コロナワクチン接種後の国の健康被害救済申請及び県の副反応等見舞金の申請状況について』のマスコミ向け文書の県民への公表を求める」について
第 86 号  「新型コロナワクチン接種記録の保存期間延長を求める」について
第 87 号  「コロナワクチン接種に注意が必要な人に関する周知を求める」について
第 88 号  「予防接種健康被害救済制度と副反応疑い報告制度との突合調査、案内を求める」について
第 89 号  「各市町村、愛知県内の病院に正しく新型コロナワクチン副反応疑い報告が行われるよう周知依頼を求める」について
第 90 号  「コロナワクチン接種後家族を亡くした遺族に必要な情報が伝わるよう処遇改善を求める」について
第 91 号  「コロナワクチン接種後、健康被害を受けた被害者の副反応疑い報告が国に反映されるようまた県民に被害が周知されるよう改善を求める」について
第 92 号  「コロナワクチン後遺症や接種後死亡した事例について県として実態調査を行うことを求める」について
第 93 号  「副反応疑い報告が国に報告された事を被害者、遺族に県や市町村から通知する事を求める」について
第 94 号  「予防接種健康被害救済制度申請時、必要な医師の受診証明、カルテの写しを被害者が苦労する事なく取得できるよう病院や医師に通知を出す事を求める」について
第 95 号  「コロナワクチンの接種事業総括の為のワクチンハラスメント調査を求める」について

結果

賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
 第71号、第73号から第79号まで及び第83号から第95号まで

閉会中継続調査申出案件
  1. 社会福祉及び社会保障制度の充実について
  2. 少子化対策及び超高齢社会への対応について
  3. 保健衛生の推進について
  4. 保健所及び県立病院の運営について
  5. 福祉局、保健医療局及び病院事業庁の行政運営について

会議の概要

  1. 開会
  2. 口頭陳情(5件 請願第73号、第83号、第85号、第86号及び第92号関係)
  3. 議案審査(10件)
    (1)理事者の説明
    (2)質疑
    (3)採決
  4. 請願審査(21件)
  5. 委員長報告の決定
  6. 一般質問
  7. 休憩(午後2時57分)
  8. 再開(午後3時7分)
  9. 閉会中継続調査申出案件の決定
  10. 閉会
主な質疑
議案関係

【委員】
 令和7年2月定例愛知県議会議案(1)139ページの第20号議案、一時保護施設の設備及び運営に関する基準を定める条例について、特に第2条の4の部分、一時保護施設は、自ら行う業務の質の評価を行うとともに、定期的に外部の者による評価を受けて、それらの結果を公表し、常にその改善を図らなければならないという部分を中心に、何点か伺う。
 昨年10月の本委員会でも、一時保護所のソフト面や生活環境の部分の改善について取り上げた。業務の専門性や機密性の高さから、外部との交流が薄く、独自のやり方で運営しているイメージの一時保護所であるが、今回の第三者評価により、よりよい運営になるような期待を込めて本題から質問する。
 まず全体的なこととして、第三者評価はなぜ必要で、どのような目的で行われるものか。
【理事者】
 一時保護所は、児童虐待や保護者の入院など様々な理由により、家庭において生活することが困難な、おおむね3歳から18歳の児童が一時的に入所している施設である。
 2024年4月に国において、一時保護される子供の状況に応じた個別ケアや、権利擁護等を推進し、一時保護の質が担保されることを目的に、一時保護施設の設備及び運営に関する基準が施行された。
 また、一時保護の基本的な在り方を示す一時保護ガイドラインの改正も併せて行われ、一時保護所は子供の権利に十分配慮し、子供の視点に立った運営や質の高い支援を行うことが求められている。
 こうしたことから、第三者評価は一時保護所の運営の透明性を高め、さらなる改善に努めることにより、支援の質の向上を図ることを目的に実施するものである。
【委員】
 一時保護所の第三者評価は、子供の安全確保のみならず、子供の権利擁護を図るための仕組みであること、質の向上に取り組むために活用されるものであることが分かった。
 次に、第三者評価に関する国のガイドラインやほかの自治体で行われている第三者評価の結果を見たが、60以上の項目について、例えば職員や関係者、入所されている子供から聞き取るというようなものであった。高い専門性と経験、例えば指摘した事項については、改善に向けた提案をすることなど寄り添う姿勢を持っているような専門機関でないと対応が困難ではないかと感じた。そのような機関でないと、質が担保されないのではないかと感じる。
 多忙を極めている現場で、受審する側の準備や時間的な負担など、協力体制を構築できるかも課題である。
 そこで、第三者評価は誰がどのような評価基準で行うものなのか、併せて関連の予算額について伺う。
【理事者】
 第三者評価は、国が実施している調査研究事業により作成された、一時保護された子供の生活・支援に関する第三者評価の手引きを参考に実施することとなっている。この手引きで示されている評価項目は64項目あり、一時保護所の環境や設備、職員体制に加えて、子供の意見が尊重される仕組みがあるか、子供に安心感を与えるケアを行っているかなど、子供本位の養育、支援が行われているかについて、外部評価機関が評価することとなっている。
 評価は、3年に1回の受審が求められていることから、次年度はまずは本県の2か所の一時保護所のうち1か所について開始し、その後順次2か所目について実施する予定である。
 なお、来年度当初予算案としては、受審に係る費用として62万8,000円を計上しているが、そのうち2分の1の31万4,000円については、国庫補助金を活用する予定である。
【委員】
 結果を公表し、常にその改善を図るという部分であるが、結果は当然、配慮すべき事項を除いては全て公表する仕組みであると思う。適正な質を確保するためには、評価の結果を真摯に受け止めること、例えば評価の結果が本県の施策や予算、人員配置の見直しなどに及ぶこともあろうかと思う。
 そこで、第三者評価の結果をどのように活用していくのか伺う。
【理事者】
 評価結果については、個々の子供の意見などプライバシーに配慮すべき事項の取扱いについて丁寧に検討した上で、ホームページ等において公表していきたい。
 また、評価で得られた課題等を的確に把握し、子供本位のより質の高い支援が実施できるよう、子供の権利保障や子供への対応など必要性が高いもの、すぐにでも改善が可能なものから改善に向けて取り組んでいく。
【委員】
 自ら行う業務の質の評価を行うという部分であるが、これまでの運営においても、自己評価や自己改革の取組が行われてきていると思う。昨年9月の本委員会における私の質問に対して、児童家庭課より一時保護所の運営改善に向けた検討チームを立ち上げたという答弁があった。昨年5月の犬山市の事案も受け、県の第三者評価委員会でもヒアリングが進んでいると思うが、最後に検討チームの開催状況と自己改革の取組の進捗について伺う。
【理事者】
 一時保護所では、児童福祉法の改正に伴う一時保護所の環境改善や子供の権利擁護の推進に向けた動きに対応するため、子供の意見を聴く場を設けるなど、子供の声を施設運営に反映させるよう努めている。
 例えばネックレスなどのアクセサリーは、他の児童や自身に危険が及ぶ可能性があることから、身につけることを制限していたが、子供自身の安心感につながる場合は、子供の立場に立ち、柔軟に対応するよう改めるなど、見直しを図っている。
 こうした運営やルールの見直しをさらに進めるため、昨年9月に一時保護所や児童相談センターの職員をメンバーとして、一時保護所の運営改善に向けた検討チームを立ち上げたところであり、これまでに6回開催している。
 この検討チームでは、現在、生活や遊び、学習など、あらゆる場面での様々なルールについて、一つ一つその必要性等を確認し、今後も継続する必要があるのか、廃止すべきなのかなどの議論を行っており、子供の意見も踏まえつつ、子供の安全の確保や、生活習慣の習得といった一時保護所に求められる役割と照らし合わせながら、順次見直しを図る。
 引き続き検討を進め、子供の権利擁護が図られ、安全・安心な支援が実施できるよう、一時保護所の運営改善に努めていく。
【委員】
 全国共通の評価基準に基づく客観的な第三者評価であること、また合理的な理由のないルールの解消についても進捗が確認できた。
 最後に要望する。先日、こども家庭庁で、虐待が疑われる子供を児童相談所で一時保護するかの判定の支援として検討されていた、人工知能、AIを使ったシステムの導入が見送られるという発表があった。これは、実証実験での精度が悪かったなどの原因があると思うが、AIの研究は必要であるものの、AIが人命や人生を左右するような意思決定や緊急性、重要性が高い領域で判断を下すことは、今の段階では無理があり、現場で十分な経験を積んだ職員の判断が何より重要である。
 一時保護所は、今後の援助方針を立てるための子供の行動診断も担うが、保護された子供にとっては自分を支援してくれる人や、福祉サービスと初めて出会う場でもあるため、そこでの体験や職員の対応が大人や社会の信頼といった評価につながる可能性もある。
 今、子供アドボケイトへの対応もしていると思うが、多岐にわたる業務かつ専門性が高く、センシティブな現場を第三者が評価するため、子供の最善の利益につながるよう、そのような目線、視点で確かな評価ができ、現場に寄り添って取り組む質の高い事業者を選定するとともに、課題があれば腰を据えて着実に改善に取り組んでほしい。
 また、改正児童福祉法において児童相談所の第三者評価は2019年から努力義務となっており、福岡県では2022年に児童相談所の第三者評価を義務づける条例が施行されるなど他県でも導入が進んでいるが、本県も導入に向けた検討、継続的に児童相談所の取組を見直すための仕組みも必要ではないか。
 本年6月には一時保護の司法審査が導入され、法的対応の補助的業務の増加も想定されている。子供の権利保障のためには、働き手の権利保障も必要なため、引き続き人員体制の強化や労働環境改善に取り組むことを要望する。
【委員】
 一時保護施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定に対して議案が提出されているが、内閣府の府令で定めた基準を踏まえ、条例で運用上の一般原則や設備の基準、職員の配置基準等を定めることとなっている。
 これまでは、一時保護所が従うべき基準があったと思うが、入所から退所までのルールは何に準拠していたのか。
【理事者】
 一時保護施設の設備及び運営に関する基準について、一時保護は子供にとって不安の大きい状態であり、子供の状況に応じた個別ケアや権利擁護を推進する必要があるため、今回、国において新たに基準が策定された。
 この基準が施行される前は、児童養護施設に係る児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を準用していた。
【委員】
 もう一点、県において今回、尾張地区と三河地区、それぞれ1か所、合計2か所の一時保護所を設置しているが、今回定める基準に適合しているか。
【理事者】
 今回定める基準では、児童の居室のほか、学習室や相談室など必要な設備を設けること、居室の定員や1人当たりの面積に関する基準、また児童指導員や看護師、心理療法担当職員などの職員について、児童数に応じて必要な人数を定めた配置基準を規定している。
 4月1日の施行に向けて、居室等を新たに学習室に用途変更するとともに、三河地区の一時保護所においては、面積基準に適合させるため、幼児の居室定員の見直しを図る。
 また、日々の生活を支援する児童指導員の配置については、既に児童数に応じた人数を満たしているが、新たに配置が義務づけられた心理療法担当職員や常勤の看護師についても、この4月から新たに配置し、適切に対応する。
 今後も児童の適切な保護が行われるよう、一時保護体制の充実を図っていく。
【委員】
 一時保護所は児童虐待の最後の砦であるため、基準にしっかりと適合させ、運用してほしい。
【委員】
 歳出第4款福祉医療費、第3項児童家庭費について、139ページの施設入所児童・里子育成費8番のウ、運転免許取得費給付金支給費と、エの自立応援給付金支給費について伺う。
 ケアリーバー、いわゆる社会的養護経験者の支援に関して、令和4年9月定例議会の一般質問及び令和6年2月定例議会の議案質疑で、その課題の取組とサポートの充実を要望した。
 就職や進学のため、児童養護施設や里親家庭から独り立ちする子供たち、いわゆるケアリーバーは、保護者から十分な支援が受けられず、経済的に困窮するケースが多いことに加えて、施設や里親とのつながりを保つことができず、孤立しがちである。
 議会で初めてケアリーバーに焦点を当てて質問、要望して以降、県はケアリーバーへの支援として、尾張に加えて西三河の福祉相談センターに支援拠点を整備し、施設職員や里親とも連携しながら退所後の生活をサポートしており、昨年4月からは各拠点に就労支援を行う職員を配置し、就職希望者に対して求人情報の提供や公共職業安定所などへの同行支援、就職面接等の助言を行うなど支援の充実を図っている。
 また、大学などへの進学者に関しては、令和5年2月定例議会の議案質疑で確認したとおり、県民からの寄附の受皿として創設した子どもが輝く未来基金を活用して、大学受験費や入学準備金のほか、進学に際して本人が一人暮らしを希望する場合、引っ越し代や家具、家電の購入費を支給し、進学を後押ししている。
 ケアリーバーの自立を支援するためには、本人の困り事を的確に把握し、自立できるようサポート体制を構築した上で、安定した暮らしができるよう継続した支援を行っていくことが必要である。
 子どもが輝く未来基金を活用した支援として、大学受験費給付金支給費と退所費給付金支給費を廃止し、新たに運転免許取得費給付金支給費と自立応援給付金支給費を計上するよう支援メニューの見直しを行うとのことであるが、今回見直しを行った理由と新しい支援の具体的な内容について伺う。
【理事者】
 子どもが輝く未来基金を活用した支援メニューの見直しについて、まず、これまで取り組んできた大学受験費給付金や施設退所時の引っ越し代などに充てる退所費給付金については、国の措置費の新設、増額など、類似する制度が本県の基金事業を上回る形で充実したことから廃止し、新たな支援を実施することとした。
 新たな支援メニューの検討に当たり、児童養護施設等に対して支援ニーズの調査を行ったところ、自動車運転免許の取得費用や家賃等の住居費、生活費について支援を求める意見が多かったため、新たな取組として運転免許取得費用の支給と自立応援給付金の支給を設け、大学進学者に加え、就職する人の自立支援についても充実を図る方向で、よりニーズに合った内容へ見直しを行うこととした。
 次に、具体的な内容について、運転免許取得費用の支給は、就職等に直接役立つ資格である普通自動車運転免許を取得しやすくなるよう、施設等を退所してから5年が経過するまでの児童に対し、免許の取得に必要な費用の一部を支給するもので、支給額は平均的な取得費用である35万円から、児童養護施設等退所者向けの資格取得のための貸付金の上限額である25万円を差し引いた10万円を上限としている。
 この貸付金について、一定期間就労を継続した場合は返還免除となることから、実質的に自己負担なく運転免許を取得することが可能である。
 また、自立応援給付金は、施設等を退所した後の継続的な支援につなげるため、退所からおおむね2か月後及び8か月後の2回、在籍していた施設等が原則対面での面談を実施し、自立に向けた相談支援を行った上で、5万円ずつ合計10万円を支給するものである。
 こうした事業を通じ、ケアリーバーが施設等を退所して間もない時期に孤立してしまうことを防ぐとともに、自立して安定した生活を送ることができるよう、支援に取り組む。
【委員】
 相談支援体制の充実が様々な観点で図られていることが分かった。ただ、今の相談支援体制は、支援者と当事者が1対1でつながる形であるため、今後は当事者同士がつながることができる機会をつくる必要がある。先行している埼玉県や愛媛県の好事例なども参考にしながら、当事者の横のつながりを広げていくことができる環境整備を進めてほしい。

請願関係

 なし

一般質問

【委員】
 新型コロナウイルス後遺症への対応及び麻疹、はしかの流行防止について伺う。
 まず、新型コロナウイルス後遺症の理解に向けた取組に関して、今年の1月下旬に、新型コロナウイルス後遺症への対応について、あいち民主県議団の福祉医療委員会委員で東京都の東京感染症対策センターを視察した。参考になる取組も多くあったため、その事例も紹介しつつ、本県の後遺症対策の実効性が向上し、それにより後遺症で苦しむ人が一日でも早く平穏な日常に戻れるよう、願いを込めて質問する。
 新型コロナ感染症の罹患後症状、いわゆる後遺症は、コロナに罹患した全ての人に起こる可能性がある一方で、倦怠感や疲労感、集中力の低下、嗅覚、味覚障害、睡眠障害、また子供の場合は朝に起きられないなどの起立性調節障害や、気持ちが落ち込む気分性障害といった見た目には現れない症状も多く、後遺症で苦しんでいる人の中には、職場や学校の理解が得られず、悩んでいる人もいる。
 愛知県では、職場復帰や日々の生活への不安を抱える後遺症への当事者に対して労働相談を行っているが、そのような人が安心して治療に専念するためには、企業や学校での理解が不可欠である。東京都では、企業や教職員向けのリーフレット等を作成し、職場における理解促進を図っているが、愛知県としては今後どのような対応を考えているのか。
【理事者】
 新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状、いわゆる後遺症について、本県のホームページに特設サイトを設け、罹患後症状に悩む人への様々な情報を提供している。
 その中には、労働関係に悩む人が相談できる窓口の案内も設けており、罹患後症状に悩む人だけではなく、事業主も相談できる体制となっている。
 昨年11月に公表した、新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状実態把握調査の結果に基づき、来年度は罹患後症状に悩む人のための相談窓口に新たな看護師等の専門職を配置し、体制を強化する予定としている。
 また、それらに加えて、企業及び学校の理解促進を図るための情報をホームページ上に提供することを検討する。
【委員】
 感染症対策サイトの情報発信の強化について、愛知県のウェブページでは、後遺症の診療を行う147の医療機関の一覧を掲載し、県民に情報提供を行っているが、職員、看護師のマンパワーも限られている状況を鑑み、ウェブサイトを通じた医療機関へのアクセスもより充実させていく必要がある。
 東京都では、ホームページに多くの医療機関が登録されており、本人が症状を選択すると受診可能な医療機関が表示できるようになっており、都民に対して分かりやすい情報が提供されていると感じたが、愛知県は今後どのような対策を行っていくのか。
【理事者】
 本県のホームページ特設サイトには、罹患後症状の診察を行っている医療機関の所在地、連絡先、対応可能な症状などを掲載した一覧を公表しており、この一覧を閲覧することが難しい人に対しては、後遺症相談窓口において医療機関の案内を行っている。
 来年度、新型コロナウイルス後遺症に対する医療機関の理解を深めるため、利用機関向けの講習会を開催する予定としており、新たに対応可能な医療機関を加えた一覧表を地域別、症状別に分けて掲載するなど、利用者にとってより見やすいページになるよう、ホームページの改修を行う。
【委員】
 次に、麻疹、はしかの流行防止について伺う。
 まず初めに、麻疹ワクチンの接種費用について、麻疹ワクチンの接種は、就学前に行われている定期接種の期間を過ぎると、その後の接種に係る費用は全額自己負担になると認識しているが、個人が麻疹ワクチンを接種する際の実費の負担額は幾らか。
【理事者】
 麻疹含有ワクチンには、麻疹ワクチンと麻疹風疹混合ワクチンの2種類があり、主に接種されているのは麻疹風疹混合ワクチンである。
 実費負担額について、1歳の子供及び5歳以上7歳未満で小学校入学前の子供は、定期接種対象のため無料である。それ以外の任意接種について、医療機関により異なるが、一般的に1回の接種につき麻疹ワクチンは5,000円程度、麻疹風疹混合ワクチンは1万円程度と把握している。
【委員】
 来年度から愛知県が行う予定の麻疹の抗体検査事業があるが、医療機関における1人当たりの風疹の抗体検査費用と同額の6,750円を全額補助するものであり、令和7年度の今回の本予算案には約900人の抗体検査を想定した予算額607万5,000円が計上されている。
 一方で、麻疹の発生、流行を防止するには、抗体保有の有無を確認することよりも、最終的にはワクチンの接種につなげていくことが重要だと考えている。麻疹の任意接種に係る混合ワクチンは1人1万円とのことであるが、今回の抗体検査事業に係る予算額600万円を仮にワクチン接種補助に振り替えた場合、1万円の補助で約600人が自己負担ゼロで麻疹ワクチンの接種が可能である。
 抗体検査に要する費用を補助するよりも、ワクチンを接種する際の費用補助を行うほうが、より効率的に麻疹の発生、流行を防止できると考えるが、県当局の所見を伺う。
【理事者】
 現在、麻疹に対しては、定期接種として幼児期に2回接種することなどにより、約95パーセント以上の人が免疫を獲得している。しかしながら、近年、海外からの持ち込みによる発生が見られ、訪日客や海外渡航者の増加に伴い、国内の麻疹の発生リスクが高まる懸念がある。このような状況の中で、国から麻疹抗体検査に関する国庫2分の1の補助事業が示されたことから、本県においても新たに麻疹抗体検査事業を実施する。
 麻疹含有ワクチンは、製造開始から出荷までに要する期間が長く、需要の変動に合わせて短期間で生産調整することが困難なものであり、その供給量には限りがある。したがって、まずは抗体検査事業を実施し、免疫を獲得できていない人を抽出することにより、限りあるワクチンの効果的な活用につなげていく。
【委員】
 麻疹ワクチンの不足に対する対応について、ワクチンの生産、供給量に限りがあるとのことであるが、本年1月、武田薬品工業株式会社は、自社が提供する乾燥弱毒性麻疹風疹混合ワクチンタケダの出荷停止を今後も継続して、出荷再開は2025年12月以降になることを発表した。こうした中、厚生労働省は武田薬品工業株式会社が出荷する予定だった数量のワクチンを代替可能な製品の前倒し出荷により補うとの見解を示している。
 他方、今後の状況によってはワクチン不足に陥る可能性も排除できず、今回の麻疹抗体検査事業においても、いざ接種する段階でワクチンが足りないことも十分に考えられる。
 今後のワクチン不足に対する懸念と今回の抗体検査事業との関係について、県当局の認識と、ワクチンの確保に向けた今後の取組について伺う。
【理事者】
 ワクチン不足に対する懸念については、現在、国によりワクチンの安定供給のための調整が行われ、今年度の定期接種の実施においては、前年度と同程度の流通量が確保される見込みである。
 しかしながら、一部の県内市町村からは、ワクチン入荷が困難な医療機関もあるとの情報を得ており、現在、国に対して県内の供給状況を報告するとともに、引き続き状況の把握を行っている。
 このような状況において、麻疹の感染防止対策を進める上では、流通するワクチンを効果的に活用するためにも、麻疹抗体検査により免疫を十分に保有していない人を抽出し、ワクチン接種につなげることが有効である。
 麻疹の感染防止対策においては、まずは幼児期の2回の定期接種を確実に実施することが重要であるが、抗体検査の結果、免疫を十分に保有していないと分かった人に対しても、十分な量のワクチンを確保することが必要である。このため、国に対しては市町村から得たワクチン不足の情報について、引き続き速やかに伝えるとともに、ワクチンが十分かつ安定的に確保されるよう要望していく。
【委員】
 2項目についてそれぞれ要望する。
 まず、新型コロナウイルス後遺症への対応に関して、愛知県の感染症対策サイトで自身の症状から医療機関を検索できる項目を追加することについては、後遺症で悩む人がより早い段階で症状に合った受診機関を見つけられるだけでなく、相談窓口へ対応する職員や看護師の業務効率化にもつながるため、ぜひ導入を検討してもらいたい。公開されている受診機関の一覧を見たが、見づらいと感じた。他方、ネットの扱いに慣れていない高齢者などに対しては、引き続き利便性のよい電話による相談も継続してほしい。
 もう一点、麻疹ワクチンの接種補助について、今回の抗体検査事業は、先ほど説明があった費用の2分の1が国庫補助であり、本県もその方針に従って実施するものと理解している。そうした事情もあり、抗体検査事業の実施を否定するわけではないが、麻疹の発生、流行防止には、最終的にはワクチンの接種につなげていくことが重要である。2015年3月に、日本は世界保健機関(WHO)による麻疹の排除が達成されたとの認定を受け、麻疹の抗体保有の状況については、10代後半が多少低いが、現在では2歳以上の全世代の約95パーセントの人がほぼ満遍なく抗体を有している。
 今後は、日本における麻疹の完全排除に向けて、全世代の残り5パーセントの人を対象とする本抗体検査事業を実施すると同時に、乳幼児期の2回の定期接種を着実に行うこと、さらには抗体検査で明らかとなる、抗体を保有していない人への早期のワクチン接種につなげるための費用補助も併せて実施してほしい。
【委員】
 大きく二つのテーマで2問ずつ質問する。
 まず、産後ケア事業の充実について、昨年12月に、私の地元の西尾市で母親と2歳、ゼロ歳の無理心中の可能性があると思われる大変悲しい事件が発生した。地元の子育て世代や子育て支援に関わる関係者にも大きな衝撃が走り、原因は分からないが、行政が様々な施策や制度をつくっていてもそこまでたどり着かない、何か予兆があったとしてもフォローし切れない事例があることを改めて認識した。
 事件後、地元の子育て情報を発信する市民団体を中心に様々なアクションが起こり、利用のハードルが高いという声があった産後ケア事業について、利用者目線での改善提案があり、本サービスの利用希望者が、申請時に市の担当者と面談を行うか行わないかを選べるようになり、利用料金の引下げ等が行われることとなった。
 産後ケア事業の実施は、令和元年の母子保健法の改正により、令和3年度から市区町村の努力義務となった。また、少子化社会対策大綱において、令和6年度末までの全国展開を目指すとされており、市町村に対して2分の1の国庫補助がある。
 こども家庭庁によると、2022年度は全国の市区町村の8割超で実施されているが、出産した人に対する利用率は10.9パーセントにとどまっている。
 本県の実態について、年度末に策定が予定される愛知県こども計画はぐみんプラン2029(案)によると、切れ目ない保健、医療の提供について、産後の心身の負担を軽減するための産後ケア事業を必要な人が受けられるよう、支援体制の充実を図るとされている。また、目標として、2023年度の産後ケア事業の利用率5.8パーセントを増加させることとしているが、具体的な数値目標は設定されていないと認識している。
 そこで、産後ケア事業に関するこれまでの県の取組と市町村の現状について伺う。
【理事者】
 2015年度から開始となった産後ケア事業は、母乳育児がうまくいかずに悩む人や、慣れない育児で心身の不調が生じた人などに対し、休養の機会を提供するなど、育児指導を行っている。
 実施主体である市町村においては新たな取組のため、産後ケア事業の意義や内容についての理解が深まるよう、県では行政の保健師や医療機関の助産師を対象とした資質向上のための研修会を継続して開催している。
 また、県保健所においては、管内の市町村、医療機関等による連携促進会議を実施し、関係者の間で産後ケア事業の取組を進めるための具体的な検討を続けてきた。
 なお、この事業の対象者が、家族等から十分な育児等の援助が受けられない産婦とその子で、心身の不調、または育児不安がある者と限られてきたことから、本県における利用率は、2021年度が1.7パーセント、2023年度が5.8パーセントである。
 こうした取組を通じて、県内の全ての市町村で産後ケア事業が実施されている。
【委員】
 市町村が行う産後ケア事業について、支援を必要とする全ての人が利用できる体制にする必要があると考え、地元近辺、特に県内で事業を行っている助産師に話を聞いた。母子が日帰りで滞在する通所型、病院などに泊まる宿泊型、助産師が自宅を訪れる居宅訪問型、それぞれ課題がある。例えば、市町村によって利用料や利用回数に差があり、豊橋市ではクーポン券が配布される方式であるなど、利用促進に向けた取組でも大きな差がある。
 また、委託先でもある事業者にとっても、産後ケア事業は決してもうかる事業ではなく、事業の継続性に課題があるという話も聞いた。公益社団法人日本助産師会の2021年の産後ケアに関する調査実施報告を見ても、産後ケア事業の市町村委託を受けている助産所においては、赤字が6割、年間出生者数が1,000人以下の場合は赤字が7割となるなど、困難な状況が浮き彫りとなっている。
 最近の国の動きとして、総務省において子育て支援に関する行政評価、監視が実施され、産後ケア事業等の委託先が地域によって偏在していることなどから、市町村単独での対応に苦慮している実態が見られた。その結果に基づき、令和4年に厚生労働省に対して、都道府県が関与した広域的な対応など、都道府県の市町村に対する支援を促すことを求める勧告がなされている。
 さらに令和7年度からは、母子保健法に規定する産後ケア事業を、子ども・子育て支援法に基づく地域子ども・子育て支援事業に位置づけがなされ、市町村は事業計画を作成し、県はその計画を協議、確認することになった。また、これまで国から市町村に対し、2分の1の負担割合で財政支援をしていたが、今後は国2分の1、県4分の1、市町村4分の1として、県の費用負担も生じると聞いている。
 また、令和4年度に実施した国の調査研究事業によると、市町村の事業実施における課題としては、61パーセントの市町村が委託先の確保を挙げ、市町村が都道府県に求める支援については、集合契約等域内での契約実務の支援が53パーセント、産後ケア事業者との情報連携のための書式や連携フローの策定が28.9パーセントであった。
 そこで、このような状況を踏まえて、産後ケア事業について今後県がどのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
 産後ケア事業は、母と子、その家族が健やかな育児ができるよう支援する事業の一つであり、県としても全ての市町村で実施されるよう支援してきた。今年度、市町村に対し産後ケア事業において、広域的な整備の必要性について調査したところ、居住地以外の医療機関であっても利用しやすい仕組みや、そのための契約等の事務の合理化、ケアを提供する職員への研修を希望するなどの意見があった。
 この調査結果を踏まえ、来年度産後ケアを提供する産科医療機関の助産師や市町村職員を対象に、2024年10月に国が改定した産後ケア事業ガイドラインに基づき、改めて産後ケアの基本を再確認するための講演と、医療機関の実践報告を組み合わせた研修を計画している。
 また、市町村や産科医療機関などの状況を丁寧に把握し、関係者間での情報共有と十分な合意形成を図っていく。
 県としては、産後ケア事業が地域子ども・子育て支援事業に位置づけられた点も踏まえ、必要な人に適切に提供できるよう、産後ケア事業の利用率の増加を目指し、市町村の区域を越えた調整に取り組んでいく。
【委員】
 県内全ての市町村で取組が始まっているとのことであるが、利用率が低く、課題が多い。もともとは心身に不調がある人や強い育児不安がある人という条件があったが、今は希望者全員が受けられる制度となっている。
 ただ、実際に利用に至るまでにはハードルが高いため、今後は県費の負担分で、市町村が利用者側の視点に立った事業へと予算を使えるよう、事業サービスの利用のしやすさに差異が出ないように、好事例の展開や質の向上に積極的に努めてほしい。
 また、産後ケア事業の担い手である事業者、特に地域の助産師は経営上も大変厳しい中で、少しでも安心して妊娠、出産、子育てができるよう、志を持って事業に取り組んでいる。市町村の委託先確保のためにも、委託費が適正な水準となり、事業継続ができるよう、県として助言してほしい。
 次に、産後ケア事業について、地元で活動する助産師から話を聞く中で、本県はいわゆる特定妊婦への支援が進んでおらず、特に特定妊婦の居場所づくりに対して取組が不足しているのではないかという問題提起があった。
 特定妊婦とは、児童福祉法において、出産後の養育について、出産前の支援が特に必要と認められる妊婦と定義されている。例えば、無職で保険証もなく妊娠していたり、未受診のまま飛び込み出産や自宅等で出産するなど、母子の命のリスクが高まるケースもあることから、出産前の支援が必要であると自治体が認定するものである。
 背景には、貧困や虐待、DV、若年妊娠、性被害や性暴力、そして精神疾患や障害などがある場合が多いと言われている。2020年の厚生労働省の調査によると、特定妊婦の登録者数は全国で8,327人で、2010年からここ10年で10倍に急増している。
 特定妊婦と認定されると保健師による家庭訪問などの支援対象になるが、そもそも特定妊婦として登録されていないケース、これは病院等での受診経験がなく、妊娠届などの情報が行き届いていないことによって、実際に困難を抱えている人の情報を自治体保健センターなどが把握できていないため、実際にはもっと多いと思われる。
 このように既存の切れ目ない支援の網から漏れ、周囲に助けを求められない妊婦をどう把握していくのかも大きな課題となっている。実際に本県において思いがけない妊娠で困っている人に対し、専門の女性相談員がメールや電話で対応する相談の窓口、にんしんSOS愛知を運営しているNPO法人いるからの職員から話を聞いたところ、日々予期しない妊娠等によって葛藤を抱える人、複合的な困難を抱え追い詰められている人、そしていわゆるゼロ日死亡、ゼロ歳児死亡の背景にあるとされる母親の孤立化など、深刻で様々な相談に寄り添い、専門職員が連携し、相談者が必要とする正しい情報や利用可能な社会資源を伝え、関係機関を探し、つないでいる状況であった。
 特に特定妊婦に関しては、行き場のない妊婦を受け入れる公的な施設がほとんどない中で、どのように切れ目ない支援につないでいくのか、大変苦慮している現状であった。
 県において、特定妊婦の数の把握はできているのか。
【理事者】
 特定妊婦は、複数のリスク要因が複雑に絡み合う状況にあることも多く、特に支援が必要な人については、各市町村に設置された要保護児童対策地域協議会に登録し、市町村の母子保健部門や福祉部門等、複数の関係機関が連携して支援に当たっている。
 名古屋市を除く県内各市町村の要保護児童対策地域協議会に登録されている特定妊婦の人数は、2023年4月時点で93人である。
【委員】
 これらの人に対して、まずは切れ目ない支援が大事であるが、数字に現れない潜在的なハイリスク妊婦、妊産婦をどう把握していくのか、またそのような人を受け入れる公的な施設についても整理が必要である。
 先ほどのNPO法人等の話の中で、県内で数少ない妊産婦の居場所の事例として紹介されたのが、名古屋市中川区にある一般社団法人ライフ・ホープ・ネットワークであった。実際に訪問し、代表理事の富田美代子氏、創設者のシンシア・ルブル氏に話を聞いた。
 この法人はこれまで20年間、公的な資金援助もなく寄附等で運営している。主な支援内容としては、様々な困難を抱える妊産婦と創設者のシンシア・ルブル氏の一軒家の自宅でスタッフと家族のような生活、週5日から6日の夕食を提供され、様々な身の回りのサポート、例えば不安なことを助産師に相談する、病院や買物への送迎、何か問題が起きたときや役所など公的機関への付添いなどを受けながら過ごすというホームステイである。そして、妊娠その他や、中絶カウンセリングの事業も取り組んでいる。必要であれば妊娠初期から入居可能で、特別養子縁組、シングルマザー、どちらを希望する人も入居可能であり、産後も特別養子縁組の場合は1か月、シングルマザーの場合は2か月間滞在可能とのことであった。特別養子縁組を予定している女性が妊娠中に滞在できる場所は、県内でほかにないのではないかとのことであった。
 直近5年間のホームステイ31人の実績を見せてもらったが、問合せ経路としては、区役所や市役所から16人と半分以上、本人から直接、病院、養子縁組あっせん団体がそれぞれ4人ずつ、その他児童相談所や親からが1人、ここには先ほどのにんしんSOSからの相談も含まれる。また、ステイ開始前の居住地は、名古屋市内が22人、県内の名古屋市外が6人、県外が3人、また最終的にシングルマザーを選択した人が19人、特別養子縁組を選択した人が12人であった。
 問合せ機関が半分以上行政機関であるというのは、公的な居場所が不足していることのあかしであり、名古屋市外からも入居者がいるのは、県内全域でこのような居場所が不足しているからである。
 国は、昨年4月に施行された児童福祉法の改正で、特定妊婦らの支援事業を法律に新たに明記し、自治体の努力義務とし、妊産婦の生活支援に特化した公的な支援策、妊産婦等生活援助事業ができた。これは、安心する住まいがない妊婦に住まいや食事などを提供する生活支援が提供される仕組みで、ほかにも妊娠や育児に関わる相談支援や本人の意思を尊重した上で、病院や行政への同行など様々な支援が受けられるものである。国が2分の1、地方自治体が2分の1を負担し、都道府県や市区町村が事業の実施主体となり、民間団体と連携して支援が行われている。
 先ほどの一般社団法人ライフ・ホープ・ネットワークは、多くの寄附と善意のボランティアで支えられており、今後も悩みや困難を抱える妊産婦のよりどころとして活動してほしいと思うが、ニーズが増えるのであれば民間だけで続けていくには限界がある。国が法定事業として制度化し、スキームができたことをきっかけとして、このような妊産婦を守る公的な拠点を既存の社会資源も活用しながら整備していくことが必要であり、期待の声もある。
 県が実態把握を積極的に行い、どのように県外も含めて広域で連携していくかも考える時期に来ているのではないか。
 そこで、特定妊婦の居場所活用について、課題の認識を伺う。あわせて、妊産婦等生活援助事業について、今後の県の取組の考えを伺う。
【理事者】
 様々な課題に直面している妊婦の中でも、家庭生活に支障が生じているなど、当面の住む場所を失うおそれが高い人については、母子の健康や生命に関し著しくリスクが高まった状態にあるといえることから、産前産後の安定した生活環境を整えることは重要である。
 本県では、これまでも支援を必要とする妊婦が安心して出産を迎え、出産後の母子生活を送ることができるよう、女性相談支援センターや県、市の福祉事務所等が連携して、女性自立支援施設や母子生活支援施設等と協力しながら、出産前後の住まいの提供や相談支援等に取り組んできた。
 妊産婦等生活援助事業は、家庭生活に困難を抱える妊産婦等に特化した事業であり、専門の支援員や看護師等を配置の上、相談支援や一時的な生活場所の提供等に常時対応するものである。
 一方、既存資源の組合せにより支援につなげられるケースもあることから、そうした取組の効果や支援ニーズなどについて、対象者により近い立場で支援を担う市町村など、関係機関の意見も聞きながら、妊産婦等生活援助事業について研究していきたい。
【委員】
 最後にまとめて要望する。確かにこの事業を実施しようとすると、支援コーディネーター、看護師等、母子支援員3人の配置が必要である。また、広い愛知県において場所をどこにするかといった課題があることも理解できる。
 民間でこのような支援活動している団体でも、支援計画の策定、相談支援、居場所や食事の提供全てを行うのは非常に難しいと思うが、それぞれ今行っている事業を複数の団体で連携できれば、民間でも受け手ができる。こういう民間委託も含めて、兵庫県など先進事例を参考とし、本県にとって最良の形となるように、様々な角度からヒアリングの上、研究を進めてほしい。
 また、既存の社会資源、例えば母子生活支援施設ではどこまで支援ができているのか、これは本来、母親と子供が一緒に入所することを原則としている施設であるが、ここに特定妊婦を緊急一時保護のような形で受け入れている場合、相談支援や病院への同行支援、自治体との調整のどこまでができているのか、これも併せて調査してほしい。
 さらに、母子健康手帳をもらうことが既存の支援の枠組みに適合するためのファーストステップであるとするのであれば、そこに必要な妊娠診断書、産婦人科にかかって医師が作成するが、受診料で躊躇してしまうケースもあると聞いている。市町村によっては、特定妊婦と疑われる人に対し、産科受診料等の支援、初回産科受診料の支援が行われているケースもある。これには、国の支援もある。対応にばらつきがあるため、確認してほしい。
 最後に、本日取り上げた二つのテーマであるが、こども家庭センターの役割に期待する声が多くある。これは改正児童福祉法により、今年度から設置が自治体の努力義務となっているものであるが、県内市町村でも設置が進んでおり、昨年5月で72.2パーセントと聞いている。これは、母子保健と児童福祉の両分野に関する相談や支援、運営を一体的に担い、出産前から子育て期まで、切れ目ない支援を行うことができるような機関という国の理念があるが、現状市町村の現場では追いついていないケースが多いと感じている。
 今後、県としても国と連携して、市町村に課題の聞き取りを行うなど、現状の把握を願う。
【委員】
 私からは二つのテーマに関して質問する。先ほど委員から特定妊婦に関する質問があったが、特定妊婦に当たる可能性がある多胎妊婦から生まれてくる多胎児家庭への支援という観点で一つ目のテーマについて伺う。
 このテーマに関して、議員一期目の初めての一般質問で取り上げたが、以降、はぐみんプランにもしっかりと多胎児家庭支援の重要性とそのサポート内容の充実が図られてきた。
 とりわけ外出の際の困難さ、単胎児家庭との違いなど多くの課題がある中、訪問型支援による当事者への寄り添い型支援、いわゆるホームスタートというものが県内で導入された。その後、コロナ禍で集い合う、訪問することが非常に困難になる期間が数年続く中、孤立、孤独にならないようオンラインを活用した支援を要望し始まったのが多胎家庭交流会である。
 そこで、これまでの多胎家庭交流会の内容と実績について伺う。
【理事者】
 同時に2人以上の妊娠、出産となる多胎妊娠では、妊婦の身体的負担に加え、孤独や育児への不安などの心理的負担が生じることが危惧されている。このため、当事者同士が日常生活の悩みや工夫を共有し、交流による支え合いにより不安を軽減し、健やかな妊娠、出産につながるよう支援するオンラインによる多胎家庭交流会を実施している。
 内容は、助産師による多胎特有の不安や悩みに対応した妊娠中の過ごし方や、低出生体重児と新生児集中治療室についての講話、先輩パパによる育児などについての講話、先輩ママからの退院後の育児に関するアドバイスなどの学びと交流会を組み合わせ、1クール4回として年に3クール、延べ12回実施している。
 なお、今年度の実績としては、2月までに11回開催し、延べ44組70人が参加した。
【委員】
 内容と実績は理解した。オンラインを活用した交流会に関し、結局需要があるのはパパママ教室だけで、なかなか妊婦同士の交流会という観点で人数が増えてこないという話も聞いている。
 一方で、現地で会いたい、交流したいという要望も多くある中で、多胎家庭交流会をオンラインのみならず、現地で対面方式により開催することができないかについて伺う。
【理事者】
 身近な母子保健サービスについては、実施主体が市町村となっているが、出生全体に占める多胎児の割合が3パーセント程度である現状を踏まえ、市町村単独の多胎家庭交流会の開催が難しい場合があることから、県として広域的に取り組んでいる。
 母体への負担が大きく、外出が困難となる場合もある多胎妊産婦が遠くに住んでいても気軽に参加できるよう、対面ではなくオンライン形式とした経緯がある。
 現地開催については、今後参加者のニーズなどを調査した上で、交流会の在り方について検討する。
【委員】
 冒頭にも述べたが、多胎と単胎の接し方には違いがあり、その違いを認識した上で支援を行う必要がある。市町村における支援者の多胎への知識を一定レベルに保つには、行政の担当者、支援者が変わっても理解度が落ちないようにする方法を、県として働きかける必要がある。
 そこで、市町村における多胎児家庭の知識習得平準化の観点で、例えば一般社団法人日本多胎支援協会が発行した本などを活用することも一つの方法と考えるがどうか。
【理事者】
 多胎児では、生まれたときの体重が2,500グラム未満の低出生体重児の割合が高く、同時に2人以上の育児となることなどによる多胎児家庭特有の悩みがある。本県としては、市町村職員の資質向上のため、多胎家庭の支援に関する研修会を実施している。また、国が作成した多胎児支援のポイントや一般社団法人日本多胎支援協会による多胎家庭支援アセスメントガイドブックなどの参考資料を活用し、支援者が変わっても多胎家庭へ必要な支援を提供できるよう、引き続き市町村へ周知、啓発していく。
【委員】
 県の旗振りもあり、この分野においては市町村における支援が充実し始めている。多胎児家庭にはどのような支援があるのか、どのような内容か、また、多胎児家庭が気をつけなければならないことや相談先などの情報が上乗せされている。
 しかし、残念ながら支援内容の追加により、情報提供が点在しており、分かりにくいという課題もある。関連情報、例えば多胎児支援、リトルベビー、いわゆる低出生体重児に関する情報を相互に紐づける、内容の充実など当事者が欲しい情報を分かりやすく伝えることが必要だと考える。
 そこで、多胎児家庭支援や出生時の状態に重複傾向がある低出生体重児、いわゆるリトルベビーに関する情報提供、ホームページの改善を図っていくべきだと考えるがどうか。
【理事者】
 県のウェブページには、多胎児家庭支援に関連するものとして、低出生体重児を持つ保護者のための手帳、あいちリトルベビーハンドブックや多胎児の支援に関する情報のお役立ちリンクとして、あいちふたご・みつごマップなどを掲載している。
 今後、情報を必要とする人がより閲覧しやすいウェブページとなるよう、見出しの工夫や関連する項目のまとめ方など、構成について検討していく。

あいちリトルベビーハンドブックの画像
あいちリトルベビーハンドブック

【委員】
 このテーマについての要望であるが、多胎児支援の充実につながるような施策を私も今後提案したいと考えている。現場の声を反映し、支援内容を改善してほしい。
 例えば先回の本会議の一般質問で、パーキングパーミットについて、まだ愛知県では整備されていないが、質問があった。パーキングパーミットについては、多胎児家庭はまだ対象となっていないと理解している。多胎児家庭は外出に困難を抱えるため、パーキングパーミットを整備する際には、ぜひ多胎児家庭の支援という観点でも対象に入れてほしい。
 今後も情報の見える化と見えやすい化に取り組んでもらうよう、このテーマについて要望する。
 次に、母乳バンクへの支援という観点で質問する。
 先日発表された2024年の出生数は、前年比マイナス5パーセントの約72万人であり、少子化の進行は政府想定より15年も早く到来している。少子化が加速している静かな有事といえる日本であるが、赤ちゃんの命の重さに昔も今も変わりはないものの、今の赤ちゃんが背負う社会的意義は、昔と比べ重くなっているのではないか。
 生まれた瞬間から無事に育ってほしいと皆が願う中、早産児、いわゆる低出生体重児、リトルベビーとして生まれてくる赤ちゃんも少なくない。そんなリトルベビーは、新生児集中治療室(NICU)に入るケースも多々あり、母親としばらく離れる状態になる。母親の授乳で元気に育てばよいが、母親の身体状態で授乳できないケースもある。そのような場合に、冷凍保存した別の女性から提供された母乳を届けて、必要な人に使用してもらうのがドナーミルクである。ドナーミルクは母乳バンクが提供しており、令和5年6月に国内3か所目として藤田医科大学内に開設された。
 そこで、ドナーミルクの対象となる1,500グラム未満の極低出生体重児並びに2,500グラム未満の低出生体重児の10年前と直近の出生数の動きについて伺う。
【理事者】
 人口動態統計によると、母乳バンク事業のドナーミルクの対象となる本県の1,500グラム未満の極低出生体重児について、10年前の2014年は477人、2023年は404人と73人の減少となっている。出生数全体に占める割合については、おおむね0.8パーセント程度で推移している。
 次に、本県の2,500グラム未満の低出生体重児について、2014年は6,378人、2023年は4,936人で、1,442人の減少となっている。出生数全体に占める割合はおおむね10パーセント程度で推移している。
【委員】
 ドナーミルクについて、令和3年2月定例議会の一般質問で取り上げて以降、折を見て支援充実を訴えてきた。当時の県の取組事業の一つとして説明があったのが調査研究事業である。
 定期的に愛知県周産期医療協議会が開催され、その中の調査研究事業の一つとして、ドナーミルクを安全に使用するための体制構築に関する調査研究事業が3年間にわたって行われ、既に終了したと理解しているが、その結果はどのようか。
【理事者】
 周産期母子医療センターの専門医から構成される愛知県周産期医療協議会において、2020年度から2022年度の3か年に、藤田医科大学が中心となってドナーミルクを安全に使用するための体制構築に関する調査研究事業を実施している。
 この調査研究では、NICUのある県内21医療機関を対象に、ドナーミルクの需要を把握する調査を行った。調査の中でドナーミルクを使用するためのマニュアルを提供するなど、医療機関への支援を行った結果、初年度の2020年度は4医療機関、3年目の2022年度は8医療機関でドナーミルクが活用された。
 この調査結果を基に、ドナーミルクを必要としている施設に対して、利用開始に当たってのドナーミルクの使用法、管理法についての助言が有用であったと報告されている。
【委員】
 低出生体重児、いわゆるリトルベビーに使用されるドナーミルクは、赤ちゃんにとっての壊死性腸炎や様々な病気への免疫ともなり、当事者以外には残念ながらまだその認知度は高くない。名称も内容も知っている割合は、調査によると約2割とまだ低いままである。知られていないと使われないため、まずは知ってもらう有効な啓発活動が必要である。
 そのような中、啓発の一環として提案した、母乳バンクチラシを母子手帳交付時に一緒に渡してもらうという取組について、東京都も愛知県の取組を参考にチラシ配布を開始したと聞いた。
 加えて、若者への啓発の観点で、全国初の取組として、高等学校での特別講座の実施と藤田医科大学での母乳バンク及びNICUの現場見学も提案し、看護系学科がある豊田東高等学校、大府市の桃陵高等学校で毎年開催されている。また、ビジネスコースではのり生産者とコラボし、売上げの一部を母乳バンクに寄附するという取組を行っている。
 昨日、豊田東高等学校で母乳バンクの特別講座が開催され、見学に行ってきた。将来使用する状況やその知識を伝えることがあるかもしれない生徒にとってドナーミルクへの正しい事前知識があると対応に歴然とした差が出てくる。実際に知っていると、その有用性にとてもポジティブになるため、県でもホームページなども使って、分かりやすく他の支援策、例えばリトルベビー支援などと連携し、PRやプレパパママ教室で配布するのも有効である。
 ドナーミルク、母乳バンクは提供を受けた愛知県の周産期母子医療センター19施設のうち、2024年は11施設で利用されている。また、ドナーミルク供給については、母乳バンクにおける愛知県のドナー登録数は2024年時点で82人、日本全体でのドナー登録者における愛知県の比率は約13パーセントとのことである。つまり、多くの愛知県のママが協力しているドナーミルク、全国的に見ると2023年度はドナーミルクを利用した乳児は、前年度比約40パーセントの増加と言われている。
 しかし、需要は高いが、認知度と医療機関の収益性が課題となっており、ドナーミルクを使用するには、必要量に応じた賛助会員費が医療機関で発生する。昨今の医療機関の経営の厳しさを鑑みると、参画したいがコスト面で参画できない、補助があれば施設数も増えるといった声も聞く。
 コスト負担軽減への支援は、東京都以外で唯一国内の母乳バンクがある愛知県としての責務や、国内における愛知県のドナー登録者の割合の多さを考えると、日本一子育てをしやすいことを標ぼうする愛知県として取り組むべき支援策だと考えるが、どうか。
【理事者】
 母乳バンクは、2020年及び2021年に民間団体により東京都内に設置されている。これら2か所の母乳バンクから全国の医療機関にドナーミルクを供給しているが、その役割を補完するものとして2023年、3か所目の母乳バンクが藤田医科大学病院内に設置された。
 愛知県内では、現在19の周産期母子医療センターのうち、約6割の11医療機関がドナーミルクの送付を受けており、2020年度の4医療機関から増加し、活用が進んでいる。
 全国の状況であるが、2023年度の国の調査研究資料によると、母乳バンクに登録されているのは89医療機関で、全国の周産期母子医療センターの408医療機関を分母とすると、2割程度にとどまっている。現在、国においてこども家庭科学研究費を活用して研究が行われている状況である。
 県としては、母乳バンク制度に対する支援について、国が統一的なルール、基準を定めた上で実施することが適切であると考えているため、まずは国の制度化に向けた動向を注視する。
 また、引き続き母乳バンクを広く知ってもらうため、母子健康手帳と同時に配布できる資材を市町村に提供し、周知啓発に努める。
【委員】
 最後に要望する。国の動きを注視したいとのことだが、注視がいつ終わるか分からない状況の中でも、低出生体重児は生まれ続ける。
 冒頭にも述べたが、2030年までが少子化反転へのラストチャンスと言われており、女性の県外流出も止まらない愛知県として、安心して子育てできる異次元の少子化対策が必要と考える。
 先日、東京都保健医療局と意見交換した。東京都は、2025年度から母乳バンク支援の一つとして、ドナーミルク活用促進に医療機関にとって負担要因となっている賛助会員費の補助制度を新たに創設することとなった。なぜ始めたのかと聞くと、今の少子化、この制度に反対する理由はあるかということであった。この支援により、現在のドナーミルクを使用していない施設も使用に前向きに検討できるかと思う。全国に母乳バンクは東京に2か所、愛知県に1か所の計3か所しかない。
 中部地方における意味合いは大きく、関東以外にあるという点で災害時の安心拠点ともなっている。また、不妊治療への保険適用も始まった。それもあり、早産児の数も増加傾向にあるため、今後もドナーミルクの需要が高くなると想定されている。
 1人の赤ちゃんの意味合いが昔より大きくなってきている中、まずはコストの負担軽減を藤田医科大学の母乳バンクと協議してもらい、東京都の制度も参考にしながらケーススタディーし、本支援策への前向きな一歩を踏み出してもらうことを要望する。
【委員】
 RSウイルス感染症対策について伺う。
 RSウイルス感染症とは、呼吸器の感染症であり、日本を含む世界中に分布している。何度も感染と発病を繰り返しているが、生後1歳までに半数以上が、また2歳までにほぼ100パーセントの子供がRSウイルスに少なくとも一度は感染するとされており、私はこの名前を今回初めて知った。
 症状としては、発熱、鼻水などの軽い風邪症状から重い肺炎まで様々であり、RSウイルス初回感染時にはより重症化しやすいと言われている。特に生後6か月以内のRSウイルスに感染した場合には、気管支炎、肺炎など重症化する場合がある。特に早産児や生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患がある子供、小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児や生後6か月以内で乳児の感染には特に注意が必要と言われている。
 RSウイルス感染症で感染した乳幼児で重篤である場合には、処方箋などのデータ分析に基づく論文などのデータをベースとした製薬会社が実施したシミュレーションによると、生後1年以内に8パーセントから9パーセントの乳児が外来受診を経験し、2パーセントから3パーセントの乳児は入院を経験すると推計されている。
 その患者数は、外来患者が最大7万4,000人、入院患者が最大2万1,000人、入院費規模では47億円と推定される。インフルエンザと疾病負荷を比較しても、診断から7日までの入院や6か月未満の基礎疾患や早産児でない乳児だけを見ても、インフルエンザは8.94パーセントであるが、RSウイルス感染症は23.7パーセントと推計され、実績ベースで約5倍であると言われている。
 乳幼児のRSウイルス感染症への有効な対策としては、一つ目は生まれてくる乳児の感染を予防するために、妊娠中の母親が接種する不活性ワクチン、二つ目はワクチンではないが、重症化を予防するための予防薬としてのモノクローナル抗体製剤で、早産児が生まれつき呼吸器や心臓に病気を持っている乳児、免疫不全を持っている乳児などに接種する予防薬の二つがある。
 二つ目のモノクローナル抗体製剤は、パリビズマブや、昨年2024年3月26日、まさに約1年前に薬機法に基づき承認されたニルセビマブなどがあり、この二つは注射液でワクチンではなく、RSウイルスに対して予防効果を発揮する抗体である。
 この抗体は、ウイルスと結合して細胞への感染を阻止し、重症化を抑制する。重症化を抑制することで、先ほどにも述べたとおり、子供の入院や外来などの数を減らすことができると予想される。感染により親が仕事を休まざるを得なくなり、加えて配偶者はパート収入の影響も考えられる。副作用についても、アレルギーの血小板の減少などはあるが、ごくまれであり、他のワクチンと比較しても少ない方である。
 また、厚生労働省は、定期接種化していないが、アメリカのアメリカ疾病予防管理センター(CDC)も推奨しており、スペイン、フランスなども全ての子供の予防として定期接種化している。
 子供がRSウイルス感染症を発症し、重篤となった場合、1週間近く入院する必要があり、子供や保護者に多大なる負荷がかかる。
 RSウイルス感染症の流行期について、これまでは秋から冬にかけてであるが、流行のタイミングが早まっており、より長期間続く地域や都市もあると分析されている中、本県における流行期の把握について伺う。
【理事者】
 RSウイルス感染症は、季節性インフルエンザと同様、感染症法で定められた5類感染症のうちの定点把握対象の感染症であり、感染状況については毎週月曜日から日曜日までの1週間分の患者数を県内182の小児科定点医療機関から報告してもらい、流行状況を把握している。
 2020年以前は秋冬に流行が見られていたが、2021年以降は夏に流行のピークが見られている。
【委員】
 2番目に、RSウイルス感染症は、県民にあまり認知されておらず、私も今回初めて知った。県民をはじめとした医療機関やこども園等の保育施設、子供ルームなどの施設に注意喚起が非常に重要であるが、本県における流行時の注意喚起について伺う。
【理事者】
 RSウイルス感染症については、インフルエンザのような流行入り注意報発令、警報発令などの基準はないが、発生動向調査の結果、RSウイルス感染症の患者数の増加が著しいなど流行が探知された場合は、記者発表の上、県のホームページで注意喚起を行うとともに、関係機関に対しても注意喚起を行っている。
【委員】 
 RSウイルスに感染した場合、仮に重篤化した場合には、入院などの医療費の負担、保護者の経済的負担が強いられることが予想される。RSウイルス感染症の予防方法として、モノクローナル抗体製剤であるパリビズマブや、昨年承認された薬機法に基づく承認を受けたニルセビマブの投与がある。
 ニルセビマブについては、重篤なRSウイルス感染症リスクを有する新生児、乳児及び幼児におけるRSウイルス感染症における下気道疾患の発症抑制、その予防に効果があるため、新生児、乳児及び幼児に広く投与することにより、RSウイルス感染症の重篤化を防ぐこととなり、さきにも述べたとおり、医療費や経済的負担の軽減につながる。
 新生児、乳児及び幼児、特に全ての6か月未満の乳児への接種について県の助成を行う必要があると思うが、県の見解を伺う。
【理事者】
 現在、国の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会において、早産児や基礎疾患を有する子供だけでなく、健康な正規産児を含めた集団を対象とした定期接種に向け、費用対効果について検討が進められている。
 その分科会の中で、モノクローナル抗体製剤の投与については、定期接種化を図る上での有効性、安全性等について検討されている段階であることから、現時点において県としては、国の動向を注視している。
【委員】
 最後に要望する。新型コロナウイルスやインフルエンザについてはスクリーニング検査が行われるが、RSウイルス感染症により、原因不明の高熱やせきが続く子供たちがいるかもしれないことを心配している。
 そのため、どこかの市町村で、このワクチンを試しに接種してみることを検討してほしい。
【委員】
 トコジラミについて、3問質問する。
 本年2月8日の産経新聞では、トコジラミの発生が急増していることを報じている。トコジラミが増えているのは、日本を訪れる海外からの客が増加し、卵や幼虫が渡航客の荷物や衣服の裏やポケットなどに付着して持ち込まれることが原因の一つとされている。
 南京虫とも呼ばれるトコジラミは、夜、部屋の隙間などから出てきて活動し、人や動物を刺して吸血する。吸血しなくても長期間生きることができるため、長く空室になった部屋でも注意が必要とされている。
 そこで、本県におけるトコジラミの発生状況について伺う。
【理事者】
 本県では、各保健所でトコジラミやダニなどの衛生害虫に関する県民からの相談に対応している。相談件数は、直近10年間では2015年度が最も多く、244件であったが、2023年度は34件であった。また、害虫の駆除には専門的な知識や技術が必要である。各都道府県にはそのような知識や技術を有する駆除業者で構成されるペストコントロール協会があり、相談対応や駆除を行っている。
 公益社団法人日本ペストコントロール協会が取りまとめた全国のトコジラミ相談件数は、2014年度から2022年度までは500件から700件程度で推移していたが、2023年度は1,176件と大幅に増加した。
【委員】
 次に、トコジラミの特徴と、刺された場合の被害について伺う。
【理事者】
 トコジラミは、シラミではなくカメムシの仲間である。成虫の大きさは5ミリメートルから8ミリメートル程度で、雌は一生の間に200個から500個の卵を産卵する。餌は血液のみで、主に人が寝ている夜間に吸血する。近年は、殺虫剤に耐性があるトコジラミの増加が問題となっている。
 トコジラミに刺されると非常に強いかゆみが出るが、1回刺されただけでは症状が出ず、繰り返し吸血されることによって症状が現れることが多いとされている。
【委員】
 蚊やノミ、イエダニなどもトコジラミ同様に屋内に潜み、人の血を吸う虫であるが、トコジラミとの違いについて伺う。
【理事者】
 蚊やノミ、イエダニとトコジラミの違いとしては、大きさが5ミリメートルから8ミリメートルと比較的大きい点、寿命が数か月から1年と長い点、飢えに強く、吸血しなくても数か月生存できる点、日中は狭い隙間に潜んでいるため、発見が困難であり、急速に増殖する点などが挙げられる。
【委員】
 トコジラミへの対応策について伺う。
【理事者】
 トコジラミ対策として重要なのは、できるだけ早期にトコジラミを発見することである。寝室にいることが多いため、寝室内でトコジラミが好んで潜む場所であるベッドの周囲や壁の隙間などにトコジラミやそのふん、卵があるかどうかを探す。トコジラミの痕跡が見つかった場合は、寝具の加熱やトコジラミの物理的な捕獲、殺虫剤による駆除を行う。
【委員】
 県民からトコジラミについての相談があった場合、どのように対応しているのか。
【理事者】
 各保健所では、県民からの相談に対してアドバイスを行っているが、駆除作業は行っていない。駆除作業については、有害生物駆除の専門業者で構成される公益社団法人愛知県ペストコントロール協会を紹介している。
【委員】
 最後に、トコジラミを自宅に持ち込まないための効果的な方策を伺う。
【理事者】
 トコジラミは、旅行先から帰宅する際、手荷物やスーツケースなどに潜んだ状態で自宅に持ち込まれる可能性がある。そのため旅行先では、宿泊する部屋にトコジラミの痕跡がないか確認することが重要であり、もし痕跡があった場合は、部屋を交換してもらう。また、トコジラミは明るい場所やつるつるした場所を好まないため、荷物はバスルームに置き、明るい部屋で荷づくりすることで、トコジラミを持ち帰るリスクを減らすことができる。
 帰宅時には、荷物の中にトコジラミが潜んでいないかを確認する。スーツケースを殺虫剤で燻煙し、衣類は洗濯の後、60度以上の乾燥機にかけることなども推奨されている。
【委員】
 高額な請求をする業者もあると聞く。正しい情報の発信、そして県民の健康を守るため、引き続き対応をお願いしたい。
 続いて、成年後見に関する市町村長申立てに係る行政書士の活用について伺う。
 我が国では近年の人口減少や高齢化の進行、さらに単身世帯の増加などにより、高齢者が地域社会から孤立することや身寄りがないことなど、日常生活に困難を抱えることが大きな課題となっている。
 今、国を挙げて共に生きる地域社会を実現するために、様々な取組が進められている。取組の一つに、認知症や精神上の障害などにより、判断能力が不十分な人の権利を守り支えるための成年後見制度がある。成年後見制度は、成年後見人などが生活に必要な様々な契約行為や財産管理などの支援を行うことで、判断能力が不十分な人が地域で安心して生活することができる大変重要な制度である。
 成年後見人には親族が担うほかに弁護士などの専門家などが選任されるが、実際に成年後見人の申立てを行う際に、本人が申立てをできない場合は主に親族が行い、親族がいない場合には市町村長に後見人の申立てを行う権限が与えられていると聞いた。
 本県では、成年後見制度を利用している人はどれぐらいいるのか。また、親族などの身寄りがいない人などに対し、市町村長が後見人の申立てを行う件数はどの程度あるのか、その利用者の数や申立ての件数は増えているのか伺う。
【理事者】
 愛知県における成年後見制度の利用者数は、2024年12月末現在、1万174人であり、1年前の2023年12月末と比較して192人増加している。また、2023年度の市町村長申立ての件数は359件で、2022年度と比較して74件増加している。
【委員】
 今後、さらに高齢化が進行し、高齢者の単独世帯が増加するため、成年後見制度に対するニーズの増加、多様化が見込まれる。市町村長からの後見人申立てもこれまで以上に増加する可能性がある。そうなると、市町村の担当職員への負担が増え、後見人の選任を行う家庭裁判所への申立てを行うまでの手続が長期化し、結果、制度の利用開始の遅れにつながるなど、支援が必要な本人に影響が及ぶのではないかと危惧している。
 一方でこの申立てにおいては、市町村が全ての業務を直接行う必要はなく、外部への委託も可能と聞いている。家庭裁判所の提出する申立書の作成は、本人の実情を把握している市町村が直接、または成年後見の中核機関などに委託することが合理的である。本人の親族調査における戸籍謄本代行取得は、行政書士などの士業団体等を活用することも検討の余地がある。
 実際、私の地元である名古屋市では、本人の親族の戸籍取得を愛知県行政書士会に委託し、業務の円滑化に効果を上げていると聞いている。今後、増加が予想される市町村長申立てについて、本人への支援が円滑に開始できるよう、行政書士など士業団体の活用を促していくことも必要ではないかと考えるが、県の所見を伺う。
【理事者】
 成年後見制度は、判断能力が不十分な人でも、尊厳ある本人らしい生活を継続するために大変重要な制度であり、必要に応じ市町村長が後見人の申立てを行うものである。そのため、成年後見制度の申立て業務に係る委託は、日々地域の人が安心して暮らせるよう、きめ細かで多様な支援を行い、多忙な状況に置かれている市町村にとっては、職員の負担軽減につながる効果的な手段の一つと考えている。
 昨年度の県内市町村長からの申立ては359件であり、そのうち名古屋市では81件と多く、申立てに必要な戸籍取得を行政書士が行うことで、職員の負担軽減につなげている。
 他の市町村においては、名古屋市ほどの申立て件数がないことから、現在のところこの業務を委託していない状況であるが、県としては今後、成年後見制度の利用が増え、それに伴い市町村長からの申立てが増えていくことも想定されることから、行政書士などの活用も含めた各市町村での取組事例の提供に努めていく。
【委員】
 最後に、今年度県が実施した保育士の人材確保のためのポジティブキャンペーンについて伺う。昨年9月定例議会の本会議において、平松利英議員が、県がこれまで実施してきた事業と今後の取組について一般質問を行い、福祉局長より、保育士の処遇改善、潜在保育士の就職支援や就学資金の貸し付けなどの事業を行い、保育士が着実に増えてきているとの答弁がなされた。
 また、今年度新たに学生や若手保育士向けに実態調査を行い、保育士の採用に役立てられる保育所の管理監督者向けのセミナーを開催する予定であるとの答弁がなされ、県の保育人材確保の取組について、私自身の理解も進んだ。
 聞くところによると、少子化も影響していると思うが、保育士は仕事が大変な割に給与も多くないというイメージからか、最近は若い人で保育士を目指す人が減ってきており、保育士養成校の定員も入学者も減少傾向にある。また、保育士養成施設を卒業しても、保育士として就職しない人も一定数いると聞く。
 保育士自体は、これからの子供たちを育む手伝いをする非常に魅力あふれる、かつ非常に大事な仕事だと考える。そのため魅力とやりがいを伝えつつ、学生や若手保育士の実態調査を通じて、若者の保育に対する考えを把握し、それを保育士採用に生かすため、県が実施した保育人材確保推進事業、いわゆるポジティブキャンペーンは、これまでにない取組で大いに期待する。
 そこで、今年度新たに実施されたセミナー開催等を主とした保育人材確保のための事業の内容と実績について伺う。
【理事者】
 今年度新たに実施したセミナー等の事業について、今年度は、学生、若手保育士向け及び保育所等の管理監督者向けの2種類のセミナーを開催した。学生、保育士向けのセミナーは、現役保育士かつ育児アドバイザーとして活躍中のてぃ先生を講師として、保育士の魅力や保育業界の現状、展望などについてのトークショーを2月8日に開催し、113人が参加した。
 また、トークショーの後に、保育士養成施設である名古屋柳城女子大学から講師を招き、保育業界の魅力を探究してみようをテーマに、保育業界や保育士の魅力を再確認する内容について講演会を開いた。
 あわせて、就職する際に重視する点や職場環境に求めることなどについて、参加者にアンケートを実施した。アンケートの結果を活用し、保育施設の施設長や保育士の採用担当者を対象に、管理監督者向けセミナーを3月1日と8日に県内2か所で開催し、両日で129人が参加した。
 セミナーでは、学生や若手保育士が望む職場環境についての講義やグループワークを行った後、保育士採用のスキルアップを目的として、効果的な採用活動、離職防止策についての講義を実施した。
【委員】
 次に、2025年度にも引き続き保育人材確保のためのセミナー開催事業が予定されており、今年度と異なった取組であると聞いているが、どのような取組か。
【理事者】
 2025年度の取組について、保育士養成施設の卒業生の中には、就職前に思い描いていた保育と現実の保育のギャップにより、保育士にならない人や保育士を辞めて転職する人が一定数いることから、そのギャップを把握し解消することで、保育士への就職促進と早期の離職を防止することが必要となっている。
 そこで、保育士養成施設及び保育施設に対して調査を行い、ギャップを把握し、そのギャップを解消することを目的とした養成施設や保育施設の職員向けのセミナーを開催する。
 また、その中で保育のやりがいや魅力の伝え方などを共有し、保育士への就業促進や離職防止を図る。この取組については、保育施設及び保育士養成施設に協力してもらう必要があることから、県から双方に協力を呼びかけ、県と保育施設と保育士養成施設の3者で連携し、保育人材の確保にしっかりと取り組む。
【委員】
 私からは、ギャンブル等依存症対策について伺う。
 ギャンブル等依存症とは、生活費をつぎ込むなどギャンブル等にのめり込んでコントロールが利かなくなる精神疾患である。これはWHOでも認定されている病気である。本人の意思や性格の問題ではなく、脳の病気であることが研究によって明らかとなっており、誰でもなり得る可能性があるものの、有効な治療薬はなく完治が難しいと言われている。ちなみに県当局の推計によると、ギャンブル等依存症と疑われる人は県内に約12万人いるとのことである。
 本年1月末、愛知県ギャンブル等依存症対策推進協議会が開催された。この会議は、ギャンブル等依存症の発症を防止するための対策などについて、関係機関が連携して取り組むことを目的に、毎年開かれているものである。ここに参加した精神保健福祉士の話によると、そのクリニックでは最近の相談件数あるいは患者数はここ2年から3年格段に増えているという印象を持っており、特に20代から30代の若い男性で、借金額もかつては100万円単位だったものが、昨今はオンラインギャンブルの影響で1,000万円単位の借金がある人が増えていると聞いている。また、ギャンブル等依存症はうそと借金の病気と言われ、特に自らを依存症と認めない否認の病であり、ギャンブルによって借金をはじめ、日常生活に支障が出てきたら依存症かもしれないと疑い、家族だけでも一日も早く愛知県精神保健福祉センターに相談するよう勧めているそうである。そこから依存症の専門医療機関につないで治療を行うとともに、自助グループに参加することが重要だと聞いた。
 そこで、まず、本県のギャンブル等依存症の相談拠点として位置づけられている精神保健福祉センターにおける相談状況について伺う。
【理事者】
 愛知県精神保健福祉センターにおけるギャンブル依存症の相談件数は、2019年度は317件であったが、直近の数字で分かっている2023年度は394件であった。
【委員】
 本県では、2018年に施行されたギャンブル等依存症対策基本法を踏まえて、愛知県ギャンブル等依存症対策推進計画を策定している。現在、2025年までを期間とする第2期計画に基づいて、発症予防、あるいは進行、再発予防並びに回復支援などの対策を推進していると承知している。
 これは、本会議の議案質疑でも答弁されているが、その中で発症予防については例えば知識普及のためのユーチューブでの啓発動画の配信や、進行・再発予防ではLINEを活用したサポート相談を実施するなどしている。
 ギャンブル等依存症は、適切な治療と支援によって回復が可能な疾患であることから、回復支援が最も重要だといえる。
 そこで、本県では、ギャンブル等の悩みがある人に対する回復支援としてどのような取組をしているのか伺う。
【理事者】
 本県では、精神保健福祉センターにおいて、ギャンブル等依存症からの回復を目的として、認知行動療法を活用した当事者の回復支援プログラムを実施している。この回復支援プログラムは、精神科医師が同席のもと、当事者同士でギャンブルに関する悩みを話し合うとともに、医師の助言を受けながら、ギャンブルをしたくなるときの考え方や行動に気づき、意識的に対処する方法を身につけるというものである。
 2023年度は24回実施し、延べ105人が参加した。また、この回復支援プログラムに併せ、愛知県司法書士会との連携、協力の下、多重債務等に関する面接相談を実施することで、生活の維持、再建支援にも取り組んでいる。
【委員】
 第2期計画の策定時より、ギャンブルのオンライン化、あるいは非合法化が加速しており、ギャンブル等依存症を取り巻く課題は深刻化している。近年、ギャンブル等によって借金を繰り返し、借金の返済に行き詰まって闇バイトに手を染める、こんな事案が日々報道でよく目にするようになった。
 こうした昨今の課題について、今は第2期計画であるが、次期計画の策定に当たってどのように対応するのか伺う。
【理事者】
 現行の第2期愛知県ギャンブル等依存症対策推進計画の計画期間は、2023年度から2025年度までの3年間であり、2025年度中に次期計画を策定する。
 現在、国において改定が進められているギャンブル等依存症対策推進基本計画では、これまでの取組に加え、近年社会問題となっているギャンブルのオンライン化への対応についても強化する方向で見直される予定である。
 県としては、国の基本計画等を踏まえ、ギャンブル等依存症対策推進協議会で検討を行う。
【委員】
 ギャンブル等依存症に起因して、専ら鬱病を発症するなど健康問題はもちろんのこと、ギャンブルによる多重債務や貧困などの経済的問題、あるいは家庭内の不和などの家庭問題、あるいは虐待、自殺、犯罪などの社会的問題と、広範、多岐にわたる事象がギャンブル等依存症に起因して、本人はもちろん家族の日常生活や社会に生じている。
 県には、計画を策定し、推進していくに当たっては、関係部局と横断的に連携して包括的な対策を講じてほしい。
【委員】
 私からは、まず強度行動障害者支援事業について伺う。
 私の地元の東海市で、障害者のグループホームと生活介護事業を運営している人がいる。この人は、障害者福祉に大変熱意があり、当初は障害者のグループホームに特化していたが、地域の人から生活介護事業所が足りないとの声を聞き、生活介護事業所を立ち上げた。
 しかし、現在2年近くになり、生活介護事業所の部門は通所する人は増えるが、なかなか業績が上がらず、大変厳しい状況が続いている。ずっと赤字とのことである。
 経営の中身を分析すると、原因は生活介護の対象者の中で、強度行動障害者が比較的多く、この人たちをフォローするには1人当たり2人から3人のヘルパーが必要だと分かった。
 ところが、生活介護の業務は、法令で1人につき1日幾らと決められており、しかも昨年の4月から、業務報酬も時間単位になり、強度行動障害を持つ人を引き受ければ、ケアすればするほど経営が厳しくなるという状況である。
 強度行動障害のある人は、自分や他人を傷つける行為や物を壊す行為が頻繁に起こるため、特別な配慮が必要な人である。そうした人への支援の必要性については、先日の本会議において今井隆喜議員から質問があり、大村秀章知事からは強度行動障害のある人の実態調査を来年度初めて実施し、福祉局長からは事業所に対する伴走型のコンサルテーションを来年度から新たに始めるとの答弁であった。
 そこでまず、強度行動障害のある人の実態調査について、具体的な内容を伺う。
【理事者】
 まず、実態調査の対象としては、市町村が実施する障害支援区分の判定調査で一定以上の点数の人など、障害福祉サービス報酬で強度行動障害の加算対象となる人を調査対象とする予定である。
 続いて、調査項目については、年齢、性別、行動障害の内容や頻度といった本人の情報に加えて、障害福祉サービスの利用状況やライフステージごとの不安や困り事等、それに対する必要な支援など、強度行動障害のある人とその家族の生活の状況を幅広に調査したい。
 調査のスケジュールとしては、4月から市町村とともに調査対象者の把握を進め、把握した対象者に対しては、市町村を通じて夏頃に調査票を配布する予定としている。
 その後、回答を取りまとめ、来年度中に調査結果を示す予定である。
 今回の調査の実施に当たっては、市町村の理解と協力が不可欠であるため、市町村と十分に連携してしっかりと進めていく。
【委員】
 続いて、伴走型のコンサルテーションについて伺う。
 強度行動障害のある人の支援には、どの事業所も大変苦労している。特に株式会社恵の不正により、多くの強度行動障害の人の行き場がなくなったため、地元関係者の事業所等で面倒を見ることになり大変な状況になっている。先日話を聞いたところ、事業所のテレビや壁を壊されるなど職員が対応に困っているため、こうした伴走型のコンサルテーションの存在は本当にありがたく感じている。
 そこで、来年度から実施する伴走型のコンサルテーションでは、事業所に対して具体的にどのような支援を行うのか伺う。
【理事者】
 強度行動障害については、重度の知的障害を伴う自閉症の人に起こりやすく、これらの人には言葉の遅れ、コミュニケーションが困難であること、感覚の過敏さ、行動のパターン化やこだわりといった特徴が見られる。
 そのため強度行動障害とは、その人が持つ障害の特性から、音や光、予定にない行動などに強い不快さや不安を感じたとき、その気持ちをうまく伝えることができず、自傷や他害、物壊しといった激しい行動で表しているものと言われている。
 そこで、強度行動障害のある人への支援においては、行動障害の元となっている人の特性を見極め、その特性に合った支援につなげていくことが重要である。
 来年度から実施する伴走型コンサルテーションでは、強度行動障害のある人の支援に知見を持つ県の地域支援マネジャーや民間施設のアドバイザーが直接事業所を訪問し、事業所の職員と共に本人のふだんの様子や、行動障害が表れる状況を観察してその人の特性を把握するとともに、その特性に合った支援方法を職員と一緒に考える。その後、事業所における支援の実施、効果の検証と支援方法の見直しといった取組を、標準で月4回、3か月間にわたって集中的、継続的に実施する。
 こうした取組により、本人の行動障害の軽減を図るとともに、事業所の職員全員に強度行動障害のある人の特性の把握や適切な支援の方法を習得させ、事業所全体の技術の向上を図っていく。
【委員】
 県が来年度に実態調査し、新たな支援事業を始めることは、本人、また家族にとってもありがたいため、しっかりと進めてほしい。
 一方、私が紹介した強度行動障害のある人の支援に困っている事業所は数多くあると思うため、そうした事業所の状況もしっかりと調査し、しかるべき支援を願う。
 次に、あいち結婚サポートセンターについて伺う。
 私は会計事務所を営んでいるが、経営者たちから息子や娘の相手を探してほしいとよく言われるが、なかなか条件が合わず、難しいのが現状である。
 そんな中、昨年11月に愛知県が結婚サポートセンターを開設し、AIを活用したマッチングシステムで出会いの機会を提供するサービスが実施された。最近、結婚した人のうち4人に1人がマッチングアプリで出会ったとの調査結果もあり、県の試みは大変時宜にかなったものであり、少子化対策としても大いに期待できるものである。
 特に愛知県が結婚サポートセンターを運営することは、信頼性が大変高く、第三者から見て積極的に広めていきたい。
 しかしながら、近年、マッチングアプリを介した結婚詐欺などの犯罪もニュースで大きく取り上げられており、安全性の面は大丈夫かと不安に感じる部分もある。
 そこで、あいち結婚サポートセンターでは、安全性の確保にどのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
 利用者の人に安心して、安全に活動してもらえるよう、あいち結婚サポートセンターでは会員登録の際、運転免許証など顔写真つきの身分証明書を提示してもらい、オンライン面談、または対面の出張登録会の場において、相談員により直接本人確認をしている。
 また、独身証明書の提出や収入については、公的機関や勤務先の発行する書類等で確認するなど、会員資格や登録事項の事実確認を厳正に行っている。
 さらに安心・安全に利用してもらうためのガイドラインを作成し、例えば婚活目的以外での利用を禁止すること、相手との金品の授受や貸借は避けること、事業の勧誘や金銭の要求を受けるなど、違和感や、不安を感じたときにはあいち結婚サポートセンターに相談すること、付きまといなどの嫌がらせ行為を禁止することなど、チェックリストに一つずつチェックを入れてもらい、利用上のルールを各自しっかりと確認した上で活動を開始する仕組みとしている。
【委員】
 県内では民間の結婚相談所も数多く存在しており、あいち結婚サポートセンターと競合するのではないかという心配もある。
 そこで、民間の結婚相談所等とのすみ分け、役割分担について伺う。
【理事者】
 民間においては、各社がそれぞれ特色を持った手厚い優良のサービス等を提供していると認識している。一方、あいち結婚サポートセンターでは、入会金や会費、お見合い料、成婚料等が無料であること、また県が運営していることに対する安心感から、これまで婚活に踏み切れず、民間の結婚相談所やマッチングアプリ等を利用していなかった人が、新たに婚活を始める入り口となり得るものであり、民間の結婚相談所等と役割が重なり合うことは少ないと考えている。
 県と民間がそれぞれ様々な出会いの機会や相談サービスを提供していくことにより、より多くの結婚を希望する人が、その望みをかなえることができるものと考えている。
【委員】
 先ほども述べたが、県が運営するあいち結婚サポートセンターは、県民から見て大変信頼性が高いため、少子化対策として大いに期待している。

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