本文
議事概要(平成20年度第2回愛知県特別支援教育連携協議会)
平成20年度第2回愛知県特別支援教育連携協議会
とき
ところ
出席者
審議の内容
議題
〔報告事項〕
(1) 平成20年度特別支援学校による地域支援について
・ 平成20年度発達障害児指導事例研究会の実施状況
・ 平成20年度発達障害児指導事例研究会の報告書から
・ 平成20年度巡回相談の実施状況
・ 平成20年度巡回相談の報告書から
(2) 平成20年度特別支援教育体制推進事業の実施状況について
・ 平成20年度愛知県特別支援教育体制推進事業「訪問研修」実施状況
・ 愛知県特別支援教育フォーラムのまとめ
・ 小・中学校「個別の教育支援計画」作成ガイドブック
・ 特別支援教育啓発リーフレット「一人一人が輝くために」
(3) 発達障害者支援体制整備事業の実施状況について
〔協議事項〕
(1) 各地区特別支援教育連携協議会での課題等について
(2) 地域における支援体制整備に向けた展望及び課題等について
・ 特別支援教育体制整備状況調査(公立)
・ 特別支援教育体制構想図
会議録
1 開会
2 教育委員会あいさつ 教育長
本年度、特別支援教育2年目を迎えているが、本県では特別支援教育体制推進事業を継続実施し、障害のある児童生徒等の学習上又は生活上の困難を克服するための体制整備を図ってきた。そして、今年度、県内すべての小・中学校において、校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーターの指名がなされた。今後はこれらの校内組織を有効に機能させ、関係機関との連携を深め、特別支援教育の理念である、子ども一人一人の教育的ニーズに応じた教育をより充実させていくことが重要な課題であると認識している。
また、平成20年3月、小・中学校学習指導要領が告示されたが、その中に、「障害のある児童生徒などについては、特別支援学校等の助言又は援助を活用しつつ、例えば指導についての計画又は家庭や医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成する」という文言が入った。この中にもあるように、家庭や医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援こそが重要であり、本日のこの連携協議会の意義を強く感じている。
3 会長あいさつ
1月末に特別支援学校の新しい学習指導要領の説明会が終わり、いよいよこの4月よりできるところから始まっていく。学習指導要領は絵に描いたもちではない。そこには、目標と内容が、社会の状況を踏まえてきちんと盛り込まれている。しかし、これを実際に学校の教室で展開するのは、一人一人の教師である。その一人一人の教師をいかに育てるかということが、今の社会の中における一番大きな課題なのかもしれない。
昨年10月24日には愛知県特別支援教育フォーラムが開催され600人以上の人が集まり、非常に関心が高いということを知った。また、1月15日に発達障害者支援体制整備推進協議会の髙橋脩会長と懇談した。そこでは、もう今は、教育だ、福祉だ、労働だ、家庭ですべきことだ、学校がすべきことだと言うのではなく、双方から知恵と力と汗を出し合わなければならないという思いを強くした次第である。本会は、そういう意味で非常に重要な会であると認識している。
どうぞ今回も、愛知県の子どもの10年後・20年後の幸せと、今日・明日・明後日どうするかという具体的なことの両方に焦点を当てながら御検討いただけるようお願いしたい。
4 副会長あいさつ
総合教育センターでは、毎年特別支援教育に関する先進的なテーマを設定し研究調査事業を実施している。昨年度からの2年間の研究調査事業では、「気になる子どもの早期発見とその支援に関する研究」として、幼稚園・保育所の支援を小学校へどのようにつなげていくかについて、年長児を対象とした発達チェック表の開発と活用、支援につながる引継ぎ資料の作成及び特別支援学校のコーディネーターや幼稚園・小学校に配置されているスクールカウンセラーなどとの連携の在り方に関して研究を進めてきた。研究の成果等については3月末までにセンターのホームページに掲載する予定である。
障害のある幼児児童生徒の指導に当たっては、特に教職員の障害に対する理解の在り方や指導の姿勢が、大きく影響することを重視し、センターにおいては、特別支援教育講座を始めとして幼、小・中学校及び高等学校の初任者研修及び県立学校10年経験者研修などにおいて、障害のある幼児児童生徒の理解と支援に関する講話を実施している。さらに、教職員の障害に対する理解はもちろんであるが、保護者及び児童生徒の理解啓発にもつながる取組が求められている。今後ともノーマライゼーションの理念の実現及びユニバーサルな教育改善を目指して取り組んでいきたい。
5 議事
〔報告事項〕
(1) 平成20年度特別支援学校による地域支援について
―資料3~資料6により事務局から説明―
会長 質問はありますか。
委員 (なし)
(2) 平成20年度特別支援教育体制推進事業の実施状況について
―資料7~資料8と、資料A・資料Bにより事務局から説明―
委員 資料7の幼稚園・保育所と高校への訪問研修事業について、前回の会議でも聞いたが、資料を見るとAコースとBコースしかない。その点についてはどうか。
副会長 今年度は、これまでCコースの要望がなかった。ただ、既に昨年度、訪問研修を終えている学校からは、そういった要請はきており実施している。
委員 今の時点で、今後、事例検討会を実施するという予定はあるか。
副会長 資料に来年度の予定が載せてあるが、全体研修以外に各地区1校(全県で12校)の事例検討会を実施する予定である。
(3) 発達障害者支援体制整備事業の実施状況について
―資料9により事務局から説明―
委員 発達障害支援指導者とは、どんな立場の人がなっているのか。相談業務に直接携わるのか、学校のコーディネーターのような動きをするのか。その位置づけはどうなっているか。
幹事 指導者で一番多いのは、保育所の保育士とか保健センターの保健師とかである。その他、市町村の障害福祉の課で担当されている方等である。位置づけとしては、市町村における障害者の支援体制整備に取り組んでいる者であり、地域の自立支援協議会に参画し、発達障害者の支援を推進する役割を期待している。市町村で、発達障害者に関する相談の中心的な役割を担ってもらうというものである。そういうことを目指して研修を進めて認定している。昨年度から認定を始めたところであり、市町村によって指導者の活用状況も異なる。今後は、認定するだけでなく、いかに市町村の支援体制に組み込んでいくかということが課題になると思われる。今は、全市町村(名古屋市を除く。)への配置がまず第一と考えている。
委員 地域での連携が大切である。そして、子どもに一番近い人、相談を直接担当する人とかが、認定されて指導者となると実質的に有効であると考える。
幹事 北名古屋市で実施している発達障害者支援試行事業の中で、市町村における連携について取り組みたいと思っている。
会長 指導者が異動して地区が変わると、どうなるか。
幹事 指導者はほとんど市町村職員であるので、市町村が変わることは基本的にはないはずである。
会長 異動した時には、連携をしていくことが必要である。
〔協議事項〕
(1) 各地区特別支援教育連携協議会での課題等について
―資料10により事務局から説明及び提案―
会長 それぞれの立場での意見や考え、また、課題に対する対応としてこのような形で連携できるというような提案があったら聞かせください。
委員 小学校から中学校へ上がるときの連携について、保護者も含めて、中学校にいかにその子どもの情報を伝えていくかということが問題であると感じている。まだ、中学校は小学校のようには特別支援教育をきちんと受けられないという不安を持っている保護者が多い。公立中学校は不安だから私立中学校へ入学させようという保護者もいる。中学校は教科別の担任制をとっており、細かな個別の教育支援を受けることができにくいと保護者は思っている。小学校から中学校への情報の連携について、中学校区単位で、より充実してもらいたいと考える。
会長 小学校から中学校へと、いかに連携して情報を伝達していくかという点で、個人情報の問題もあるが、どのような情報をどのように伝えていくとよいか、御意見を。
委員 小学校から中学校の連携については、従来、どちらかというと生徒指導面で問題となる子どものことを取り上げて伝える部分が多かったが、最近では、発達障害の子どものことも含めて伝えるようになってきている。個別の教育支援計画についても、対象となるすべての子どもについてというところまではいっていないが、徐々に作成が進みつつあり、できているところは小学校から中学校へ引き継いで、活用できるようにしている。個人情報の問題については、保護者の了解を取った上で、中学校に伝えていくようにしている。
委員 一般の保護者にとっては、障害のある子が近くにいて、どのような状況であるかということは、情報としてなかなか入りにくい。学校そして障害のある子どもの保護者の方の考えもあろうが、もっとそういった子どもの情報をオープンにしてもらえると、一般の保護者もよりよく理解でき、つながりもよくなると思う。
委員 学校現場では、保護者からの要望も含めて、小学校のときに情報を伝えてあるのにかかわらず、中学校にそれが伝わっておらず、違う対応をしてしまった結果としてトラブルが起こるというケースがある。教育事務所としては、子どもが小学校から中学校へ移るときには、一人一人についてきちんと引継ぎをするように、特に入学したとき、最初の対応が間違わないようにということを市町村にお願いしている。ただ、障害のある子どもの保護者の意識にも違いがあって、小学校のときには特別支援学級に入っていても中学校では通常の学級に入れさせて、通常の子どもたちと一緒に過ごさせたいという保護者もいるし、学校にお任せしますという保護者もいる。その辺の違いがあるので、一概にすべてをオープンにして中学校に送るというのも難しい面がある。そういう点では保護者の理解をどこまで得られるかということがポイントになる。
会長 親御さんの理解を得ることについては、小学校から中学校、中学校から高等学校、高等学校から企業へも引き継いでいく問題であると思われる。
委員 小学校のときに、先生たちがよい対応をしてくれると、親の方も是非我が子の情報を中学校にも伝えてもらいたいと思う。本人がつらい思いをしていて、親と学校の連携がとれていないと、親としても中学校に情報を引き継いでほしくないと思ってしまう。やはり、先生が子どもの良さを認めて、そうした肯定的な情報が中学校に引き継がれ、中学校に行っても本人の良さが引き出されるような支援が行われることが大切と考える。
会長 養護学校では、小学部から中学部の情報の伝達はどうか。
委員 本校は小・中・高等部のある養護学校である。同じ学校内であり、個別の教育支援計画及び個別の指導計画も整備していて、年度がかわるときには、校内の情報交換会を行い、前の担任と新しい担任とを中心に、確実に情報の引継ぎを行っている。一方、他校から本校の中学部に入っている子どもについては、入学して、後からいろいろなことが分かってくることがある。体験入学や教育相談のときに、いろいろな情報を聞き取るようにしている。また、5、6月ごろ、前の学校の先生方に本校に来ていただき、授業参観と情報交換も行っている。
会長 お互いに顔を見合わせて、情報を交換することが大切であろう。
委員 切れ目のない支援ということが大切である。幼保、小・中・高等学校と、切れ目のない支援を行っていくことが最も大切で、それこそが最大の支援である。
委員 隣に病弱の養護学校があり、通常の学校から転校してきて、病気が治ると、また元の小・中学校に戻っていく。転校の際にケース会議を行うことにしているが、情報の伝達に関しては、紙媒体だけでは伝わらないことがある。地元の学校での様子を聞いたり、あるいは退院後のことについて伝えたりする等、お互いが実際に会ってケース会議を持つことが大切である。
委員 就園率について、地域の格差もあるが、地元の保健師にもっと個々のケース会議に出てもらって、その活用を図ることが大切である。幼保と保護者という当事者だけによるケース会議で、どうしていくとよいか分からなく戸惑っている場合も多く、そういうときに保健師が一緒であると、適切なアドバイスができることがある。
副会長 ある市の園においては、定期的にカウンセラーの訪問があり、発達障害のあるお子さんの支援をしてくれる。小学校にもカウンセラーが配置されており、園のカウンセラーと小学校のカウンセラー、そして特別支援学校のコーディネーターとで、いかに幼保の支援を小学校につなげていくかということについて会を持ったことがあった。その際、母親は我が子の情報を小学校に伝えてほしいと言っていたが、父親と祖父母が情報を伝えてはならないと反対した。その後、この子のために情報の連携が大切であることを説得し理解してもらった。いろいろな立場の者がいろいろな言葉で言っていくことが有効である。小学校入学前だけでなく、入学後もフォローが大切である。それぞれの者が連絡を取りながら、事後の連絡会を持つことなどによって、よりよい引継ぎができる。
会長 乳幼児健診の後、保健師さん等が追跡して支援することと合わせて考えていけるとよい。
(2) 地域における支援体制整備に向けた展望及び課題等について
―資料11~資料12により事務局から説明及び提案―
会長 次に、地域における支援体制整備に向けた展望と課題について協議したい。
委員 公立の小・中学校の状況は分かった。高等学校の整備はどうか。また、私立の学校に向けての体制整備にかかわる事業等が見えてこないが、私立の学校の整備状況はどうか。
事務局 高等学校については、総合教育センターから高等学校の方へ訪問してもらい、障害のある生徒への理解を深めるという研修を実施している。基本的にはすべての教員を対象に研修を行う方向である。これまでも、発達障害と思われる生徒が周囲に適応できずに中途退学していたと思う。アンケート結果にも、教師も「もう少しこのような対応をすれば結果は違っていたかもしれない。」というものがある。しかし、現時点・段階では、高等学校にはこのような生徒の具体的な対応や指導のノウハウについては、まだ余り蓄積されていない。特別支援学校での発達障害にかかわる指導のノウハウ等をいろんな情報を含めて取り入れて、それをまた校内で実態に応じて学校全体として対応できるようにする、そういう役割の者がコーディネーターと考えている。保護者の理解を求めるに当たっても、コーディネーター養成研修を充実させ、22年度以降全校配置を目指したい。
事務局 私立の学校での特別支援教育の体制整備に向けてということについてであるが、私立からの要請に応じ、総合教育センターの職員が研修や相談を実施している。また市町村においては、様々な研修事業において私立幼稚園等にも参加を呼びかけているところも出てきている。
会長 私立へのPRも考えていく必要があろう。
副会長 過日、全校生徒を対象にした人権教育についての講話に行ったが、そこは私立高校であった。現在行っている訪問研修については、今年度は2校の私立高校から要請があり実施した。
委員 高校入試及び入学に関して、入学前に我が子が発達障害であることを言うと入試に不利になることはないと分かっていても、親には抵抗があって言えない現状がある。それで、入学が決まった時点で、本人のことについて調査をされるときに、例えば、「コミュニケーションが苦手であるか」等、本人の特徴・様子について、うまく親から情報を引き出してくれるような調査をしてもらえるとよい。ある私立高校は、きめ細かく聞き取っている。表立って「発達障害があるか」というような聞き取りでなくて、いろいろな内容・項目での聞き取り調査を行う中から、その子の人物像が浮かび上がってくるような調査をしてもらえると、学校側にも本人の様子がよく伝わると思われる。
会長 現在、個人調書などは、各学校がそれぞれの方法で行っていると思われるが、それについて、センターで調査したり、望ましい内容について研究したりする予定などというのは今後あるか。
副会長 来年度から3年計画で、高等学校における発達障害に関する研究協議会を立ち上げる。その中で、今、話のあった、聞き取りの内容に関する部分、また具体的な支援について、高等学校とセンターとで調査研究していきたい。年度途中で中間報告のような形で報告できるのではないかと思っている。
委員 障害者が地域で暮らすということについて。幼児期、これまではなかなかその子どもの地元の幼稚園・保育所でみてもらえず、遠くの施設に通っていた子どもも多かった。本当は小さいときから地域の友達と一緒に生活していく方が本人も安心できるし、周りもよくその子どものことが理解できるはずである。幼稚園・保育所も遠く、そして小学校、中学校時代も全部、遠くの特別支援学校で生活していて、親もずっと、自家用車で我が子の送り迎えをしていて、そして卒業して地元での生活に戻った時、周りの人がその子どものことを全く知らなかったということがよくある。本人にとっても周りが知らない人ばかりのときがある。だから、幼いうちから地域で暮らしていけたら、本当にいいなと思う。
会長 その意見は、特別支援教育に移行していくときの、一番根底にある考え方の一つである。これから徐々に、保健師も、コーディネーターもカウンセラーも保護者も教員も、皆が協力する中で、そういう形が具体化されていき、それが子どもに全部返っていくことが大切である。
委員 外国人よりも、日本人の方が、障害のある子どもに対して慣れていなく、じっと見つめてしまうようなところがある。幼いときから一緒にいれば、お互いに理解し合いながら自然にかかわっていくことができる。
会長 本当の課題は何かということについては、もっとじっくりと考えていくべきであろう。今日いただいた意見を、今後の県の事業に生かしていただきたい。
6 閉会あいさつ 学習教育部長
委員の皆様には貴重な御意見をいただいた。会長、副会長には議事の取り回しをしていただき感謝したい。教員と保護者との信頼関係、あるいは学校と学校との情報の交換、そして学校から社会に出るときの配慮、様々なものを根底で支えるものは、人間同士の信頼関係であろう。そういう意味では、協議会も4年目になっているが、やればやるほど課題が見えてくる部分が多々ある。そして、今日もそうであったように、委員の皆様の自分のカバーする領域に対する責任と、ここにお集まりの皆様方の信頼関係で、解決できる話であろうと思っている。今日いただいた御意見については、事務局で整理・検討させていただきながら、事業に反映させていきたい。
7 閉会