本文
福祉医療委員会審査状況(令和7年6月27日)
福祉医療委員会
委員会
日時 令和7年6月27日(金曜日) 午後0時58分~
会場 第1委員会室
出席者
杉浦正和、島 孝則 正副委員長
坂田憲治、新海正春、政木りか、平松利英、横田たかし、天野正基、
鈴木まさと、日比たけまさ、加藤貴志、下奥奈歩、阿部武史 各委員
福祉局長、福祉部長、介護推進監、子ども家庭推進監、
保健医療局長、同技監兼医務課長、健康医務部長、感染症対策監、
生活衛生部長兼生活衛生課長、
病院事業庁長、病院事業次長、関係各課長等
委員会審査風景
付託案件等
議案
第104号 令和7年度愛知県一般会計補正予算(第2号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳出
第4款 福祉医療費
結果
賛成多数をもって原案を可決すべきものと決した議案
第104号
請願
第 1 号 「おかしくないですか?!日本人、愛知県民、謎の大量死、原因は高齢化でもコロナでも説明できない。ではなにか?!原因追及を求める」について
第 2 号 「未成年の新型コロナワクチン接種後体調不良者への調査を求める」について
第 3 号 「コロナワクチンのロット番号ごとの被害調査を求める」について
第 4 号 「新型コロナワクチン特定ロット『3005785』接種後、死亡事例や、健康被害の愛知県内の調査と被害の周知を求める」について
第 5 号 「孤独死不審死の場合の死亡日を決定する際コロナワクチン接種歴との関係調査を求める」について
第 6 号 「調査せよ。豊川でコロナワクチン接種翌日に13歳男児が自殺。接種後の自殺は各地で起きている。接種後精神に及ぼす影響、被害調査を求める」について
第 7 号 「新型コロナワクチン副反応疑い報告における国の審議会について県として国に要望を求める」について
第 8 号 「『死亡日を開示せよ』コロナワクチンの評価、総括は自治体にあるデータで分析可能。何故隠す?!死亡日データを開示してワクチンの評価を求める」について
第 13 号 「予防接種健康被害救済制度の周知を求める」について
第 14 号 「『新型コロナワクチン接種後の国の健康被害救済申請及び県の副反応等見舞金の申請状況について』のマスコミ向け文書の県民への公表を求める」について
第 15 号 「新型コロナワクチン接種記録の保存期間延長を求める」について
第 16 号 「コロナワクチン接種に注意が必要な人に関する周知を求める」について
第 17 号 「予防接種健康被害救済制度と副反応疑い報告制度との突合調査、案内を求める」について
第 18 号 「各市町村、愛知県内の病院に正しく新型コロナワクチン副反応疑い報告が行われるよう周知依頼を求める」について
第 19 号 「予防接種健康被害救済制度申請時、必要な医師の受診証明、カルテの写しを被害者が苦労する事なく取得できるよう病院や医師に通知を出す事を求める」について
第 20 号 「コロナワクチンの接種事業総括の為のワクチンハラスメント調査を求める」について
結果
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第1号から第8号まで
賛成少数をもって不採択とすべきものと決した請願
第13号から第20号まで
閉会中継続調査申出案件
- 社会福祉及び社会保障制度の充実について
- 少子化対策及び超高齢社会への対応について
- 保健衛生の推進について
- 保健所及び県立病院の運営について
- 福祉局、保健医療局及び病院事業庁の行政運営について
会議の概要
- 開会
- 口頭陳情(4件 請願第2号、第7号、第8号及び第19号関係)
- 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質疑
(3)採決 - 請願審査(16件)
- 委員長報告の決定
- 一般質問
- 閉会中継続調査申出案件の決定
- 閉会中の委員会活動について
- 閉会
主な質疑
議案関係
【委員】
予算に関する説明書の15ページ、歳出第4款9項2目の医務費の2項目について尋ねるが、まず2の精神保健事業費、依存症対策総合支援事業費の依存症に対応できる医師養成の取組について伺う。
アルコールや薬物に加え、近年、ギャンブル等依存症に関する相談が増加していると聞いている。また、依存症になると脳がのめり込みやすい体質を記憶してしまうことで、アルコールや薬物、ギャンブル等に同時にはまったり、はまる対象を次々と変えたりすることがあるといわれており、多様な依存症に複合的に対応することが必要とされている。依存症は適切な治療と支援により回復が十分可能な疾患であるが、専門医の不足等が課題となっている。こうした課題に対応するため、多様な依存症に対応できる医師を養成する寄附講座を設置するとのことだが、寄附講座をどのような人に対して何人を対象として実施するのか、また、講座の形式はどのようなものか伺う。
【理事者】
本寄附講座の対象者等については、主に医師免許取得後の臨床研修を修了し、精神科を専攻する医師を対象とすることを想定している。県としては、藤田医科大学の卒業生に限らず、県内の希望する人に受講してもらうようにしていきたい。また、講座の形式については、指導医による診療場面での指導や座学により依存症に関する専門的な知識や技能を学ぶことを想定している。
なお、対象者の人数やカリキュラム等の具体的な内容は、現在、藤田医科大学と調整している。
【委員】
対象人数などは藤田医科大学と調整中であり、カリキュラム等の具体的な内容について、これから大学とそれも調整してもらうと思うが、医師の養成には時間がかかると思う。
今年度、講座設置期間は半年間と聞いているが、来年度以降の計画はどのようであるか。
【理事者】
今年度は、10月に寄附講座を設置予定であるため、講座設置期間は半年となるが、来年度以降は年間を通して寄附講座を設置し、依存症に対応できる医師の養成に継続して取り組むように検討していく。
【委員】
来年度以降も継続して行うとのことであり、多様な依存症に対応できる医師の養成は、長期間、継続してさまざまな臨床の状況を見ながら教育を行ってもらわなければならないと思うが、依存症患者が必要な治療を受けるための取組としては大変有意義なものである。
一方で、若者の違法なオンラインカジノの利用率の高さなど、ギャンブル等をはじめとする依存症を取り巻く環境はますます深刻さを増していると感じている。寄附講座の内容が充実したものとなるよう、引き続き大学と調整してもらい、依存症に関する治療体制、診療体制の充実強化を図ってもらうことを要望する。
続いて、予算に関する説明書の15ページの医務費の医事事業費、電子処方箋導入促進費補助金について伺う。
重複投与等の抑制や医療機関の業務効率化を推進するため、電子処方箋の導入を進めているが、今回、対象期間が3月31日までであったものを9月30日までに延長するとのことだが、現在どうなっているか。全国及び本県の電子処方箋の導入率は、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局別にどのようになっているか伺う。また、全国と比較して本県の状況はどうなっているか、まず教えてほしい。
【理事者】
全国の2025年3月末時点における電子処方箋の導入率は、病院が9.2パーセント、医科診療所が12.6パーセント、歯科診療所が3.3パーセント、薬局が73.4パーセントとなっている。また、本県の同時点における電子処方箋の導入率は、病院が8.8パーセント、医科診療所が16.1パーセント、歯科診療所が2.7パーセント、薬局が71.7パーセントとなっており、おおむね全国平均と同水準となっている。
【委員】
今の数字を聞くと、薬局はある程度、7割以上、71.7パーセント、ただ、ほかの医療機関の数値がなかなかまだまだ導入率としては上がってきていないようだが、今回の補正予算の措置によって、今後の導入率というのはどれぐらいまで上昇する見込みか。
【理事者】
2025年3月末時点の電子処方箋の導入施設数に今回の6月補正による導入施設数を加えた場合の導入率だが、病院が6.8パーセント増の15.6パーセント、医科診療所が0.3パーセント増の16.4パーセント、歯科診療所が1.6パーセント増の4.3パーセント、薬局が27.2パーセント増の98.9パーセントまで上昇する見込みである。
【委員】
全国的に薬局に比べてやはり医療機関の導入が遅れているようだが、そもそも電子処方箋を導入することで得られる医療機関や患者のメリットは何か。
また、電子処方箋の導入を促進するため、国はどのように対応しているのか、県としてどのように対応していくのか伺う。
【理事者】
電子処方箋の導入により、医療機関や薬局では、過去5年分の処方、調剤の情報をシステム上で確認することができるようになることから、患者への重複投薬や多剤投与が減り、医薬品の適正使用と医療費の適正化につながるというメリットがある。
こうしたことから、県では、さらなる導入促進を図るため、当初予算に加え、今定例議会でも増額補正予算を計上し、電子処方箋導入促進費補助金による支援を拡充して実施していきたい。国では、導入が遅れている医療機関への対策として、公的病院等への導入要請や電子処方箋システムの開発事業者への早期開発要請、医療機関向けの周知、広報の強化などに取り組んでいる。
次年度以降の電子処方箋導入促進費補助金の実施については、現時点で国から具体的な方針は示されていないが、医療機関の電子処方箋導入がさらに進むよう、国に対し補助事業の継続を要望していきたい。
【委員】
最後に1点尋ねたいが、内容を見ると、新機能でリフィル処方箋等とあるが、この新機能はどういったものか。
【理事者】
リフィル処方箋は、慢性疾患などで長く症状が安定している患者に対して医師が可能と判断した場合に処方箋を反復利用できる制度である。現在は最大3回まで使える処方箋となっている。この制度の利用により、患者が医療機関を受診する回数が少なくなるため、通院負担の軽減や医療費の節減につながるといわれている。
【委員】
リフィル処方箋を利用することによって、患者の通院の負担が減るとのことであるから、電子処方箋を導入するメリットを各種医療機関及び患者にも十分に説明してもらい、理解促進につなげてもらうよう要望する。
【委員】
議案質疑として2点尋ねる。まず、議案のうち、訪問介護事業所が行う人材確保、経営改善に向けた取組支援について伺う。
訪問介護は、高齢になっても住み慣れた自宅で、その人らしい暮らしを続けるための在宅介護の要である。おむつの交換、買物、服薬の確認、掃除など、健康や生活を支えている。まず、訪問介護事業の役割とその重要性について、県としてどのように認識しているのか伺う。
【理事者】
訪問介護事業は、在宅で生活する要介護高齢者に対し、入浴、排せつ、食事等の身体介護や、調理、洗濯、掃除等の家事援助など、生活全般にわたる支援を行うものであり、高齢者の在宅生活を支える中心的なサービスとして重要なものと考えている。
【委員】
在宅を支える重要なものだという認識を聞いた。
介護報酬の改定で訪問介護の基本報酬が2024年4月から引き下げられた。現場からは、まさか基本報酬を改定されるとは思わなかった、施設等の人手不足の解消に全く反映できていないなど、介護離職の拡大や介護崩壊を招きかねないと不安の声が広がっている。
そこで、介護報酬の引下げ、事業所への影響についてどのように認識しているか伺う。
【理事者】
令和6年度介護報酬改定における訪問介護の基本報酬の引下げについては、国は、令和5年度の介護事業経営実態調査において、訪問介護事業の収支差率が7.8パーセントと、全サービス平均の2.4パーセントを大きく上回ったことを理由に挙げている。しかし、収支差率は事業所の規模によって異なっており、特に小規模な訪問介護事業所では、報酬改定の影響を受けやすい状況にある。
【委員】
影響を受けやすい状況だという、そのような認識だということなのだが、日本共産党東三地区委員会では、訪問介護事業所などへアンケートを行った。その中で、介護報酬の引上げを求める声が最も多い結果となった。国の政策は、現場の悲鳴の声を見て見ぬふりをするものである。しんぶん赤旗の調査で、2019年から2023年の5年間で訪問介護事業所が8,648か所廃止されたということが分かった。そのうち、愛知県は488か所である。さらに介護報酬を減らされて、訪問介護崩壊の深刻な危機となっている。
今回の支援策は、こうした現場の困難に十分応えた、介護崩壊を止めるものと言えるのか、県の認識を伺う。
【理事者】
本事業は、介護サービスを提供する事業所の中では比較的事業規模が小さく、人材確保や経営改善等の課題に自力で取り組むことが難しい訪問介護事業所の実情を踏まえ、複数の補助メニューにより各事業所の事情に合わせた取組が実施できるよう支援するものであり、訪問介護事業所における安定的な運営環境の整備に資するものと考えている。
【委員】
今回の補正予算の訪問介護事業所への支援としては、中身を見たが、ないよりはましだということを言わざるを得ない、そのような支援策だと思う。
訪問介護は、要介護者の在宅での生活を支える上で欠かせない。このままでは在宅介護がかなわず、在宅放置を招きかねない。先ほど紹介したアンケートの中で、公的に求める支援では物価高騰への直接支援が多数を占めていた。光熱費や食材費への影響が大きくなっている。ほかにも、給与引上げや基本報酬の見直しの要望もあった。新城市の訪問介護事業では、基本報酬の引下げで昨年度は赤字になったそうだ。最低賃金が上がったので時給を引き上げた、ガソリン代や電気代も高騰しているのにまさか基本報酬を削るとは、役員報酬3割カットしても赤字だという切実な訴えが寄せられた。
東京都品川区は、訪問介護の減収分を独自に支援すると発表した。新潟県村上市は、2024年度介護報酬改定で基本報酬が下げられた訪問介護の事業所に対し、独自の支援金を支給するとしている。また、車の燃料代支援も行っている。
今、現場から求められているのは、こうした直接的な支援だと思う。物価高騰対策も含め、愛知県として、今回の支援にとどまらず、さらに思い切った支援を行うべきと考えるが、どうか。
【理事者】
本県では、介護事業所等における物価高騰対策について、これまでも国の交付金を活用し継続的に支援を行ってきた。また、訪問介護事業所の安定的な運営環境の確保については、国が全国一律の制度として、報酬改定をはじめとした制度改正により講じられるべきであり、県としては、国に対して、基本報酬が引き下げられた訪問介護について、報酬改定の影響を検証し、必要に応じて適切な引上げを行うよう要望を行った。
【委員】
国の交付金頼みではなく、やはり自治体で努力しているところもあるため、愛知県としても、国がやるべきことではあるが、県独自で、国がやるまでは頑張る、支えるのだという姿勢を示すということが今必要だと思う。基本報酬の引上げはもちろん、国に求めることは、当然だと思う。
今回の補正予算の範囲では、やはり根本的な支援にはならない。国は基本報酬を大きく下げて、事業所を困難に陥れながら、批判の声が高まると、報酬は下げたまま、補正予算で訪問介護等サービス提供体制確保支援事業をメニュー化し、支援のポーズを取っているだけだと思う。
訪問介護事業所がゼロという自治体が全国で97町村ある。決して他人事ではない。高齢になっても安心して生きていける社会へ、介護報酬を元に戻すことを国に求めるとともに、介護崩壊を止めるケア労働を直接支援する手だてを取ることを要望する。
続いて、もう一個、医療機関が行う電子処方箋の導入支援の補正予算について質問する。
先ほど導入率については答弁をもらっているので、そこは省略する。先ほど示してもらった導入率について、進んではいるものの、病院など医療機関では導入が進んでいないのが実態だと思う。
愛知県保険医協会は、2024年9月に物価高騰に関する医療機関の影響調査を実施した。その中で、マイナンバーカード、電子処方箋など、人手や手間ばかり増えることを続けている、新システム導入に伴う費用も重なり、経営を圧迫しているといった声が寄せられていた。また、国が進める医療DXのためのシステム導入や維持に伴う費用も重なり、経営を圧迫している。既に閉院した医療機関や廃業を検討しているという深刻な事態もあるそうである。
病院などでの導入が進まないのは、費用負担や経営負担が一因にあると考えるが、導入が進んでいない状況を県はどのように認識しているのか。
【理事者】
国が2025年2月に行ったアンケートによれば、薬局に比べ、病院、診療所の導入が進まない理由としては、システムベンダーといわれる電子処方箋を発行、管理するためのシステムを開発、提供する事業者の対応の遅れや、対応可能なシステムベンダーの不足、システム導入改修費用が高額であることなどが挙げられており、県としても同様に考えている。
【委員】
システム改修など事情があるとのことだったが、物価高騰への対応や人件費など、今必要なのは、機器の導入への補助ではなく、病院経営への直接支援だと思う。東京都では、民間病院へ321億円の補助事業が2025年度予算に計上された。愛知県でもこういったことに取り組んでもらいたいと思う。
電子処方箋の導入に伴い、医療機関や薬局がシステムの設定を間違え、医師が処方したものとは違う薬が画面に表示されるトラブルが、これまで少なくとも7件起きていることが確認されたと昨年報道されていた。誤った薬が渡されることはなかったとのことだが、もし誤表示に気づかず処方した場合、患者の健康に影響する可能性がある。また、処方箋の発行形態の確認、処方内容のサーバー登録など、事務負担が増加することもあり、慎重な検討が必要だと思う。トラブルや現場の混乱、事務負担など、現場の声を丁寧に聞き取り、拙速な導入をこのまま推進するということは立ち止まるべきではないか。
【理事者】
昨年12月に発生した電子処方箋システムのトラブルは、国から一部の医療機関や薬局において医薬品のシステムコードの誤登録により、本来の処方と異なる情報が薬局に伝達されたと報告されている。これを受け、国では、医療機関等に対して、医薬品のシステムコードの設定が適切に行われているか一斉点検を実施しており、それ以降、全国で同様のトラブルが発生したとの情報はない。
県としては、引き続き、質の高い医療サービスの提供と、医療機関、薬局の業務効率化を進めていくため、電子処方箋の導入促進を図っていく。
【委員】
効率化というが、やはり現場の負担があると発生してしまう。愛知県保険医協会の調査で寄せられた声を見ても、拙速に進めてよいものだとは思わない。
この補助内容には、リフィル処方箋の導入も含まれている。これは、一度診察すれば、一定期間は再診なしに薬局で同じ処方箋を3回まで使えるというものである。この導入について、全国保険医団体連合会は、医療費抑制を目的に長期処方を助長するもので、患者の疾病、状態管理に支障を来しかねないと指摘している。命に関わる問題に直結する。医療費抑制ではなく、個々の患者に寄り添える医療体制の構築こそ求められていると思う。
最後に、今回、国の期間延長を受けて、電子処方箋推進に補助を出すことは、医療費の削減になるという考えがあるからか。
【理事者】
電子処方箋を導入することで、医療機関や薬局では、直近から過去5年分の処方、調剤された情報をシステム上で確認することが可能になることから、患者への重複投薬や多剤投与が減り、より安全・安心な医療を受けることができるとともに、医療費の適正化につながると考えている。
【委員】
安全・安心と言うが、トラブルなどを見るし、リフィル処方箋に対する懸念の声を聞くと、安全・安心とは思えず、大変不安がある内容ではないかと思う。政府は今後、マイナ保険証を基に、電子カルテや電子処方箋を標準化し、データの共有を図る計画をしている。マイナ保険証への誘導にも、そういったことにもつながるおそれがある。幾つもの問題がある電子処方箋の導入推進は立ち止まるべきということを述べる。
【委員】
私からも訪問介護サービス提供体制確保支援事業費補助金について伺う。
今回、この支援の対象を訪問介護事業として事業を実施するとのことだが、なぜそのようになったのか。
【理事者】
2023年度の訪問介護事業所等の訪問介護員の有効求人倍率は約14倍であり、施設系サービスの介護職員の約3倍と比較して高い水準になっている。しかし、訪問介護事業所等は、他のサービス種別に比べ、小規模な法人や少人数で運営されている事業所が多く、人材募集や経営改善を進めたくても、人的、資金面の余裕がなく、自力での取組が難しい状況にある。そのため、国の令和6年度補正予算において、訪問介護事業所等のみを支援の対象とした人材確保や経営改善の取組を支援する補助制度が創設されたことを受け、県としてもこの制度を活用した支援を行うこととした。
【委員】
今回、6月補正で増額を行う理由について、先ほど福祉局長から、国が実施主体を原則として都道府県と方針転換した旨の説明があった。すなわち、本県での当初予算は、当初の時点では、政令市、中核市を除いた形で計上して、政令市とか中核市はそれぞれ独自で予算計上していたと理解するが、今回の増額補正でこれらの地域は二重計上とならないのか。また、補助率3分の1が県補助とのことだが、もともとは事業所の指定権者である政令市、中核市が負担するものであったと考える。その点についてはどのように理解すればよいか。
【理事者】
政令市、中核市においては、当初予算の編成時には、国から実施要綱等事業の詳細が示されていなかったため、当初予算への計上を見送り、令和7年度に入ってから補正予算で対応する方針としていたので、二重の計上とはなっていない。また、国の方針転換により、政令市、中核市の部分も県が負担することとなるが、県としては、様々な課題に取り組もうとする訪問介護事業所等を広く支援する必要があると考え、今回、補正予算を提案した。
【委員】
この方針転換によって、本事業の対象となる訪問介護事業所等の数はどのように変わったのか。
【理事者】
令和7年度当初予算の時点では、県が指定する訪問介護事業所のみをこの事業の対象としていたので、本年4月1日現在で681事業所が対象だった。今回の国の方針転換により、政令市・中核市指定の訪問介護事業所1,382事業所、市町村指定の定期巡回・随時対応型訪問介護看護54事業所、夜間対応型訪問介護5事業所が加わり、県全体では2,122事業所となる。
【委員】
本事業は様々なメニューがある。メニューの活用意向も事業所ごとに異なるのではないかと思うが、この補正予算額についてはどのように積算したのか。また、事業所のニーズを県として把握しているのか伺う。
【理事者】
今回の補正予算額は、県内に所在する全ての対象事業所に対し、活用を希望するメニューとメニューごとの所要額についてニーズ調査を行い、必要額を予算計上している。本事業の支援メニューは七つあり、研修体制の構築支援、中山間地域等・離島等地域における採用活動支援、経験年数が短いホームヘルパー等への同行支援、経営改善支援、登録ヘルパー等の常勤化の促進支援、小規模法人等の協働化、大規模化の取組支援、介護人材・利用者確保のための広報活動支援となっている。その中で事業所のニーズが高いメニューとしては、介護人材・利用者確保のための広報活動支援、研修体制の構築支援、経験年数が短いホームヘルパー等への同行支援となっている。
【委員】
最後に要望する。
昨日の中日新聞でも大きく取り上げられていたが、現在、訪問介護事業を取り巻く経営環境は非常に厳しい状況である。東京商工リサーチの調査によると、2024年度の介護事業者の倒産は179件と過去最多を記録、中でも介護報酬のマイナス改定やヘルパー不足などが影響した訪問介護は86件と全体の約半数を占め、こちらも過去最多を記録した。また、日本介護クラフトユニオンが本年4月に訪問介護事業所に行ったアンケートによると、2023年と比べ減収したと回答した事業所は55.2パーセント、そのうち一番の減収理由に、人手不足により依頼があっても受けることができなかったためと回答した事業所は73.3パーセントに上っている。
今回、訪問介護事業に焦点が当たり、人材確保や経営改善に向けた支援が予算計上されることは喜ばしいことと思っている。一方で、課題もまだあると思う。
例えば、先ほどの答弁の中でも、訪問介護事業所の人材確保が特に厳しいという点に触れてもらった。こうした背景もあって、従来、訪問介護事業で外国人を雇用するには、在留資格「介護」、経済連携協定(EPA)に基づくEPA介護福祉士、永住者、定住者、日本人の配偶者等の在留資格のいずれかしか認められていなかったが、本年4月から技能実習生及び特定技能外国人が訪問介護サービスに従事できるようになった。とはいえ、事業所に過大な管理義務を負わせるなど、実際に雇用ができる要件としてはかなりハードルが高いという声を聞いている。
また、地域包括ケアシステムの中核的なサービスとして平成24年に制度化された定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の数、先ほども答弁してもらったが、これはまだまだ非常に少なくて、普及が進んでいない。他の介護保険サービスと比べても圧倒的に少ないのが現状である。ぜひこうした現場の声というのを引き続き拾ってもらうよう要望して、質問を終わる。
請願関係
【委員】
この委員会に付託された請願のうち8件の紹介議員になった。いずれもコロナワクチンの健康被害の救済などを求めているものである。賛成の立場から意見を述べたい。
厚生労働省が受理している新型コロナワクチン予防接種健康被害の受理件数は、5月30日現在1万3,694件で、この1年間に約2,400件の受理数となっている。愛知県では受理件数が、2025年度4月末時点で781件、この1年間では144件となっている。ワクチン接種者は減少しているものの、健康被害申請は減る状況にはない。
私の知人の息子も、ワクチン接種の4日後に病院に救急搬送され、その後、身体障害が残り、1級を認定されたが、その人も救済申請に大変苦労したと聞いている。小さな市役所で救済申請件数は少なく、まず、市役所窓口で副反応疑い報告書が厚生労働省に出されているならその書類で自動的に被害者救済申請になっていると誤った窓口対応から始まったと聞いた。また、病院でも見慣れない受診証明書に手間取り、数回の書き直しを求められたそうである。病院のカルテの発行では、A4、900枚に及び、4万円の発行手数料にびっくりしたそうである。
予防接種健康被害者の苦労を解消することも、県や市町村、行政の重要な責務だと思う。周知、改善願い、予防接種健康被害救済制度の周知を求める請願はじめ8件の請願に賛成する。
一般質問
【委員】
外国人の国民健康保険等の納付状況について質問する。
国際課において、外国人留学生を県内企業にインターン生として受け入れる事業や、就業促進課では、アジアの大学生に県内企業に興味を持ってもらい、将来的に愛知の産業を支える人材となってもらう取組に注力し、積極的に外国人を受け入れるための環境整備を行っている。
こうした中、厚生労働省が行った外国人徴収率の独自集計が可能な全国150市区町村を対象にした調査の結果として、被保険者全体の収納率は約93パーセント、うち外国人の収納率は約63パーセントであったと報道された。被保険者収納率と外国人の収納率に乖離が見受けられる結果となったことから、本県においても状況の把握と、必要ならば対策が必要だと考える。
そこで、外国人の国民健康保険料等の納付について伺う。本県の市町村国民健康保険における外国人の被保険者数及び保険料等の収納状況を伺う。
【理事者】
市町村の定例報告によれば、2023年4月1日時点での本県の国民健康保険被保険者数のうち、外国人は6万5,717人で、被保険者全体131万5,861人の4.99パーセントを占めている。また、2023年度の保険料等収納率は県全体で95.5パーセントほどとなっている。
なお、外国人に限った保険料等収納率については、国の定例報告の対象とはなっていないため、県全体の数値は把握していないが、今回、厚生労働省が実施した臨時調査によれば、愛知県内に外国人収納率を独自に把握している自治体は五つあり、その平均収納率は60.5パーセントとなっている。
【委員】
このような状況を県としてどのように受け止め、考えているか。
【理事者】
国の動向を踏まえて、市町村の関係者とも共に考えていきたい。
【委員】
本県の外国人の受入れの取組に加えて、日本人の少子化が厚生労働省の想定以上に進んでいると聞いている。外国人の受入れがますます拡大し、2070年には10人に1人になるとさえ言われている。
日本の国民皆保険制度は世界に誇れる制度であり、国民、県民が安心して生活できるのもこの制度があるからだと思っている。私が危惧しているのは、外国人の受入れを推進していく以上は、この問題を放置することなく、県としても改善に取り組んでいかねばならないと思っている。
法務省では、外国人労働者の受入れ拡大に伴い、保険料を一定程度滞納した場合には、在留期間の更新を不許可とするなどの対策を講じることを検討しているという情報もある中、私の選挙区の町担当者にヒアリングをしたところ、納付期限までに保険料が納付されない場合は、督促状を送付する、文書や電話連絡、また、訪問により催告を行うなど、警告をしているが、かなりの行政負担、財政負担があると聞いた。外国人の収納率の向上はマンパワーの限界など、県内各市町村だけで、できることの領域を超えている部分があるのではないかと思った。
各市町村の担当者からも状況の聴取を進め、納付率を高める対策を練る必要があると考えるが、本県における外国人の収納率向上への取組について伺う。
【理事者】
先ほどの国の動向に関して、今月6月13日に示された経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針において、新たに外国人の税、社会保険料の未納付防止が明記された。こうした国の動向を踏まえると、今後、外国人の国民健康保険料等の納付については、徴収事務を担う市町村において未納付防止の取組の一層の促進を図る必要があると考えていることから、愛知県としても、関連会議等を開催し、市町村における課題や支援策などの情報共有を図っていきたいと思っている。
また、昨年3月に県内の全市町村との合意に基づいて策定した愛知県国民健康保険運営方針では、重点的取組として、市町村の収納担当職員に対する研修会の充実を掲げている。今年度、外国人の収納率向上をテーマとした研修の実施を検討していく。
【委員】
各市町村が収納に対する窓口となるとのことであるので、どうか現場の情報をしっかりと集めてもらい、県としても連携を深め、少しでも収納率を上げてもらい、外国の人々にも安心して暮らしていけるような愛知県にしていくよう要望する。
【委員】
介護保険制度における本県及び本県の市町村の介護保険財政の運営について、大きく二点ほど尋ねる。そのうち、まず県内の市町村の介護保険料の状況について質問する。
私の地元の西春日井郡豊山町では、令和6年度から令和8年度までの第9期介護保険事業計画期間において、介護保険料基準額が名古屋市の6,950円に次いで高い、6,864円になってしまった。その前の期の第8期が5,300円だったため、前年度からの引上げ額は1,564円、保険料基準額の伸び率は29.5パーセントと、県内で最も大きい増額となった。県内で一番介護保険料基準額が低いのが美浜町の4,600円、次いで犬山市の4,783円なので、実に2,000円近い額の差があることになる。
介護保険料の値上げをめぐっては、昨年の豊山町長選挙前の豊山町議会でも様々な質問がなされた。町議会での当局の答弁や町の広報などでは、これまで介護保険料を据え置くため、介護給付費準備基金を取り崩してきたが基金が底をついたことや、給付費が伸びたことなどが述べられているが、この値上げに際し豊山町は10段階だった所得段階区分を13段階に細分化し、低所得者への負担軽減と所得が高い人々への応能負担を願う形で対応している。豊山町の高齢者保健福祉審議会では、基金を取り崩すことで保険料を抑えていたが、全部取り崩して下げ続けるのはよくなかったのではないか、基金全額を取り崩すのではなく段階的に保険料を上げていくべきであったとの反省の声が記録されている。
中部国際空港の開港に伴い、県営名古屋空港となって20年が過ぎたが、豊山町には鉄道がなく、交通インフラに課題を抱えているとともに、新生児の出生数が100人を切ろうとしている。その中で、2028年に設置予定の基幹的広域防災拠点と併設する臨空第2公園の整備など大型投資を控えている。町の介護保険制度の持続可能性を担保していくためには、まだまだ課題が山積していると言える。
一方で、愛知県全体に目を向けると、本年の令和6年度から令和8年度までの第9期介護保険事業支援計画における県の第1号被保険者の介護保険料の月額基準額の平均は5,957円で、全国平均の6,225円よりは低額なものの、平成12年から14年までの第1期の頃の愛知県平均2,737円と比べると、24年間で2倍近い額に値上がっている。県内の市町村の介護保険財政の状況は様々だが、今後も扶助費の増大が見込まれる。制度の持続可能性を担保していくためにも、市町村が行う様々な介護サービスの基盤となる財源の確保や介護保険事業計画の策定に当たっては力強い支援を願う。
そこで、第9期介護保険事業計画における本県の市町村の介護保険料に差が生じている要因についてどのように考えているのか、当局の認識を教えてほしい。
【理事者】
介護保険法では、介護サービス事業者に支払われる介護報酬について、その2分の1を介護保険料で賄うこととされていることから、市町村における介護保険料の額の決定には、当該市町村に住んでいる人がどれくらい介護サービスを利用するかが大きな要素となる。介護保険料の決定には、そのほかにも、保険料の徴収率や国からの交付金の状況など他の要素もあり、差が生じる要因を一概に言うことは困難だが、要介護認定率が高く、介護サービスの利用者が多い地域や、介護サービス事業所が多くあり、サービス利用が比較的容易な都市部等において高くなる傾向がある。
【委員】
続いて、本県の介護保険制度における財政安定化基金を踏まえた、持続可能な財政管理に向けた課題について質問する。
少子・高齢化の進展に伴い、県全体でも介護保険料の値上がりが続いている状況だが、保険者である市町村が通常の努力を行ってもなお資金不足が生じた場合、介護保険制度では、財政安定化基金により、都道府県が資金の貸付けや交付を行っている。この基金は、保険料の未納や介護給付費が予想を上回った場合などに備える仕組みで、財源不足が生じた市町村が一般会計からの繰入れを回避し、介護保険財政の安定化を図る役割を持つ。
厚生労働省の令和5年度の財政安定化基金貸付等状況によると、貸付金額と交付金額を合計した本県の額は、2000年度からの累計で27億7,400万円となっており、これを全国の都道府県の貸付・交付金額を多い順にすると47都道府県中14位となる。1位から6位まで順に、福岡県、大阪府、新潟県、沖縄県、青森県、北海道となり、貸付・交付金額が少ないのが45位から47位までで、栃木県、静岡県、福井県となっている。貸付・交付金額が多い自治体を見ると、大阪府などは全国でも最も高い要介護認定率であり、介護サービスの利用者が多いため、給付費が大きくなりやすい傾向があるようである。このほか、財政安定化基金の貸付・交付金額が多い都道府県は、高齢化率や市区町村の介護保険事業計画策定時の見通しを上回って給付費が増大するなど、それぞれの地域ごとの要因があるようである。
本県は大きく名古屋、尾張、三河の地域に分けられる。本県の介護保険財政における課題を分析する際の視点としては、エリアごとの地域の特徴も重要ではないかと考える。県内で介護保険料が最も高い都市型の高齢化が進行している名古屋市エリア、名古屋市周辺の都市部と郊外、農村が混在し、犬山市や小牧市など保険料が全国的にも低いエリアがあるものの、豊山町など高額自治体も存在し、地域内格差が大きい尾張エリア、トヨタ自動車など産業集積があり財政力指数が高い西三河と、人口減少、高齢化が進み、財政力指数が厳しい自治体がある東三河から成る三河エリア、愛知県の介護保険財政は、名古屋、尾張、三河の地域特性や財政力、人口構成、サービス供給体制の違いが保険料や財政運営に大きな影響を与えているといえる。
この地域差を踏まえ、本県の介護保険財政を持続可能なものとするには、地域ごとの高齢化率や人口動態に応じたきめ細かな制度設計が必要であるし、介護予防や在宅医療・介護連携の強化や、介護人材を確保するための施策が、都市部、農村部ともに重要である。そして、私の地元の豊山町のように、苦しい状況に陥ることのないよう、介護給付費準備基金の計画的な運用と、段階的な保険料改定などによる急激な負担増の回避策も大切である。今後は地域差を踏まえた柔軟な制度運営と持続可能な財政管理がより一層重要となる。
そこで、現在、財政安定化基金の貸付・交付を受けているところはあるか。これまでの貸付・交付状況と併せて教えてほしい。また、本県の介護保険制度を持続可能なものとするため、今後どのように取り組んでいくのか、当局の見解を教えてほしい。
【理事者】
本県では、介護保険制度の普及に伴い、急激にサービスの利用者が増加した2003年度から2005年度の第2期介護保険事業計画期間を中心に、以降2014年度までに累計で19保険者に対し20億3,720万4,000円の貸付けを行い、12保険者に対し7億3,697万円の交付を行ったが、2015年度以降は現在まで貸付・交付を受けた保険者はない。
次に、介護保険制度を持続可能なものとするために必要な取組についてである。
少子・高齢化が進む中、介護保険制度を持続可能なものとするためには、給付と負担のバランスを適切に保っていくことが重要である。そのためには、保険者である市町村等が高齢者の自立支援や重度化防止の取組を進めるとともに、地域の特性を分析、把握し、将来のニーズを見据えた適切な介護サービス基盤の整備や、高齢者の所得等に応じたきめ細かな保険料の設定による負担の平準化等に取り組んでいく必要がある。
県としては、こうした取組が市町村において適切に実施されるよう、市町村ヒアリング等の機会を捉えての助言や、市町村職員向け研修の実施、データによる地域分析に知見を持つ者による伴走支援等により、継続的に支援を行っている。今後も引き続き、これらの事業を通じ、介護保険制度の持続可能性の確保に取り組む市町村を支援していく。
【委員】
県内における臨床研修医の定員配分の在り方について、制度的な観点から問題提起をする。
まず、臨床研修制度そのものについて、制度の概要と、国、県、医療機関それぞれの役割分担について、簡潔に説明を願う。
【理事者】
臨床研修については、医師法により、医師免許取得後、診療に従事しようとする医師は2年以上都道府県知事の指定する病院等で研修を受けなければならない。
国、県、臨床研修病院の役割についてだが、厚生労働省は全国の研修希望者数を推計し、全国に占める各都道府県の人口や医学部入学定員の比率を基礎に各都道府県の上限数を定めている。県は、国から示された募集定員上限数を受け、県内の臨床研修病院ごとの定員数を定めている。臨床研修病院は、県が示した病院ごとの募集定員を上限に、臨床研修医の募集を行い、研修を実施している。
【委員】
次に、愛知県が県内の各医療機関に対して臨床研修医の定員をどのような基準で配分しているのかより具体的に伺う。例えば病床数や医師数、救急搬送の実績、あるいは指導医の体制といった観点があると思うが、どのような基準で評価しているのか、また、どのように最終的な定員数が決まっているのか、その仕組みを詳しく教えてほしい。
【理事者】
定員を配分する基準については、医療法及び国の指針により、診療に関する学識経験者の団体、地域の医療関係団体、大学病院、市町村、地域住民を代表する団体などを構成員とした地域医療対策協議会において決定された研修医募集定員の配分要領を定めている。
また、国の基準により指定されている臨床研修病院ごとの募集定員については、2020年度までは募集定員枠を国において定めていた。なお、全体のうちの一部の定員については、調整枠として県で定めていた。国から権限が移譲されたため、2021年度から県が病院ごとの定員全体を定めているが、臨床研修病院から募集定員の意向調査を行った上で、2020年度までの国による各病院への配分をベースとし、直近3年間の研修医採用数を実績として評価している。さらに、救急搬送件数などの研修環境や指導医数などの指導体制が整っている病院に対しては、特性評価という形で評価を行っている。
臨床研修病院ごとの募集定員数については、地域医療対策協議会で決定された配分要領により、事務局である地域医療支援室において評価を行い、地域医療対策協議会で協議され決定されている。
【委員】
次に、配分理由の明確化について伺う。
令和8年度の募集定員は愛知県全体で551人とされており、前年度、令和7年度の557人から6人の減少となっている。そのため、個々の病院ごとの定員数にも調整があったことと推察されるが、具体的にどのような理由で各病院の定員が増減したのか、その説明が十分ではないと感じている。定員が増えた病院にはなぜそのような判断がなされたのか、また、減った病院はどこに改善の余地があったのか、それらが明示されることにより、各病院が次年度に向けて努力する方向性が見え、制度全体の向上につながると考える。
加えて、意欲的に研修体制を整え、より多くの研修医を受け入れたいと考える病院にとって、定員を増やすためには何をどうすればよいのか、その明確な方針が制度上で十分に示されていないように思う。医療機関側からすれば、制度上の努力目標や評価指標が明示されていなければ、いわゆるチェーンの外れた自転車をこぐような状態であり、モチベーションの低下やリソースの消費にもつながりかねない。例えば指導医の人数や研修満足度の向上、救急医療の受入れ実績、地域医療への貢献など、どのような取組が定員増の評価要素として位置づけられているのか、これらの基準を病院に分かりやすく示す必要があると思う。
このような観点から、配分理由の透明化と努力目標の明確化について、県の見解を伺う。
【理事者】
配分理由については、各臨床研修病院に対し、募集定員枠を通知する際、定員の合計人数のほか、実績評価、特性評価の区分別の人数を通知しており、理由の透明化に努めている。直近3年間の研修医採用実績、救急搬送件数、指導医の数などが評価対象となることを明示している研修医募集定員の配分要領を毎年各臨床研修病院に送付している。引き続き、募集定員配分基準の明確化に努めていく。
【委員】
最後に要望する。臨床研修制度の目的は、医師としての初期教育を担保し、将来の地域医療を支える人材の育成を確保することにある。そのためには、地域医療の安定確保を大前提としつつ、競争原理の導入によって制度の活性化を図っていくことが重要だと考える。具体的には、評価基準と配分理由の透明化、各医療機関に対するインセンティブの明示、そして柔軟な制度運用によって、県全体としての医師人材の育成力を底上げしていく必要があると思う。京都府などでは、人気や実績に応じて定員を増減させる見直し制度が進んでおり、研修医にとっても、病院にとっても、納得感のある制度運営がなされている。愛知県においても、現場の声を丁寧に拾いながら、より実効性ある制度設計を行ってもらうことを要望する。
続いて、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種について質問する。
新型コロナウイルス感染症の流行から数年が経過し、社会的には感染対策が平時化されつつある。その一方で、ワクチン接種を希望する県民の数は年々減少しており、特に令和5年度以降は、秋冬の接種においても接種率の低下が目立っていると聞いている。こうした現状は、ワクチンそのものに対する不安や誤情報の影響があることも指摘されており、今後の感染再拡大や季節性の流行に備えた体制構築においても、重要な検討材料である。
そこで、まずは県内の新型コロナウイルスワクチンの令和6年3月末まで実施された特例臨時接種期間中の初回接種から7回目までの接種実績について伺う。あわせて、令和6年10月に始まった定期接種の実績についても伺う。
【理事者】
2021年2月から2024年3月31日までのワクチン接種については、予防接種法上、疾病のまん延予防上緊急の必要があると認める場合に実施される特例臨時接種として、計7回実施されている。小児及び乳幼児を除いた12歳以上の本県の接種実績は、1回目が約612万人、2回目が約605万人、3回目が約488万人、4回目が約305万人、5回目が約158万人、6回目が約92万人、7回目が約126万人となっている。なお、接種率については、1回目が90.55パーセントであったのに対し、7回目では18.58パーセントとなっている。
また、2024年度に実施された定期接種については、予防接種法上、接種の努力義務がないB類疾病に分類されている。接種対象は65歳以上の高齢者及び60歳から64歳の基礎疾患を有する人となっており、県内の接種実績は2025年6月19日時点で約33万人、接種率は16.95パーセントとなっている。
【委員】
ワクチン接種に対する県民の関心が高かった時期があったが、現在では、効果が実感しにくいとか、副反応が怖いなどといった声が広がりつつあり、特にインターネットやSNSを通じて一部の情報がエビデンスの全体像を適切に反映しないまま流布され、結果としてワクチンそのものが有害であるといった端的な主張につながっているケースも見受けられる。こうした状況下で、県民が冷静な判断を行うには、ワクチンの効果とリスクについて科学的に整理された情報の提供が欠かせない。特に高齢者や基礎疾患を持つ人々は、感染時の重症化リスクが高く、引き続き予防接種の恩恵を受ける対象と考える。
そこで、国内外においてワクチンの効果はどのように評価しているか、一方で、副反応の発生についても留意する必要があるが、副反応の発生状況や重篤性についてどのように把握、評価しているのか伺う。
【理事者】
新型コロナワクチンの効果については、2023年度秋冬の特例臨時接種7回目において用いられたオミクロン株対応1価ワクチンの有効性について、国内外の複数の報告において、入院予防効果、重症化予防効果等が示されている旨、国の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で示されている。また、副反応疑いについては、接種後に生じたアナフィラキシーや血栓症、心筋炎、心膜炎などの重篤な症状について、予防接種法に基づき医療機関から国への報告が義務づけられており、国においてワクチンの安全性に係る重大な懸念は認められないとの評価がなされている。
【委員】
現在、多くの国ではmRNAワクチン接種が中止されたにもかかわらず、日本では引き続き推奨されているといった主張も一部に見受けられる。しかし、実際には、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を有する人々に対して、ワクチン接種を継続的に推奨している国は多数存在しており、日本の方針は世界の主流と大きく乖離するものではないと理解している。
例えば、米国疾病予防管理センター(CDC)では、生後6か月以上の全ての人に接種を推奨しており、65歳以上の人には1回の接種後、さらに半年後に2回目の追加接種を推奨する、年2回体制が標準とされている。カナダの国家予防接種諮問委員会(NACI)も65歳以上及び免疫抑制状態にある人々への年2回の接種を推奨している。また、イギリス国民保健サービス(NHS)においては、高齢者を対象に毎年秋のブースター接種を行っており、世界保健機関(WHO)も高リスク層への定期的な接種継続を科学的根拠に基づいて支持する立場を明確にしている。これらの国々や国際機関の方針を踏まえても、日本における高リスク層への接種推奨は、国際的な科学的知見に基づいた妥当な判断であり、孤立した政策ではないことが確認できる。
そこで、県としてこうした国際的な動向に関する情報収集や分析をどのように行っているのか、また、国の方針と比較した上で、本県としてどのような認識を持っているか伺う。
【理事者】
予防接種に関する海外からの情報収集等については、予防接種法に基づく国の予防接種基本計画において、国の役割とされている。県としては、引き続き、国の方針を踏まえ、ワクチン接種の啓発や情報発信、情報提供に努めていく。
【委員】
ワクチン接種の判断は最終的に本人の意思によるものであるべきだが、その判断が正確かつ公平な情報に基づいてなされることが大前提である。現在のように誤解や不安が広がっている状況においては、行政の情報発信の在り方こそが接種率や医療リスクに直結するものと考える。特に、医学的知識を持たない高齢の人や家族の助言に依存せざるを得ない人々が安心して接種できるよう、分かりやすく信頼性の高い情報を届ける努力が求められる。
これまでの接種体制と比べ、現在の重点は、広く接種させることから、適切な人が正しい判断で接種を受けられる環境を整えることに移行していると考える。そのためには、行政が発信する情報の信頼性、相談体制の親身さ、医療従事者との連携が何よりも重要である。単に数字を追うのではなく、一人一人が納得し、安心して行動できるような体制を築いていく必要がある。
また、感染症の種類ごとの重症化リスクを冷静に見定めることも重要である。例えば、厚生労働省が発表した令和6年秋冬の統計によれば、インフルエンザの感染者数は新型コロナウイルスを大きく上回る一方で、入院率においては新型コロナのほうが10倍以上高いと報告されている。より注意を要する感染症であることが明らかになっている。さらに、新型コロナによる死亡者の97パーセントが65歳以上の高齢者であることからも、高齢者層への重点的な支援が必要と考える。
そこで、県として、ワクチンに関する不安の払拭や正確な知識の普及、特に高齢者や基礎疾患を有する人への支援、啓発について、どのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
新型コロナワクチンに関する不安の払拭に向けた取組として、看護師による専用相談窓口を県庁の感染症対策課内に設置し、副反応や副反応疑いなどに関する問合せに対応している。また、ワクチン接種に対する理解を深めてもらうため、定期接種の対象者である高齢者や基礎疾患を有する人に向け、ワクチン接種の効果や副反応のリスク、安全性等について、県のウェブサイトを通じて周知をしている。今後も引き続き、正確な情報の発信に努めていく。
【委員】
令和7年度のワクチン接種に係る助成制度について最後に伺う。
国は、令和7年度の新型コロナウイルス感染症に係る秋冬の高齢者向け接種について、従来支給していた1回当たり8,300円の助成を廃止する方針を示している。これにより、市町村による助成制度の設計が非常に困難になり、接種費用が自己負担となる可能性も懸念される。高齢者層では、費用の有無が接種の可否に直結するケースもあり、接種率のさらなる低下を防ぐためには、県や市町村による独自の助成制度が有効であると思われる。
そこで、まず、県内市町村が令和7年度の助成制度をどのように設計しようとしているのか、県として動向を把握しているのか伺う。また、本県独自の助成制度を検討する考えがあるかについても併せて伺う。
【理事者】
今年5月に県内市町村に対して今年度の新型コロナワクチン定期接種に係る助成制度の実施予定を照会したところ、約9割の市町村が補助を予定しており、その補助率は接種費用のおおむね7割程度とするところが多数を占めている状況だった。
なお、ワクチン接種に係る財源については、国の予防接種基本計画において、国が必要な財源の捻出及び確保等に努める必要があるとされている。こうしたことから、県では、これまでも国に対しワクチン接種に係る十分な財源確保を要請してきた。今年度からは、国の助成制度が廃止され、市町村の財政負担も増加することになる。引き続き、国に対し定期予防接種に係る財政支援をしっかりと行うよう強く要請していく。
【委員】
最後に要望する。本日のやり取りを通じて明らかになったように、新型コロナウイルスに限らず、感染症対策におけるワクチン接種は公衆衛生上の重要な柱の一つである。その一方で、ワクチンに関しては、接種後の健康被害救済制度の認定件数の推移や科学論文の一部引用などを根拠として、様々な意見や主張が発信されていることも事実である。健康への不安や懸念の声に対しては、誠実に耳を傾ける姿勢が不可欠である。しかしながら、こうした個別の事例や論文の選択的な引用が、全体の科学的エビデンスのバランスを欠いたまま拡散されることで、かえって県民の冷静な判断を妨げてしまう懸念がある。特に高齢者や基礎疾患を持っている人にとってワクチン接種は、重症化を防ぐ有効な選択肢であることを国際的な研究や国内の実績が示している。県民に対しては、その効果やリスクを適切に伝えた上で、押しつけではなく納得を伴う判断ができる環境整備を進めてもらいたいと考える。
また、高齢者にとって、新型コロナウイルス感染症が重症化率、死亡率の両面でインフルエンザと比べて著しく高いリスクを持つことや、助成制度の有無が接種行動に与える影響が明らかになってきたことを踏まえ、今後の施策においては、接種率の単純な追求ではなく、受けるべき人に届く施策として一層の情報発信と制度的後押しを願う。
今後とも科学的な知見と県民の信頼の双方に根差した公衆衛生政策の着実な推進を強く要望する。
【委員】
私からは大きく三つテーマを設けて質問する。
まず、一つは低出生体重児の支援充実という観点で、リトルベビーハンドブックの改訂に関して伺う。
少子化対策という観点で、2024年の全国の出生数は速報値で68万6,061人で、想定よりも15年早い少子化の波が来ている。2030年までが少子化対策の勝負の期間ということで、愛知県も危機感を持って進めなければならない分野だと思う。その愛知県の出生数も2014年の6万5,219人から2023年には4万8,402人と約3割減少をしている。医療技術の発展とともに、小さく生まれてきた赤ちゃんも健康に生きていくことが可能となってきている。愛知県では、2023年に生まれた子供のうち、出生体重が1,500グラム未満の子供は404人と、0.8パーセントとなっている。こうした子供を持つ親にとっては、赤ちゃんの成長への心配は非常に大きい。とりわけ母子健康手帳は、出産予定日前後で生まれた赤ちゃんの成長をベースにしたものであるため、成長度合いが違っているとさらに不安は増してくる。
そこで、原則出生時の体重が1,500グラム未満の子供を持つ保護者を対象に、母子健康手帳を補完する冊子として、リトルベビーハンドブック、以下ハンドブックと言うが、各地で作成され、保護者の不安軽減の役割を果たしている。ハンドブックは、名古屋市においては2019年4月、続いて愛知県は2021年4月に発行が初めてされている。以後、全国展開され、2024年に全都道府県で導入をされている。
まず一つ目だが、愛知県ではハンドブックをどのように配布しているのか、そして昨年度の配布実績数を併せて伺う。
あいちリトルベビーハンドブック
【理事者】
あいちリトルベビーハンドブックは、県内に19か所ある総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターにおいて、新生児集中治療室に入院する、生まれたときの体重が1,500グラム未満の子供の保護者に配布している。また、里帰りなど県外で出産した人にも利用してもらえるよう、住んでいる市町村の母子保健窓口でも配布している。2024年度の配布部数は、独自にハンドブックを作成している名古屋市分を除いた数となるが、169部となっている。
【委員】
そのハンドブックだが、母子健康手帳とは中身が違うというような観点で、工夫あるいは成長曲線、ハンドブックにまつわる子育ての様々な情報が掲載されている。
そこで、ハンドブックを作成した際、今から4年前だが、どのように内容を決めてきたのか、また、実際に使っている人からはハンドブックの内容についてどのような意見が寄せられているのか。
【理事者】
愛知県では、先行して取組を進めていた静岡県や名古屋市の冊子を参考にしながら、産科や小児科の医師、行政関係者などが参加する愛知県母子保健運営協議会等の意見を踏まえ、ハンドブックを作成した。このハンドブックには、総合周産期母子医療センターの医療従事者や、低出生体重児の育児経験がある保護者からの応援メッセージ、小さく早く生まれた赤ちゃんの特徴などを掲載しているほか、入院中の治療や検査の記録、保護者が初めて赤ちゃんに触れた日や、初めて抱っこした日をそのときの気持ちとともに記録できる、入院中の初めてメモリーページを盛り込んだ。ハンドブックを実際に利用している人からは、小さく生まれた子供の成長について分かりやすく説明されており安心した、また、記録を書くことで成長を感じることができたなど、好意的な意見をもらっている。
【委員】
愛知県で初めて発行されてから、先ほども言ったが、4年が経過している。その間、医療環境の進歩がある中で、低出生体重児に関連する情報も増えてきている。必要な情報は親に提供されたほうが不安軽減にもつながると感じる。
他県の発行したハンドブックに関しては、例えば歯科健診記入欄、災害時の注意事項、医療者の記入欄、視覚的に理解しやすい表示、当事者によるコメントや活動団体の紹介などが掲載されているところもある。初版以降、低出生体重児やハンドブックへの認知度は上がっている一方、ハンドブックの内容が他県版と比較し古いと感じることもある。先発隊として愛知県はハンドブックを発行し、他県が内容を充実させているという感もある。
ハンドブックは作成から4年余り経過している。改訂を検討してはどうかと思うが、県としてどのように考えているか。
【理事者】
県では、2021年4月から配布を開始したが、その後、他の都道府県や市町村においても、それぞれに工夫されたハンドブックが作成されている。先日、当事者団体が、知事に面談した際、歯科に関する情報の追加や、医療、福祉の最新情報を反映したハンドブックの改訂に関する要望をもらった。県では、他の自治体のハンドブックや当事者を含めた関係者の意見を参考に、小さく生まれた子供の家族がより利用しやすいものとなるよう、改訂に向けて取り組んでいきたい。
【委員】
このテーマに関して要望する。昨年9月、こども家庭庁から低出生体重児に関する支援に関し通知が出ている。その中に、低出生体重児向けの手帳の作成等に活用可能な事業が含まれている。ハンドブック作成等のために協議会を設置し、作成や啓発を行った場合、国庫補助の対象とすることが可能となっている。ハンドブックのさらなる啓発、配布方法の戦略的取組、改訂に当たっては、関係者が入った検討委員会を立ち上げ、現場目線で役に立つ内容にしてもらいたい。
ハンドブックは、出産後、メンタルの落ち込みを和らげる効果や、退院後は産後ケアや保健師が訪問してくれた際に見せる資料として役立つなど、ハンドブックを親や医師が必要情報を適宜記入しフル活用することで、その意味合いの濃さは増していく。また、ハンドブックの医療的記載は、低出生体重児のその後の医療・教育・福祉分野の受入れ側にとり有益な情報となり得る。低出生体重児、保護者、周りの関わり方など、理解促進、ネットワークの構築に非常に役立つと思う。このほかにも、低出生体重児支援のための専門職への研修費用の補助もある。
以上の観点から、いろいろな立場の人が関わり、熟議をした上でのハンドブック改訂版発行をはじめ、当事者が安心して子育てできる環境の整備を望む。
次のテーマに移る。がん患者へのアピアランスケアの充実という観点である。
令和6年2月定例議会において、そして令和6年12月の福祉医療委員会で質問と要望を行ったがん患者へのアピアランスケアの拡充、現行対象アイテムは、ウイッグ、乳房補整具だが、頭頸部へのアピアランスケアでエピテーゼを対象に加えるように具体的に要望した。2月定例議会においては、乳房以外の部位については、他県の補助状況等を踏まえてしっかり研究していくとの保健医療局長からの答弁があり、福祉医療委員会においては、がんに罹患した患者が前向きに治療に向き合い、安心して社会生活を送るためには、頭頸部をはじめ外見の印象は重要な要素であることから、市町村やがん経験者を含めた関係者の意見を聴くなどして、エピテーゼなどアピアランスケアの補助内容等の充実について検討していきたいという健康対策課長のコメントがあった。
そこで、まず、これまでのがん患者アピアランスケアの実施自治体数、実績と予算執行状況を伺う。
【理事者】
アピアランスケア支援事業の実施自治体については、昨年度は53の市町村で事業が実施されていたが、今年度は全市町村で実施されている。県では、アピアランスケア支援事業を実施する市町村に対し補助を行っており、その実績と予算執行状況については、事業実施初年度である2022年度は、医療用ウイッグが2,073件、乳房補整具が443件で、当初予算額2,600万円に対し、補助実績は2,316万5,000円で、執行率は89.1パーセントだった。2023年度は、医療用ウイッグが2,762件、乳房補整具が871件で、当初予算額3,517万6,000円に対し、補助実績は3,346万2,000円で、執行率は95.1パーセントだった。
【委員】
がん患者へのアピアランスケアの実施主体は市町村であると理解している。つまり、この制度は、市町村に対し県は補助を行うという仕組みである。市町の議員を通じて本テーマに関し会話したことがあるが、市町のコメントとしては、県がやるならうちもやるという姿勢が非常に多いと感じた。つまり、県が音頭を取れば市町は連携してくるという感じである。そのような観点で、県は、昨年度、私の質問を受け、市町村に対してアピアランスケア対象アイテムに関しヒアリングを行うと聞いた。これは、そもそもがん患者へのアピアランスケアをスタートするに当たり県が最初に行った動き、いわゆる5年前と同じである。そのヒアリングを経て現行の制度が立ち上がった。
そこで、昨年度行った市町村へのヒアリング内容と結果と今後の方針を伺う。
【理事者】
アピアランスケア支援事業に係る補助内容に関して、本年3月に各市町村がん対策主管課に対し、エピテーゼで補助対象としているか、また、今後エピテーゼを補助対象に追加するかについて意向調査を実施した。エピテーゼを補助対象としているかについては、独自に補助対象としている市町村はなかったが、県がエピテーゼを補助対象に追加する場合は追加をするかという設問に対しては、53の市町村から追加するまたは追加を検討するとの回答があった。
この調査結果を踏まえ、アピアランスケアの補助内容の充実について、他県の状況も参考にしながら、引き続き検討していく。
【委員】
最後に要望する。本テーマ、保健医療局からの答弁は、1回目の質問、要望のときの研究から、2回目の質問、要望のときでの答弁として研究から検討というような形で、具体的なステップを経ているという印象がある。先ほども検討というような表現があった。
実は、名古屋市会定例議会においても公明党の市会議員が本テーマを質問し、健康福祉局長から、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度など他の制度との整合性を図るとともに、他都市の状況等も調査しながら検討していきたいと考えているとの答弁が出ている。当事者の社会参加、ウェルビーイングに資するがん患者へのアピアランスケア対象アイテムの拡充、つまりエピテーゼを早急に進めてもらうよう、もちろん当事者のためだが、強く要望する。
最後、三つ目のテーマになるが、障害者手帳のカード化について伺う。
これは、障害者手帳の利便性向上について、2024年9月の福祉医療委員会で障害者手帳のカード化ということで要望したが、県は他県の状況調査を進め、研究を進めていく旨、答弁をしてもらった。
そこで、障害者手帳のカード化について現在どのように考えているのか伺う。
【理事者】
他県における障害者手帳のカード化の取組状況を確認したところ、障害者手帳のカード化を導入するに当たっては、手帳システム改修に加え、対応するカード印刷用プリンターやカード台紙等が必要となり、年間数百万の費用が必要と見込まれる。現時点では、カード化導入のための国の補助等がなく、多額の費用も見込まれることから、実施は難しいと考えている。
【委員】
障害者の経済的負担の軽減や自立の促進、社会参加の観点から、公共交通機関や公の施設利用料について、障害者手帳所持者を対象に減免が実施をされており、これらの減免を受けるために障害者手帳を携帯して利用の際に提示する必要がある。障害者手帳のカード化については、費用の面から難しいということであるが、障害のある人の社会参加を促進するためには、障害者手帳を携帯する際の利便性についてさらなる向上が必要と考える。例えば子育て応援という観点で、はぐみんカードのデジタル化が今年度4月から始まっている。それも紙のカードから一気にプラスチックのカードを越えてスマートフォンで見ることができる、デジタル化が進んだ。
そのような観点で、障害者手帳を携帯するための利便性の向上としてどのように考えているか。
【理事者】
障害者手帳の利便性向上としては、障害者手帳情報をスマートフォンに取り込める障害者手帳アプリのミライロIDがある。これは、障害者手帳の代わりに提示することにより、公共施設等での利用料減免や公共交通機関等で割引を受けられるものである。このため、県の作成する福祉ガイドブックにミライロIDに対応している公共交通機関等を掲載し周知を図っている。
【委員】
ミライロIDだが、愛知県の主な公共施設のうち、障害者手帳所持者に対する利用料減免を実施している施設で、ミライロIDを使用している人への料金減免を実施している施設数は21か所で全体の91パーセントと聞いている。
割合としては多いものの、実際に手帳の代わりとして利用されることが重要と考えているが、利用状況は把握しているか。
【理事者】
実際に各施設においてミライロIDがどの程度利用されているかについては把握できていない状況である。委員の指摘のとおり、実際に手帳所持者に利用されることが重要と考えるので、今後は同アプリの情報が手帳所持者にしっかりと届き利用が促進されるよう、啓発の方法も含めて検討し、改めて周知を行っていく。
【委員】
障害者手帳情報と障害者手帳アプリとの連携については、利便性向上のために大変有意義なものと考えている。今後の取組としては、当事者、関係団体への周知や県のホームページへのミライロIDの掲載、市町村が障害者手帳を交付する際に同アプリの説明を行うよう、県から依頼するなど、ミライロIDが障害者手帳を有する人に広く周知されるよう促進してもらうことを要望する。
もう一つ、先ほどのアピアランスケアの件に関して関連だが、先日、当事者団体の片目失明者友の会と会話をする機会があった。その際、片目失明者の中には、普通に生活するために義眼や眼帯を必要としているが、美容目的とされて費用補助がなく、経済的負担が多いということも聞いた。片目失明でももう片方の視力が0.6を上回る場合には、障害者手帳が交付されず非常に困っていて、義眼は特に子供だと成長に応じて何度も作り直す必要があり、そもそも保険適用外で経済的負担が大きいということを聞いている。経済的支援があれば助かるという声があった。
そこで、様々調べていたところ、東京では、がん患者以外の人も対象にアピアランスケアを行っている、その中に義眼も対象に入っている。がん患者以外の片目失明の人の義眼について、アピアランスケアを福祉的な観点から支援することができないか。
【理事者】
障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度では、身体障害者手帳を取得することで、義眼の購入費の一部が助成されるが、片目失明で他眼の視力が0.6を上回る場合には障害認定されず、補装具費支給制度の利用ができないことになる。一方で、片目失明の人など視力や視野の障害による視覚障害認定はされないが、見えづらさを抱えている当事者への配慮を検討してほしいとの意見が国には寄せられている。そうしたことから、国では、現在、視覚障害の認定基準の検証と片目失明者の人への生活支援の在り方等について調査研究が進められていると聞いている。本県としては、まず国の調査研究の動きを注視していく。
【委員】
まずは、制度のはざまにいる当事者がいるということを認識してもらいたい。障害者手帳を取得できるできないにかかわらず、アピアランスケアという大きな視点で困っている人々の声なき声を拾い上げ、よりよい制度にしてもらうよう今後も検討してもらうことを要望する。
【委員】
三点、一般質問するが、まず、健康対策課の原爆被爆者対策に関して質問をする。
今年は被爆80年、戦後80年の節目の年である。核兵器禁止条約への批准国も広がり、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞するなど、平和への流れ、運動がある一方で、イスラエルがイランを攻撃し、アメリカも一緒になってイランを、しかも核施設を空爆した。国連憲章と国際法に明確に違反した無法な攻撃の強行である。広島、長崎の悲劇をこの世界のどこでも繰り返してはいけない。唯一の被爆国日本として、原爆の恐ろしさ、平和の大切さを伝えていく活動、次の世代へ核兵器廃絶をと引き継いでいくことに、愛知県としてより一層力を尽くしてもらいたいと思う。
まず、愛知県内の被爆者の人数と平均年齢を示してほしい。
【理事者】
2024年度末現在の愛知県内の被爆者健康手帳の交付者数は1,236人、平均年齢は84.51歳である。
【委員】
先日、平和行進団が愛知県へ表敬訪問をした。その中で幾つかの要望を届けた。その中で、日本原水爆被害者団体協議会作成のパネルや県が所有をしているパネルの活用についても要望があった。
まず、県所有のパネルの活用実績について示してほしい。
【理事者】
パネルの活用実績については、広島、長崎の平和祈念式典に合わせて、2000年以降、毎年7月から8月にかけて、本庁舎・西庁舎地下通路や県民相談・情報センターのほか、県保健所で原爆の恐ろしさを多くの人に知ってもらうため、パネル展示を行っている。また、2019年からは、東大手庁舎にあるあいち人権センターにおいてもパネルの展示を行っている。
【委員】
被爆者の平均年齢が、先ほど答弁もしてもらったように、80歳を超えて自ら語ることが難しくなる中で、多くの子供たちに非核、平和について学ぶ機会をつくるためにも、パネルなど、活用をぜひ積極的に行ってもらいたい。
そこで、県所有のパネルや原爆の絵を使用して、広島、長崎、ビキニ被災パネルの展示を市役所や全ての小中学校、高校、公民館で開催するよう積極的な働きかけを、チラシの配布、SNSも活用して、パネルの貸出しの周知をするなど、取り組んでもらいたいが、どうか。
【理事者】
愛知県では、県のウェブページを活用し、広くパネルの貸出しの案内を行っている。2017年と2018年には、小牧市にパネルの貸出しを行っている。今後、より多くの団体等にパネルを活用してもらえるよう、ウェブページを分かりやすく工夫し、周知に努めていく。
【委員】
ぜひ広く周知をしてもらいたい。
先ほど展示の実績について話をしてもらった中に、保健所や庁舎はあったが、学校がなかったかと思うが、そうしたところへの働きかけについて検討されていることがあれば教えてほしい。
【理事者】
学校等においても、県のウェブページの貸出しの案内のほうを広く周知していきたい。
【委員】
ぜひ積極的に願う。
次に、愛知県原水爆被災者の会が実施をする慰霊式典についてである。これまで式典の開催に愛知県から補助を出してもらっていると思う。今年度は補助の増額をしてもらった。まず、昨年度の補助額、そして今年度の補助額がどうなったのか示してほしい。
【理事者】
慰霊式典への昨年度の補助額は75万円、今年度は180万円となっている。
【委員】
被爆80年に向けて、愛知県原水爆被災者の会の要望を受けての増額だということで、市民の団体からも大変喜ばれている。
慰霊式典に向けて、文化の力で平和を発信しようということで今準備が進められているということである。被爆者は、この1年が核兵器廃絶へと運動に取り組める最後の年になるかもしれないと命がけで声を上げ続けている。節目の年に行われる慰霊式典へぜひ大村秀章知事に挨拶に来賓として出席を検討してもらいたいが、どうか。
【理事者】
今回の慰霊式典をはじめ各種行事への知事の出席については、主催団体等から出席依頼をもらった上で調整しているので、依頼が出された際は調整を行っていく。
【委員】
依頼が出された際はということだったので、ぜひ積極的に、もし依頼があれば、そのように日程調整をしてもらいたいし、調整した上で難しいということであれば、私はメッセージを出すということも検討してもらいたく、これは要望しておきたい。非核、平和への取組に引き続き、ぜひ尽力もしてもらって、次の世代に広げていく取組をぜひ頑張ってもらいたいということを要望する。
続いて、育休退園について質問する。
この間、保育団体からも繰り返し要望が行われて出されている育休退園について、育休退園とは、保護者が第2子や第3子の出産のために育児休業を取得すると家庭で保育できる環境があるとみなされ、既に保育園に通っていた上の子供の退園を迫られるというものである。子供に関する施策を考える土台には、子供の権利の視点が重要だと思う。
まず、子どもの権利条約について触れておく。昨年、日本が子どもの権利条約を批准して30年がたった。子どもの権利条約は、子供を権利の主体であることを明確にしたものである。子供は生まれながらに大人と対等、平等に、一人の人間として権利、人権を持つと同時に、成長の過程にあって保護や配慮が必要な子供ならではの権利があることを宣言した。
まず、子どもの権利条約4原則について示してほしい。
【理事者】
児童の権利に関する条約の四つの原則とは、差別の禁止、子供の最善の利益、生命、生存及び発達に対する権利、子供の意見の尊重とされている。
【委員】
この4原則は条文に書かれている権利であるとともに、あらゆる子供の権利の実現を考えるときに併せて考えることが大切な原則であるとされている。この条約は、現在、国連加盟国数を上回る196の国と地域で締約され、世界で最も広く受け入れられている人権条約である。日本は批准から30年になるが、条約を生かした施策や普及は進んでおらず、日本政府は国連・子どもの権利委員会から子供の権利の保障が不十分だという勧告を繰り返し受けている。愛知県の政策の中でも子供の権利を保障することに力を尽くしていくことが重要である。
そこで、子供が保育園で過ごす時間の中でも、子どもの権利条約が生かされることが重要だと考えるが、県の認識を伺う。
【理事者】
児童福祉法第1条は、全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有すると規定している。保育所は、児童福祉法に基づく児童福祉施設であり、児童福祉法を踏まえ、児童の権利に関する条約の精神にのっとった対応が必要であると認識している。
【委員】
保育士不足など子どもの権利条約が脅かされている幾つかの問題が起こっているというのが今の状態だと思う。その中で育休退園もその一つだと思う。保育を必要とする子供たちの発達や健康、最善の利益を無視し、子供にとっては強制的に退園させられてしまう、人権侵害とも言うべき状況がある。保育園でつくってきたコミュニティーの場を奪われてしまっている。育休退園を設けている自治体は減少してきてはいるものの、昨年度段階で愛知県内では41市町村、75パーセントの自治体が解消できていない。問題が解消しているのは、政令市の名古屋市や、中核市四つのうち岡崎市以外、豊橋市、豊田市、一宮市など13市町村である。
二点伺う。7割を超える市町村で育休退園の規定がいまだに残っていることは、愛知県の保育行政にとって解消すべき大きな課題の一つと考えるが、県の認識を伺う。また、愛知県こども計画はぐみんプランの中で育休退園はどのように位置づけられているのかいないのか、この点についても伺う。
【理事者】
保護者の育児休業中の保育所の継続利用の取扱いについては、国の通知において、次年度に小学校入学を控えるなど、子供の発達上、環境変化に留意する必要がある場合、または保護者の健康状態や、その子供の発達上、環境の変化が好ましくないと考えられる場合など、市町村が児童福祉の観点から必要と認めるときとされており、この場合でも、保育所の利用に関し、公平な状況を保ち、地域としての適切な保育の実施に留意することとされている。保護者が育児休業を取得する際は、保護者や子供の希望に沿った選択ができることが望ましいことではあるが、地域の保育ニーズが高く、待機児童が発生している、あるいは、年度途中で希望の時期に入園することができず、保護者が育児休業を延長せざるを得ない地域にあっては、保育の必要度や公平性の観点から保育所の継続利用ができないこともやむを得ない措置だと考えている。
なお、はぐみんプランには、育休退園についての記載はない。
【委員】
はぐみんプランには育休退園が位置づけられてない。これだけ大きな問題になっているにもかかわらず、そのような位置づけが大変低いのではないかと思う。育休退園の理不尽さを訴える親の声や、保育士からも声がたくさん出されている。子育て家庭に大きな負担と不安を与えており、子供の権利の観点からも問題である。
主に三つの問題を挙げる。第一に、上の子と生後間もない下の子の面倒を見る負担が大きいということである。下の子を育てることに手いっぱいで、退園した子供の公園で遊びたいという要求に応えられる余裕がないという声を聞いている。第二に、育休終了時に2人の子供を同時に同じ保育園に入園させることができるか不安を抱えていることである。あいち保育研究所の調査によると、育休終了後の保育園の利用申込み対応について、希望していれば上の子が通っていた保育所に優先入所させるが7自治体、希望していても優先入所させることができないが21自治体、配慮はするが優先入所とはいえないが12自治体となっている。第三に、上の子が保育者や友達との関係から離れ、それまで得ていた遊びの場や人間関係を失うこと、退園によりせっかくできた友達と離れ離れになり、親は信頼関係をつくってきた保育士さんと離れて、復帰の際にまた、同じ保育園に戻れるかも分からない中、子供も親も不安だという声がある。弟や妹が生まれてうれしいのに、子供から何で私が保育園に行けなくなるのと聞かれて、本当に上の子につらい思いをさせてしまったと、多くの保護者が嘆いている。また、保育士に子育ての話を聞いてもらう場を失うことも精神的に大変だという声もあった。
そこで、子育てを応援する愛知県として、子供の権利の観点も踏まえ、育休退園を撤廃するよう、愛知県から市町村へ積極的な後押し、助言を願いたいが、どうか。
【理事者】
育児休業中の継続利用については、市町村において子供と家庭の状況や地域の実情に応じて判断されるものではあるが、児童福祉の観点から、子供の健やかな育ちを支えていくため、県としても、保育の実施主体である市町村と連携し、保護者や子供の意思に沿った育児休業中の継続利用をはじめ、よりよい保育サービスが提供されるよう支援に努めていく。
【委員】
子育て環境の改善へ、市町村が実施主体ということはあるが、育休退園を撤廃するということでぜひ尽力をしてもらいたい。さっき子供の権利の話もさせてもらったが、やっぱりそうした子供たちの権利を守るという、そのような姿勢が大事だと思う。多くの子が利用する保育施設は、子供たちの成長と発達を保障できる安心・安全な環境が何より求められていると思う。保育士を増やすということも含め、子育て支援に力を尽くしてもらうことを求める。
続いて、18歳までの医療費無償化についてである。
子供の医療費無料化は、子育て世代の切実な願いである。住民の粘り強い運動と我が党地方議員の論戦で、18歳までの医療費無料化が広がっている。全国では18歳までの医療費無料化自治体は、通院で84パーセント、入院で86パーセントまで広がり、現段階でも18歳まで助成が、通院で23パーセント、入院で26パーセントとなっている。
愛知県内を見てみると、入院は、今年から高浜市も加わり、54自治体、100パーセントとなった。通院も、今年中に実施する4市も含め、51自治体、94.4パーセントまで広がり、残すは岡崎市、高浜市、西尾市、3市のみである。全国的に見ても、愛知県は子供の医療費無料化が進んでいると思う。
そこで、愛知県として、子ども医療費無料化制度の県内自治体への広がりをどのように評価しているか。
【理事者】
県内の各地域において、子ども医療費の助成対象年齢が拡大している状況については、それぞれの市町村が地域の実情に応じて取組を進めてきた結果であり、地域の子育て支援の一助となっているものと考えている。
【委員】
県としてはどうかというと、通院で義務教育就学前まで窓口負担を無料、入院は中学校卒業まで対象としている。この助成制度の意義、効果をどのように認識しているか。
【理事者】
子ども医療制度については、医療保険における自己負担相当額を公費で負担することで、子供の健康の保持、増進と、子育てに要する経済負担の軽減を促進し、少子化対策としても意義あるものと考えている。
【委員】
県の子供の医療費助成制度には、自己負担も所得制限もない。大変利用しやすいものであると、財政力にかかわらず対等、平等に、多くの子供たちが利用しやすいというものであると思う。子ども医療への所得制限は、愛知県以外の25都道府県が導入をしている。現在、自己負担、所得制限、どちらもないのは、山形県、群馬県、鳥取県、香川県、愛知県の5県だけである。
県として、所得制限や自己負担を取り入れてこなかった理由について示してもらいたい。この点は引き続き、堅持すべきと考えるが、どうか。また、あわせて、子ども医療費助成の予算、決算の額、一般会計に占める比率についても示してほしい。
【理事者】
県としては、通院医療に当たっては小学校就学前、入院医療費に当たっては中学校卒業までの子供が必要な医療を等しく受けられるよう、所得制限及び一部負担金のない仕組みとして運用してきた。子ども医療制度については、将来にわたって持続可能な制度として運用できるよう努めていく。
次に、子ども医療事業費のうち、事務費を除く本体部分の当初予算額及び決算額並びに一般会計全体に占める比率について、2020年度分から2023年度分まで答える。なお、金額については、100万円単位切上げで述べる。
まず、予算額については、2020年度の事業予算額は84億4,700万円、一般会計予算に占める比率は0.33パーセント、2021年度の予算額は77億500万円、比率は0.28パーセント、2022年度の予算額は81億7,300万円、比率は0.29パーセント、2023年度の予算額は77億6,600万円、比率は0.26パーセントとなっている。
続いて、決算額については、2020年度の事業決算額は62億9,100万円、一般会計決算に占める比率は0.23パーセント、2021年度の決算額は77億4,800万円、比率は0.23パーセント、2022年度の決算額は76億8,100万円、比率は0.25パーセント、2023年度の決算額は87億1,100万円、比率は0.31パーセントとなっている。
【委員】
将来にわたって持続可能なものにしていくとのことで、所得制限や自己負担はこのまま継続をしてもらうということでよいか、確認のため、もう一度答弁を願う。
【理事者】
将来にわたって持続可能な制度となるよう、財源の確保等に努めていきたいと考えている。
【委員】
ぜひ予算確保を願う。
2008年以来、愛知県は助成対象の年齢が、ずっと通院は先ほども答弁の中でもあったように就学前、入院は中学卒業までとなっている。大村秀章知事就任後は拡大をしていない。なぜ17年間対象を拡大してこなかったのか、県の考えを示してほしい。
【理事者】
福祉医療制度については、子ども医療をはじめとした四つの医療費助成を持続可能な制度として運用していくことが大変重要であると考えており、全国の都道府県の中でも一定の水準にある仕組みとして、安定的な運用に努めてきた。
【委員】
子供は病気やけがが多く、重症化リスクも高いため、早期の診断と治療が大切である。発熱しても手元にお金がなくて病院に行けない状況は、病状が急変しやすい子供にとって命に直結するという問題である。ぜんそくなど慢性疾患で継続的な治療が必要な子供のいる家庭には、長い期間の負担となる。お金の心配をせずに受診できる仕組みということが欠かせないと思う。
東京都は2023年に子供の医療費無料を18歳まで拡大した。不十分な点はあるが、前進をしている。愛知県の財政力からすれば、医療費助成の対象年齢を18歳まで拡大しても十分賄えると思う。
そこで、愛知県も入院、通院ともに18歳まで無料化へと、市町村へ半額補助を行うべきと考えるが、どうか。
【理事者】
県としては、子ども医療制度を持続可能な制度として安定的に運営する観点から、当面は現行の水準を維持していきたい。一方、子ども医療制度については、本県も含め全国の全ての自治体で独自の負担軽減や無償化が行われ、事実上のナショナルミニマムとして定着している現状を踏まえると、全国一律での制度創設など、国において統一的な対応が図られるべきものと考えている。
このため、本県としては、これまでも国に対して全国一律での新たな支援制度の創設などについて要請を行ってきたところであり、知事会、市長会、町村会の地方3団体からも同様の要請が行われている。引き続き、様々な機会を捉えて国への申入れを行っていく。
【委員】
国ではなくて、国ももちろんということは分かるが、やはり愛知県として県独自で取り組むことを、市町村が頑張って独自で医療費無料化を拡大している。そこをやはり、市町村任せではなく、支えるというのが県の役割だと思う。半額、県が負担をすれば、自治体にはそれぞれ、ほかの子育て支援、独自の知恵と予算、そういったものを振り向けてもらう、そのような余力ができる。そのためにも、全ての子供の命と健康を医療につなぐ子ども医療費助成制度、18歳まで県で支えるという、ぜひその決断をしてほしいということを強く求める。
【委員】
災害看護の観点から、まず県内のDMATについて伺う。
内閣府が本年3月末に発表した南海トラフ地震の被害想定では、愛知県内の最大死者数は1万9,000人となり、前回2012年の発表時の2万3,000人より4,000人減ったが、最大で40万1,000棟の建物が全壊、焼失して、負傷者は14万6,000人に上ると推計され、前回の被害想定より増えている。災害はいつ、何どき、どこで起こるか分からないが、南海トラフ地震が必ず起こると言われている中で、被害を最小限にとどめるために、万全な対策ができるよう、県、市町村をはじめ、様々な機関により災害訓練が行われている。
そこで、災害時の医療救護体制の要となる災害派遣医療チームのDMATについて尋ねる。大規模災害時や多くの傷病者が発生した事故現場での医療行為を担当する医療チームであるDMATは、愛知県内に何チームあるか、また、どういった訓練を行っているのか。
【理事者】
大規模災害時において、急性期、おおむね48時間以内から機動的な救命活動を行う医療チームであるDMATは、県内38か所の災害拠点病院に81チームある。DMAT隊員は、厚生労働省が主催する技能維持研修のほか、災害時に中部ブロック各県のDMATが連携して病院支援、医療搬送、救急医療等を広域的に実行するための実動訓練や、南海トラフ地震を想定し関係機関との連携強化を図る県主催の医療活動訓練など、災害時に迅速な対応ができるよう様々な訓練を行っている。
【委員】
災害拠点病院、県内の38病院に全体で81チームのDMATのチームがあるとのことだが、こうした医療チームが発災後すぐに対応できるようにするためには、医師はもちろんのこと、災害看護の対応ができる看護師の養成が不可欠と考える。DMATで出動していく1チーム、医師が1人で看護師が2人で業務調整員が1人と、この4人で1チームを構成して、DMATの車両で救援に向かうと聞いているが、看護師の育成や養成というのは、なかなか時間がかかることだと思うので、災害時に地域で医療救護所を開設するに当たっても、看護師の役割は大変重要である。DMATの看護師に育てるまでの若いうちから災害訓練に参加してもらうということが、今後の看護師を目指す学生たちにも必要ではないかと考える。災害看護を勉強してもらうに当たって、愛知県は看護専門学校を持っているので、そういった学生たちにもぜひ戦力になってもらえるようにしてもらいたいが、今現在、愛知県が総合看護専門学校でどのように災害看護を教えているのか、学生たちがどのように学んでいるのか伺う。
【理事者】
厚生労働省が定める看護師等養成所の運営に関する指導ガイドラインでは、看護専門学校の教育課程において、災害の基礎的知識を身につけさせる内容を含むように示されている。そのため、総合看護専門学校では、災害看護の科目を設定し、災害時医療の経験を持つ医師や看護師による講義に加え、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院に協力をしてもらって、災害訓練に参加している。この訓練において、災害時の初期対応の実践として、学生は傷病者役になり、応急処置や担架搬送などを受ける。その体験は大変貴重な機会になっている。そういった取組を通じて、引き続き学生に災害看護の知識、技術が身につくように努めていく。
【委員】
総合看護専門学校の学生も、第二日赤の防災訓練に参加しているということなのだが、1学年80人、3学年で240人の学生たちが看護専門学校にはいると思うので、今後、就職していく前に、実習したことを踏まえて、今後、就職した先で病院や医療機関に行ったときに、もう即戦力として働けるようにしてもらうためには、ぜひ日頃から学生にも例えば県の防災訓練に参加してもらうとか、当然地域の医師会が行う医療救護所の訓練などにも参加してもらいたい。
地域の医療救護所の訓練に参加するということは、自分たちが住んでいる地域の状況を知るとともに、地域とのつながりを深めることにつながる。また、地震などの災害時には医療、看護のニーズが増加するので、いざというときに看護の学生が協力をしてもらえるということは、地域にとっても大きな防災力向上につながると思う。行政のほうで備蓄品に何が備蓄されていて、災害時に看護をする上で医療救護所や避難所では何が必要なのかといったことも、ぜひ看護師育成をする上で周知しておいてもらいたい。そのために、将来的には、総合看護専門学校の学生が地域の災害訓練に積極的に参加できるように、ぜひ検討してもらいたい。それがひいては、看護の学生たちの身を守ることにもつながるし、周りの人たちの命を守るということにつながっていくと思うので、ぜひ愛知県のほうでそういったことも教育の中に入れてもらって、看護学生が将来的に活躍できる看護師になるよう要望する。
愛知県立総合看護専門学校
【委員】
社会的養護自立支援拠点事業について伺う。
2024年4月に施行された改正児童福祉法により、児童養護施設等への入所措置が解除された人や、虐待経験がありながらも、これまで公的支援につながらなかった人などの自立のために、必要な援助を行うことが都道府県の業務として位置づけられ、相互交流や情報提供、相談対応や関係機関との連携調整などを行うことで、将来の自立に結びつけることを目的とした社会的養護自立支援拠点事業が創設された。
そこで、この事業における本県での実施状況を伺う。
【理事者】
本県では、ケアリーバーの自立支援のため、児童福祉法改正前の2018年度から尾張福祉相談センターに支援コーディネーター等の専任の相談員を配置して相談支援に当たっている。その後、2023年度には改正法の施行を見据え、西三河福祉相談センターにも相談員を配置し、尾張、三河の2拠点体制とした。各拠点では、対象者が施設等を退所する前から、施設の職員と連携しながら、1人で生活していくための基本的なノウハウを伝えるとともに、退所後には、定期的な面談や電話等により生活状況を確認し、必要なサポートを行っている。また、民間のフードバンクの協力の下、希望する人には定期的に直接自宅へ食料を届けつつ、状況の把握を行うなど、ケアリーバーの人々が安定した生活を送ることができるよう、対象者一人一人の状況に合わせて策定した支援計画に基づき、継続した支援を行っている。
さらに、2024年4月からは、二つの拠点に新たに就労相談支援員を配置して、入所中からハローワークへ同行するなど就労に向けた支援を行うとともに、就職後においてもアフターフォローを行うなど、対象者それぞれの不安や悩みに合わせたきめ細かな支援を行っている。
【委員】
現在、拠点の利用者はどれくらいいるか、また、支援を必要とする人に情報が届くことがまず重要であると考えるが、現状ではどのような形で周知を行っているのか伺う。
【理事者】
自宅への訪問や拠点での面接、電話、メールによる相談対応など、継続的に支援を行っている人数は、おおむね40人から50人程度となっている。本事業による支援の周知については、対象者が施設等で生活している時点、退所の数か月前から拠点の相談員が適宜訪問し、児童相談センターや施設職員、里親等と連携しながら、対象者が安心できるよう配慮した上で、一人一人と面談を行い、支援内容を丁寧に説明するなど、自立支援が必要な人に本事業を有効に活用してもらうよう努めている。
【委員】
自立支援に向けては、金銭面での不安を取り除くことも大切であると思う。経済的な支援についてはどのように行っているのか伺う。
【理事者】
本県では、施設等を退所して就職や進学をする人々が安定した生活基盤を築くことができるよう、愛知県社会福祉協議会を通じて、生活費や家賃、資格取得費用を貸し付けるなど、金銭面での不安の軽減に努めている。この貸付金は一定期間就労を継続した場合には、返済を免除しており、施設退所前後の不安が強い時期にも安心して利用することができるものと考えている。
また、本県では、県民からの寄附の受皿として創設した子どもが輝く未来基金を活用した各種の自立支援事業を実施している。具体的には、大学等へ進学する際の入学準備金の支給のほか、今年度からは新たに就職等に直接役立つ資格である運転免許の取得費用の一部を支給するとともに、退所後の継続的な支援につなげるため、入所していた施設の職員が対面で面談を実施し、自立に向けた相談支援を行った上で、給付金を支給する取組を開始した。これらの取組を通じて、ケアリーバーが自立して安定した生活を送ることができるよう支援している。
【委員】
他の都道府県では、社会的養護経験者等の支援に取り組む公益法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人などに業務委託をしている事例がほとんどを占めている。一方、本県においては、先ほどもらった答弁で、直営で実施しているとのことだが、このような運営形態にしている理由を伺う。
【理事者】
県が主体となって直接事業を実施する主な利点としては、本県では、児童相談センターの中に拠点を設置しているため、施設入所中から児相の担当者と密に情報共有をするとともに、民間の児童養護施設などに配置された退所児童のアフターフォローを行う自立支援担当職員とも連携を図り、退所後にも切れ目のない支援を行いやすい環境が整えられている。
また、施設を退所して1人で生活していく上では、転入届や保険、年金をはじめ、市町村での手続が必要になる場合も多く、こうした場合における制度の案内や同行による手続の補助などを適時に滞りなく行うことができるという点も挙げられる。
加えて、自立支援に当たっては、福祉事務所をはじめとする他の公的な支援機関による支援が必要となる場合もあり、こうした支援を本人が望む場合には、公的機関同士でスムーズな連携を図りやすいということも利点の一つであると考えている。
【委員】
この事業では、虐待経験がありながらも、これまで公的支援につながらなかった人も支援対象とされている。本県においても、こうした人々を支援している団体が存在している。とても熱い思いを持って対象者に寄り添っていると感じているが、こうした団体との連携についてどのように考えているか伺う。
【理事者】
これまで児童相談センターなどの公的支援につながらなかった人への支援については、市町村や民間を含めた相談機関から支援が必要な状態に置かれているといった情報が得られた場合などには、本人の意向も十分に尊重しながら、拠点において丁寧な相談対応を行うよう取り組んでいく。
一方で、ほかの地域では、この事業の実施において民間の持つノウハウを活用する例も多いと承知しているので、様々な事情を抱えた相談者にきめ細かに対応するに当たって、民間ならではの強みがどこにあるのかなどについても今後把握に努めていく。
【委員】
繰り返しになるが、社会的養護自立支援拠点事業の対象者は、社会的養護の措置が解除された人、いわゆるケアリーバーや虐待経験がありながらもこれまで公的支援につながらなかった人などである。答弁では、ケアリーバーに対する支援についての話が中心であったと思う。関東や九州などで社会的養護自立支援事業を受託しているNPO法人ブリッジフォースマイルのホームページでは、ケアリーバーは毎年全国で数千人に上ると言われているが、その一方、児童相談所が対応できる虐待相談件数のうち、一時保護されているのは1割強、児童養護施設などへの入所に至るのは2パーセント程度であることから、問題を抱えながら保護されることなく大人になった若者は20代に限っても数万人以上、もしかすると数十万人に上る可能性があると記載されている。
今年度の社会的養護自立支援拠点事業の予算は2,800万円余り、恐らく支援員の人件費など2か所の相談センター運営費に充てられていると思うが、親を頼れない若者たちに向けての発信力であったり、気軽に相談できる雰囲気であったり、困っている若者にこうした支援が届いているのか、心もとないなと思っている。
答弁の中で、本県の取組が、児童福祉法改正前の予算措置事業であったケアリーバー支援をベースに現在の形に拡充したということは理解した。昨年から始まったばかりの事業なので、今の時点で評価するのは難しいとは思うが、ぜひ、親を頼れない若者の実態や他県の状況も含め、より手厚い支援に向け調査を重ねてもらうことを要望する。
【委員】
介護が必要な高齢者の数は今後も年々増加していく見込みであり、特別養護老人ホーム等の施設整備を引き続き進めていく必要がある。しかしながら、例えば、地域密着型の特別養護老人ホームについては、愛知県の計画を調べると、第8期計画では、12施設、339人の整備計画に対して、実際に整備されたのは9施設で252人であったと聞いている。計画どおり整備が進まないのは、やはり昨今の建設費の高騰、これも一つの要因ではないか。
地域密着型特養の整備に当たっては、調べると、地域医療介護総合確保基金を財源とする整備費の補助があり、その補助単価は昨今の建設費の高騰を踏まえて年々増加していることは承知しているが、十分ではないという認識がある。
今後の高齢化の進展に備えて、計画どおり整備を進めていくためには、さらなる補助単価の増額が必要ではないかと考えるが、県としてどのように考えているか。
【理事者】
基金を財源とする介護施設等整備事業費補助金の補助単価については、国が運営要領において補助基準額を示しており、各都道府県はその基準の範囲内で単価を定めることとされている。本県ではその上限額を補助額としており、地域密着型特養の補助単価については、10年前の2015年度は定員1人当たり427万円だったが、2024年度は528万円と、101万円、約24パーセント増加している。
なお、国においては建設費等の高騰を踏まえ、今年度もさらに補助単価の増額を予定していると聞いており、県としても、国に合わせて補助単価の増額を検討していきたいと考えている。また、今後も建設コストの増減が見込まれることから、国に対して適切に対応するよう要望していく。
【委員】
愛知県で100歳になったら祝い品を贈る事業をしていると思うが、ほかの都道府県での祝い品の実施状況や、県内市町村の祝い品の贈呈の実施状況を教えてほしい。
【理事者】
昨年6月時点の状況であるが、他の都道府県の実施状況としては、祝い品等の贈呈を行っている自治体が25、実施していない自治体が21となっている。県内市町村の状況としては、54市町村のうち53の市町村で実施している。
【委員】
では、本県の実施状況、100歳の祝い品の金額、対象人数、総額予算と財源について教えてほしい。また、過去どういったものを贈ってきたなどについても教えてほしい。
【理事者】
今年度の敬老祝い品贈呈に関わる予算としては、対象人数を2,847人と見込んで、全額一般財源で予算額は3,598万7,000円となっている。祝い品は県内の伝統工芸品、尾張七宝の額を予定しており、入札の結果、1人当たりの金額は1万2,595円となる。
また、過去3年の実績となるが、昨年度、令和6年度は、2,653人に名古屋友禅の額を贈呈し、その実績額は2,918万3,000円で、1人当たりの金額は1万1,000円であった。令和5年度は、2,431人に瀬戸赤津焼の陶額を贈呈して、実績額は2,888万1,000円、1人当たりの金額は1万1,880円である。令和4年度は、2,411人に名古屋扇子を贈呈し、実績額は3,315万2,000円、1人当たりの金額は1万3,750円となっている。
尾張七宝「牡丹」額(2025年度敬老祝い品)
【委員】
続いて、敬老祝い品の贈り方について順次質問するが、最初に、国も100歳になったら銀の杯と内閣総理大臣の祝い状を渡していると思うが、これは市町村が渡すのか。
【理事者】
市町村が渡すことになっている。
【委員】
市町村が渡すということは、国の銀の杯と祝い状と、県で今予算化、事業化されているものと、例えば市町村で独自にやっているものと、三つの行政体から贈物が届くという認識でよいか。
【理事者】
県は数え100歳で、国は満100歳で贈っているため、時点は違うが、市、県、国から届くという点では、そのとおりである。
【委員】
市町村に聞くと配布に苦労しているという。寝たきりの人がいたり、単身の人がいたりなど、基本的には住民基本台帳で把握するということを聞いているが、実際には配布ができず、戻ってきたりしているとのことだが、基本的に、全員、対象者の元に届くのか。
【理事者】
事前に送る住所を聞いて宅配をする。不在等で返ってきたりすることもあるが、できる限り再配達をしている。
【委員】
実際戻ってきているということか。
【理事者】
どうしても所在が不明の場合は渡せないということもあるかと思う。
【委員】
メルカリに内閣総理大臣から贈られた銀の杯がたくさん出品されている。しかも、一つは令和5年9月15日に贈られたものが、もう出品されている。こういった時代であるため、出品した人をどうというわけではないが、文章を読ませてもらうと、叔母がもらったものだが飾ることなくしまってあったものである、撮影のため開けたという、新品未開封で出品されている。
この一つの事象だけを捉えて、贈呈の意義の可否を判断するのはどうかと思うが、現在、見直す時期に来ているのではないかと思っており、少子化、人口減少が社会課題となり、長寿社会となった今、敬老祝い品贈呈の在り方について、全世代が参加して考える機会を作るべきでないか。例えば、神奈川県中井町では、敬老品の贈呈について全世代の人が参加して検討を行い、総意で金額や支援を縮小した。当然その事業は継続したものの、各世代間で思いを共有してしっかりと見直していくことが重要ではないかと考えるが、県の考えを伺う。
【理事者】
本事業の目的については、まず100歳を迎える高齢者の人の長寿を祝う、それと多年にわたる社会への発展に貢献をしてきた人に対して感謝の意を表すことに加えて、広く県民が高齢者福祉への関心や理解を深めてもらうことも目的としている。また、本事業については、国民の間に広く老人の福祉について関心と理解を深めるとともに、老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促すという目的で、老人福祉法において定められている老人週間、こちらにおける本県の中心的な事業でもあるという位置づけもあるので、本事業については、引き続き実施していきたい。
ただ一方で、委員も今質問の中で触れた少子化また高齢化というような状況については、今後も進行していくと見込まれ、対象者の増加も見込まれている。先ほど紹介してもらったようなメルカリ等に出品するというようなことについては、非常に担当課の課長として残念に思っているところでもあるので、今後この事業をより効果的な事業として実施するために、どのような対応をしていくのが適切であるのか、これまでの経緯も踏まえつつ、ほかの都道府県の状況も参考とさせてもらいながら、検討していきたい。
【委員】
第一に、敬老の概念が変わってきており、今日の75歳は20年前の60歳代前半の人々と同程度の体力を持っていたり、社会参加をしていたりと、老人と見られることが嫌で、物をもらいたくないという人も、アンケートを見るといるようである。このため、敬老の概念も、引退した人々を労わるというよりも、活動的な人々を応援するという視点に変えていかなければならないのではないかという意見がある。もう一つは、直接的な金品や物品を贈ることを見直して、高齢者の社会における役割を支援し、世代間交流を促進し、全体的な幸福感を高める取組に変えるということで、例えば敬老品を贈るにしても、学校で小学生たちが花を育てて、それを地域の100歳の人に贈ると言えば、これは世代間格差もなく、子供たちに老いを敬うという精神も植え付けることができるため、こうした様々な見直しを考えてもらいたいということを要望する。