本文
子ども・子育て対策特別委員会審査状況(令和7年12月22日)
子ども・子育て対策特別委員会
委員会
日時 令和7年12月22日(月曜日)午後1時1分~
会場 第7委員会室
出席者
かじ山義章、中村竜彦 正副委員長
島倉 誠、石塚吾歩路、政木りか、今井隆喜、中村貴文、杉浦友昭、
谷口知美、山口 健、加藤貴志、柴田高伸、下奥奈歩 各委員
岩澤 美帆 参考人(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部部長)
福祉局長、福祉部長、子ども家庭推進監、関係各課長等

委員会審査風景
議題
結婚・子どもを巡る実情や課題について
会議の概要
- 開会
- 委員長あいさつ
- 参考人からの意見聴取
- 質疑
- モバイル端末の活用(試行)について
- 閉会
参考人の意見陳述
【参考人】
国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆と申します。
この研究所は、厚生労働省の施設等機関、国立の研究所になっておりまして、私は主に二つ中心的な業務がございます。5年ごとに公表されます出生動向基本調査という少子化の実態や意識の変化を調査するプロジェクトを所管しております。もう一つは、5年に一度、国勢調査が出た後に、日本の将来人口の見通しを策定するというものでございまして、それが地域推計になり、御活用いただいていることがあるかと思います。
では、早速2枚目をめくっていただきまして、本日ですけれども、始めに、少子化という言葉がよく聞かれていますけれども、意味を改めて確認して、何が問題なのかを御説明します。
それから、先ほどもありましたが、今般、関心が寄せられております出生数が減少している理由について整理したいと思います。出生数は、子どもを産む年齢層の人口が減少している側面と女性が平均して産む子ども数が減少しているという、二つの側面がありますので、特に、後者についてどのような対応をすべきかについて御説明したいと思います。
では、3ページ目になります。
少子化は、社会における子ども数が減っているといった漠然とした使われ方がすることが多いものでございますが、私が専門としております人口学という学問では、より厳密に、出生率が人口を中長期的に維持できる水準を下回る状態、これが続いていることを少子化と定義しております。
実は、現在、世界人口の3分の2が少子化の社会に住んでいるといわれております。つまり、少子化というのは、日本固有の問題というよりは、今は世界的な問題になっているということでございます。
日本の人口を維持するのに必要な合計特殊出生率は、2を少し上回る2.07程度とされておりますけれども、現在では、1.15の水準です。これは、1世代で56パーセントに人口が縮小するという、極めて深刻な状況といえます。
では、4ページ目に移りたいと思います。
少子化というものがなぜ問題なのかということを改めて考えてみたいと思います。少子化、つまり出生率が低下しますと、出生数が減少します。さらに、子どもの人口が減少します。しかし、子どもの人口の減少というのは、経済や個人にとっては、子どもの養育負担から解放されることになりますので、一時的には有利な豊かな状況というものを生みます。しかし、その後、若者や労働力の中心である現役世代の人口が減少していきますので、人口の高齢化が進みます。そして、数の多い高齢者から多数の死亡が発生することになって、数の少ない若者からは少ない出生しか発生しませんので、人口が減少していくことになります。日本は、2010年頃、死亡数が出生数を上回るようになりまして、人口減少局面に突入しました。
次のスライドに移ります。
これは、総人口の推移を年齢3区分別に示したものですけれども、人口規模、上のグラフの富士山のような形を見ますと、人口規模は20世紀前半の水準に戻っていくような、そう見えるわけですけれども、人口の構成、年齢構成は、ちょうど逆転したような形になっておりまして、子どもが少なく、高齢者が多い社会というものに今後なっていくということが分かります。
下の図は、15歳から64歳の人口を分母とし、14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計を分子にしたとき、従属人口指数というものの推移を老年と年少で色分けして示したものです。ちょうど1970年から2000年頃までくぼみができているのが分かりますけれども、子どもと高齢者に対して現役世代の数が多く、経済的にとても有利な状況だったということが分かります。これを人口ボーナス期というふうに呼びます。しかし、2000年以降、高齢者の人口が多くなっていきます。これが現在の人手不足、または社会保障制度を維持する上で、現役世代の負担が多くなる要因となっております。このような時期は、人口ボーナス期に対して人口オーナス期と呼ばれることがあります。
この人口ボーナス期ですけれども、これがもう一度来るとよいなと思われる方、いるかもしれないのですが、これは、多産多死から少産少死へ転換するときに、たった1度だけ起きる状況でございます。ですので、いろいろ世界の各国でもちょうど今、人口ボーナス期を迎えている国が次々と現れて、今後、アフリカがこういう時代を迎えるわけですけれども、日本は残念ながらその時代は終わってしまっていますので、それを前提に現在の人口オーナス期をどう乗り切るかというのを考える必要がございます。
次が6ページですけれども、このように高齢化が進んでいますけれども、将来の水準というのは、出生率がどうなるかによって多少状況が変わります。こちらの図は、将来の出生率を機械的に変化させた場合、出生数や総人口、高齢化率がどの程度変わるかを示したシミュレーションとなります。赤く示した線は、合計特殊出生率が1.8になった場合を示しています。右下の高齢化率は、この赤線の場合は、上昇していたものの歯止めがかかっているということが分かります。ただ、この左の下の図を見ますと、これは総人口なんですけれども、1.8に上昇したとしても、当面、人口減少は避けられないということがありますので、出生率が上がれば、人口減少が止まるというわけではないということが分かります。
次に、7ページに移ります。
出生数を減少させている要因には、子どもを産む年齢層の人口が減少していることと、それから、女性が平均して産む子どもの数、すなわち出生率が低下していることであると冒頭でも述べました。上の線グラフが示すように、子どもを産む年齢層の人口については、これは、当面、減少が続くということが避けられない状況となっております。一方で、出生率のほう、この下のほうにある線グラフは、ある程度、今後の社会の状況によって変化する可能性があります。
また、足元の出生率が高位、低位と幅がありますけれども、これが、2040年以降の女性の人口の水準に幅をもたらすということになります。つまり、足元の出生率がもし上がると、30年後の女性の人口が増え、30年後の出生数が増えるという、そういう効果がありますので、この少子化の対策というのは、この数年とか、5年とか、そういう単位ではなくて、やはり数十年先を見据えた上で効果が出てくるものだと考える必要がございます。
では、8ページに移ります。
日本全体で見ますと、子どもを産む年齢層の人口は、当面、減少が続くというふうに言えるんですけれども、地方自治体の観点から見ますと、もう少し状況が変わります。ある自治体の30歳の人口というのは、30年前の出生数と、その後の転入、あるいは入国超過数、それから30歳までの死亡数というものが影響するというふうに考えられます。
次のページに行きます。
9ページ、これは愛知県を例にデータを示しているんですけれども、出生数は、その後、死亡とか、地域間、国際間の移動の影響を受けながら、30年後に30歳の人口になるというふうにいえます。ここに出ているものは、1930年の出生が30年後、1960年の30歳人口としてどう変化したか、同じようにそれを四つの時代で示したものです。1930年の出生数に比べ、1960年の30歳人口は減少しています。これは、恐らくこの頃は死亡率が高かったということ、あるいは転出によるというふうに考えられます。ただ、1990年の30歳の人口は、1960年の出生数よりも増えていますし、2020年の30歳人口も、1990年の出生数よりも増えているわけです。このように、転入のような状況がこの頃はあったということが考えられます。
そして、2050年の出生数がどうなるかについては、これは将来ですので、国立社会保障・人口問題研究所の地域人口推計のデータから持ってきたんですけれども、30歳人口、総数としては、出生数よりも増えているんですけれども、ただ、このとき、全国では外国人がかなり増えていくという推計になっておりまして、その比率を単純に当てはめてみると、増えた分は外国人という可能性もあると。そういう状況で、愛知県の出生数よりも30歳人口が増えるという状況ではあるけれども、そこがいろいろ多様化になっているということが分かります。
このように、移動という側面が地域、自治体の人口を考えるときには重要になってくるわけですけれども、次のページを見ますと、こちらが2020年以降の地域別将来推計人口における愛知県の年齢別純移動率、転入と転出の差分のものになりますけれども、年齢別に見ますと、10歳から例えば29歳という若者層というんですか、ここではとてもプラスになっていまして、転入超過傾向があるというのが分かります。
しかし、ゼロ歳から4歳、それから30代以降では転出超過、出ていく方のほうが多いという、そういう特徴を持っていることが分かります。これは、進学や就職で転入した人が多い一方で、子どもができた後、ファミリー層として転出していると、そういうパターンになっているということが分かります。ある程度、こういう状況が続くということで、もちろん少子化対策をして、子どもを増やしていくということが大事なんですけれども、それは、全国で見たときに、そういうことはプラスになりますけれども、やっぱり移動の影響というのが各県は大きいということになります。
それから、もう一つ、死亡の話をしたいのですけれども、11ページでございます。
産まれた子どもは、残念ながら大人になる前に亡くなってしまうということがございます。子どもの死亡というものに着目しますと、やはり先天性の病気で亡くなるということは、今でもどうしてもございます。ただ、不慮の事故とか、虐待が疑われるような死亡というものが現在でもございます。これが、日本全体の数となっております。
それから、もう一つ、15歳以上の若者ですけれども、やはりそういうとても体力的にも健康なはずの年齢層で最も多い死因が、自殺というふうになっております。また、交通事故ですとか、有害物質による中毒死といった、この世代は行動要因による死亡、これがあるわけですけれども、これは、実は避けられるものだというふうに考えることができます。
つまり、乳幼児や子どもに安全な環境、そういうものを提供し、若者が健康や命を失う行動を取らないようにする、そういう対策というのは、実は、若者の死亡を減らすことになり、結果的に、将来、子どもを産む年齢層の人口等を減らさないという、そういうことにつながっていく対策だと考えられます。
続いて、12ページになりますけれども、それでは、今は子どもを産む女性の人口の話をしておりましたけれども、もう一つの側面、女性が平均して産む子どもの数、すなわち出生率の話に移りたいと思います。
これは、ある程度、社会が変わることで変えられる可能性があります。合計特殊出生率という指標が近年低いということは、多くの方は御存じだと思いますけれども、もう少し掘り下げて、結婚する人が減っているのか、結婚後に夫婦が持つ子ども数が減っているのかというのを理解しておこうと思います。
13ページに移ります。
これは、結婚力、あるいは夫婦の出生力というのは、実は様々な指標がございまして、測定方法なども研究者によっていろいろ工夫して、様々なものがございますが、ここでは、比較的簡便に出せるものとして、結婚力については合計初婚率という、年齢別初婚率を15歳から49歳まで足したという、そういう指標を使ってみたいと思います。
それから、夫婦の出生力に関しては、出生数初婚数比というものを出しているんですけれども、これは、分子を出生数、分母を過去5年間に結婚をした人たちの数として出しております。つまり、結婚した夫婦からどのぐらいの出生が起きたかという指標になります。
まず、結婚力については、1980年代以降、一時的に低下したことはありますけれども、おおむね0.8程度の水準、0.8というのはどういうことかといいますと、50歳までに8割ぐらいの女性が結婚する水準であったということです。
しかしながら、コロナ禍をきっかけに、現在、大きく低下しています。最初のところでは少し下げ止まったように見えているんですけれども、コロナによる混乱に基づき、一時的にこういうふうに下がってしまって、これから戻っていくのか、あるいは、結婚に対する態度が根本的に変わったようなことが起きたのか、現時点ではまだはっきりつかめていないところがございます。今後、我々の研究所でも、結婚意欲とか、出生意欲の調査を来年発表する予定ですので、そういう中で少し状況が分かっていくのではないかと思います。
夫婦の出生力に関しては、子育て支援策が充実した2000年代後半以降、少し持ち直したところがございました。ただ、2015年以降、再び低下傾向にあるということになっております。ただ、いずれにせよ、この初婚率の近年の変化というのが今までの傾向を大きく変えるものとなっております。
14ページ、お願いいたします。
こちらは、別の見方をしたものなんですけれども、近年の合計特殊出生率の低下に対する晩婚とか、未婚といった結婚行動の変化の寄与と、結婚後の夫婦の行動変化の寄与というものを示したものです。この真ん中の破線、一番上の基準ラインから真ん中の破線までのところが、結婚行動の寄与で、波線から一番下の実線までが夫婦の産み方が変わった寄与というふうに考えられます。2015年頃までは、夫婦の出生力による低下というものが一時、解消したように見えていますけれども、その後、また低下して、2020年以降は、とにかく結婚の低迷、この落ち込みが大きく変化しているということが分かります。
15ページに移ります。
なお、この結婚力と夫婦の出生力は、地域によって異なるということがございまして、この散布図は、コロナ前の2015年から2020年の数値を使いまして、結婚力と夫婦の出生力の都道府県別順位というものを配置したものになります。愛知県は、右下にございまして、結婚力については高いと、一方で、夫婦の出生力はやや低めであるという、そういう特徴があるということが分かります。
次、16ページに移ります。
次に、女性が産む子ども数、すなわち出生率の低下の要因を述べてみたいと思います。主に二つの側面がございます。
一つは、予定した子ども数と現実の子ども数の乖離がある、つまり、欲しかった子どもが産めないで終わってしまったという人が多いという問題です。
もう一つは、意識の側面で、結婚離れ、あるいは子ども離れというものが起きているということを説明したいと思います。
17ページに行きます。
こちらは、2021年に調査をしたんですけれども、妻が40代後半という子どもを産み終わった夫婦に、結婚当時、どのぐらいのお子さんが欲しいと思っていましたかというのを聞いてみました。すると、実際に持った子ども数が、予定した子ども数に達成していた夫婦が7割にとどまっているということが分かりました。
また、結婚時に、欲しい子ども数というのはよく考えていなかったという夫婦も一定数いらっしゃったんですけれども、そういう夫婦のほうが、結婚したときに2人欲しいとか、3人欲しいというふうに決めていた夫婦よりも、持った子どもの数が少ないということも分かりました。
次、18ページですけれども、では、なぜ、結婚時に予定していた子ども数を最終的に持つことができなかったのか。ここには、子どもを持つ年齢の高齢化というものが大きく関わっております。女性は、子どもを産む年齢にどうしても生物学的制約がございます。欲しい子ども数に達成する前に、その期限を迎えてしまうということがございます。実際、近年、不妊治療を経験する夫婦というのが増え続けておりまして、流死産を経験する人も増えています。
ただ、一方で、望んでいなかったが産まれていたという子どもが、昔は一定数いたんですけれども、そういう方が減って、やはり望まれて産まれる子どもの割合が増えていると、少し子どもにとってはよい状況も生まれております。
次のページに行きます。
こちらは、内閣府が調査した意識調査に合わせて、日本のほか、フランス、スウェーデン、ドイツの合計特殊出生率、それから年齢別出生率というものを示したものです。
ほかの3か国は、出生率が日本よりも高いということがあるんですけれども、年齢パターンでも特徴がございまして、20代の出生率というのが、日本は、フランスやスウェーデンの3分の2程度しかないということが分かります。ドイツも低いんですけれども、ドイツは、30代前半である程度取り戻しているということが分かります。つまり、日本は、20代、30代前半ともに、子どもがほかの国よりも産めていないと、そういう特徴を持っております。
20ページに参ります。
20代で産んでいない日本の夫婦というのは、30代に入り、子どもを持とうとしても簡単に持てていないという状況もございます。こちらのデータは、不妊を心配する、それから、不妊治療を経験する割合というものを示しておりまして、調査ごとに示しているんですけれども、調査ごとに不妊を心配しているとか、それから、治療経験をしているという夫婦の割合が上昇していることが分かります。
一方で、先ほども申し上げた、一つ、よいニュースとしては、望まない妊娠による出生というものは減っておりまして、この妊娠についてあなたは望んでいましたか、あるいは早く子どもが欲しかったということで産みましたかというのを聞いているんですけれども、できるだけ早く子どもが欲しかったという回答が最近増えておりますので、これは、子どもの福祉にとってはよいことではないかと思います。
22ページに参ります。
次に、なぜ、結婚や出産が先送りされてしまうのか、そもそもスタートが遅いというところがどうしてかというのを御説明したいと思います。
一つは、今日、生涯のパートナー、配偶者を見つけるというのが難しくなっているという事情がございます。
そして、もう一つ、人生のラッシュアワーという言葉を御紹介したいと思うのですが、20代、30代の時間のない生活、そして、その中で若者が人生について十分考える機会を失っているという問題でございます。
こちら、男女・年齢層別に、異性の恋人がいる割合の推移というものを示したんですけれども、1990年代は恋人がいる割合というのが少しずつ高まっている状態だったんですが、2000年代前半をピークに低下に転じております。現在の未婚者は、恋人がいて結婚していないというのではなくて、恋人もいなくて未婚でいる、そういう人が増えております。
次、24ページでございます。
こうした恋人もつくらず、結婚も出産も先送りしている若者が増えている事情ですけれども、ここでは、20代、30代が人生のラッシュアワーであるということを示したいと思います。
まず、こちらのグラフですが、山が重なっている図がありますが、これは、子どもを3人産んだ女性が、一子、二子、三子をどの年齢で産んだかというものを重ねたものなんです。1人目を産んだピークというのが27歳ぐらい、それから2人目を31歳ぐらいで産む人が最も多くて、3人目を34歳ぐらいで産んでいると、こういう実績がございます。すなわち、27歳から34歳の間に3人の子どもを持つというのが標準的なパターンだと分かるんですけれども、この時期は、仕事を持っている場合、やはりキャリア形成の面でも重要な時期となります。多くの夫婦がこの時期に子育てを優先するのか、あるいは、仕事の基盤づくりを優先するのか、葛藤しているという状況がございます。
次の25ページに参ります。
こちらは、内閣府が2020年に実施した調査結果でございますけれども、日常における仕事、家庭生活、個人の生活等の優先度を尋ねたものです。希望は、家庭、個人を優先したいんだけれども、現実は仕事が優先となってしまっていると答える割合が、日本は、フランス、ドイツ、スウェーデンに比べて圧倒的に多いということが分かりました。
もう一つ、こちらは、将来、自分が子どもを持つか持たないのかといった観点から人生設計をした場合に、あなたはどの程度、そういうことを考えたことがありますかというのをやはり4か国で聞いたんですけれども、よく考えたというふうに答えた人が、日本ではとても少ないということが分かります。つまり、家族や個人よりも仕事を優先する中で、子どもを持つかどうかについて、人生設計を十分考えず、結果的に機会を逃してしまっている人が多いという状況が見えてくるわけです。
27ページに参ります。
こうした状況から、これまでの子育て支援、それから、こども家庭庁が子ども政策をやっている中で、どういうものが有効だと考えられるかを選んでみたんですけれども、まず、独身者、有配偶者に限らず、20代のワーク・ライフ・バランスというものがやはり重要だということが分かります。
そして、ライフデザイン支援、こちらは様々なロールモデルに触れるとか、社会人との交流の場を創出するといったことで、人生の将来像というものを自分なりに考える機会が重要だということになります。
それから、もう一つ、こども家庭庁でも力を入れておりますプレコンセプションケア、こちらは、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を促すという目的のものなんですけれども、こちらもやはり人生設計については重要な情報になるかと思います。
そして、時間が限られている独身男女にとって、マッチング支援といった結婚支援もニーズが高くなっているということです。ただ、このマッチングがどのぐらいうまくいくかについては、やはりまだどういう支援が有効なのかというのは、それぞれの自治体なども、今、研究といいますか、実績を重ねながら考えているところということで、まだ確立ができていないという課題もあるかと思います。
次、28ページです。
続いて、出生率低下のもう一つの要因として、結婚離れ、それから子ども離れ、その背景について説明したいと思います。
先ほども述べました子育て期のラッシュアワーに関係するものですが、やはり仕事と家庭の両立の困難さというものが、自分には難しいのではないかという意欲の低下につながってしまう可能性が指摘されています。
もう一つは、乳幼児と触れ合う機会がとても減っていまして、子育てに不安を感じる若者が多いという問題です。
そして、さらに近年、よき親、よい親にならなければならないといった子育てについてのプレッシャーを感じる親が日本だけではなく、ヨーロッパなどの国でも指摘されております。このプレッシャーが強過ぎるために、そのプレッシャーからもう解放されたいと、チャイルドフリーといった言葉がヨーロッパではやってきておりまして、子どもがいない人生でよいではないかと肯定的に捉えるような考え方というものが出てきております。
最後に、仮に、現状では経済的、いろいろな環境面で子どもを産んでもいいかなと思えたとしても、将来どうなるか分からないということが、これも日本、ヨーロッパ共通で出てきておりまして、特にヨーロッパなどでは、気候変動のような大きな社会問題が、将来、今よりよくならないのではないかという悲観的な態度が、子どもを産みたいという意識を低めていると言われております。
次のページです。
まず、順番に、両立の話ですけれども、出生動向基本調査という我々の調査で、どのようなライフコースを理想とするかというのを聞いているんですけれども、男性も女性も、かつては専業主婦というものを理想とする人が多かったんですが、今は、女性も働き続けながら子どもを持つという両立を望む人が増えているということになります。
こういう共働きをしたいという人が増えている一方で、現実が難しいということなんですけれども、この内閣府の調査で、この1年間を振り返って、あなたは御自身の仕事と家庭生活のバランスについてどのように感じていますかと尋ねたところ、仕事に充てる時間が長過ぎるため、家事や育児を果たすことが難しくなっていると答えている人が、ほかの国に比べて日本ですごく高いということが分かりました。
それから、今度、子どものいる人に小学校入学前の育児、突然の用事のために子どもの世話をすることができないときに世話をする人は誰かと聞いたんですけれども、ほかの国では、夫のほか、妻の兄弟とか、近所の人、友人などが挙げられるんですけれども、日本は大変その割合が低くて、やはり母親本人しか世話ができないという人が多い傾向にございます。
このように両立というものを理想はしているんですけれども、仕事と家庭のバランスがうまく取れない、また、子育てをサポートしてもらえる相手が限られており、これが日本で子育てが大変だと思われる要因となっているのではないかと思います。
以上のように、両立の困難という問題もありますが、ここでお示ししたいのが、子育てに対する態度の変化ということです。
この図は、結婚している女性に子どもを持つ理由というものを尋ねて、時代ごと、調査ごとに比較したものなんですが、2002年の調査から大きく低下しているものが一つありまして、子どもを持つことは自然なことだからという回答なんです。子どもを持つというのは、もう自然なことではなくて、特別なことだと認識されるようになってきているという大きな変化がございます。
それから、次の33ページでございますけれども、こちらは、一番上のグラフが、未婚者に赤ちゃんや小さい子どもと触れ合う機会がよくあったかというのを聞いているんですけれども、よくあったと答えた人は半数以下にとどまっております。2015年の調査に比べて、6年後の2021年の調査では、それがさらに低下しているということが分かりました。つまり、子どもがかわいいと感じる経験というのがほとんどない人とか、あるいは、子育てに不安を抱える若者というのが増えている可能性があります。
次、34ページでございます。
そのほか、ヨーロッパなどで指摘されているのが徹底育児、インテンシブ・ペアレンティングですけれども、子育てに金銭や時間を多く費やす、それから、過度に子育てに関わるという態度が増えているということです。これが時にやっぱり親を追い詰めるようなことになって、若い人の子育て離れといいますか、子ども離れにつながっているというふうに指摘されております。実際に、こうした子育てのプレッシャーから解放されたいと、子どもがいない人生をチャイルドフリーという言葉で表現して、肯定的にとらえ、SNSなどで発信するとか、そういう行動も見られるということです。
そのほか、世の中の変化が加速して、変化が著しいために、以前よりも将来の見通しが不透明になったと感じる、また、2015年以降の国際的な紛争や物価高、それから気候変動など、将来を悲観的に捉えるという、そういうイメージも出生意欲に負の影響を与えると考えられております。
35ページ、こちらは、あなたが子育てをしていて、自分にとって負担に思うことはどんなことですかと尋ねた結果ですけれども、自分の自由な時間が持てない、子育てによる精神的な疲れが大きい、そういった回答が日本で高く、これも徹底育児の一端ではないかというふうに思われます。
こちら、36ページです。
こちらは、生活がどうなっていくかというふうに4か国に聞いたわけですけれども、4か国のうち、日本はよくなっていくと回答した割合が極端に低いということが分かり、また、悪くなっていくと感じる割合も比較的高いということが分かりました。日本の若い人は、将来を悲観的に思ってしまっているということだと思います。
では、37ページ、こうした状況が背景にありまして、実際に、これは未婚者に希望する子ども数を尋ねて、その平均値の推移を比較したんですけれども、1980年代からほぼ一貫して低下していると、持ちたい子どもの数というものが減っているということが分かります。
では、38ページ、このような状況に対して何ができるのかということを考えてみたいんですが、まず、両立の困難については、既に様々に試みられておりますが、引き続き、共働きを前提とした社会システムの構築、これを前進させていくしかないと思います。
そして、乳幼児との触れ合い経験の不足についてですけれども、こちらは、既にこども家庭庁もこういう問題意識を持って、乳幼児触れ合い体験の推進といったことを事業に含めているということです。
それから、よき親のプレッシャー、これは、親の将来不安を除去し、親の責任を緩和し、プレッシャーを弱めるということが必要なんですけれども、子育て支援というのは、時に子育てに対する期待水準を上げてしまうということがございますので、そこには配慮が必要かもしれません。よりよい子育てをしましょうというふうにいうよりも、うまくいかないことがあっても何とかなりますという、助けますというメッセージ、そういうものも必要ではないかと思います。
それから、不確実性が高まる将来、悲観的な未来の物語に対しては、正直なところ、各自治体で取り組むというところには限界があるかもしれません。というのも、やはり社会全体の社会経済の安定ですとか、国際政治の安定ですとか、環境問題の改善といった、そういう領域に関わるということになります。
ただし、不測の事態、今回のコロナ禍のようなもの、あるいは、今後、震災のような、そういう突発事項が起きることがあると思うんですけれども、そういうことが起きたときに、どういう地域が回復が早いかというのを見てみますと、やはりふだんからレジリエンシーが高いといいますか、弱者の救済の体制が整っている、あるいは、誰も取り残さないという、そういうことに関心がある社会というのは、比較的、そういう突発事項が起きた後の回復が早いということもございますので、そういうところは地域社会でもやっていけるものではないかというふうに思います。
まとめます。39ページです。
今後の人口は、子どもを産む年齢の女性人口というのが当面減少していきます。子ども、若者が安全に健康に生きる社会、それから、外国人が増えていくということも想定した対応が必要です。
近年の合計特殊出生率の低下は、結婚控えの影響が大きいと見られています。
そして、予定子ども数が未達成に終わる夫婦が3割に達していたということで、やはり20代、30代前半での仕事が優先され、パートナー探しや出産に係る人生設計がうまくできていないということが分かりました。若者・子育て世代に時間をどうやって確保してもらうかという取組が重要かと思います。
そして、両立や子育てに関する不安、そういうものによる結婚・出生意欲の低下というものが起きております。子どもに触れる経験、子育てに関する経験値というものを増やして、周囲に子育てを頼れる環境というものを増やしていくということが必要かと思います。
国際社会が、社会経済、国際政治の安定、それから環境問題などに取り組んで、将来に対して少しでも明るい未来を提供するということが重要ではないかと思います。
以上で、私の近年の結婚や出産をめぐる実情と課題についての報告を終わりたいと思います。
主な質疑
【委員】
徹底育児という言葉を今日初めて聞いたが、市民権を得ているのか。また、徹底育児の拡大により、子育てに負のイメージを持つ若者が増えてきている理由をどのように分析しているか。
【参考人】
インテンシブ・ペアレンティングは学術的な用語であり、日常用語としては使われていないと思う。アメリカの研究者が提唱した言葉で、教育熱心な親は昔からいたと思うが、教育熱心に加えて、将来が不安定、不安なところに、子どもにできるだけ選択肢を与えたいと思う中で、教育だけではなく、もう少しよい経験をさせなければいけない、子どもにやってあげることも期待が上がっていくと先進国全般で言われている。余裕を持って親子で楽しくできる範囲ならよいが、子育ては大変だというメッセージとして若者が受け取ってしまい、子育てはあまり魅力的ではないと思ってしまうメカニズムが起きている。
基本的には、子どもを大事に育てよう、子どもによりよいものを与えようという考えは、親が責任感を持っている話なので否定はできない。ただ、親が追い詰められる状況になるのは問題で、先が見えないところに原因があるので、どのような子育てをしても、ある程度、子どもは生活できていくという安心感があれば、過剰になることはないと思っている。
【委員】
説明を聴取し、新型コロナウイルス感染症が少子化を加速させていると思ったが、新型コロナウイルス感染症で世の中が大きく変わってしまったことが原因になっているのか。
【参考人】
新型コロナウイルス感染症が、直接的にインパクトを与えたのは、結婚である。2020年、2021年あたりは、結婚式の延期、披露宴ができないなどの事情が大きかったと思う。新型コロナウイルス感染症が収まり、結婚式や披露宴ができるはずだが、出会ってから、数年たって結婚に至らなかったのか、回復していない。新型コロナウイルス感染症の時期に出会いの場が減ってしまったこともある。例えば、大学での出会いは、出会いのきっかけとして大きいが、当時、全てオンラインで授業が実施された。また、職場でも、集まる機会が減ったことで、出会いに影響している部分があると思う。
今年の夏に我々のところで意欲の調査をしており、結果がこれから出るところだが、環境の大きな変化の中で、もしかしたら意欲が変わってきているのはあるかもしれない。
【委員】
最後の質問だが、ヨーロッパは、子どもを持つか持たないか、子ども時代に教育されているのか。
【参考人】
日本でそのような教育をしていないということではないとは思うが、恋愛に関して、アジアの国は、若いときに恋愛は考えなくてよい、今は勉強や進学のことを考えなさいといわれるのに対して、ヨーロッパやアメリカでは、大学でプロムナードのような、交際相手を連れてきなさいというイベントが日本よりもふだんの生活の中である。交際相手を連れてきて、会合に参加するのが、大人の世界としてシステム化されているが、日本にそのような文化はない。
今までは、そろそろ結婚したほうがよいのではないかと周囲から言われ、自分ではあまり考えなくてもよい文化があったが、今では誰も言ってくれず、自分で考えなければならない時代になったのではないかと思う。
【委員】
資料24ページのスライドに関して、世界と日本でなぜ差が出てくるのか。
【参考人】
この人生のラッシュアワーは、アメリカの研究者たちが言っており、アメリカでも日本と同じような問題意識を持っている。特にアメリカの場合、あまり出生率が低いと感じられないのは、二極化している側面があり、子育てができないのに早く産んでしまうことが問題になっている。ヨーロッパでも、最近、女性の進学率が高くなっており、進学して勉強が終わった際には、20代後半になってしまっている。また、就職においても、短期の有期雇用を繰り返す間に産み逃してしまうため、日本と共通の問題意識があると思う。日本だけの問題ではなく、比較的、高所得の国では共通している。
ただ、日本、韓国も同じだが、20代に産めないことがはっきりと出てきており、ほかの国はなぜ、人生のラッシュアワーのときに子育てや産む選択をしているのか、もう少し研究が深まるとよい。
【委員】
婚外子について、欧州やほかの国では結婚をせずに子どもを産み、支援を受けられる仕組みがあると思うが、日本ではそのような考えがないと思う。正しい理解か。
【参考人】
結婚はしたくないが、子どもが欲しい人がどのぐらいいるのか。例えば、パートナーもいて、経済的にも安定しているが、結婚だけはどうしてもしたくない人は、日本において、ほとんどいない。結婚はせずに子どもを産みたい人が多ければ、結婚しなくても子どもを産める社会を進めてもよいと思うが、基本的に、今の日本では、一人で子どもを持ちたい女性は、調査では見えてきてない。諸外国の婚外子といっても、産んだときは婚外子だが、次の子どもが産まれたタイミングで結婚するなどのパターンもあるので、私はそれほど諸外国の婚外子が特別なことだとは思っていない。
実際に、日本でも婚外子の割合が少し増えてはいるが、婚外子ではない出生が大幅に減った分、割合が増えて見えているところもあるので、今のところ、拡大する兆しは見えていない。
【委員】
愛知県は、合計特殊出生率は中ほどで結婚率は高めだが、夫婦出生力は低めである。この結果をどのように分析しているか。
【参考人】
移動の話が絡むので、名古屋で結婚して、子どもを産むタイミングで出ていく、そのような可能性もあるが、愛知県は都市部なので、晩婚化しており、二子目、三子目を産まないことも考えられる。結婚してから少し時間を経て子どもを産む人がいることも関係していると思う。資料に記載されているのは、あくまでも5年前に多くの人が結婚しているのに対して、出生数がほかの地域に比べて少ないところで、移動の影響、産むタイミングを図っている夫婦がいることが影響しているのかと予想ができる。
【委員】
愛知県全体で見たときに、一人の子どもを持っている人が相対的に見て多いイメージもあるだろうか。
【参考人】
都市部、あるいは高学歴の女性が多い場所だと、女性の出産年齢が高く、最終的に1人産んで終わってしまう、3人目まで産めない人が多いことはあると思う。もし、この後に文書などで回答できるようであれば、調べたうえで回答したい。
【委員】
愛知県に嫁いできた女性が、愛知県で再就職するときに、キャリアも上げながら、いずれもう一人子どもを持ちたいと思っている人が多いと思う。キャリアアップしていくことによって役職が上がり、仕事の量が増え、次の子どもを持つタイミングがずれてしまうパターンが愛知県には多いと感じるが、改善するための対策があれば教えてほしい。
【参考人】
全国的にも、仕事を辞めずに続け、正規のフルタイムで働き続ける人が増えてきている。育児休業の取得や男性の取得割合も増えてきており、休業はできているが、復帰した後の時短勤務ができる仕事とできない仕事がある。また、子どもを持つと、子どもがいないときにやっていた仕事ではなくなってしまうので、今は子どもが産めないなどの葛藤を抱えている若い夫婦が、多く存在すると思う。
一方で、育児休業で休む人が増えると、今度は、働いている人の負担が大きくなり、どのように解消するかも問題になっている。経済学的には外部不経済という言葉があるが、経済を回すときに、子育てをするなどの次世代をつくるというケアの領域といった、ケアの領域と経済を回す領域が両方なければならないが、ケアの領域に全部の負担を押しつけ、ケアができない状態にして経済を回していく、そこを見ないふりをして経済が発展してしまった。今、社会全体で、もう少し考え直してみてはどうかと思う。広い意味で、個人がどのようにやりくりをしていくのかだけでなく、経済を回すためには、次世代をつくる時間を確保しなければならないことを全員が意識するなど、大きな気持ちで取り組むことも大事だと思っている。
【委員】
資料19ページの合計特殊出生率の年次推移で、1960年代から2020年代まで、どの国も全体的に下がってきているが、スウェーデンだけが大きく波を打っている。1980年は上昇し、1985年から1990年は急激に下がり、その後は急上昇しているが、スウェーデンでどのようなことがあったのか。
【参考人】
スウェーデンは、50歳の人が最終的にどのぐらいの子どもを持ったかという見方をすると、この凸凹は起きておらず真っすぐである。このときスウェーデンで何が起きたかというと、育児休業などの制度改革を行い、次の子どもを短い期間で産むと、出産前の高い給料を基準に育児休業ができるような制度改革があった。2年後に産むよりも有利な状況のときに産んだほうがよいと考え、一斉に、次の子どもを早めに産んだため、一時的に急上昇している。ただ、次の子どもを早めに産んだだけであるため、最終的な子どもの数が増えたわけではなく、その後、また元に戻っている。制度改革が起きると、毎年の年次別の出生率は波打つことがあるが、最終的に何人の子どもを産んだかという子ども数にはあまり影響がないと言われている。
【委員】
最終的な子どもの数に変わりはないということだが、制度などでインセンティブを設けることは、少子化に対して有効な手だてだと考えるか。
【参考人】
先ほどのスウェーデンの場合は、少し早めに産むというインセンティブである。実際に、一人余分に産むというインセンティブでうまくいっている例は、あまりないと思う。インセンティブや今までの補助をやめると出生数は下がるが、インセンティブや補助を追加して、今まで2人しか産んでいなかったが、3人産むようになった例はあまりない。少し早めに産むことはあり得る。少し早めに産むと最終的に産む数が若干、間接的に上がることがあるので、全く意味がないわけではないが、2人を3人産むよりは、機会を逃さず産みたいときに産めるかという対策が一番効いていると思う。子どもを産みたいが様々な事情があって産めない人をどのように減らしていくかに焦点を当てるのが有効ではないかと考える。
【委員】
子どもは地域や国の宝で、社会を含めてフォローアップ、援護射撃したいという気持ちがある一方で、DXや世の中が成熟社会になってくると、世の中が助け過ぎたり、社会が助け過ぎたりする。人間を産み育てていく、育むことが、逆に軽視されていると思うときが時々ある。所得が少ないから、0歳児から保育園に預けて働かなければならない環境にある、そのような部分は支援しないといけない。一方で、もちろん女性の社会進出を否定するわけでは全くないが、欲張りのような気がする。
人間を一人育てるのは、大変貴重なことで、0歳のときも1歳のときも3歳のときも5歳のときも、その年々で、生身の人間を育てていくのは、すごく価値のあることである。負担やデメリットの話はよく聞くが、乳幼児との触れ合い事業など、子どもを育てることはよいことだ、こんなにも幸せだという話が少ない。
子どもは社会の宝でもある一方で、例えば、私のところは子ども1人だが、隣の委員は、3人の子どもがいると思う。単純に、私は1人の子どもを育て、隣の委員は3人育てたから、3倍苦労していると思うが、子どもの成長過程や将来、老後の世話も含めると、3人分享受するものがあると思う。そのような議論をしないと、本質論が見えてこないような気がして仕方がない。
究極的に、世の中、社会が助け過ぎてしまった結果、人間を産み育てるという本質の部分がなくなり、寿命が短い、手軽で言葉も話せないペットがちょうどよいという話になってきてはいけないので、誤解を恐れずにいう。子育て支援はしっかりやらなければならないが、子育てのよい部分や子どもを産むとこんなに幸せだという人たちの声を吐き出すことはできないかと思うが、どうか。
【参考人】
共感する。子育てに対する負担や大変だという情報が多く気の毒に感じる。
一方で、子育てがこれほどよいという情報があっても、本人たちが子育てのよさを自分で見つけていかなければ、降ってきた情報だけで響くとも思えない。若い人は、楽しいことや自己実現で生きがいがあることなど、子育て以外の選択肢が多い。昔はあまりそのような情報がなかったため、子どもを育てることは重要だとすぐ分かったが、子育てよりも自分にとってやりたいことがあると、どうしてもやりたいことが見えてきてしまう。
ほかの国もそうだが、情報が増えてくる中で、昔より様々なものが便利になってきており、若い人はタイムパフォーマンスを重視するが、効率的に、なるべく自分がよい時間を過ごしたいと思っている中で、子育てや恋愛で、不合理なことや思いどおりにいかないことが起きることが、若い人にとって、中高年の人以上に大変に思っている可能性はあると思う。
中高年の人は、昔、当たり前にやっていたと言いたくなることもあるかもしれないが、若い人が全く違う環境で生きている中で、それでも子育てはよいという話を子育てしている人から発信してもらいたい。こんなに大変だということよりも、子育てをしていなければ得られないものがあったことをさらに発信してほしい。そのような情報が増えていけば、若い人も考えが変わってくるかと思う。
私もこの部分は大変問題だと思っており、子育ては大変だから支援するというメッセージだけでは、若い人の気持ちは、むしろ躊躇していく方向にいくのではないかと懸念している。
【委員】
少子化の原因は、未婚化、晩婚化にあることを再認識させてもらった。結婚すれば子どもが産まれる、結婚しないから産まれないということだと思うが、日本の場合、未婚化、晩婚化の原因をひもとくと、パラサイト・シングル現象があるかと実感している。親と同居して、自分の個室を独占して、自分で得られている収入は自由に使える。親元から離れてしまえば、中流的な生活は保障されないため、親元を離れない若者、特に20歳から35歳までの7割方が親元で暮らしている。中央大学の山田昌弘教授も、20年前からパラサイト・シングル減少が原因ではないかといっているが、参考人の見解を伺いたい。
【参考人】
7割ぐらいが同居というのは、今も変わっていない。親元に住むと、経済的に様々なメリットがあるので、あえて実家を出るのは、よほどのことがないと難しい。
欧米では、大人になると、親とは離れる文化があるのに対して、日本やアジアの国では、親と大人が住んでいても違和感がない文化があり、簡単に変えられない部分はあると思う。
結婚をしないのが要因だということだが、結婚さえできれば直ちに子どもを産むかというと、実は子育てに魅力がないから結婚しない方向性もある。社会で何か対策をというよりは、子どもを持つライフスタイルを積極的に考えられるようにすることで、結果的に、家を出てパートナーと新しい生活をしたいと思えるようになると考えるため、順番としては、子どもを持ちたいと思うところが一番重要であると思っている。
【委員】
難しい課題だと思っており、パラサイト・シングルに対する働きかけは、国も地方自治体もなすすべがない状況だと思う。
欧米だと、子どもの教育は高校卒業でおしまいであり、高校卒業後からは親の手から離れて、自分で奨学金を取るなどして、学びたいものを学び、なりたい道を歩むという自立心が当然あるが、日本の場合は、大学も大学院も就職するまで親が面倒を見るところがあるため、親の意識も変わっていない。無論、育つ子どもの意識も変わりようがないので、難しいということを改めて実感した。





