本文
議事概要(平成20年度第1回愛知県特別支援教育連携協議会)
平成20年度第1回愛知県特別支援教育連携協議会
とき
ところ
出席者
氏名 | 所属・職名 |
---|---|
神野 秀雄 | 愛知教育大学教授 |
横田 雅史 | 愛知みずほ大学教授 |
中村 栄一 | 健康福祉部児童家庭課長 |
小山 俊夫 | 健康福祉部障害福祉課長 |
寺田 雅一 | 健康福祉部医療福祉計画課長 |
林 善久 | 愛知労働局職業対策課長 |
磯村多摩夫 | 産業労働部就業促進課長 |
山崎 嘉久 | あいち小児保健医療総合センター保健室長 |
浜野 英夫 | あいち発達障害者支援センター長 |
鈴木 由郎 | 岡崎市立甲山中学校長 |
小林 弘忠 | 稲沢市立大里東小学校長 |
山本 光子 | 愛知県立安城養護学校長 |
山﨑恵美子 | 愛知県知的障害者育成会副会長 |
岡田ひろみ | 愛知県自閉症協会副会長 |
鈴木 芳子 | 愛知県小中学校PTA連絡協議会副会長 |
濱田 照男 | 愛知県総合教育センター相談部長 |
山田 淳夫 | 尾張教育事務所長 |
水越 光久 | 西三河教育事務所長 |
鈴木 良隆 | 名古屋市教育委員会指導室長 |
審議の内容
議題
〔報告事項〕
(1) 平成20年度愛知県特別支援教育連携協議会について
(2) 平成19年度愛知県特別支援教育連携協議会の経緯等について
(3) 平成19年度愛知県特別支援教育体制推進事業について
(4) 稲沢市・岡崎市・蒲郡市における平成19年度特別支援教育体制推進事業について
(5) 平成20年度愛知県特別支援教育体制推進事業について
(6) 平成20年度発達障害者支援体制整備事業について
〔協議事項〕
(1) 平成20年度第1回地区特別支援教育連携協議会での課題等について
会議録
1 開会
2 教育委員会あいさつ 教育長
昨年4月から特別支援教育が本格実施となり、特別支援教育2年目を迎えた。本県では、平成17年度から3年間にわたって「特別支援教育体制推進事業」を実施し、発達障害等のある児童生徒に対する教育的支援を行うための特別支援教育体制づくりに努めてきたが、着実に成果をあげ、昨年度、ほぼすべての小・中学校で校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーターの指名がなされた。
そして、本年度から3年間、引き続き同名の事業を展開し、特別支援教育体制のさらなる整備と充実を目指していきたいと考えている。今後とも、皆様の力強い御協力を賜りますようお願いしたい。
本県では、平成16年度よりこの愛知県特別支援教育連携協議会を設置し、福祉、医療、労働等の関係部署並びに関係機関等の方々の御意見を伺いながら、特別支援教育体制の整備推進のための様々な課題を協議いただいてきた。本協議会は、県全体を視野に入れて、各地域における特別支援教育を推進するための体制づくりの方策を総合的に検討していただくものであり、本県の特別支援教育を推し進める上で、大変重要な役割を果たすものであると認識している。
本日は、委員の皆様から忌たんのない御意見を賜り、障害のある児童生徒に対するより望ましい支援について協議いただきたい。
3 会長あいさつ
特別支援教育推進に際し、特に重要な時期にさしかかってきている。気持ちを引き締めて皆様と確実に歩んでいきたいと思う。特別支援教育への流れは、今から10年ほど前にそもそもの動きがあった。現在の学校教育の場にいる子どもたちの中に特別な教育的支援を必要とする子どもたちが大勢いるということ、世の中全体にノーマライゼーションの考え方が浸透してきたということ、そういった流れの中で従前の特殊教育の対象の子どもたちも含めて、子どもたち一人一人のニーズに対応した教育として展開しようと考えたところに始まり、学校教育法等法令の一部改正に伴い、昨年度から特別支援教育が本格的に展開されてきているものである。
本県では、その流れを受け巡回相談を実施しているが、その需要も高く、県全体の地域割のもと、どこにいても相談を受けることができるような体制がとられ、全国のモデルになるような県になってきていると考えている。校内委員会、特別支援教育連携協議会、個別の教育支援計画等をキーワードとして特別支援教育が進められてきているが、見直してみると、本当に大事なことは「連携」という言葉にある。本日は、様々な立場の方と一緒にそのことについて考えていきたい。
本日は、それぞれのところで一歩ずつ取組が進められていることを意識しながら、いろいろな考え方や意見を出し合い、十分に御審議いただきたい。この会が充実していくことを願っている。
4 副会長あいさつ
特別支援教育の理念の実現には、「横の連携」と「縦の接続」をいかに図るかいうことが課題である。「横の連携」というと、まさしく本協議会の役割である教育・福祉・医療・労働等との連携であり、「縦の接続」というと、家庭教育と学校教育、そして、幼稚園・保育所、小・中学校、高等学校との接続、さらには学校教育と職業生活との接続をいかに図るかということがキーワードになる。総合教育センターでは昨年度から「横の連携」「縦の接続」をキーワードに、幼稚園・保育所での支援をいかに小学校につなげていくかという研究に取り組んでいる。
それぞれの学校の特別支援教育体制の整備、推進については、管理職の先生方の意識、理念や思いがポイントになってくる。小・中学校においては体制推進事業の一環として、管理職の研修事業が行われているが、高等学校については今年度から特別支援教育管理運営研修を立ち上げた。今年度は三河地区の全高等学校の管理職の先生方に御参加いただき、来年度は尾張地区の研修を予定している。
本県の特別支援教育は関係各位の御尽力により、特に小・中学校においてその意識や関心が高まり、校内整備も進んでいるところであるが、自立と共生ということを考えると、まだ十分ではないところもある。本日は障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな支援・指導を通して、彼らの自立と共生の実現に向けた様々な観点からの協議をいただけると有り難い。
5 議事
〔報告事項〕
(1) 平成20年度愛知県特別支援教育連携協議会について
―資料1~資料2により事務局から説明―
会長 質問はありますか。
委員 (なし)
(2) 平成19年度愛知県特別支援教育連携協議会の経緯等について
―資料3により事務局から説明―
会長 質問はありますか。
委員 (なし)
(3) 平成19年度愛知県特別支援教育体制推進事業について
―資料4~資料6により事務局から説明―
会長 質問はありますか。
委員 (なし)
(4) 稲沢市・岡崎市・蒲郡市における平成19年度特別支援教育体制推進事業について
―資料7・別添資料により事務局から説明―
会長 質問はありますか。
委員 (なし)
(5) 平成20年度愛知県特別支援教育体制推進事業について
―資料8~資料9により事務局から説明―
委員 高等学校の先生方への訪問研修で、A・B・Cコースとある中で、事例検討が中心のコース(Cコース)がまだ高等学校では少ないように思う。最近、高等学校でも発達障害の生徒が多く見受けられるようになってきている。このAコース、Bコースが終わった時点で、続けてCコースも受講するというような計画があるか。
中学校から高校へ行くときに中学校の情報をあらかじめ高等学校がもらっておいて支援をしていきたいということであったが、それも本当に親としては有り難いが、高等学校は義務教育ではないので、まだまだ親の中にその情報がいくということが不利になるのではないかという懸念がある。情報がいくことが決して不利にならず、本当に高等学校に入学してからその子に合った支援が受けられるのだという確認を、保護者との間にしっかりしていただいて、情報共有のための連携をお願いできれば有り難い。
副会長 体制推進事業とは別に特別支援教育相談事業の一環として、高等学校からの要請に応じて事例検討も実施をしている。訪問した印象では、指導法等すぐに活用できるものがあると教員も動きやすく、そういうものがないと具体的に動き出しにくいという様子である。できることならば全体研修と事例検討を、要望に応じて展開できればと考えている。
中学校との連携については高等学校も模索しているところで、高等学校の教員も状況をできるだけ早く伝えてもらいたいと思っている。小・中学校においては個別の教育支援計画の作成も進みつつあるということで、義務教育段階での支援の成果を是非引き継いでいってほしい。
委員 様々な取組がなされているが、私立高等学校についてはどうか。
事務局 今はまず公立の学校の充実を図っているところである。私立については課題として視野に入れていく。
副会長 私立高等学校からも現職研修をお願いしたいという要請があがってきている。体制としては私学からの相談も受けるようにできている。
(6) 平成20年度発達障害者支援体制整備事業について
―資料10により事務局から説明―
会長 本協議会とリンクしながら進められている事業ですが、何か質問はありますか。
委員 (なし)
〔協議事項〕
(1) 平成20年度第1回地区特別支援教育連携協議会での課題等について
―資料11により事務局から説明及び提案―
会長 どの視点からでも構わないので、連携しながら全体が高まっていくようにするにはどうしたらよいか、具体的に本県としてどう考えていくか、忌たんのない意見をください。
幹事 障害者の就労にかかわるノウハウについて、特別支援学校の教員対象の講演を頼まれた。講演の中でも、第一に関係機関の連携が必要なことを力説した。
発達障害者については、議会でも関心が高く、労働関係としても問題提起されることが多いと感じている。その第一としては、雇用率制度の中に入っていないことである。県としては、発達障害者を雇用率の中に入れる必要があるため、健康福祉部と連携して国に要望している。ただ、制度ができたとしても、潜在化してしまうと、就労に結びついていかない。発達障害については、自分や家族が気がつかないなどの場合が多いと考えられているが、学校教育の中で、保護者に対して医師の診断や手帳の取得を勧める等の働きかけをすることも必要と思われるが、そうした働きかけのようなことはされているのか。
会長 自分の子どもについて不利になるのではないかという懸念もあるとのことである。保護者への働きかけを、理解を得ながら進めていくにはどうしたらよいか。
委員 発達障害のある子どもたちは働くというニーズが分からない子が多い。やはり中学校とか早い時期からの働くことの体験や実践が必要だと思う。親の中にもおのずから就職できると考えている向きもあるが、一度は就職しても、コミュニケーションがうまくとれなかったり、いろいろな問題を抱えて離職したりしてしまう方が結構いる。普通科の高等学校に行くと、職業訓練や職業実習はなかなか難しいので、発達障害の方の働くというイメージをどのように育てていくかということも一つの問題であると感じている。
特別支援学校とか職業系の高等学校であれば、実践・実習を重ねていく中で働くことのイメージを膨らませ、働くということを少しずつ知り、就職の際、安心して就労ができると考える。是非連携して、そのためのシステムを作ってもらえると有り難い。
会長 従来の視覚・聴覚・肢体不自由・知的障害等のある子どもたちの就労支援については、かなり明確になってきているが、発達障害についてはまだまだというところがある。このような子どもがどのように社会適応していくかということについて具体的な取組を進めていく必要がある。
委員 高等学校の研修、連携が年々進んできており、有り難いなと感じている。
通常の高等学校のお子さんには、就職にかかわって、例えばADHDか否か、本当に微妙なお子さんがいる。そこそこやれている子であり、その辺りのところで、仕事をやめていく子どもたちもいると思われる。親御さんの気持ちにもいろいろある。
未診断の子も含めて、支援を必要とする子たちが温かく受け入れられていく社会、診断を受けなくてもピタッと自分の力で自分に合ったところに行くということができるようにしていくために、どのような支援が一番よいのか、難しい問題である。時間をかけることが必要である。いろいろな人が様々な形でかかわっていくことが大事である。
会長 その子どもがどうなのかということ、それに親の願いもある。地域の資源もある。今、高等学校を中心に出口を考える御意見をいただいたが、特別支援学校についてはどうか。
委員 発達障害のある児童生徒は、特別支援学校、特に知的障害の特別支援学校に一部入学しているケースはあるが、基本的には知的障害のある子どもが入学するところであるので、数は少ない。高等部の入学希望者の中に、発達障害の生徒が相談に来て、進路選択に際し専門学校とか高等学校とか、あるいは特別支援学校とか、どこへ行ったらよいかという相談ケースもかなり多い。しかし、今日、知的障害養護学校の高等部も過大化が大変進んでおり、なかなか受入れ側としても厳しい状況である。もともと発達障害のお子さんたちについては、知的障害の特別支援学校はその対象ではない。しかし、そうは言いつつ、相談において適切なアドバイスがなかなかできないのが、とても心苦しい。
会長 それらのことについても連携をしながら体制をつくっていけば、今後、特別支援学校がどのように参画できるかという形ができていくと考える。小学校からみて中学生・高校生・大人と成長していくに向けて、将来にどんな願いを持って何を期待しているのか。
委員 先ほど話題に出ていたが、医師や医療機関に診断してもらうように勧めようとするが、親御さんによっては我が子には障害はないと強く思っているケースもあり、なかなかこれが簡単にはいかない。我々としては、学校の中で適応をしながら元気に過ごしていってほしいというところで、現在の状態像で判断していく場合も多い。だから、医療としての診断がどうであるかという見方ではなく、できる限りいろいろな手だてをとって、現状が少しでもうまく進むようにと願いながら進めている。もちろん、中学校への接続とか、その先ということについては、しっかりと考えていきたい。個別の教育支援計画並びに個別の指導計画の作成については、各市町村でもかなり進んできており、内容の充実等も含めて、次の中学校段階へ引き継いでいこうとする動きもかなり進んできている。
それから職業訓練に関しては、これは特に障害のあるお子さんだけではなく、キャリア教育ということで、どの子にも職業体験してもらうなどということで進めている。
会長 就労体験も含め、体験させながら社会にうまくスライドしていくような方向で考えていくということであるが、いずれにしても親御さんの理解がベースになる。親の立場からしてみると、どんな支援がしてもらいたいと願っているか。
委員 発達障害のある子どもの保護者の願いと、またそういう子どもたちを受け入れている周りの子どもたちの保護者の願いとがある。発達障害のある子どもの多くが通常の学級に在籍しているので、その子の個別の教育プログラムの実践が、日常の授業の中においてどのように実践されるのか、また、校外実習とか宿泊訓練とかの集団生活や行事のときにどのように実践されるのか、それが現実としての問題である。
例えば、修学旅行の班に障害のあるお子さんがおり、そのお子さんは質問をし始めると止まらなくなって、結局集合時間に遅れ、班全員がしかられたというケースなどがある。周りの子どもは皆その子のことを一生懸命受け入れようとしており、我慢している。できたら、先生に周りの子をフォローしていただくようなことはできないかと思う。その子自身も大変困っていると思うが、周りの子たちもその子に困っているケースもある。
会長 そうした周りの子どもたちの理解ということについて、併せて考えていくことが大切で、それが最終的には社会に出たときにどこに勤めても、一緒に考え、一緒に生きていくためのベースになる、そんなつなぎ方を構築していかなければいけない。
委員 実際、先生たちの対応にも格差がみられるので、先生たちを対象とした研修という形で理解と対応を一般的にすること、それから各自の先生方が自分の中で様々な取組をすること、この二つが必要である。そして、やはりそれぞれの立場として、私は医師として、先生方は先生方として、こうした問題にかかわっていくことが大切である。
そのもう一つ前のところで、人としてこういう人にどうコミュニケーションをとっていくか、相手側も難しいしこちら側も難しいというようなことを、我慢する子どもたちにどう学ばせていくか、それについて学習していく、それが企業の中で役に立つ。
委員 縦につなぐ連携について、今、名古屋市では移行支援の問題と就労の問題を大きな課題としてとらえている。特に幼稚園・保育所から小学校への移行支援の問題で共通フォーマットを作ろうと考えている。教育委員会と保育園を管轄している子供青少年局とが連携し、各現場の先生方とともに共通フォーマットとして何を引き継いでいきたいのかを検討している。
就労については、例えば県の障害者職業センターとか愛知労働局とか名古屋市の雇用支援センターとかが、それぞれにおいて非常に素晴らしい取組をしている。資料には就労にかかわっての声もあったが、実際にハローワークには福祉専門の職員がいる。発達障害についての理解をお持ちで、きめ細かなプログラムを立てていただける。我々教育関係者も、もっと積極的にアプローチして情報を仕入れていくという姿勢が必要である。
委員 就学前の相談事業を先日実施したが、直前に変更や取りやめの電話を何度か受けた。よくよく聞いてみると、家庭内での意見がまとまらないという状況である。いろいろなところで、簡単に安心して相談が受けられるシステムづくりができるよい。
会長 社会全体がそれを受け入れていくことができる教育相談体制を整備していくことで、一つ一つが充実していく、そんなつながり方もあるというように考えたい。
6 閉会あいさつ 学習教育部長
横田会長様には議事運営でお世話になり、大変ありがとうございました。また、委員の皆様方には、御多用の中お集まりいただき、大変貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございました。
子どもたちを中心として、家庭と学校と地域が連携して課題を解決していくこと、これは当然重要なことであるし、幼少期から生涯にわたる接続の課題もまた重要である。それぞれの分担機関が培ってきたノウハウを生かして、よりよく課題に対応していきたいと思う。県の組織がリーダーシップを発揮しながら各自治体とともに歩んでいくこと、県の責任の重大性を感じている。
ただ、一方で、一人一人の子どもたちに見合った、シチュエーションに応じた支援をと言いながら、多様性を認める社会の必要性と言いながら、もう一方で合理化という波が押し寄せている。大変現場は苦しい立場に立たされているのではないかと思うので、各段階で互いの力を信じあいながら協力すべきところは協力して進めていかないと、この事業はうまくいかないと思う。
今日いただいた御意見は大変参考になるので、また会長様共々いい方向に向けて努力してまいりたいと考えている。今日はどうもありがとうございました。
7 閉会